< 大人の味を知って 静かに覚醒しましょう >
お菓子のクッキーなんですが、1984年から発売されている不二家の「カントリーマアム」
なんかね、いろいろチャレンジして、つまんでみても、ここに帰ってくるよねえっていう感じ。そういう食べものの1つなんですね。
落ち着いた旨さが大好きです。さすがマアムです。
で、このカントリーマアム、2018年の夏から「カントリーマアム 大人のバニラ」「カントリーマアム 大人のココア」っていうのが発売されています。
発売されてすぐ飛び付いて、めっちゃ満足。今ではこの「大人の味」の方ばっかりになっています。
なんでかっていうと、オトナだから~。って、オトナ過ぎるわっ! マアムの風味じゃなくって食べる方の年齢がってことではあるんですが、はい。
最近この大人の味っていろんな食べもので出てますね。
カントリーマアムの大人味が発売された時と同じ2018年に製造が終了してしまった明治の「大人のきのこの山」「大人のたけのこの里」の例もありますが、「パックンチョ」だとか「キットカット」にも大人の味バージョンが出ています。
21世紀になって人類は急に大人の味に目覚めたんでしょうか。
大人の味ブームとさえ言えそうなこの現象の牽引車は明治「チョコレート効果」なのかもしれません。
健康効果を期待されるカカオポリフェノールを大量に含ませた「苦味」で今も変わらず圧倒的な支持を得ているみたいですね。
72%、86%、95%とあって、95%なんてもはやチョコレートの概念に当てはまらない苦さです。
1998年に発売開始された時のキャッチコピーは「健康とおいしさを考えた 大人のチョコレート」でしたね。
爆発的にヒットしたもんですから、各メーカーの開発担当者はこぞってマネッコ。
大人テイストってことに注目して、自社の新商品のアイディアを練った、ってことは充分に考え得ることじゃないでしょうか。
大袈裟に言えばオコチャマ文化からの脱却です。
ちっちゃな子供の嫌いな食べものの代表格は「ピーマン」でしょうかね。
「ピーマン、入れんといてな~」ってセリフのテレビコマーシャルもありました。焼きビーフンでしたかね。
子供がピーマンを食べないのは、あの苦さに命の危険を感じるからなんで、その方が正常だっていう話を聞いたことがあります。
命の危険を感じるのは、「苦い」から。ふむふむです。
人間が生きていくための食べものとして、苦いっていうことは、ダメ、危険だって感じるのはDNAなのかもしれませんよ。
人類が今日まで生き延びてくるまでにはいろんな失敗をして、命の危機を経験して、ナレッジを積み重ねてきているわけでしょうから、苦い食べものは危険だっていう情報が、我々の誰にでも、DNAに刻み込まれているって説は、けっこう説得力があります。
ところが、どうしたことなんでしょう。いつからなんでしょう。何か、決定的なきっかけがあったでしょうか。
育っていきますと、いつの頃からか、ピーマン好きの男女がいっぱい居るっていう年齢層に入っていきます。
苦さが旨い、だとか、命の危険に関わる基本的DNA情報に反する感覚にとらわれしまっているんですね。
ピーマンだけじゃないですよね。っていうか苦さだけじゃないです。
豆腐なんて、無味な感じの食べものが、なんで旨いものとして数えられるのか、オコチャマには理解できません。
大人にならないと分からない。
ピーマンとか、さんまのワタ、ゴーヤ、いつからなのか本人にも分からないことだと思うんですが、むしろその苦さが魅力的な旨さに感じられて大好きです、っていう大人は普通に居るわけです。
もちろん味の好みは個人の嗜好ですから、ピーマンは苦いからキライって言う大人は、舌がオコチャマだって一概には言えません。そう言ってやりたい気持ちはヤマヤマですが、言いませんです。はい。
経験を重ねていくと、経験値が蓄積されていって、あるとき、臨界点に達する。そして臨界点を超えると、その味わいが好きになるっていうのを「アクワイアード・テイスト」っていうんだそうです。
ピーマン、嫌いだから食べない。身体にイイんだから食べなさい。を繰り返したとしても、さして量を食べていないんだけれども、ある日、気が付いてみると好きな味になっている。
っていうことは、ピーマンの「アクワイアード・テイスト」臨界点って意外に低いのかもしれないですね。
ビールやウイスキーも、苦いからキライって言ってくれちゃう人がたまにいますけれど、こっちの方はハッキリと、オコチャマぶってんじゃねえよ! って言ってイイような気もしますね。
一応、成人なわけですからね、ビール呑んだりウイスキー呑んだりするってことはね。
ビール、苦いからキライって人に無理に薦めるひともまた居ないでしょうね。ビールがもったいないですからね。
そういうオコチャマはビール呑まなくてイイです。
ウイスキーの方はどうでしょうか。
スコッチのピートの香りは、最初は敬遠される種類のものかもしれません。でもまあ、苦くはないですよね。
ジャパニーズ・ウイスキーも、スコッチを目指して発展してきた歴史を持っているわけですが、焦げ臭さとかはほとんどなくって、かなり上質なスムースさが特徴です。
でも、そういうジャパニーズ・ウイスキーに対してでも、敬遠する向きはあります。
全然旨くないです。っていうご感想ですね。辛いとか言いやがる向きもあります。
「アクワイアード・テイスト」の最上級がウイスキーにはあるのかもしれません。
エッラそうに言わせていただきますが、ウイスキーは完全に大人の酒なんです。
オコチャマには向きません。
モラトリアムだとか、そういう方向の話しじゃなくって、酒との付き合い方として、大人にならないと旨さの分からない酒なんですね。
酒を呑み始める時期は人によっていろいろでしょうけれど、初めの頃はみんなでワイワイやるのが楽しいですし、仲間との潤滑油的な存在ですね。そうなりがちです。
呑みニュケーションなんていうのも、その頃のための言葉ですよね。
それはそれで大変結構なことだと思います。
そういう席で、酒の場で、仕事関係、友達関係、恋愛関係が進展していって、りっぱな? 社会人になっていくんですもんね。
そういう場で呑む酒が、ガリガリ君サワーから、レモンサワーにチャレンジしてみたりなんかして、そんでもってビール呑んで苦~いとかやりながらね、酒の道に入っていく人も居れば、酒から離れていく人も居ます。
少し酒の場に慣れてくると、やがて、少人数でしっぽり呑む場っていうのも出てきます。
同性同士だったり、男女だったり。
ワイワイからしっぽりへのアクワイアード。
酒が体質にあった人は、この頃から独り呑みなんかも始めちゃいますね。
みんなとワイワイ呑むときには、1人だけ注文しにくいけど、どんなかなあって気になっている酒。
それを自分の部屋で1人、試してみる。
そういう時に選択されるのが、ウイスキー、焼酎だとかの蒸留酒でしょうね。
うへえ~、ってなる人も居るでしょうけれど、ほほ~って感じではまっちゃう人の方が多いんじゃないでしょうかね。
蒸留酒は、それぞれの種類によって味わいの特徴があるのは当然のこととして、共通して言えるのは、静かに飲む酒だっていうことでしょう。
「覚醒の酔い」っていう表現があります。
特にウイスキーに対して使われることが多いですが、なにもウイスキーに限ることじゃありません。
焼酎、泡盛も同じように覚醒の酔いを提供してくれる酒です。
ストレートかロックが好いように思います。
気分的な発散を目的とする呑み方じゃなくって、自己の中に深く入っていく呑み方って言えるかもしれません。
クリエイティビティです。
方向を間違えると、自己批判に入ってしまう危険性はありますが、そういう失敗も経験しながらの「アクワイアード・テイスト」
ウイスキーそのものと自分自身が、1対1で向き合うような呑み方が出来るようになっていくんですねえ。
でもまあ、残念ながら、酒の弱い人には向きません。
って言いながら、酒ってね、強くなっていくもんでもあるんですよね。
そういう方面での「アクワイアード・テイスト」っていうのもあるのかもしれません。
蒸留酒をスピリッツっていうのは、覚醒の酔いっていう呑み方が出来る酒だからだと思います。
クリエイティビティ、創造力、想像力が活発になり過ぎて、あっちの世界が近づいてきたら、さっさと寝ましょう。
ね、「アクワイアード・テイスト」って大人の証なんですから。大人の呑み方を覚えましょう。