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【ヅケ丼】は鮪だけじゃない 独自レシピ・タレで旨い意外な地方都市

< 江戸時代からのヅケ丼工夫は今も進化の途中 >

冷凍技術がなかった江戸時代に、生魚の保存方法として考え出されたという「ヅケ」
刺身好きなら誰でも食べたことのある丼ですよね。寿司より海鮮丼よりヅケ丼、という人も少なくないです。

 

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東京ではマグロが主ですし、マグロ以外だとブリのヅケ丼しか食べたことがなかったのですが、刺身でおなじみの魚はほとんどヅケになっていることを知って、ちと驚きです。


カツオのヅケもあるそうです。ん~、癖の少ない上りガツオを使っているんでしょうかね。戻りガツオだとヅケダレに特徴があるんでしょう。しょうがとかニンニクとか。
サケもあるそうですし、白身のタイ、アジ、サバ、ヒラメ、カレイ、スズキなんかもある。
アボカドも盛られていたりとか、ほとんど海鮮丼の具はなんでもヅケになるのかもしれません。


仙台では2009年に地場の魚と米をつかった「仙台ヅケ丼」を商品化したそうですし、大分県の郷土料理には「あつめし」「ひゅうが丼」「りゅうきゅう」などと呼ばれるヅケ丼があって、アジ、ブリ、カツオ、サバなどがメインになっているそうです。
ほほう、と食指を揺さぶられていたら、まだありました。しかもハワイ。ひょえ~。


ポケ・ボールという名前で、マグロ、カツオのほかに、茹でたタコやムール貝のものがあるんだそうです。19世紀に日本からの移民が多かった島ですから、その影響もあるだろうということなんですが、ハワイをワイハとか普通に言っちゃってる人たち、知ってるんでしょうか。


タレとか調味料とか、全然違うんでしょうねえ。どんなんでしょか。
どなたか食べたことのある方、いらっしゃいましたら是非ご教示を。

 

 

 

 

と、急に東京ローカルな話になります。


仙台も大分も、もちろんハワイのお店も経験していませんが、一番のお気に入りを出してくれるのは、実はトンカツ屋さんだったりします。


五人掛けのカウンターと、奥にテーブルが二席だけのこじんまりした店舗。いつも混んでいます。
ヅケ丼はいつもあるわけではなくて、季節メニューというか気まぐれメニューというか、たまアに登場。これがなんとも、実にンまいんであります。


トンカツ屋さんの暖簾をくぐるとき、たいていの人の頭の中、腹づもり、口の中はトンカツモードになっていますよね。そりゃそうです。トンカツ屋さんなんですから。看板も暖簾もちゃんとトンカツと書いてあります。


ある時にだけ出されるペラペラの短冊に書かれた「ヅケ丼 890円」に気付く人は案外少ないんですよ。トンカツ屋さんですから。


トンカツ屋さんのマグロですから、数にシビアな制限があることは容易に想像できます。なので、気付いてくれない方が個人的には嬉しいのであります。


さてある日、
カウンターにはすでに三人のスーツ族が陣取っていて、それぞれ注文を終えたらしく、三人ともスマホに目を据え付けて無言。
トンカツは配膳されるまでに時間のかかる料理です。はい、みなさんご存じ。


で、あとから入ってヅケ丼をそっと注文すると、空腹を我慢しながらトンカツを待っている面々より早く、配膳されるのです。
調理時間の関係から当然そうなるのですが、あれ? 順番が、と思っている三人の視線がヅケ丼に集まります。


チラ見、とかではなく、それ、何だ? とはっきり目で問うていますね。


女将さんがいつもより大きめの声で言います。はい、ヅケ丼、お待ち、おいしいよ。


ほほう、ヅケ丼なんてあったのか。三人はやっかみ八割の視線でしっかり観察します。


わざとゆっくりカウンターまでヅケ丼の乗ったプラスティックのトレーを下ろします。全然ペーソスのない自慢です。そ、これ、ヅケ丼なんでございますよ。お先に。
声には出しません。ただニンマリするだけです。へへっ。ンまいんですよ~。


トレーには自家製の浅漬け小鉢が乗っています。ボリュームたっぷりの浅漬けはトンカツメニューにもついてきます。これは三人ともご存じ。


赤だしの味噌汁。いい味出しているんです、これが。これまたみなさんお馴染み。
お馴染みでないのは、特性ダレのヅケがたっぷりと乗っけられた丼と、温泉玉子が出汁の中に浮かんでいる小鉢の二つ。


丼には少し強めに炊いたごはんの上にきざみ海苔を多めに散らしてあり、海苔が見えなくなるほどに、さっきまで特性ダレに付け込まれていたマグロの赤身がぐるりと放射状にびっしり。厚みのある切り身です。


脇の方にはトロトロの中落ち。その脇には真っ白いガリがこんもり。ヅケのまん中にワサビ。全体の上から白ゴマがまんべんなく振ってあります。
ヅケにも、中落ちにも、ガリにも、ワサビにも白ゴマ。ンまいヅケ丼は色合いもきれいです。


表面から見えるのはこれだけです。下に敷かれたきざみ海苔は見えていません。海苔の風味もここのヅケ丼には欠かせないんです。
海苔の存在は確認できていないのですが、丼の表面を確認したカウンターの連中は、ほほう、と声もなく納得するのであります。


視線をいったん厨房の中に走らせて、カツが揚がりつつある音を確認すると、またスマホに視線を戻します。
あれがトンカツ屋さんのヅケ丼か。今度チャレンジしてみよう。きっとそう羨ましがっているであろうことをも調味料として、おもむろにヅケ丼に箸をのばすのであります。


白ゴマをまとわせたまま、ワサビをちらりと掬ってタレの効いたヅケを大口あけてほお張る。で、すぐさま海苔ごはん。
ワサビと白ゴマの香り、タレとあいまったヅケの味、そこに海苔の香りとごはんのうま味が乱入するであります。

 

 

 


日本人に生まれて良かったあ、幸せだあ、と思う瞬間でありますよ。
幸せ感につつまれたら、ガリを一つまみ、中落ちをひとかけ、味噌汁、海苔ごはん、浅漬け、そんでまたヅケ、と休みなく口と手を動かし続け、そろそろ丼の中身が半分になりかけましたたら、ここで出汁掛け温泉玉子の出番。

 

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小鉢の中で温泉玉子をザクザクと箸で挟み切って、ある程度出汁になじむほどの大きさにしたら、そのままヅケの上にタレごとぶっかけます。
温泉玉子かけヅケ丼です。丼の中は主役もわき役もなくなって、究極の味変なのです。殿様も足軽もお姫様も一気にかっ込みます。


うま味、辛味、塩味、苦味、酸味、甘味、いろいろあれこれ、全ての味蕾がいっときに嬉しがって、身体全部がクチになるですねえ。
幸せの味はなんとも日本的です。


最後の一粒まで食べ終え、ふうっと一息。にんまりと自然に口角が上がってしまいます。心の底から日本人でよかったなあという気持ちに浸れるひと時でしたねえ。


ではお先です。ということで外へ出るわけです。オーソドックスなマグロのヅケ丼ですが、ンまかった。実にしあわせにンまかった。です。
が、
もうじき閉店らしいのです。残念。。。

 

< ヅケ丼の身体に旨い満足度 >

カロリーの少ない赤身がメインとはいえ、トロも乗っかっていますし、全体としてはカロリー多めかもしれません。


でもあれです、DHA、EPA、タウリン、鉄分も豊富だそうですし、しあわせを感じながら食べられるので、身体も喜ぶということにしておきましょう。

 

< ヅケ丼の心に旨い満足度 >

人は自分で食べたり飲んだりしたもので出来ている動的平衡の生き物です。ンまいと思って食べれば、その分だけ身体のしあわせ部分が増えるんじゃないでしょうか。


食事を楽しむことがしあわせになる最良の方法なのだと思います。

 

< ヅケ丼の酒のアテ満足度 >

ん~。このヅケ丼は呑みながら、という落ち着いた気持ちでのぞむものではないように思います。


ま、ごはんものを食べながら飲むのが幸せという人もいらっしゃるでしょうけれども。

 

< ヅケ丼の酒の〆満足度 >

軽く呑んだ日なら、バッチリいけると思います。でもまあ、カロリーは高くなってしまうでしょうねえ。

 


ですがですが、このヅケ丼で〆れば、しあわせに眠りにつけることは保証できます。

 

< 築地や豊洲ばかりじゃないヅケ丼の穴場は? >

例えば鯵のナメロウとか、その店が船を出してとって来たばかりのキトキトを調理してくれる茅ケ崎とか、千葉の港町とか、ンまい個人店ってありますよね。


ヅケ丼はネタだけじゃなくて、タレとか、漬け込み方とかいろいろ独自の工夫があるんだと思います。
へへっ、俺は知ってるぜ、って方、是非自慢話を聞かせてください。