<竹の子供だからタケノコなんだけれど 筍と竹の子っていう呼び方に明確な違いがあったのでした>
【きのこの里山】という記事で「きのこたけのこ戦争」について、ちょっと云々してみましたが、あのお菓子戦争のたけのこって「筍」だったんですね。決して「竹の子」じゃない。
なぜならば、食べられるタケノコは「筍」で、育ち過ぎた「竹の子」はもう食べられないという事実が判明したからなのでありました。育ち過ぎたっていうのは人間の勝手な言い分ですけれどね。
で、ふと考えてみたんですが、マツタケ、シイタケ、マイタケ、エノキタケ。きのこの名前って、なんだかみんな「タケ」が付いてますね。きのこって、ホントはタケノコなの?
なわけはないんでしょうけれど、人間とのファーストコンタクトとして、倒木から生えていたり、木の傍に生えてきたりする生き物だから、木の子供みたいだねえ、で「きのこ」って名前なんだろうと思うんですが、なんで「タケ」が付くんでしょう。
「きのこ」の漢字は「茸」で、これ、草冠の付いた「耳」ですよね。
椎の木から生えている植物性の耳っぽいから「椎茸」なんだとすると、「タケ」の読みは音読みで、「きのこ」の読みが訓読みなのかな、と思って調べて見ましたら、「きのこ」も「タケ」も両方とも訓読みだったのでした。
ちなみに音読みだと「ジョウ」「ニュウ」だそうです。全然知らんわっ!
今回は「タケノコ」の話です。
みんなが知っている「かぐや姫」「竹取物語」ですが、あれって正式な名称っていうのはハッキリしていないんだそうですね。
紫式部さんは源氏物語の中で「物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁」といっていますので、源氏物語の前に成立していた話であることは間違いないものの、いつできたのかも不明なんだそうです。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
名をば、さぬきの造となむいひける。
翁ですよ。ジーサンと言いながら、今でいえば40代ぐらいかもしれませんよね。けっこう若い翁です。
で、この「さぬきのみやつこ」さんは、竹を取って「よろづのこと」に使っていたと、こういう話なんですが、よろづって言われちゃうと何に使っていたのかさっぱり分かりませんね。
竹取が商売だったと考えると、竹その物、カゴやザルといったような日用品、あるいは竹細工だとかの工芸品を作って売っていたんでしょうか。
なんにしても、平安時代の初期には既に、竹を日常生活の中に取り込んでいたと解釈できそうです。
だとすると、食べていましたよね、きっと。竹取の翁も、媼も、そしてかぐや姫も、タケノコを食べていたはずですよね。
スコッチのアテにメンマをつまみながら、かぐや姫も食べていたのかな、と考えて、いや違うかな、平安初期のタケノコってメンマにしてた? あれ? メンマってタケノコ、だったよね?
というところまで来て、タケノコの食っていうのを、ちょっと調べてみました。
かぐや姫の物語の舞台は「奈良県北葛城郡広陵町近辺」っていうことで、だいたい折り合いがついているらしいんですが、広陵町は靴下生産量日本一の町だそうで、名物名産に「タケノコ」関連の食べものは無いみたいです。
令和の今は特に竹にまつわる産業も目立っていません。情報がない。
ん~。かぐや姫はメンマを食べていなかった、のかもですねえ。
と思ったらですね、竹取物語の地って名乗っている町は、他にもいくつかあるんでした。
そのうちの1つ、京都府長岡京市は「孟宗竹発祥之地」だそうです。
孟宗竹(モウソウチク)って名前、聞いたことあります。これがメンマ? って調べてみたらですね、孟宗竹からメンマは作っていないんだそうです。またハズレ。
メンマは麻竹(マチク)っていう中国からの輸入品で作るのがほぼ全てらしくて、福岡県の「株式会社タケマン」がほぼ唯一、孟宗竹のメンマを作っているみたいです。
にしてもですね、今までメンマって「乾燥竹の子」を出汁でもどした食べ物なのかな、ぐらいの認識だったんですが、麻竹だそうです、マチク。
しかも、タケノコを乳酸発酵させた加工食品なんだそうで、ほほう、そですかって感じです。
そういえば「シナチク」とも言いますよね。「支那竹」
ところが戦後、この「支那竹」という名前に台湾政府からクレームがついて、なにか違う名前を付けなければいけなくなったそうで、「支那竹」を扱っていた物産会社の社長さんが、ラーメンの上に乗っけるマチクだからってことで、ラーメンマチク、メンマチク、メンマ、でいいんじゃね!? って決めた名前なんだそうです。
ホンマカイナ? とも思いますが、ますます好きになりました。メンマメンマ。
でもまあ、孟宗竹発祥之地である京都の長岡京にもメンマは無いわけです。
何があるかといえば、そうですね単純に「タケノコ」です。タケノコ料理。
天ぷら、焼き物、煮物、たけのこご飯、いろいろ旨いタケノコ料理って結構ありますよね。
ところでタケノコってカタカナだったりひらがなで「たけのこ」って書くのがむしろ普通なのかもしれません。
「筍」っていう字は時々見かけますが「竹の子」っていう表現は見ませんね。
1980年ごろに代々木公園で踊っていた「竹の子族」ぐらいでしょうかねえ。
ここでタイトルの、食べられるタケノコは「筍」で、育ち過ぎた「竹の子」はもう食べられないという事実についての話に戻ります。
「筍」っていう字は、タケカンムリに「旬」です。
この旬っていう字は1ヶ月を3等分にした10日間を表すんだそうで、限られた期間だからこそ、その限られた時期に旨くなる食べものを「旬」って呼ぶ風習になったんだそうです。「今が旬」「旬のもの」
で、その限られた時期が短くて、シビアな食べものの代表が「タケノコ」なので、タケカンムリに旬と書いて「筍」という字にしたんだそうです。
ふううん。そう言われてみればそうですね、という「筍」という漢字です。
地下茎から芽が出て、最初の10日間、つまり最初の旬の間にすくすく育つわけですね。竹の芽がちっちゃなタケノコになる。
で、ちっちゃなタケノコから充分な大きさのタケノコに育つまでの次の10日間。第2の旬がタケノコの食べどき。
で、その第2の旬を過ぎて育ってしまうと、食べるには適さないもの、で、「竹の子」になるってことなんですね。
芽 ⇒ 筍 ⇒ 竹の子。
さらにいえば、食べどきの旬の筍も、掘り出した直後から急激に「えぐみ」が強くなっていくので、素早い下処理が肝心なんだそうです。
筍のことわざとして「湯を沸かしてから筍を掘れ」っていうのがあるそうです。10日間の旬ばかりじゃなくって、掘り出してからの旬もめっちゃシビアな食べものなんでした。
孟宗竹だけじゃなくって、いろいろ旨いとされる筍がありまして、その中でもダントツとされているのが「寒山竹(かんざんちく)」
殿様しか口に出来ないという意味で「大名たけのこ」とも呼ばれているそうです。なんとか食べてみたい筍ですね。
鹿児島県の南西諸島、吐噶喇列島が産地だということです。
読めます? 「吐噶喇列島」
なんとなく読んでいけば「トカラ列島」っていう名前が出てきますよね。なんだか凄い字面です。
聞いたことはありましたが、こうして漢字で見てみると、え? 読めませんって感じです。
中之島、口之島・平島・諏訪之瀬島・悪石島・小宝島・宝島からなる小さな島々で採れるのが寒山竹。
ほとんどえぐみが無くって、アクガ無い。細い小さな竹で、そのまま生でも食べられる筍。
イイっすねエ。ホント食べてみたいですねえ。
でも流通量は凄く少ないみたいです。残念。出回ってない。吐噶喇列島の筍、食べたいです。
ま、季節になれば、定番の「若竹煮」で充分満足ではあります。
って、いま気が付きましたけど、「若竹煮」って「竹」ですね。ダメじゃん。「筍」にしないと。
って、ま、イイっすよね。食べ物は名前じゃないっす。
筍とワカメっていう食べ合わせが最強の一品なんだそうですよ。
疲労回復、集中力アップが嬉しいところですが、骨を丈夫にして便秘、尿酸値、高血圧の改善。
凄いな若竹煮。
でも今度「寒山竹」探してみよっと。