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【軍艦巻き】失われてしまった定食屋のまかないランチ コロナのやつめエ

<コロナで消えてしまった諸々は もう二度と戻って来ないんでしょうねえ 悲しいです>

50mほどのアーケード。こじんまりした古い商店街。


忘れられたような一角ではありますが、それでも夕方になればそこそこの人出はあります。
そこに居る人たちは「銀座通り商店街」と呼んでいますが、正式名称ではないんだそう。


駅の方から歩いて行くと、アーケードの終わりに黄色いのれんの定食屋さんがあって、時々通っていました。
薄汚れて黄ばんだんじゃなくって、たぶん最初から薄い黄色。黒の太文字で「めし」の2文字。


その定食屋さんの隣には、不思議な空きスペースがあって、昔は自転車が数台停まっていたりいなかったり。


そのことを誰が気にするでもない空間でしたが、コロナの少し前から茶色のテーブルピアノが座を占めるようになっていました。
いつのまにか市民権を得た感のあるストリートピアノってやつですね。


決まって午後1時過ぎに訪れていましたが、たまに店の中にもピアノの音が聞こえてきました。
「ああ、ピアノね、時々ああやって弾く人がいるんだよ」
誰に言うでも無いようなトーンで店のオヤジが説明してくれました。
「この辺にもさ、ピアノ弾ける人がけっこういるんだと思ってね、感心するよ」


愛想がいいわけではないんですが、顔なじみになると何かと話しかけくれます。


店は、コンクリートの床でカウンターは無し。4つあるテーブルはたいてい空いていて、客がいる時でも1人、2人がそれぞれテーブルを占めて残っている程度で、すぐに座れます。


店のオヤジとオカミさんは厨房に一番近いテーブルに向かい合って浅く腰かけていて、建付けの悪い引き戸をガタガタいわせて戸を開けると、
「あい、らっしゃい」
2人声を合わせはするものの、活気のない挨拶をしながら腰を上げて、オヤジは厨房へ消えて、オカミさんは厨房脇の冷蔵庫からポットの水を出して、片手に持ったコップに空中で注いで持ってきてくれます。


「きょう、ありますよ」


3、4回に1回ぐらいの割で、オカミさんが顔を見ずにこう言うことがあります。


ありますよっていうのは、何があるのかというと「まかない」なんですね。「まかないランチ」です。


まかないとは言うものの、自分たちで食べるというものでは、たぶんなくてですね、メニューにはありませんよ、という意味なんだろうと思います。


魚がメインの定食屋さんです。刺身かフライ。魚の仕入れがイイので旨いんですね。ひらめの刺身とフライが一緒に出てくる定食もあります。ボリュームです。


で、そのまかないっていうのは「寿司」なんですね。

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客がネタを選べるわけではなくって、オヤジのお任せ寿司。ネタの大きい握りと数種類の軍艦巻きです。


要は悪くならないうちに仕入れた分を処理してしまおうという「まかない」なのかもしれませんが、この軍艦巻きが絶品だったんです。


もちろんこの軍艦巻きのネタも、決まってはいなくて、その時その時の魚で「まかなう」わけです。


その中でお気に入りだったのが「筋子軍艦巻き
イクラじゃなくって筋子


一緒でしょ、などと言うなかれ。オヤジ特製のタレに漬け込んであるんでしょうけれど、筋子の膜の味付けがなんとも絶妙なんです。


海苔に巻かれたシャリはごく薄く、その上に谷中生姜の甘酢漬けを薄切りにして散らし並べて、上から特製の筋子をストンと乗せて出されます。割と大きめの2貫。


その他に「桜エビマヨ」とか「3種の中落」とかの軍艦巻きも旨いですが、「筋子軍艦巻き」がバツグン。


ちなみに昔は2個で1貫っていってましたが、今は寿司1個で1貫って言うようになりましたよね。回るようになってから?


それはそれとしまして、筋子軍艦巻きです。


オヤジが言うには、
「バラバラにしてイクラにしちまうとね、味付けが濃くなるんだ。サケの卵だからさ、卵のまま食うのが一番旨いわけよ」
ということなんであります。不思議な言い分のような気もしますが、異論はありません。


理屈は正統なのかどうか分かりませんが、とにかく旨いです。海苔と谷中生姜と筋子のハーモニーってやつですね。


イクラってね、ロシア語なんだよ」


と、ぼそっと教えてくれたのはオカミさんでした。ニコリともしない乾いた声。


「日本のイクラは赤イクラ。あのキャビアっていうのは黒イクラ


それだけ言うと、すっと厨房に消えていきました。


ホントかよって思いましたが、まさにその通りのようなんですね。


イクラって、ロシア語のネイチャーな発音は知りませんが、魚の卵をイクラって言うみたいです。
魚の黒い卵。それがキャビアってことです。


ちなみに、チョウザメって硬骨魚類なんだそうで、サメの仲間じゃないんだそうです。


ま、キャビアっていえば世界三大珍味の1つですよね。食べたことが2回ほどありますが、しょっぱいなあと思っただけで、ありがたみは全く感じられませんでした。高いだけ。


それはホンモノを食べてないからだよ、って言われてしまえば、はあい、何も反論できません。
2回しか食べたことないんで、ホンモノかどうかの判別なんて出来るはずもないです。


チョウザメの卵。ロシアの黒イクラは旨いんでしょうかね。ロシアでの値段はどうなんでしょう。


「トリュフ」「フォアグラ」もそれぞれ数回、たっぷりじゃなくって、ちょこっとだけ食べたことあります。


別に不味いとは思いませんが、コスパ、サイテー! という感想しかないですね。
珍味というほど珍しい感じも全然しないです。はい、ホンモノを知らないからでしょねえ。


珍味と言えば、日本三大珍味っていうのがあって、農林水産省の「消費者の部屋」によりますと、「うに」「このわた」「からすみ」だそうです。

 

ん~。そういえば聞いたことがあるような無いような。


さすが海に囲まれた国の三大珍味というだけあって、3つとも海のものですね。


「うに」って珍味に数えられるの? と思ったんですが、三大珍味のうにっていうのは、ウニの生殖巣の塩辛のことなんだそうです。
食べたことないです。


ま、ホンモノに出会う機会があれば試してみようかとは思いますが、特に求めて食べようとまでは思いませんです。
筋子軍艦巻き」で充分満足です。


ですが、その「筋子軍艦巻き」をまかないとして出してくれていた定食屋さん。2021年4月いっぱいで閉めるそうです。なんとも残念です。


「もう70過ぎちゃってるからさ、少しゆっくりしようと思ってね」


オヤジはコロナのせいだとは言いませんでした。けれども、
「なんとかリーダーの講習受けて、シール貼れだとか、衝立置けだとかさ、面倒になってきたんだよ」


さほど頻繁に行っている客でもなし、オヤジの決断に何の意見もありません。年齢ってこともホントにあるんでしょう。
ですが、コロナがトリガーになったことは間違いなさそうですね。


筋子軍艦巻き」はもう食べられないんですねえ。コロナが落ち着いた後でも。


どっと力の抜けてしまった午後でした。


2021年4月25日、東京は三回目の緊急事態宣言です。ますます疲れます。