< 宇宙の神秘って実はとっくに人類は気付いていたのかもしれないって話 >
♪み~んな悩んで大きくなった
とかね、こんな歌もあったんでございますが、昔のエライ人たちってぼんやりとした一括りに記憶しているようなところがありまして、誰がいつの時代かっていうのはあんまりハッキリしていませんです。
かといって、悩んではおりませんが。
超有名なソクラテスは紀元前470年から紀元前399年のアテナイの哲学者で、弟子のプラトンが紀元前427年から紀元前347年、やっぱりアテナイの哲学者ですね。
でまたプラトンの弟子がアリストテレスで、紀元前384年から紀元前322年のトラキア地方の哲学者。
この3人は師匠と弟子の関係ってことで、地理的にも古代ギリシャですし、年数までは記憶していませんけれど、紀元前5世紀から4世紀の人だなあって記憶しているんですが、アルキメデスはどうでしょう。
まあ、同じころ、同じ地域の人だよねえって思っていたんですが、アルキメデスは紀元前287年から紀元前212年の数学者でシチリアの人なんですね。
まあ、同じ紀元前とはいえ200年近く開きがあります。
ん~。知っている人にとっては当たり前の知識なんでしょうけれど、なんとなく、一括りにしてしまっていますね。
歴史に名前を遺す人が、いつでもどこでもワサワサ出てくるっていうこともないんでしょうけれど、人類の科学が常に進んできたことは事実で、そのジャンルに生活基盤を置いている人には有名であっても、一般的には名前を知られていない科学者って、たくさんいるんですよね。
11世紀のインド、北西部のクジャラート州にジャイナ教の僧侶「ヘーマチャンドラ」っていう人がいます。
インドに詳しい人は知っているんでしょうけれども、そもそもクジャラート州っていう名前で、ああ、あの辺ねっていう認識の出来る人も少ないんじゃないかって思いますね。
古くから西アジアとの交易地として重要な土地らしいです。
インド独立の父「マハトマ・ガンディー」そしてタタグループの創始者でインド産業の父「ジャムシェトジー・タタ」が、ここ、クジャラート州の出身です。
ジャイナ教っていうのも、インド以外にはほとんど伝わっていない宗教なんだそうで、名前にも馴染みは薄いです。
そういったインド、クジャラート州のジャイナ教僧侶「ヘーマチャンドラ(1089~1172)」です。
誰やねん、ってことだと思うんですが、「全知者」っていわれた人なんですね。めっちゃアタマイイってことです。
当時の学問の全てのジャンルについての著作があるんだそうです。
多くの著作のうち、韻律学の著書「チャンドーヌシャーサナ」はインド古典詩の韻律、詩のリズムですかね、それとモーラ、日本語でいう「拍」の関係について書かれていて、この中でヘーマチャンドラは、後に「フィボナッチ数列」って呼ばれるようになる理論を展開しているんですね。
古代インド詩の韻律は短モーラと長モーラによって成り立っていて、短モーラは1モーラ、長モーラは2モーラになる。
すると、1モーラは1つの短モーラ、2モーラは「短短」か「長」
3モーラは「短短短」「短長」「長短」
4モーラは「短短短短」「短長短」「短短長」「長短短」「長長」
によって成り立っていて、「nモーラのありうる音節の組み合わせの数は、n-1モーラの組み合わせの数とn-2モーラの組み合わせ数の和である」ってことを証明しているんです。
つまり、5モーラの組み合わせは、5-1=4モーラの組み合わせ数、5、と、5-2=3モーラの組み合わせ数、3の和ってことで、5+3=8ってことを証明したんですね。
イタリアの数学者「レオナルド=フィボナッチ(1170~1250)」っていう、この人もまたイタリアの天才数学者なんだそうですけど、アラビア数字をヨーロッパに持ち込んで、数学の効率を一気に上げたっていう人。
ヘーマチャンドラが亡くなる頃の生まれですから、同時代とはいえ接点はなさそうですけど、この時代の人の生年月日って確実かどうか、ちょっとね、っていうところもあります。
ちなみに、ローマ数字を使っていた当時のイタリア数学界はアラビア数字によって、かなり革新的な発展を遂げたって思われるんですが、そのアラビア数字って、実は「インド数字」なんですよね。
今普通に使っているアラビア数字はインド生まれ。
ヨーロッパに伝わったのがアラビア商人を通じてだったんで、インド発祥だけどアラビア数字ってなったみたいです。日本に伝わって来たときもインドから直接じゃなくってヨーロッパ経由なんでしょうね。
で、フィボナッチは自著「ソロバンの書」っていう本の中で、アラビア数字のシステムを紹介するとともに、ヘーマチャンドラの発見した法則「3項目以降のそれぞれの数は手前の2つの項の数の和になる」っていう数列の存在を示したんですね。
で、これが、フィボナッチ数列として広まることになったわけなんですけど、別にフィボナッチっていう人は、自分の発見としてじゃなくって、インドの数学として書いただけみたいですね。
それが「ソロバンの書」なんです。
フィボナッチは韻律じゃなくって「ウサギのつがい」の礼としてフィボナッチ数を説明しています。
前提条件があって、
「1つがいのうさぎは生後1ヶ月で繁殖可能となる」
「1つがいのうさぎは毎月1つがいのうさぎを産む」
「うさぎが死ぬことはない」
この条件でスタートすると、うさぎのつがいはどんなふうに増えていくかを表したものがフィボナッチ数列になるんですね。
0ヶ月:子どものつがいが1組。よって、つがい数は「1」
1ヶ月:子どもが繁殖可能に成長するので大人のつがいが1組。よって、つがい数は「1」
2ヶ月:大人のつがいが子どものつがいを産むのでつがいは2組。よって、つがい数は「2」
3ヶ月:大人のつがいは子どものつがいを産んで、1月前に生まれた子どものつがいが繁殖可能になって、つがいは3組。よって、つがい数は「3」
4ヶ月:2組の大人のつがいは2組の子どものつがいを産んで、1月前に生まれた子どものつがいが繁殖可能になって、つがいは5組。よって、つがい数は「5」
数値だけで示すと、1、1、2、3、5ってことになります。8、13、21、34、55って続いていきます。
これがフィボナッチ数列として知られているわけですね。
このフィボナッチ数列の数値を一辺とした正方形は渦巻き状に並べることが可能で、その正方形の一辺を半径とした円を書いてつなげていくと螺旋になっていきます。
これ、なんかトンデモナイ発見なんですよね。
ヘーマチャンドラが示して、フィボナッチが広めたこの数列は、ヘーマチャンドラのかなり前からインドでは知られていたっていう説もあるんだそうですが、インド古代詩でも、うさぎの増え方でもなくって、宇宙の神秘の数列だったんです。
天気予報で台風の渦巻き衛星映像って見たことありますよね。
あの渦巻きって、ちょっと横長方向に膨らんでいて、正円じゃないですよね。
あの渦巻きがフィボナッチ渦巻きなんです。
太陽系の存在している我々の天の川銀河。代表的な4本の渦状腕。想像図ですけど見たことありますよね。あの湾曲加減、対数螺旋っていわれていますけれど、どの銀河でも同じ形状なんだそうで、あれもフィボナッチ渦巻き。
我々のDNA、2重螺旋もフィボナッチ渦巻きなんだそうです。
人体の構造から宇宙の出来上がりまで、フィボナッチ渦巻きって、なんだか凄いことですよね。
さらに面白いことには、我々が誰しも美しいと感じる縦横のバランス「黄金比」
ミロのヴィーナスや、モナリザにも応用されている黄金比ですが、これ、フィボナッチ数列の比率なんですってよ。
フィボナッチ数列の隣り合った数字の比率。
1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233、377っていうフィボナッチ数列。
例えば、隣り合った5と8、その比率は8/5=1.6。
隣り合った55と89、その比率は89/55=1.61818。
隣り合った89と144、その比率は144/89=1.61787。
隣り合った233と377、その比率は377/233=1.61803。
黄金比は「1:1.618」ってされています。
我々が美しいって感じるバランスは、その比率が宇宙の真理だからなのかもしれませんよね。
探してみると、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」にもフィボナッチ渦巻き、黄金比が取り入れられているみたいです。
北斎がフィボナッチ渦巻き、黄金比を知っていたっていう可能性もないではないんでしょうけれど、天才の感覚っていう、北斎のアタマの中の渦巻きがフィボナッチだったっていう可能性の方が大きいような気もしますけどね。
ミロにしてもレオナルド・ダ・ヴィンチにしても、そうなんじゃないでしょうか。
自然の植物もこのフィボナッチ渦巻きに従っているみたいですからね、とっても不思議。
もしかして、江戸の渦巻きも?