< 市販のカレールウで普通に作ってちょうだいよって思っちゃうお店の不味いカレーの不思議 >
居酒屋さんとか焼き鳥屋さんが、店先にお手製の三角看板を出して「ランチメニュー」なんてね、やっている店舗って珍しくないですよね。
焼き鳥丼、ランチビールセット! なんてやってますよ。
コロナ禍になって、より一層増えたような感じもありますが、みなさんの街、ま、オフィス所在地ってことになるかもですが、どうですか、増えてます?
2021年ぐらいからは、店舗自体を閉めちゃうっていうのもありますからね、けっこう厳しい商店街事情になっているかもしれないですけどね。
夜の売り上げが思うように上がらないんで、じゃあ昼も開けて、少しでも売り上げを、って考えるのは当然なんだろうなあとは思うんですが、ランチに何を出すか。そこが考えどころでしょう。
潔い店なんかは、夜の〆にカレーを出していたんで、昼の看板もランチカレー! 一品勝負です。
夜にちょこちょこ行く店。
まん延防止等重点措置が解除されてからは、昼呑みカレーセット、1,000円。なんてのをやってます。
セットって言ったって、小鉢レベルの葉っぱサラダとワンドリンク。
カレーの味は、まあ、普通です。きゅうりのキューちゃん付き。
どうなの? ランチ、お客さん来る? って聞いてみますと、ん~。ってな感じみたいです。
決して不味くはないんですが、不思議なもんで、昼向きっていいますか、ランチの味じゃないって言われたそうです。飲食商売、難しいんでしょ。知らんけど。
その店で吞んだ後にカレー、食べたことなかったんですが、ランチの味って言われてもねえ。
で、場所は変って、この前、久しぶりに市ヶ谷へ行ったんですね。けっこう前に職場だったエリアです。
けっこう街並みも変わっていて、昔からある店もありましたけど、ビル自体が建て替わっているっていうのもあって、店舗の顔ぶれもかなり馴染みのないものになっていました。
街は常に変わりますね。
で、当時のことを思い出したんですが、ランチ営業をやっている居酒屋さんと、焼酎バーがあったんですね。
2軒とも夜に入ったことのない店なんです。
通りに面したところにあるのが焼酎バーでカウンターのみの小さな店。
通りから北側に路地を折れてすぐを、半地下に下りたところにあるのがテーブル席だけの居酒屋さん。
テーブルが6つでしたから、こっちもそんなに大きな店じゃないです。
ま、市ヶ谷辺りで床面積の広い店舗って、ほぼ無いですからね。
この2つの店は100メートルも離れていない距離なんですが、共通していたランチメニューが「田舎カレー」だったんですよ。
今回行った時には両方とも違う店になっていたんですけど、妙に記憶に残っている「田舎カレー」
初めて聞いた名前でしたね、田舎っていう名前の付いた料理って、他に何があるでしょう。
田舎そばっていうの、ありますね。田舎うどんっていうのもありました。
そばもうどんも冷たいのはなくって、温かい麺料理で、けんちんのような感じだった記憶。
根菜類が多くって、ざくざくと大ぶりに切ってあるのが特徴といえばそうなるのかもです。
そういうのを「田舎」って表現しているんでしょうかね。
半地下の居酒屋さんの田舎カレーは、たしかにざく切りしたじゃがいも、にんじん、たまねぎ、豚コマのカレーでした。で、シャバシャバ系。
デッカイらっきょうが3個。
ふううん、こういうのが田舎カレーなのかあ、って思ったんですが、これがですね、笑っちゃうぐらい不味かったんです。ヒドイ! 味見したのか!?
市販のカレールウで、普通につくっても、これよりは必ず旨く出来上がるんじゃないの。ふんとにもう。
らっきょうは旨かったんですけどね。
たぶんおそらく、夜のメニューにらっきょうはあってもカレーはないんでしょうね。
ごはんの炊き加減っていうのは日によって違っちゃうのは仕方がないとして、その日はたまたまハズレだったのかもですけど、ルウだけじゃなくってごはんもペケだったんですよねえ。
カレーを不味くしちゃうのって、むしろ別の才能なのかもなあって思いながら、よくこんなんでメニューに出しているなあって、笑いがこみ上げてくるほど不味い「田舎カレー」なんでした。
店側の意識として、市販のルウだなってすぐ分かっちゃうのは避けようっていうのがやっぱりあるのかもですし、出来上がったカレーの味は、なんだかなあっていうレベルになっちゃって、どうしようか、って考えて、その結果「田舎」っていう言葉をくっ付けた、のかもなあって感じです。
でもねえ、「田舎」っていう言葉は不味さのカモフラージュにはなりませんし、じゃがいも、にんじんを大きめに切っても「田舎」っていうような大らかさは出せていませんでした。
明確にハズレ。わっはっは!
で、もう1軒の焼酎バーです。
歩道にちょこんと置いているメニュー看板には「ランチ始めました。特製 田舎カレー」
それだけが大書きしてありました。
ドアを入って奥に長い、カウンターのみの店舗です。
夜のメニューも、アテにはチカラを入れていないタイプのように思えますね。そもそも厨房らしい厨房がみあたりません。
でも、ランチです。田舎カレーです。特製のね。
例のステンレス製の銀の皿で出てきました。ドロッとしたタイプの茶色系のカレー。
特に具材が大きかったりはしていませんね。皿の脇に真っ赤っかのきざみ紅ショウガ。
カレーに紅ショウガねえ。ふううん。ま、悪くないのかもですけど。
水の入ったコップにスプーンを頭から突っ込んであります。この時点でかなりガッカリです。
さてどうでしょう、焼酎バーのランチカレーです。
なっ、なにこれッ! カレーになってないっすよ。
小麦粉に絵の具で色を付けて混ぜただけ、みたいな味。スパイスなんて何も感じないし、辛さもないです。
腹の立つ不味さ。
こうなっちゃうと、じゃがいもだってにんじんだって、サイコロカットしてある豚肉だって、なんだかイミテーションなのかって思えてきちゃいます。
この時代に反則だってほど真っ赤っかな紅ショウガは、まあ、紅ショウガでしたけど。
にしても不思議なのは、旨いか不味いかで言えばどっちも不味いんですけど、その不味さにも違いがあるってことですね。
笑っちゃうほど不味い田舎カレーと、腹が立つほど不味い田舎カレー。
どの辺で線引きをするかっていうのは分かりませんけれど、決して店の雰囲気だとか、店側の接客態度だとかで感じたことじゃなくって、純粋に味です。田舎カレーの味。
田舎っていう言葉の捉え方って、人によって違うと思いますけど、居酒屋さんの田舎は、ま、一応、のどかな感覚に寄っているって言えないこともない、って感じでしたけど、焼酎バーの田舎は、なんかね、バカにするときに言う田舎って言葉のニュアンスを感じましたね。
どっちもね、結果として上手くいかなったカレーの味だけど、納得するまで改良しようとしないで、せっかく作ったんだから出しちゃいます。田舎っていう言葉で胡麻化しちゃいます、ってとこなんでしょうかね。
カレーは簡単ですって言いますけどね、ナメちゃいけませんですよ、ってことです。
どっちの店も何をベースにして作ったカレーなのかは知る由もありませんが、オリジナリティーを出そうとして失敗した結果なんでしょうね。
ヘタに欲張ってしまったこと。それと、自分の腕とカレーという料理を天秤にかけて、根拠のない自信を持ってしまったこと。
なんかね、がっかりだったんですけど、このダメダメな2つの田舎カレーはコロナ前の経験です。
ランチ営業もやりましょうっていうので、とってもうまくいっている店舗も多いですし、コロナ禍では売り上げの確保に必須な営業形態になっていて、新たにチャレンジしている店もまた多いですよね。
カレーぐらいは簡単に作れるよ、っていうのはホントのことではあるでしょうけれど、それはカレーのオリジナルを作るが簡単だっていうこととは別次元。
材料の仕入れが夜の営業用から外れてしまうと、コストばかり増えて、売り上げにはつながらないってことになってしまって、閉店に追い込まれてしまう。そういう話もよく聞きます。
コロナ禍が沈静化するのはまだ先かもしれないですけど、そこまでなんとかね、保っていって欲しいですね。
たとえ、ランチメニューがダメダメな店でも、夜のメニューがオッケーであればきっと客は戻って来ますからね。
田舎カレーから何年も過ぎましたけれど、冷静になって考えてみますと、ハッキリと不味いカレーっていうのが、そもそも珍しいんですよね。
不味ければ、腹立たしい方向に感情は動くんですが、笑っちゃうほど不味い、っていうのもまた一段と珍しいってことですね。
貴重な体験、と言えないことはない、のかもですけど、ウレシクはないですね。ん~。
なんだこりゃ! って笑っちゃうほど不味いのって、何か食べたことあります?