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【べリングキャット】デジタル忍者 シギント ヒューミント オシントって?

< eスポーツっていうのもありますけど インドア・パワーって21世紀かもです >

きょうはネズミの緊急会議です。


奥様ネズミが発言しました。


「あのですね、ネコを何とかしていただきたいんです。まったく無遠慮に、何の会釈もないどころか突然襲い掛かって来るんですから、安心して買い物にもいけやしません」


そうだそうだ、とみんなが同意の声を上げます。
奥様ネズミは後押しされるように胸を張って続けました。


「いつもエラそうにふんぞり返っている、そこのセンセッ、何か対策はございませんの」


指摘された白髭ネズミは、ますますふんぞり返って応えました。


「それはですな、奥さん。いつも言っている通りのことなんですな。ネコというものは理不尽な生き物なんです。神様でもどうしようもありません。我々としては、ただ素早く走り去って、魔の手から、いや、爪からですな、逃げるしかないのです」


あきれ返る奥様ネズミの背後から、一斉にブーイングがあがります。


「あんたはネコから遠いトコにいるから、そんなノンキなことが言えるんだ。バーロー」


「誰もがアスリートみたいに走れるんだったら、そもそもこうして集まる必要なんかないだろ。バーロー」

 

 

 


議長のクマネズミが木槌をドンドンと鳴らして、大声で制します。


「静粛に、静粛に。ここは神聖なる議事堂ですぞ、静かに。バーローとかではなく、アイディアを出してください。我々の生命を守る斬新なアイディアを」


みんなのブツブツ言う声が段々鎮まって来た時、若いアオネズミがおずおずと進み出ました。


「あのー、……、あのですね」


まだ興奮の収まらない様子の奥様ネズミが、思わず知らず口を挟みます。


「なんですの、あなたは。男ならハッキリおっしゃいな。ネズミらしくキビキビと」


「ですからですね、あのですね」


「あの、はもう結構ですから、アイディアをおっしゃい!」


「あ、あ、はい。あの~」


「だから、なんなんですか! あなたはですね……」


クマネズミ議長が、またドンドンやって言います。


「冷静に、落ち着いて議論を進めましょう。奥様、あなたは口をつぐんでお座りなさい」


奥様ネズミがわざと大きな音を立てて席に座るのを見届けると、クマネズミ議長は精一杯の笑顔を作って言いました。


「さあキミ、ゆっくりでイイですから、意見を述べてください」


アオネズミは、目を吊り上げている奥様ネズミの方を気にしながらも、勇気を出して口を開きました。


「ネコの首に鈴を付けるのは、どうかなって思うんです」


クマネズミ議長は首をかしげます。


「鈴? そこにアイはあるんか?」


すると白髭ネズミが立ちあがりました。


「うおっほん! 議長、そんなくだらないことを言っておる場合じゃございませんぞ。ワタシがその青年の言いたいことを代弁いたそう」


白髭ネズミはそう言ったかと思いますと、議長席の前まで進み出て、みんなの方に向き直りました。


「ワタシの考えではこうです」


「あんたの意見じゃないだろ、バーロー」


「まあまあ、聞きたまえよ、キミ。あの冷酷無比で何を考えているのか分からないネコというものはですな、実に忍び足がうまいときているんです。肉球がありますからな」


「ネコが冷酷無比なら、お前さんはオタンコナスだ! バーロー」


「うおっほん。ところがですな、ネコの首に鈴が付いていれば、いくら忍び足でも、ネコが歩けばチリ~ンと音が鳴る。そっと歩いて来て、狙いを定めるために急に立ち止まれば、またチリ~ンです」


白髭ネズミは、一応アオネズミの顔を伺ってから、一同を見渡して言い放ちました。


「ネコの首に鈴を付ければ、我々はネコが近づく前にさっさと逃げおおせる。どうですか、みなさん、この素晴らしいワタシのアイディアは」


「だから、あんたのアイディアじゃないだろっつの。バーロー」


「でもまあ、鈴のアイディアは悪くないんじゃないか」


「そうだなあ、悪くない」


「それじゃあさ、白髭ネズミのダンナ、早速あんたが鈴を付けに行っておくれよ。言い出しっぺなんだから」


「え? いや、滅相もございませんぞ。ワタシはネコなんぞに近づけません。誰かもっと元気のイイ者にですな」


「あんたがこの中じゃ一番元気だろうが、バーロー」


「バーローバーロー言っている、貴様が鈴を付けに行くべきではないのですか」


「なんでだ、バーロー」


クマネズミ議長がまたまたドンドンやって、静粛にさせます。


「話の流れからみまして、ネコ鈴作戦に異論はないものと判断いたします。それでは、このまま、鈴付け実行者、ベリングキャットの選択に話を進めていきたいと思います」

 

 

 


議長のその声が終わらないうちに、バーローネズミたちは、全員、奥様ネズミも、アオネズミも、もちろん白髭ネズミも議事堂から姿を消してしまいました。


アイソーポス、イソップ寓話の「ねずみの相談」っていうのは、ま、だいたいこんな話でしたよね。
バーローネズミっていうのは出てきませんでしょうけれどね。

 

 

どんなに素晴らしいアイディアのようであっても、それを実行できないのであれば、何の意味もないっていう寓意ですよね。


ところがですね、21世紀の地球に突如現れたんですよね「べリングキャット」が。
ネズミの世界の話じゃなくって人間世界のことです。


2014年から「べリングキャット」っていうウェブサイトを運営しているのは、エリオット・ヒギンズっていう41歳のイギリス人ゲーマー。活動自体はかなり前からやっていたみたいですけどね。


パッとしないおじさんだとか、オタクだとかいう紹介をしている向きもありますけれど、そんなのは大きなお世話ですよ。


「べリングキャット」のやっている内容って、情報処理としての専門家っていうレベルじゃなくって、オタク的なセンスがなければ出来ないことばっかりだと思います。


世界中に散らばっているっていう「べリングキャット」のメンバーは、当然のことながら公表されていませんね。命の危険のあることですからね。
ホントに社会的に大きな悪に立ち向かっているんです。
起ち上げたエリオット・ヒギンズだけが表に顔を出している状況です。


現段階で「べリングキャット」が鈴を付けようとしている、っていうか何回も鈴を付けている相手はプーチン・キャット。


「べリングキャット」が世界的な注目を集めるようになった2014年っていう年は、21世紀の中で特別な年として記録されることになるんだろうって思われます。
プーチン・キャットの悪行じゃなくって「べリングキャット」という存在が世界に知られたってことがです。


まだ記憶に新しいことなんですが、2014年2月に「ウクライナ騒乱」が起こります。


ロシア寄りだとされているヤヌコーヴィチが不正があったとされている選挙でウクライナ大統領になっていたんですが、多数の市民を殺した容疑で解任されて、逃亡、指名手配されます。


3月になるとプーチン大統領は、ロシア系住民の保護っていう例の名目でクリミアへのロシア軍の派遣を決定します。
ウクライナ海軍総司令官がすぐにロシア軍に投降して、大きな争いもなく、クリミア半島はクリミア共和国としてロシア連邦に組み込まれます。併合ですね。


でも不思議にこの時は大きな話題にならなかった印象ですね。
ロシアの根回しが機能していたんでしょうか。
つまり、ロシア系って言われる住民を作り上げる工夫っていうか、買収を上手くやっていたんでしょうね。


6月にポロシェンコが空席になっていたウクライナ大統領に就任します。


7月、ウクライナドネツク近郊で、オランダ発マレーシア行きのマレーシア航空ボーイング777が墜落してしまいます。事故っていう報道。
そして直後に撃墜されたっていうふうに情報修正されました。


2022年現在となっては、世界中の人がだいたいの地理的位置を把握しているウクライナドネツク上空です。


事故と犯罪の両方の可能性を含んで調査が行われたわけですが、この調査に決定的に重大な役割を果たして、突然注目を集めたのが「べリングキャット」だったんですね。


ドンバス地方で戦っていたロシア軍のミサイルで撃墜されたテロ行為なんじゃないかっていう情報が出されたんですが、ロシアは「陰謀説」として否定して、マレーシア航空機はウクライナ軍の攻撃によって撃墜されたって主張します。


この時ロシア国防相衛星写真を提示して、墜落の数時間前にウクライナ軍が砲台を墜落地域に近いところへ移動させて、その後撤去した「証拠」だって主張したんですね。


2015年になって「べリングキャット」はロシア国防相が提示した衛星写真と、同じ地域同じ時間のものを入手して、ロシア国防相が砲台の撤去の証拠として提示した衛星写真が、明らかに古いものであることを示したんですね。
ロシア国防相のウソをあばいたわけです。


さらに「べリングキャット」は、マレーシア航空機を撃墜したのはロシアの第53対空ミサイル旅団の砲台で、シリアル番号は332だっていう詳細なエビデンスを公開します。


2017年には砲台の配備、設置を監督していたロシア軍の高官、ロシアの工作員たちが「ウラジーミル・イワノビッチ」という名前で呼んでいた人物は、ロシア国境警備隊の第一副隊長「アンドレイ・イワノビッチ・ブラカ大佐」だって特定しちゃったんですね。

 

 

 


デジタル情報を駆使したこのエビデンスの提示は、ロシアばかりじゃなくって、世界中に衝撃を与えました。


しかも「べリングキャット」が情報分析に使っているデータは、全てが一般公開されているものばっかりなんです。


この「べリングキャット」の活動は「オープン・ソース・インテリジェンス」あるいは「オープン・ソース・インベスティゲーション(公開情報調査)」って言われています。


どっちも略字は「OSINT(オシント)」


これまでの、通信、電磁波、信号等の「傍受」を利用した諜報活動を「シギント(SIGINT)」


スパイ活動をメインとした諜報活動を「ヒューミント(HUMINT)」


っていうのに対して、秘密情報に頼らない方法として革新的なものなんですね。「オシント」です。


「べリングキャット」はこうしてマレーシア航空機撃墜の犯人を特定したのと同様の方法で、「ISIS(イラクとシリアのイスラム国)」メンバーの居所を特定したり、シリア、アサド政権がサリンを使った証拠を示したり、トランプ大統領の時の議会襲撃を予言したりしています。


もう確固たる信頼を得ているっていえると思います。


そして何と言っても情報特定の力量を示したのがロシアの暗殺、暗殺未遂事件なんですけど、長くなりましたので、それはまた次の機会に、ってことで、よろしくお願いいたします。


ただね、こういう技術、オタクパワーをロクでもない方向に活用させているヤツなんかも出てきていて、ウェブに公開された女の子のスナップショットの黒目に移っている風景から、その場所を特定して、ストーカー行為に及ぶっていうような事件もありました。


こういう、イカンよ! っていう使い方は困りもんですけど、そんなことが出来ちゃう世の中になっているっていう受け止め方をしておくって、重要かもですよ。ネコじゃなくたってね。

 

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