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【正しい目薬の差し方】艶笑落語の「目薬」って噺を

< いやまあ 艶笑なんて言ってもですね 今どきとしちゃカワイイもんでございまして >

え~。恐縮ながら、またまたバカバカしい噺なんでございますが、ひとつ、よろしくお付き合い願いたいもんでございますが。


え~、本日は艶笑落語でございまして、あれでございます。
不得意な方は耳を塞いでいただきましてね。


え? これは文字落語なんだから、耳じゃないだろ! って?
まあ、その辺はひとつよろしくお好きなようになさっていただきまして、はい。


なんでございますよ、飽食の時代なんて言いますのはね、ホントつい最近のことなんでございまして、ちょっと前までは、おまんまをね、腹いっぱい食えるなんてのはね、かなり贅沢なことだったんでありまして、たいていはまあ、水を飲んで我慢するなんてえ時代が続いていたんだそうでございますよ。


今はですね、3日も食べてないんで、なんてね、情けない声で言い訳してね、コンビニ強盗なんてやらかしちゃう、とんでもない奴がいたりしますんですが、バカあ言っちゃいけません、そんなのは普通だったんです。


水飲んでね、ぐっと我慢する。
こうした人が普通にいたんです。


お百姓さんなんかね、自分たちで作ってる米をね、年貢ってことで取り上げられちゃってね、自分で作ってるのに自分の口には入らない、水を飲んで命を繋いでいたっていうんで「水飲み百姓」なんてね、言われていたもんなんですよ。


お米のご飯は口に入らないんだけれども、まだましな人たちはね、決まって芋を食べていたんだそうです。
これはまあ、戦中戦後の話としても良くいわれていることですね。


ありがたいもんなですねえ、芋ってえのはねえ。

 


さて、目薬てえ噺なんでございますがね、「メグスリノ木」てえのがあります。


周期的にねブームになったりなんかしているそうですよ。


メグスリノ木はですね、日本固有の木なんだそうでして、昔から実際に日本人の目薬として使われていたっていうんですから驚きです。
戦国時代には樹皮を煎じまして、民間療法として眼病治療に役立てていた記録があるそうですね。


さらにですね、目薬としてばっかりじゃなくって、肝臓にも効いたってえますからね、なかなかなもんでですよ、これは。


煎じ薬だけじゃなくって、粉薬ってえのもね、有ったようでございまして、その噺なんです。


神田の裏長屋に大工の留公ってのが住んでましてね、腕はイイし、今でいうイケメンでしてね、目出度く結婚しております。もう8年になりますね。


江戸の町はずっと建築ブームだったそうでございましてね、材木屋と大工ってえのは仕事がなくならないんですね。


留公は酒もほどほどですし、悪い遊びをするってこともない奴でございましてね、まあモテまして、それで近所で評判の別嬪さんを嫁にもらいました。


この当時の江戸の町ってえのはですね、女旱り(おんなひでり)。


江戸の町に集まって来るのは野郎ばっかりだったそうでして、独り者の男が多かった。留公みたいに結婚できるってえのは、こりゃあ恵まれた方だったんですね。


そんでまた、この夫婦は8年経ってもね、いちゃいちゃしてるってんじゃないんですけどね、いつも仲が良くってね、有名なオシドリ夫婦。
まあ、うらやましい奴なんでございますよ。


夫婦仲がイイなんてえことはね、他からヤイヤイいうことじゃないんですけどね、留公の奴、花粉症の症状がひどく出ましてね、仕事に出られない。


はい、あったんですよ。花粉症ってのは現代病って言われているんですけど、今より少なかったでしょうけれどね、この頃にもあったんです。


なにせろくに目があけられないもんですから、現場へ出ますと棟梁の頭にカンナかけちゃったりなんかしましてね、仕事にならない。
おめえは現場出て来んじゃねえ、家で寝てろ! なんてんで、このところ家でふて寝の日々です。


このころの大工ってえのは日銭仕事ですからね、あっと言う間に食うのに困っちゃった。


留公が動けないもんですからね、嫁さんが動きますよ。
川越の在に従妹がいるってんでね、そのツテを頼って芋をもらってきて食べてます。


そうなんですよ、埼玉県の川越って処はね、江戸時代からさつま芋の里として有名なんでございます。
そこの農家に嫁いだってえ従妹から、粗末で売りに出せないような芋をね、足しげく通ってもらってきます。


亭主が治るまで米も麦も買えませんからね、おまんまはこのところずっと芋です。
昨日も芋だしきょうも芋、明日も芋です。ずう~っと芋。


女の身体で一度にたくさんは持って帰れません。
今みたいに車でスーッと行ってとか、リュック背負って電車でってわけに行きません。歩きです、徒歩。


なんだ留公んとこの嫁が芋運んでるって話だが、別嬪さんに芋運ばせて留の野郎はなにやってんだ。


なんて噂になりましてね、イモネエチャンって呼ばれるようになってますよ。
きょうもまた、人目をはばかるようにして帰ってまいりましたねえ。


「ねえお前さん。まだ治らないのかい。あたしゃイモネエチャンなんて呼ばれてさ、なんだか悔しいんだよ。それに川越の従妹だってね、そりゃ以前に世話んなったっていうんで断りゃしないけどさ、あんまりイイ顔もしなくなってきてんだよ」


「ああ、そうよなあ。おいらも今、考えてたとこだ。芋ばっかり喰ってちゃ、屁にも力が入らねえってもんだ。すぐに治るかと思ったんだが、こう長く続いちゃたまらねえ。銀シャリのおまんまも喰いてえしな」


「それで、何かイイようなことでも思いついたのかい」


「ああ、さっき熊公が見舞いに来てくれてな、野郎、新しい親方んとこで仕事にありついたらしんだが、その親方ってのがな剛毅なお人なんだとよ、そんでな……」


「熊さんがイイ仕事に就いたって言ったって、お前さんの目が明かなきゃなんにも変わらないじゃないか」


「そこよ。その親方の隣りがな、評判の目薬屋だってんだよ」


「薬屋ならそこの横丁にもあるじゃないか。そもそもうちにはオアシが無いんだから、いくら評判が良くたって買えやしないよ」


「まあ、そんなに気を急くんじゃねえよ。あのな、その親方の抱えてる仕事ってのがかなりデカイらしくてな、おいらにも早いトコ手伝ってくれって話が出ていてな、そこで働くって約束すりゃあ前払いでオアシを出してくれて、そんでもって隣りの目薬屋にも話を通してだな、上等な目薬を都合してくれるってことなんだよ」


「おやまあ、そりゃイイ話じゃないか。それならそうと早く言っとくれよ。で、どこなんだい、その目薬屋っていうのは」


「オメエが慌ててどうすんだい。いきなり目薬屋行ったってケンツク喰らわされるだけだ。まず、その親方んとこ行ってな、手伝わさせていただきます。精一杯張り切りますんで、ひとつよろしく、ってな、丁寧に頼んでな、まずオアシをもらってからのことだ。証文でもなんでも言われた通りに書いてな」


「なに言ってんのさ。あたしもお前さんも字なんて読み書きできないじゃないか。証文だなんて」


「だから慌てんじゃねえってんだよ。おいらたちの間の証文なんてな、指につばつけてぎゅっとやりゃいいんだ」


「そうかい、そんなら簡単だね。だけど、そんな証文だなんて、なんだかおっかないじゃないか。お前さんの目は治って欲しいけどさ、きつい仕事やらされたりするんじゃないのかい」


「なあに、そこは大丈夫だ。大工の留っていやあ近所で知られたおいらなんだ。心配するにゃ及ばねえ。それにな、大工仕事で言う証文なんてなあ、形ばっかりのもんでな、信用は顔と名前なんだ、堅っ苦しいことになりゃしねえよ、安心して行ってきな」


「あいよ」


オアシの目途が付いて、亭主の目も治りそうだし、嫁さん、喜び勇んで出かけますね。
と、すぐ戻ってきました。


「お前さん、あたしゃどこへ行きゃいいんだい」

 


そそっかしい夫婦もあったもんですが、湯島の黒田親方てえとこの場所を聞きまして、今度はしっかりと出かけていきましたですね。


神田から湯島です。隣りみたいなもんですからね、ちょっとして戻ってきました。


「なんだかたいそうな目薬屋でさあ、ほら、薬もこんなごたいそうな紙袋に入ってるよ。でもこれでお前さんの目が治るとイイねえ」


「おお、目薬ってやつか、でかした。これでおいらもちゃんと見えるようになるってもんだ」


で、嫁さんから目薬の紙袋を受け取った留公、


「ほほう粉薬か。で、これ、どうやって使うんだ」


「あたしが知るわけないじゃないか。そこに書いてあるんだそうだよ」


「書いてあるたってオメエ。確かにごちゃごちゃ書いてあるけど、おいら目が見えないんだよ」


「あたしは目は見えるけど字は読めないよ。お前さん、時々寺子屋行って字を習ってたじゃないか。ぼんやりなら見えるんだろ」


「あ、ああん? そりゃ少しは見えるし、ちょっとは字も読めるけどよ」


ためつすがめつ、留公、必死に使い方の解読にかかりますね。嫁さんも気が気じゃありませんでね、2人頭をくっ付けるようにして共同作業です。
なにせ仲のイイ夫婦ですからね。

 


「こりゃあな、みって字だ。ってことは、みみだな」


「へええ、目薬なのに耳なのかい」


「続きがあらあな。か、き、い、つ、は、い、だな」


「耳かき一杯ってことかい」


「そうだな。それで次はだな……」


「どしたんだい」


「次は読めねえから、またその次だ、し、り、へ、つ、け、べ、しって書いてあんだな」


「尻へつけるってのかい。耳だの尻だの、ヘンな薬だねえ。ホントに目薬なのかねえ」


「あとはこの一文字だけだな。なんかどっかで見たことがある字なんだがなあ」


「どれどれ、ああ、これ、この字あたしも見たことあるよ。お湯屋さんだよ、お湯屋のノレン。こりゃ女って字だよ」


「おお、そうだそうだ、女湯の女って字だな。ってことは、耳かき一杯、女尻へつけべしってことだ」


「なんだかホントに妙な目薬だね」


「そんなこたあどうだってイイんだよ。おい、早く着物をまくってケツを出しな」


「なに言ってんのさ、まだ日は高いよ」


「そういうんじゃねえんだよ、バカだねオメエは。目薬の使い方にそう書いてあんだから、早くケツを出せってんだよ」


っとね、なんだか妙な目薬の使い方があったもんですが、嫁さんもね、疑いながらもやってみるしかないんでね、亭主の目が治るためならばってんで、ウレシ恥ずかし、パッとケツを出して亭主の方へ向けます。


この頃はですね、おパンツなんてしゃれたものは無いんでして、はい。
パサッとまくれば、ぺろり~んです。


さて、留公、女尻っていったてどの辺へつければいいのか、耳かきに粉薬を乗せて迷ってしまいますね。


「なにしてんだい。早いトコすませとくれよ」


「おお、わかってらあ。動くんじゃねえよ、じっとしてな」


四つん這いにかがんで腹に力を入れてケツを固定させてますからね、このところ芋ばっかり喰ってる夫婦ですから、やっぱりね、出るものが出ますよこりゃ。
でも今は、亭主が顔を寄せてきていますからね、がまんです。


我慢、ガマン。
そこへ留公が鼻づらを寄せながら、耳かきからササーッ。
嫁さん、思わず知らず、ぶお~ッ。


粉薬が飛び散って留公の目に入ります。


「うわああ、やりやがったな。粉が目に入っちまったじゃねえか」


「しょうがないじゃないか。出物腫物って言うだろ」


「おっ」


「ど、どしたんだい、お前さん」


「分かった、目薬ってなあ、こうして目に差すもんなんだ。効き目が出てきたみてえだ」


チャンチャン! ってことでしてね、メデタシメデタシっていう一席でございました。


め、っていうひらがなは、女っていう漢字から来ているらしいですからね。まあ、無くもない噺なんでございまして、はい。
女尻、目尻。っていう目薬の噺。


後世の我々の世界にも「二階から目薬」なんてことわざもあったりしましてね、目薬ってのもいろんなところで活躍しているんでありますよ。

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で、最後にですね、正しい目薬の差し方をご伝授させていただきましょう。
いえいえ、真面目な差し方の話です。ホントに。


簡単です。


目薬を差すときはまず手を洗います。手を清潔にしておくんですね。


上を向いて、下まぶたの目尻側を軽く引き下げて、目を開いたまま「1滴」落とします。


瞬きをしない方がイイんです。静かに目を閉じて、目頭をそっと押さえて、しばらくじっとします。


これだけなんですね。


片目でも両目でも同じです。


目頭を軽く押さえるってのはですね、目頭の辺りから鼻、喉へ通じている穴があるんだそうですが、目薬がそっちの穴の方へ入っていってしまって、充分な量の目薬がきちんと目に留まらなくなってしまうのを防ぐため。


目頭をちゃんと押さえれば、目薬自体は1滴で充分ってことなんであります。


今回はちょいと長噺になってしまいましたですな。


おあとがよりしいようで。ぶう~。