<ウイスキーの“初め人間”ってドえらいヤツなんでしょうね その最初の工程>
2021年1月にサントリーから好いニュースが発表されました。
2018年の6月から発売されていなかったシングルモルト「白州12年」が、2021年3月末から発売再開されるというニュースです。
ほぼ3年ぶり。ウイスキー好きには待ち望んだ銘柄の発売再開ですね。
今回は限定発売ということですが、中長期的に安定供給できる見込みが立っているということですから、本格的な発売再開と捉えていいんだろうと思います。
ただね、12年もののウイスキーの原酒が一旦枯渇したような印象でしたからね、3年で原酒が育つはずもなく、一抹の疑問を感じてしまう部分もなくはない、というのが酒呑みのホンネといったところでしょうか。
ブレンデッドウイスキーの年数表示は、ブレンドした原酒の一番若い年数にするというルールがあるそうですから、12年をうたっている以上、ブレンドされる原酒は、どれも12年以上ということになるわけで、そういう余裕といいますか、12年以上の樽がそんなにあったのか、という疑問です。
ま、ウソはないんだと思いますけれどね。サントリーを信じたいところです。
“山崎シェリーカスク”が世界最高峰の評価を受けたのは2013年のことでした。
ちなみに、シェリーカスクってうのは、シェリー酒を熟成させていた“樽”のことだそうです。
んでもってシェリー酒っていうのは、ほら、あれです。スペインの、アルコール度数高めのワイン。
そのワインを寝かせていた樽、ってことですね。
“山崎”をワイン樽で熟成させたのが“山崎シェリーカスク”
世界一のウイスキー。
日本のウイスキーは1980年代から長い低迷期に入っていましたが、クオリティの追及はたゆまず続けていたんですね。
2000年代に各メーカーが自ら仕掛けたハイボールブームを背景に、世界一の評価を受けて攻勢に出ます。
国内ばかりでなく世界を相手にジャパニーズウイスキーの消費量はどん底から一気に回復、伸長したんですね。
結果、ほとんどの人気ブランドが原酒不足になってしまったわけです。
ウイスキーはすぐには出来ませんからね。
原酒があっというまに不足してしまったので、商品を完成できず、流通しない期間が続いています。
数量限定とはいえ今回の白州販売再開は、コロナ禍で楽しいニュースが聞かれない中、久しぶりにナイスな話題と言えるのではないでしょうか。
尤も、酒呑みに対してだけかもしれませんけれどね。楽しい嬉しいというのは。
世界的なシェアという観点からしますと、サントリーだけじゃなく、日本の各メーカーは商機を逸してしまったここ数年という状況。
評価が高まって注目された時期に商品在庫がないんですからね。
残念な数年、ということも出来るのかもしれませんが、実際にウイスキーを作り育てている現場は大変なんだろうと思いますね。
一朝一夕に出来上がるものではないですからね、ウイスキーって。
詳しくは知りませんけれどもね。
まあ、ウイスキーに限ったことではないんですが、何の気なしに口にしたり、身に付けたりしている物が、実は知らないことだらけっていうのは意外に多いものです。
ん? ですよね?
そもそもウイスキーって何語? って聞かれたら、たいていの人は「英語でしょ」と答えますよね。
そこでさらに、語源は? と聞かれたらどうでしょう。
古いゲール語の“Uisge beatha ウシュクベーハー”ですよっていうのは、調べてみるとすぐに出てきます。
すらすら答えられる人が居たら、ちとコワイ感じかもです。
日本語でいえば「命の水」って意味だそうです。ウシュクベーハー。
で、時代とともにその名前が“ウシュクボー”“ウスケボー”“ウイスカ”と変わっていってウイスキーになりました。っていうことらしいです。
ふううん。です。
そういえば“ウスケボー”って名前のレストラン、ありますよね。チェーン店もあるかもしれませんが、個人店にもあります。
ウイスキーをウスケボーと言っていたのはいつ頃なのかについては、調べきれませんでした。ハッキリしていないんだと思います。
歴史の中でウスケボーと言っていた時代にウイスキーが日本に入ってきたから、ということでも無さそうに思えますけれど、なんだって今でも日本でウスケボーって名前が生き残っているんでしょうか。
ただ単に、言葉の響きが面白いから。
とかいうことだったりするんでしょうかねえ。そんな気がしないでもないです。
ぼやーっと酔っぱらっている状態のオッサン。ウスケボーって名前、似合いそうですもんね。
そうでもない?
ゲール語を話していたのは現在のアイルランド島の人たち。
古語とはいえ、今でも使われているそうです。
よく言われるのが、ウイスキーはアイルランドで生まれてスコットランドで育った、っていうことです。
アイリッシュ・ウイスキーに対してのスコッチ・ウイスキーですね。
そんなに種類を呑んだことはないんですが、似てますよね。この二つ。
スコッチの方が香り、クセが強いイメージでしょうかね。
ジャパニーズ・ウイスキーはスコッチを踏襲しているんですよね。
マッサンが修行したのがスコットランドでした。
スコッチだろうが、ウスケボーだろうが、ウイスキーを作るのは、時代とともに化学が進歩したとはいえ、なかなか大変な作業だし、いまだに解明されていない不思議な自然現象に頼っているところもあるみたいです。
さて問題です。
ウイスキーは何からできているでしょうか?
麦ですよね、大麦。二条大麦だそうです。
ヨーロッパで麦といえば、思い浮かぶのはビールですよね。
そうなんです、ざっくり言ってしまうとウイスキーっていうのは、醸造酒であるビールを蒸留したもの、と言えなくもないんだそうです。
でもそれって、ただ原料が麦だってことだけの共通項なんでしょうけれどね。
でもほら、ワインを蒸留したのがブランデーでしょ、というのはまた別の機会に。
ウイスキーの話です。
大麦には二条、四条、六条という種類があって、その中から二条大麦をウイスキーに使うですよ。
何でかというと、二条大麦が他の麦に比べてデンプン、タンパク質を多く含んでいるから。
そりゃそうです。単純に言えば、一本の茎から6つの実がなるのと2つしか実が付かないのとでは、一粒の中身の成分量が違ってくるってもんですよね。
二条大麦はたっぷりです。
で、ウイスキーの錬水術師たちは、後の発酵過程を考慮して二条大麦を選んだわけです。
あ、錬水術師ですか?
造語です、はい。
錬金術師って居ますよね。卑金属を貴金属に変えようって、いろいろやっていた中世の人たち。
現代科学のスタートは錬金術からって捉え方もありますもんね。
その液体バージョンってことで“錬水術師”って呼ばせていただきますです。
で、その錬水術師たちは、ンまいウイスキーを作るために、その第一段階としてデンプン、タンパク質を多く含んだ二条大麦がよろしいという結論を出した。
この大麦の種類って、自然にできたものなのか、歴史的時間の中で人間が開発したものなのか、分かっていないみたいです。
それだけ古く、昔から3種類あったってことなんでしょうね。
で、二条大麦を発酵させるわけですが、発酵っていうのは“酵母”がデンプンをアルコールに変える工程なわけです。
デンプンたっぷりの二条大麦の実、っていうか種ですね、種子。
種子そのままの状態ではそのデンプンを、発酵に使うウイスキー用の酵母は分解できないんだそうです。
分解できなければアルコールが出来ない。ウイスキーにならない。
もうこの段階で不思議ですね。
この不可能な事態がすぐにやってくるのに、なんで錬水術師たちはあきらめずに、ウスケボー、ウイスキー作りを続けようとしたのか。
やっぱりウイスキーも偶然の産物ってことなんでしょうか。
最初からウイスキーという目的があっての工程ではなさそうに思えます。
二条大麦とウイスキー用酵母。植物と微生物。その仕組みを解明しようにも、顕微鏡も何もない時代。
でもですね、何故かは知りませんが、錬水術師たちは発酵させる方法を発見します。怪しいやつらです。
このあたりもまた、時間と偶然のたまものなのかもしれません。
この二条大麦の種子は、発芽するときになると、成長する必要から自分が蓄えているデンプンを自分で利用するために、デンプンを分解する酵素を自分で作る、ということを発見するんです。錬水術師たち。
凄くないですか?
21世紀の今の話じゃないですよ。光学機器とか何もないような、むか~しの話ですよ。
二条大麦も凄いですが、その仕組みを発見してしまった錬水術師たちも凄いです。怪しいです。
音もなく声もなく進行する自然の摂理なのに。発見しちゃう。ウイスキーのためにです。
まあ結果的にってことでしょうけれどね。
二条大麦の種子が自分でデンプンを分解し始めたら、それを利用して酵母の発酵に役立てられそうだ、ってことですからね。
で、勝手に発芽されてしまうと錬水術師たちがコントロールできなくなるので、タイミングが来るまで二条大麦を仮死状態にしておく。
乾燥して貯蔵しておくんですね。
で、また、ここからの工程が錬水術師たちの中世的な粘着質の企みが発揮されるところなんです。
その時が来たら、仮死状態に乾燥させおいた二条大麦の種子たちに水分を与えて、目覚めさせます。
その時っていうのはウイスキーを作り始めるタイミング。
仮死状態から水をかけられて無理矢理目覚めさせられた種子たちは、急いで発芽して、自分のデンプンを分解し始めます。麦芽になるんですね。
酵母には分解できない状態だったデンプンが麦芽状態になると自分自身で分解できる酵素と一緒に居る状態になります。
でもこのままだと、種子の中のデンプンは麦の成長にどんどん使われていってしまいますよね。
それが自然なわけですからね。
ウイスキーの錬水術師たちは困ります。
そしたらですね、種子たち全員が発芽したのを見計らって、錬水術師たちは、またしても種子たちを一気に加熱乾燥してしまうんです。
また仮死状態になってもらう。
考えましたねえ、ワルですねえ。
さらに、この二回目の仮死状態にしてしまう加熱乾燥工程にウイスキーを作るうえで重要な技を駆使します。
めっちゃ複雑怪奇。
スコッチのフレーバーです。
あの煙の香りがこの時付けられるんです。
そうです“ピート”って呼ばれるスコットランド特有の土壌を使って。
巧みに温度調整しながら、錬水術師たちは二条大麦の麦芽たちをピートの煙で炙りながら乾燥させるんです。
仕込みの段階まで仮死状態でいて欲しいからですね。
こうして、仮死状態から急に目覚めさせられて、芽を出して成長過程に入った途端、また仮死常態にさせられる麦芽たち。
おまけに何だか煙たい香りまで付けられてしまいます。
錬水術師たちにとっては、ここまでで、まあ、ひと段落です。
ここまでの工程を経た麦芽たちを、錬水術師たちは“モルト”と呼ぶのだそうです。
そう、この段階がモルトってヤツなんですねえ。
と、ややこしい話が長くなりました。今回はここまでです。
<ウイスキーの錬水術師たち>
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