<文字落語 ワーッとバアーっとコロナを吹っ飛ばしてくれ! の一席>
マルちゃん棒さんシリーズでございます。
今回から『Iconpon - 無料アイコン素材』さんのアイコンを利用させていただいて装いも新たに、ってことにいたしましたんで、なおひときわお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
なんですか、大きな街の繁華街では緊急事態宣言明けからギャーギャー騒ぎまくっている酔っ払いが顰蹙を買っているなんて話も聞こえてまいりますが、皆様方にはいかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。
マルちゃん棒さんの暮らしております街は、いたって静かなままでございまして、二人も “自粛生活” からなかなか抜け出せてはいないようでありますね。
土曜日の夕方、まだ明るい時間ですが、棒さんが1人、キッチンのテーブルでスマホに見入っております。
テーブルの上にはストレートグラスに琥珀の液体。隣りに大きめのグラスでチェイサーを並べまして、チビチビと “宅呑み” を初めておるところですね。
銘柄は “カナディアン・クラブ”
甘味の感じられる、すんなり呑めるウイスキーでございましてね、棒さんのような酒呑みはもっぱらストレートでいくことが多いです。
でもまあ、オマジナイといいましょうか、マルちゃんからもずっとウルサク言われ続けておりますもんで、ちゃんとチェイサーを用意しているんであります。たっぷりの氷に最近のお気に入り “セブンのレモン炭酸”
一緒に買ってきた “さわらの西京焼き” には割りばしがのっておりますが、棒さん、レンジでチンしたんでしょうかね。
ンまい酒さえあれば他はどうでもってタイプですから、どういうことをしているんだか怪しいもんであります。
けっこう長い時間スマホに見入っている棒さんでありますが、みなさん!
スマホ、見るとき片手で持って、こう、胸の前あたりで、首を前のめりにして見ていませんか?
ガクッとこう頭を垂れた格好で。
これね、誰が言ったか知りませんが、って誰でも知っているあの人が言ったんですけれど “スマホっ首” っていいましてね、頭痛肩こり樋口一葉。首の凝りにもつながって、すごく身体に悪いそうです。
せめて目の高さに近いところに固定しておくのがイイそうです。
それを何より証拠には、棒さん、さっきから何回も首を回したりしておりますですよ。でもまあ、人間、夢中になっちゃうと子供も大人もありゃしません。ガックリうなだれ首で見続けているんですねえ、良くありませんよ。
と、どうやらそこへマルちゃんが買い物から帰ってきましたようで、
ああ疲れた。なんだかんだ言ってもやっぱり、人出は増えてる感じだわね。レジが非接触型とかになってから効率悪くなった気がするわ。何見てんの?
膨らんだエコバッグをテーブルに置きながら、棒さんのスマホを覗き込みます。
棒さんは画面から目を離さずぼそっと、
カツラブンプク
何回見てんの? この前からずっと桂文福じゃないの
ユーチューブ、いっぱいあんだよ
まあね、あたしも好きだけどね。賑やかでイイわよね
関東にもいちぶね、文福ファンがいますよ。一部ね。
文福の“福”の字ですが、ブランデーのブじゃなくって、プレゼントのプと読むんだそうでして、どうでしょうねこれ、昔話の「文福茶釜」の読み方もこの2通りございますからね。
ま、ご当人の、桂文福師匠の受け継がれた読み方ってことなんでございましょうね。
もしかするとあれですかね、関東ではブランケットのブ、関西ではプレッシャーのプって読む習慣があるんでしょうかね。
とにかくワーッとバアーっと、何でもかんでもワーッとバアーっとヤカマシイ人で、いやいや賑やかな芸人さんでして、相撲甚句なんかをイイ声で聞かせてくれます。
一区切りついたところなのか、棒さんがスマホをテーブルにおきましたよ。
そういえばこの前、気にしてたのあったじゃん
え、気にしてたこと? あたしが?
ほら、闇営業
ああ、あれね。突然ポツンって感じで入れてくるじゃない、闇営業って言葉
何が面白いのか、さっぱり……
分からないわよねえ。ディスってる感じでもないでしょ
カラテカとか宮迫とかをディスッたりする落語家じゃないよ。あの人は
だからさあ、何なの闇営業って
桂文福って落語家さんはですね、出囃子に “月光仮面は誰でしょう” を使っておりましてですね、ふざけた雰囲気を醸し出しながらも、バカ丁寧なお辞儀をして、話し始めるんですが、とにかく、口を開いたらもう止まりませんよ。
大向こうにウケなくたって、自分でワーッとバアーっとやる。
噺のタネも次から次。全然違う話題でもワーッとバアーっと途中で入れて、切れ目なく続けていきます。
声の芸、喉の芸です。歌謡曲なんかも一節二節入れながら、ワーッとバアーっとやる。
ネタの面白さ、話の巧さで見せる聞かせるタイプじゃないんですね。勢いです。ワーッとバアーっとです。
声の質がね、なんと言いますか、大道芸の響きなんです。そういう種類の “美声”
落語家として高座でやってるからイイようなものの、その辺であの声をあげてワーッとバアーっとやられて日にゃあ、パトカーを呼ばれちゃいますよ。
とにかく響き渡るワーッとバアーっとなんです。ウルサイ、といえるのかもしれません。
そのワーッとバアーっとの中に、ギャグをバンバン入れてきます。はい。面白さじゃないんです。勢いで入れてきます。
で、その中にマルちゃんが気にしている “闇営業” って言葉があるんですね。ボソッと。脈略があるのかないのかさえ、マルちゃんには分からない。
で、それを棒さんが調べたようなんですね。
闇営業って、何かのギャグなの?
いや、そうじゃない
もったいぶるな、コンニャロ!
じゃ、やっぱりディスってる?
ディスってるとすれば、自分自身をディスってる
はあ?
丸ちゃんも自分でカナディアン・クラブのソーダ割りを作って、棒さんの向かいに陣取りました。
どうもね、元祖みたいなんだよ、闇営業の
桂文福が闇営業の元祖?
いやあ、これはですね、棒さんの調査も中途半端だと言えるでしょうねえ。
そもそも闇営業なんて、昔の芸人さんにとっちゃ、全然悪いこと意識、ないことだったでしょうからねえ。今の桂文福さんが元祖と言い得るかどうかは判りません。
吉本興業の芸人さんたちによる反社会的勢力との闇営業というのは、まだ記憶に新しいところですが、あれは2019年の出来事でした。
問題となった闇営業自体は2014年の暮れのことだったそうですが、桂文福さんが“闇営業”ということで所属の吉本興業を解雇されたのは1979年のことみたいです。
なにせ古いことですので実際にどういう“闇営業”だったのか分かりませんが、その後2010年に吉本興業に復帰して今の活躍となっていますね。
そうか、伝統芸みたいなもんなのね
その言い方はダメでしょ
そうね。でも、2,3年前のあれがあって、それも含めて自分のギャグにしてるのねえ
ま、そゆことだね。奥さんにはB福って言われてる
え? 奥さんも出てきたの?
いや、奥さんのはブログ
“文福のヨメ物語” ってのをやってらっしゃいますようで。夫唱婦随、というわけでもないのかもしれませんが、いろいろ波風を乗り越えて、一緒にやってきているんでございましょう。
ま、そのギャグの効能はどうあれ、芸人さんも高座に上がる機会が減って汲々としているという話も聞きます。
なんかね、コロナ禍のふさいだ空気をね、桂文福さんのワーッとバアーっとで、一気に吹き飛ばしていただきたいところです。
エネルギーですよ。とにもかくにもパワー。
マルちゃん棒さんも、桂文福さんのワーッとバアーっとで、知らず知らず、元気をもらっているんだと思いますね。
無駄に大声のワーッとバアーっとですが、どんどん響かせてくれる場が早くやって来ますように、世の中広く御祈念させていただきまして、おあとがよろしいようで。
<マルちゃん棒さんシリーズ>
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