< Googleの「Bard」 検索エンジンじゃなくって アンサーエンジンっていう考え方 >
ChatGPTの話題が大きく取り上げられるまで、AIについて特に関心を持っていなかったんですが、研究機関だとかのクローズドな環境から、インターネットっていうオープンな世界での利用が現実味を帯びてきたことを意識せざるを得ない事態になってきました。
正直な感想としてChatGPTの一般公開はフライング気味なんじゃないかって思っていたんですけど、興味を持って利用する人の数がとんでもなく多かったっていう事実は、巨大テクノロジー企業各社にとっても衝撃だったんだろうっていうことが容易に想像できます。
2022年11月30日にプロトタイプとして公開されたChatGTPが、たった2ヵ月でアクティブユーザー数が1億人に達したことはChatGPTショック、AIショックとさえ言えるレベルなのかもしれません。
1億人っていう凄い数字に達するのにかかった期間は、Instagramが2年半、TikTokですら9カ月だそうですから、2ヵ月っていうのは脅威的ですね。
興味のレベルが違います。
インターネットユーザーが何を求めているのか、っていうのはテクノロジー企業のマーケティングには欠かせない重要なファクターでしょうからね。
AIってどんなものなの? ただで使えるモノなら使ってみたい、っていう欲求はたしかにネットユーザーにはあると思います。
で、使ってみた結果は? っていうと、そういう使い勝手に対する調査とかはこれからなんでしょうね。
っていいますか、まだ正式リリースって言ってませんしね。
ただ、あまりにインターネットでのChatGPTに対する反響が凄かったんで、Google、Microsoft、meta(Facebook)の各社が前のめり的にAIの取り込みを宣言した、っていうことになっているわけですね。
2023年2月6日、Googleは対話型AIの「Bard(吟遊詩人)」を発表しました。
ランボーかスナフキンかってところでしょうか。
Googleが開発してきた「LaMDA(Language Model for Dialogue Applications:対話アプリケーション用言語モデル)」の簡易版っていうことなんですけど、開発計画の中で、このタイミングで発表する予定だったのかどうか、ちょっと疑問も出ているみたいです。
実際、発表した時点では「信頼できるテスターたち」に使ってもらって、それから一般公開に踏み出すっていうことでしたから、なんだか、急遽、って感じもします。
「信頼できるテスターたち」っていうところが面白いですね。
悪意のある記事を参照して、学習しちゃうととんでもないことになるっていうのは周知の事実ですからね。
その対策が機能するのかどうか、かなり重要です。
どういう形式で一般公開されるのか、2023年3月11日時点でまだ具体的な発表はないみたいですけど、「Bard」は検索エンジンじゃなくって、アンサーエンジンになるっていうことです。
アンサーエンジンっていうプレゼンは巧いですね。
でも結局、機能的にはChatGPTと一緒な感じもします。
ではあるんですが、検索エンジンとして圧倒的なシェアを占めているGoogleですから、カバーできる範囲も圧倒的なのかもしれませんね。
さらに、2023年初春時点でChatGPTが学習し終えているデータは2021年までなのに対して、「Bard」は常に最新のデータを取り込めるんだそうです。
「信頼できるテスターたち」が、悪意ある記事やフェイク記事に対して「Bard」の信頼性を保つべく、いかに巧くシミュレーションテストが出来るかにかかっているんでしょうね。
ただ、商売的にかなり急いでリリースしたい気持ちになっている可能性もあります。
対話型AIっていえばChatGPTだよね、っていう意識が市場に刷り込まれてしまうと、そのイメージを後から刷新するのはかなり難しいでしょうからね。
GoogleにもAIがあるんですよ、って素早く発表することが大事で、実際の一般リリースは慎重になるかもしれないです。
でもまあ、とにかく「Bard」の発表をGoogleがした翌日、2023年2月7日、今度はMicrosoftが自社の検索エンジン「Bing」に対話型AIを搭載するって発表したんですよね。
Microsoftが「Bing」に積み込む対話型AIっていうのは、ざっくり言っちゃえばOpenAIが開発したChatGPTなんですね。
OpenAIとMicrosoftの関係性っていうのは、外野からは見えない部分が大きいんですけど、OpenAIっていうのは、精確にいうと「OpenAI LP」っていう会社組織と、「OpenAI Inc.」っていう非営利法人の人工知能研究所なんだそうです。
その「OpenAI LP」に10億米ドル(1400億円弱)投資しているのがMicrosoftとBrown Companiesっていうスリランカのブロードバンドサービスの会社なんですね。
で、ブラウザの「Bing」にChatGPTが積み込まれるとなると、ChatGPTがインターネットの中に2つ、っていうことになっちゃいますよね。
投資しているっていうことで、いろいろ権利問題とか複雑な事情がありそうで、今後、訴訟問題とかに発展したりとか、ん~、大丈夫なんでしょうかね。
OpenAIのChatGPTの基本プログラム「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」のバージョンは3.5。
Microsoftが「Bing」に乗せるGPTのバージョンは4.0なんだそうで、この先、OpenAIとMicrosoftの棲み分けがどうなっていくのか、なんだかキナ臭い感じもします。
Google、Microsoftときて、2月24日、meta(Facebook)が、大量情報の要約、コンテンツ生成の可能なAI、20言語に対応した大規模言語モデル「LLaMA(Large Language Model Meta AI)」を発表しました。
LLaMAは、研究者、政府関係機関、市民団体、学会に限定して提供されるAIなんだそうで、インターネットの一般ユーザーには、今のところ直接の関係はなさそうですけど、metaとしても、GoogleやMicrosoftに後れを取るわけにはいかないっていう、強迫観念みたいなものがあったのかもしれませんよね。
まだまだ海のものとも山のものとも、っていう段階のAIなんですが、フライング気味であったとしてもインターネットの中に入ってきたことは事実ですから、2023年中に、webのインターフェイス全般に画期的な変化が起きてくることは充分に考えられます。
もちろん、OpenAI、Google、Microsoft、meta以外のテクノロジー会社、スタートアップ企業もAIに取り組んでいるわけですから、既存の大会社を凌駕するところが出てこないとも限らないネット社会の2023年です。
ただ、こうしてAI関連の情報を拾ってみますと、英語ばっかりになってしまいますね。
まあ、コンピュータ関連のことですから、英語圏以外の国が開発したとしても、英語表記にならざるを得ないっていう事情もありそうですけど、決定的にアメリカです。
それでどこにも悪いことはないんですけど、日本の技術者、絡んでいないんでしょうかね。
ChatGPT、Bard、Bing、これまでの検索エンジンとは、共存していくのか。全く別のインターフェイスで発展していくのか、2023年が一般ユースのAI元年になるのかもですねえ。
脳みそをAIに乗っ取られないようにするのが肝要でありましょうねえ。