<お料理女子には分からない 男の無駄なキッチンアイテム問題>
食いっ喰いで知られた向田邦子さんは、食器に対するこだわりも相当なものだったそうです。
向田さんに限らず、自分で作って自分で食べるときも、盛り付ける器にこだわる。自分で作って誰かに御馳走するときはなおさらですよね。
この料理はこの皿でなければイケナイ。
この肉じゃがはこの小鉢。
このオニオングラタンスープはこの深皿。
どうして器、食器にこだわるか。
それは「よりおいしそうに見えるから」
さらには「この器に盛れば、食欲をそそるから」ということらしいんですね。
その気持ちというか、感覚は分かる気がするんです。
するんですが、納得できるかというと、さほどではない。
その通り、という感覚が薄いです。おんなごころを理解できない無粋なヤツ、なんでありますねえ。どーもスミマセン。
女子が食器を選ぶ感覚。もちろん人によることではありますが、それは食欲に左右されている。のではないだろうか、と思います。
女子の方が本能的な生きものだってハナシです。
街を歩いていて、
「あら、これカワイイわね」
と、突然、雑貨屋さんだとか、骨董屋さんだとかの店先に足を止める。
まあ、男でもそうする人はいるでしょうけれど、思わず声を上げてはしゃいだ調子になるのは女子の特徴ではないでしょうか。
食事は食器で食べるのがイイです。鍋から直接食べたいとは思いませんが、とりあえず食器でありさえすればオッケーです。
というわけにイカナイのが、お料理女子ってもんですね。
「カワイイ」の内訳は、ズバリ、食欲をそそられる、ということなんだと思われますです。
「だってほら、このお茶碗でお茶漬け食べたらおいしそうじゃない」
こう言われて、心の底からその通り、それしかないよねと思う男って、実際問題、いるんでしょうか。
そうだね、ぐらいは言うと思いますよ。否定はしない。だってよく分からないから。
隣りの茶碗で食べても同じなんじゃないだろうか。というのが、いえいえ口には出しませんよ、出しませんけれども、本音ってところじゃないでしょうか。
お料理女子の食欲は、あくまで直線的に揺るぎなく目を付けた食器と、頭の中に思い浮かべた料理を結び付けて、明確に確定する。
コレでアレを食べたら、絶対旨い!
その食器の訴えかけるトクイ料理をしっかり受け止めている。それは一瞬のうちに決定されるんですね。その人固有の感覚。
もう誰も異議を差し挟めません。
で、その衝動にブレーキがかかるのは、同様の用途の器がすでにある場合、そして、そのオメガネにかなった器の値段がベラボーに高い場合。
でなければ、今は持ち合わせが少ないから今度ね、覚悟しておきなさいよ、という次第になるんじゃないでしょうか。
ウィンドウショッピングならぬストリートショッピング。その小皿、ロックオンです。
結果、お料理女子の部屋の中には、お気に入りの器が勢ぞろい、となりますね。
人の食欲が向かうベクトルはその時その場所、そのタイミングで色々様々。買いそろえられた器たちに統一感があるかどうかは、その人次第。
それでイイですよね。お城で暮らす貴族様でもあるまいし、統一感のある食器ぞろえだとか、むしろ怖いです。
一人ひとりのお料理女子、それぞれの好みの器たち。
お披露目されたりなんかすると、へええ、とか感心したりもします。ちゃんとその人の一部になっている感じ。
それに比べますと、まあ、世の中のオヤヂはね、イロイロやらかしますです。はい。やらかしてます。
スキンマーって知ってます? そうです、穴あきおたま、です。
なんだか本格的、と感じて購入。知識なしに形から入るパターンの中でも一番アホな行動でしょうかねえ。
他にもあります。置き場所にこまるサイズのアイスクリームスプーン。とにかくデカイ。
形状の違うトングが三つ。何に使い分けんネン。
自由自在に切り分けられるらしいチーズナイフ。いつもの6Pチーズは最初から切れてるっちゅうネン。
何に使おうと思ったのか、今では全く分からない、中途半端な大きさのガラスピッチャ。ま、キレイではありますよ。
まだまだあるんですが、捨てるに捨てられず、いつまでも持っている。
なぜ捨てられないかというと、高かったからです。一個一個がカナリ高額商品。コスパ的に。
せいぜいカップラーメンぐらいしか作らないくせに、スキンマーとか、どこで使うネンって感じです。
ま、一回ぐらい使いました。
コンキリエリガーテとかいう、貝の形したマカロニ。これまたお高い一品でしたが、どうやって食べるんだかわけもわからず買ってきて、茹でました。
で、スキンマーですくって、皿に。
これで正解だったんだとは思いますが、これだったらザルにざっと開ければそれでイイんでないかい?
ということなわけで、間違ってはいない使い方だけれど、やっぱり間違っているのか?
という道具です。つまり未だに使い方が分かっていない。
そもそもスキンマーを使うために食べてみた感のあるコンキリエリガーテ。ちょっと変わったマカロニじゃん!
つまりなんだかよく分からない。
アイスクリームスプーンは、ほら、あれです。最近は見かけなくなった気がするんですが、かつてあったリッターサイズのレディボーデンとか、ぐりぐりほじくり回して食べるやつ。
あれも一回だけやりました。
アイスクリームを専用のスプーンですくって器に盛るとか、オシャレ店舗か! てな感じですね。
アメリカ映画みたいに小脇に抱えて、テレビ見ながらでっかいスプーンですくって、そのまま食べる、とかやってみようとも思ったんですが、硬くてムリ。
あれって、小脇に抱えて自分の体温でアイスを溶かしてるってことなんでしょうか。アメリカのおばちゃん、体温高そうだもんなあ。などと不適切発言。
番組終わっても硬いままでしたからねえ。
そんな道具がゴチャッとあります。散財です。
その道具を見て、正しく食欲とか湧いてきません。無駄でした。
お金も資源も無駄遣い。あ~あ、です。
もちろん、男は誰でもそうだというつもりはありません。しっかりしている男は、無駄にスキンマーとか買わないと思います。
ま、個人的なアホな話なわけではあります。
にしてもですね、類は友を呼ぶということかもしれませんが、知り合いに、冷蔵庫を買う前に、おしぼり用のホットボックスと高級おしぼりを買って、ニコニコ顔。
帰ってきたら、まずボックス開けてさあ、おしぼりで顔拭くとさあ、サイコーだよ。という奴。
卵も鍋も買わないうちから玉子切り機を買って、これ知ってる?
凄いんだ、一発でゆで卵のスライスができるんだぜ。キレイなんだなあ。と得意顔恍惚顔の奴。
などがおります。
まあ、こんな感じですから、何でもなさそうな食器に、旺盛な食欲を感じ取っている女子に対して何か明確な意見など、言えないというか、批判感覚など無いというのが、男子の自然な感覚なのだと思いますです。はい。
そういえばそんなこともあったような、無かったようなご記憶の男子のみなさん、きょうも元気にボーっと生きていきましょう。
女子の選んだ皿にはちゃんとコメントしましょう。