< ピリ辛汁なしおやつ麺から 日本でちょっと甘めになって しっかり1食になった麺料理 >
担担麺って登場して来たなあって思ってたら、あっと言う間に担担麺ファミリー勢ぞろい! みたいになってますよね。
担担麺に限らず、メニューっていうのはどんどん変化していきますからね、なにがホンモノ、とかいっても、そんなに意味のあることじゃないんだろうと思います。
担担麺のルーツは、中国。汁なしらしいです。で、ここですぐ思い浮かぶのが「ジャージャー麺」
「汁なし担担麺」と「ジャージャー麺」
違う? それとも一緒? 日本語読みと中国語読み、とか、そゆこと?
まずは担担麺から。
根強い人気の担担麺ですが、その発祥はハッキリしていて、中国の四川省。
ある説によれば、1841年ごろ、と明確になっているようです。
1841年といいますと、日本は天保11年。水野忠邦による「天保の改革」が始まった年です。中国は「清」の時代ですね。
担担麺を作り出したのは四川省自貢市の「包包(ポウポウ)」というあだ名の男だそうです。凄くハッキリ言われているわりには、本名じゃなくってあだ名で伝わっているっていうのが面白いところです。
しかもポウポウの作った麺だったら「ポウポウ麺」でイイじゃん! って思うんですが、中国語でも「擔擔麪(ダンダンミェン)」
世界はウレシタノシの不思議で溢れているんですねえ。
自貢市は四川省成都の南、50㎞も離れていない工業地帯で、古くは「塩」を産出して栄えた街。金持ちが多く住んだ街だそうです。
ま、歴史的背景は詳しく知りませんが、金持ちの多い自貢市に住んでいたポウポウが、天秤棒を担いで成都で売り歩いたのが最初だということです。
金満家向けの食べものじゃないってことですかね? 担担麺って。
ゆったりとした生活リズムの自貢市ではなく、あくせく忙しく立ち回っている成都を商売の場所に選んだのには、やっぱりちゃんとした理由があるみたいです。
ポウポウが考え出した「ダンダンミェン」は、中華ファストフードとして成都の労働者に支持されたようです。
「ダンダンミェン」は汁なしです。
そりゃあねえ、ポウポウは棒手振りですからねえ。天秤棒担いで、そこそこの距離を行くわけですから、汁は持ち運べませんよね。タレにからめてササっと食べる。汁なしの麺。
現在の日本ではパンダの街として知られていますが、絹の都として栄えた四川省の省都、成都です。蚕の面倒をみたり、絹の売り買いで忙しく立ち働いていた人々に、お気軽な腹ごしらえとして「ダンダンミェン」は大人気だったそうです。
とりあえずの朝飯。ちょっと小腹に入れておく。そんな感じの中華ファストフード。
そういうファストフードの需要っていうのをポウポウは見越していたってことでしょうね。19世紀に。
「ダンダンミェン」のボリュームはごはん茶碗程度で、少なめ。かん水を使わない白い麺で、タレの味付けは花椒油、しょう油がベース。豚肉のそぼろをふりかけて、まぜまぜして食べる。
花椒油(ホァジャオユ)っていうのは痺れ系のラー油です。なんたって四川ですからね、辛いんでしょうね。
今でも中国では「ダンダンミェン」汁なし担担麺が人気だそうです。
その「ダンダンミェン」を日本流にアレンジしたのが、「【麻婆豆腐】の旨さは マー、ラー、タン、スー、ネン、シェン、シャン なにそれ?」でも登場いただきました、陳健民さん、その人であります。
「食は広州にあり」と言いますけれど、どうもね、インパクトとしては四川の方が強い感じでしょうか。広州料理っていわれて、ピンとくるものがないです。あります?
チャオチャオおばちゃんといい、ポウポウといい、四川って凄い人が居るもんです。でもって陳健民さんも四川の人ですもんね。パンダも含めて日本にとってありがたい土地ですよ、四川って。知らんけど。
「ダンダンミェン」は陳健民さんによって、日本の「担担麺」になったわけですが、ラー油、芝麻醤、白ごまのスープがだいたいの基本形でしょうかね。そんなに辛くなくなりました。
ま、もちろん、激辛担担麺をうたっている店もありますけれどね。
今となっては基本形からどんどんアレンジされて、いろんな担担麺が楽しめます。
そもそも担担麺自体がアレンジされたラーメンなんですもんね。変化は必然と言える部分もありそうです。
黒ごま系の担担麺もありますし、麺のバリエーションも様々。上に乗っける肉そぼろも、豚とは限りませんしね、味付けも色々です。
前に横浜で「パーコー担担麺」食べたことがあります。パーコーの衣が赤いんですね。めっちゃ辛い。真っ赤なスープの中に真っ赤のトウガラシが3本。肉そぼろも赤い。
アホか! ってなもんでしたが、旨かったのでした。汗、ダクダク。おしぼりで口を拭くと、おしぼりも赤かったのでした。
スタンダードな担担麺には青梗菜が乗っかってるのもけっこう多いですよね。
担担麺は大好きな料理ですが、実は麺そのものは、どういうものでもモンクはないんですね。本場物としてかん水を使っていませんだとか、そういう自慢に食指は動きません。普通の中華麺でオッケーです。細くとも太くとも、縮れ麺でもストレートでも、イイです。
日本の担担麺の醍醐味は、なんといってもスープでしょう。濃すぎず薄くなく、濃厚な甘辛さ。胡麻です。
肉そぼろとか青梗菜だとかは大いに残しつつ、スープも遠慮しながら麺を平らげます。
そして、麺がなくなったどんぶりに「ごはん」をごそっと入れます。
即席担担おじや、「担担ねこまんま」です。お行儀が、などと言うなかれ。これがサイコーなんです。
スープが旨い場合にしかシアワセを味わえません。そこそこのスープではダメです。
ま、ボリューム的には半ライスぐらいが適当だとは思いますが、お好みですね。
スープのボリュームとの兼ね合い。
こうして日本の担担麺は、作る方にも食べる方にも、自由な空気があるように思いますが、いつの頃からか「冷やし担担麺」なるものも出てきましたね。
作り方は一緒。ただスープを熱くしないだけ。ってそういう単純なものでもないらしいんですが、食べるのが専門の身としては、担担麺の味はそのままな気がします。肉そぼろに白髪ねぎっていうのがスタンダード。
熱い担担麺には乗っかってないですよね。白髪ねぎって。
で、また、ここが不思議なところなんですが、冷やし担担麺では「担担ねこまんま」やりませんね。
どうしてだか分かりませんが、冷たいスープも味は同じだと言いながら、そこにごはんを、とはなりません。
で、ここで大きな疑問が1つ。出だしで触れた、あれです。
「ジャージャー麺」ってありますよね。盛岡では「じゃじゃ麺」っていう呼び方もするらしい、あれ。
麺が冷麺だったりする場合もありますけれど、あれです。
「ジャージャー麺」と「冷やし担担麺」って、ほぼ一緒ですよね。
いや、麺が、とか、スープの甜麺醤が、とか、そういうバリエーションって「ジャージャー麺」と「冷やし担担麺」それぞれの両方にありますもんね。違いの説明にはならないと思います。
じゃ、一緒なの? 肉みそだって同じような感じだし。
実は、ハッキリ違うみたいです。
担担麺を冷やしたのは、日本なのかもしれませんが、元々が四川の汁なし「ダンダンミェン」です。
そういう繋がりで「冷やし担担麺」は四川発祥といえる一品ですが、「ジャージャー麺」は中国、山東省の発祥らしいです。
「ジャージャー麺」も今ではいろんなバリエーションを楽しめます。
「ジャージャー麺」を熱くしたら「担担麺」になるでしょうか。
これ、真面目に、なるかもなあって思いますね。
発祥は四川省と山東省と、ハッキリ違っていますけれど、「冷やし担担麺」と「ジャージャー麺」の違いを、ここで定義してしまいましょう。
「冷やし担担麺」に乗っているのは「白髪ねぎ」
「白髪ねぎ」が乗っていれば、それは「冷やし担担麺」
「ジャージャー麺」に乗っているのは「きゅうり」
「きゅうり」が乗っていれば、それは「ジャージャー麺」
ザッツ・イット!