< 嫌いな人の少ないメニューだと思いますが そんなにしょっちゅう食べる感じでもないでしょかね >
梅雨前だっていうのに、真夏日とかいっちゃって、暑いってだけでヘトヘトになった日でありました。
縄のれんをかき分けて、いつもの居酒屋さんに入っていくと、このところ頻繁に顔を合わせるセーコちゃんがカウンターから手招きしています。
「あたしも今、座ったばっかり」
どもお。
店内のテーブル席には誰もいませんでした。カウンターもセーコちゃんとわたしの2人だけ。
夜の8時ぐらいでしたけど、珍しく空いておりましたですねえ。
女将さんが冷たいおしぼりを持ってきてくれます。
「きょうはねえ、早い時間もお客さん3人だけだったのよ。どうしちゃったんだろうねえ」
ま、そういう日もあるでしょねえ。
と、大将が、
「きょうのお勧めはね、ロールキャベツ。セーコちゃんのリクエストでね」
「あのねえ、大将ねえ。ロールキャベツは寒いときに出してねって言ったのに、なんで5月になってからなのよ。ま、好きだから作ってくれたのは嬉しいんでけどさあ。食べちゃうんだけどさあ」
「でもまだ、時々寒くなるでしょ、今年」
「そうよねえ。今年は5月から夏日になったり、その次の日が寒くなったり、お天気は忙しいわよねえ」
「きょうは昼間、かなり暑かったよお」
「暑い日のロールキャベツが旨いんだよね、また」
「3人のお客さんにも、そんなこと言って勧めたんだけど、関心なかったみたいなのよね。居酒屋メニューでロールキャベツって合わないのかしら」
「そんなことないって、女将さん。ここに何人前も食べちゃう女がいるから大丈夫。ぱうすさんも食べるでしょ、好きでしょ、ね」
あのね、人の好みを勝手に決めちゃいかんでしょ。嫌いじゃないですけどね。
ってなことを言いながらホワイトボードを見ますとですね、一番上に「特性ロールキャベツ」って書いてあります。
で、その下に「コンソメ」「クリームシチュー」「カレー」「和風」ってあります。
和風?
「あれですよ、おでん出汁で煮込んだやつ」
あ、そっか。おでんにロールキャベツ、ありますねえ。
にしても、なんでまたこんなに、種類、4つも作っちゃったの。
「この人、なんだか凝っちゃってね、和風ロールキャベツだけはあれですよ、かんぴょうで巻いてあるの」
「やりだしたら止まらないっていうね、大将のイイところよね」
「イイんだかワルイんだか」
「イイところですよお。いっぱい種類があるのって嬉しいですもん。それにしてもクリームシチューって食べたことないなあ」
大将と目が合っちゃいました。
「セーコちゃん、新宿のアカシアって行ったことない?」
大将の怪訝な問いかけに、セーコちゃんはポカ~ンとしています。
しばらく新しいお客さんも入って来なかったんで、4人でしばしロールキャベツ談義になりました。
セーコちゃんの前には、ビールジョッキとクリームシチュー・ロールキャベツがで~んと出されています。大きめなのが1貫ですね。
わたしもいただきましたが、アカシアのとは違って、かなりスパイシーでした。
ま、酒のアテですからね、これはこれでオッケーな味わいでした。
世代にもよるのかもですけど、昭和の後半に、もう大人だった東京近辺の人は、たいてい知っているんじゃないかっていうぐらい有名だった洋食屋さん、アカシア。
どですか? 東京近辺のそこそこの年齢の方々、知ってますよね?
そもそも新宿に行かなくなってますし、アカシアへもこのところずっと行っていませんけれど、今も健在みたいです。
「ロールキャベツシチュー定食」が安くて旨いって評判は、ビンボニンの間ではかなり高くって、1回は食べてみたいっていうメニューになっていたんですよね。
今もそういう商売形態なのかどうかは知りませんけれども、新宿駅からほど近い洋食屋さんです。
皿に盛られたごはんとマッチしたシチューのロールキャベツ定食を数十回いただいておりますですねえ。郷愁のメニューです。
アカシア以外でロールキャベツシチューって食べたことがなかったですけど、マネッコした大将のスパイシーシチュー・ロールキャベツも旨かったです。
でもこっちのは、ごはんじゃなくってバケットの方が合うかもですねえ。
「あ、バケットあるよ。焼きますか」
いや、今はイイです。
中ジョッキ3杯目のセーコちゃんが和風ロールキャベツを満足そうに頬張りながら、言いました。
「そういえばさ、ロールキャベツ男子、ロールキャベツ女子っていうのあったよね」
なんすか、それ。
「見た目は草食系なんだけど、中身は肉食系っていうやつだよお」
なるほど、外見と中身ってことですねえ。
「それで、攻略法がいろいろあってね」
攻略法。。。どうでもイっす。
ロールキャベツを食べること自体、かなり久しぶりな感じでしたが、わりとしょっちゅう食べるって言っていたセーコちゃんは、いろいろ感想を言いながら全種類制覇してました。
大将も喜んでいましたです。
わたしも、食べたことのない「カレー」をいただいてみました。
カレー鍋風のゆるいカレーの中に鎮座ましますロールキャベツ。とろけるチーズをかぶせられて、上からバーナーで炙って完成。
予めブイヨンで煮込んであるロールキャベツとカレーとチーズ。絶妙ですね。旨かったです。
クリームシチューとカレーのロールキャベツ、2貫でけっこうボリュームありましたけど、セーコちゃんは4貫いってますからね。
ビバ! ロールキャベツ!
発祥は1世紀ごろのトルコらしいです。
世界三大料理の1つ、トルコ料理の代表的、歴史的なメニューがロールキャベツなんだそうですねえ。
っていっても、ロールキャベツっていう名前じゃなくって「ドルマ」って言うんだそうです。
ブドウの葉っぱで肉、あるいはごはんを包んでスープで煮込む。
1世紀ごろから、なんだかしっかりした料理らしい料理って感じがします。
1世紀っていったら、卑弥呼の前ですもんね。そのころの日本人はどんなのを食べていたんでしょうね。
にしても、ブドウの葉っぱって食べられるんですね。
寡聞にして知りませんでしたが、日本でもブドウの葉っぱを使った料理って、どこかで出しているんでしょうかね。
長野県、山梨県とかでもブドウの葉っぱを使ったメニューっていうのは聞いたことないですけど、あるのかもですね。
にしても、1世紀ごろのトルコの肉とか、米って、どんなんでしょう。
けっこう興味ありますけど、なんか、ゲゲーっていうのが正体だったりするかもなあっていう懸念も、ちょっとだけ、ありますかねえ。
なにせ1世紀なんですからねえ。って、知らんけど。
それでもって、トルコのドルマがヨーロッパに伝わったのは15世紀ごろ、ってことらしいんですけど、ずいぶん時間がかかってますよね。なんででしょ?
ヨーロッパに伝わった頃から葉っぱはブドウからキャベツに主役を譲ったみたいですね。
ヨーロッパにはワイン生産の盛んな地域が多いですから、ブドウの葉っぱはどこにでもある素材ってことになるのかもですけど、キャベツの葉っぱの方が、圧倒的に効率が良さそうではあります。
ちなみにロールキャベツっていうのは日本だけで、英語ではキャベツロールって言うんだそうですね。
ウクライナのロールキャベツ、キャベツロールの具は米が多いんだそうです。
家庭ごとの味付けをしたごはんを包んで、家庭ごとのスープで煮込むんでしょねえ。
個人的にはごはんのロールキャベツって食べたことないですけど、キャベツの葉っぱで包んだオジヤ、みたいな感じだとすれば、それはそれでいけそうな感じもしますね。
豆腐をメインにするロールキャベツもあるんだそうですけど、これもまた食べたことないです。
あります?
豆腐のロールキャベツ。
豆腐と、ニンジン、ゴボウの粗みじん、ひじきなんかも加えると、がんもどきっぽい具材になって、おでん種としてのロールキャベツは、むしろ豆腐の方がいけちゃったりするかもですよね。
アイディア次第で、まだまだいろんなバリエーションがありそうなロールキャベツです。
酒のアテにするのも悪くないってことが分かりましたけど、やっぱり、寒い季節の方が合いそうに思います。
たかがロールキャベツ、されどロールキャベツ。
新宿のアカシア、今度また行こうと思います。
ひまわりの国、ウクライナに早く平和な日常が戻って来ますように。。。