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酒呑みの食いしん坊、メタボはイヤだけどガマンは嫌い。

【ウイスキーの錬水術師たち】その3 『蒸溜』 モルトとグレーン

<ラウドスピリッツとサイレントスピリッツというネーミングセンス いいね!>

「その2 麦汁発酵」からの続きです。

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そんなこんなで出来上がった発酵モロミは、いよいよ“蒸溜”という工程に進んでいきます。


蒸溜という言葉は、みなさん馴染のある単語だと思います。
普通に言ってますよね。


居酒屋さんでジョーリューって話になると、「上流」だとか「浄流」だとかいう単語を思い浮かべている人も居ました。


いやいや、醸造酒、蒸留酒って方の。
と、話が進みますと、ああ、蒸留酒ね。
で、納得という運びになります。


でもまあ、何となく澄んだ、透明感のあるイメージっていう意味では「上流」「浄流」という解釈も、そんなに離れたものではないのかもしれません。


でもですね、そんじゃあ蒸留っていうのが何を、どんなことをするのか、っていうことになりますと、実はよく分からないというのが普通だと思います。


そりゃそうですよね。


身も蓋もなく言うと、呑む酒がンまけりゃイイので、それが醸造だろうが蒸留だろうが、気にしちゃいません。
というのが酒呑みのホンネだったりするわけでありますからね。と思います。


で、今ここでハッキリ言えるのは、

ウイスキー蒸留酒」だってこと。
「ビール、日本酒は醸造酒」だってこと。
なのであります。


ま、これは、誰でも知っているといえば知っていること、ではありますがね。
ンまけりゃイイじゃん、とはいいながら、醸造酒、蒸留酒の区別ぐらいは知っています。

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酒呑みの常識? とまでは申しませんがね。


さてここで質問です。


“ゲーベル”、またの名を“ジャービル・イブン・ハイヤーン”というイスラム圏の人を知っているでしょうか。
8世紀ごろの人です。

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ま、そんなに名の知られた人ではありませんです。誰だよ、ってことでオッケー。
オッケーなんではありますけれど、実はこの人が居なければ、今のウイスキーはなかったかもしれないんですね。


伝説の錬金術師“ヘルメス・トリスメギストス”と並び称される錬金術の大御所。


乱暴な言い方をすれば錬金術師というのは現代の科学者。


ゲーベルは現在の化学の基礎となる研究成果をかなりの数、残している偉人で“アランビック”と呼ばれる蒸留装置を作った人なんですね。


“賢者の石”なんかを精製する過程で、錬金術師たちがいろいろアレコレやっている“蒸留”作業の効率、精度を飛躍させたエラ~イ人。


このゲーベルが酒呑みだったかどうかは分かりません。です。


現在のウイスキーの発酵モロミは“ポット・スチル”と呼ばれる装置で蒸留されます。
このポット・スチルの名前が“アランビック型単式蒸留器”です。


でも“ゲーベル”“ジャービル・イブン・ハイヤーン”“アランビック”の3つの名前。どこにどういう共通項があるんでしょうか。


さっぱり分かりません。


ただですね、言い訳がましく言いますとですね、中世の頃のエライ人たちの名前って、個人名じゃなくって役職名だったり、名誉名だったりとかしていますからねえ。
特にアラブ系、イスラム系のエライ人たち。


“ヘルメス・トリスメギストス”っていう名前にしても、その当人に先立つエライ人、3人のヘルメスの能力を合わせ持った人、という意味らしいですからね。
ご当人の名前は伝わっていません。
なので“伝説”ってことみたいです。


そりゃまあ、いろんな説が巷間に溢れていますが、どれも決定的なものには思えない、というのが現状ですね。


で、まあ、“アランビック型単式蒸留器”です。
中世に発明、開発された蒸留器。

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この銅製の器具で、現在の錬水術師たちは発酵モロミを蒸留して“命の水”“ニューポット”を作り上げているわけです。


ウイスキー好きにとっては、中世、なかなかありがたいんであります。


もちろん、現在の錬水術師たちは中世の方法そのままでニューポットを、ウイスキーを作り出しているわけではなくって、さまざま、現代的な工夫を加えて、今でも試行錯誤しながら鍛錬されているようです。
“賢者の石”を作ろうとしてじゃなくってですね。


ウイスキー蒸留工程の話です。


ポット・スチル、“アランビック型単式蒸留器”でニューポットを作る仕組みを単純に言ってしまえば、


発酵モロミをポット・スチルに入れて、
熱して、
蒸気にして、
冷やしてニューポットにする。


という流れになります。


発酵モロミには水、エタノール麦芽成分、酵母、乳酸菌だとか、実にいろいろな成分が含まれていましたよね。


この発酵モロミをポット・スチルに入れて熱するわけですが、各成分の沸点が違うわけです。


その沸点の違いを利用して、狙い通りのニューポットを作りだすってことを、現在の錬水術師たちは工夫して実施している。


これ、けっこうアナログな作業だと思います。
経験と勘、そして思い込み。なはず。


エタノールは水より沸点が20℃以上低いので先に蒸気となって集めやすい。
結果、ニューポットのアルコール濃度は発酵モロミの時点より高くなるってことです。


エタノールに関しては単純にそういうことなんですが、発酵モロミの中の成分には水より沸点の低い成分がさまざまあります。


さらには、エタノールよりも沸点の低い成分もある。
上質なニューポットを作りだそうとすると、こりゃ、なかなか難しい。


そりゃそうですよ。


毎回キッチリ同じ発酵モロミが作れるわけでもないでしょうし、発酵モロミの成分が全部明確に判明できているわけじゃないそうですからね。


エタノールより沸点の低い成分は、エタノールを効率よく蒸発させようとすると、100%近くがニューポットに取り込まれることになるわけで、それでイイのかってことです。


エタノールより沸点の高い成分にも、ニューポットに取り込みたい成分もある。
どうすればイイのか。


この辺りの工夫が、どんなニューポットが出来るのか、作り出したいニューポットになるのか、という決め手になるんですね。
錬水術師たちのウデの見せどころ。


そもそもこの蒸留の段階を想定して、神経を使って、経験を活かして作り上げるのが発酵モロミなんです。


で、蒸留工程でも、沸点の違いによって何をどんな割合で取り出すか、工夫とアイディアの勝負、なんでしょうね。


インプットとしての発酵モロミ。
アウトプットとしてのニューポット。


途中の蒸留工程はブラックボックスみたいなもんです。


インプット、アウトプットにしても完全に解明できているわけじゃない。
ウイスキー造りはまさに“錬水術”


発酵モロミの固形成分が直火で熱することによって焦げてしまって、焦げのフレーバーがニューポットに出てしまうことがある。


これを避けるために、最近ではポット・スチルを直火で熱する方法ではなく、蒸気をあてて熱する間接加熱という方法をとっているそうです。


でも直火で熱すれば「パンのアロマ効果」で触れたメイラード反応で、イイ香りが発生する効果もあったりしますから、何を作りたいか、作りたいニューポットのためには、何をすべきで、何をすべきでないか、っていう錬水術師たちのナレッジ・マネージメントが重要ってことなんですね。


けっこうプリミティブ。

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ポット・スチルのほとんどは銅製らしいんですが、これは、さっき言った沸点の低い成分のうち、ニューポットに対して迷惑な臭いを放つ硫黄系成分の蒸気を、銅が取り除いてくれるから、という明快な理由があるんだそうです。


ポット・スチルのライフサイクルを考えればスティールで作れば良さそうなところですが、昔ながらの銅。


錬水術師たちのナレッジの1つなんですね。


こんな感じで、いろいろ工夫があって、ニューポットが作り出されます。


この段階までがモルトの、発酵モロミの“初留”と言われる蒸留で、通常もう1回“再留”が行われるそうです。
アルコール度数がさらにまた上がることになります。風味も違って来るでしょう。


こうして単式蒸留器によってモルトウイスキーのスコッチ・ウイスキー、ジャパニーズ・ウイスキーが作られていきます。


蒸留器には“連続式蒸留器”というのもあって、単式蒸留器で行われる過程を連続的に実行する。
結果として、モルトウイスキーよりかなりアルコール度数の高い蒸留液が作られます。


連続式蒸留器で作られるウイスキーを、モルトウイスキーに対して“グレーンウイスキー”と言うんですね。

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単独で呑まれることは少ないですが、サントリーの“知多”がグレーンウイスキーです。


アルコール度数は43度に調整されています。なかなかイイ酒だと思います。


錬水術師たちの仕事の結果には、実にいろいろあります。
面白いです。有り難いです。


モルトウイスキーは“ラウドスピリッツ”と呼ばれます。
個性的っていう意味ですね。


なんで個性的と言われるのか。
発酵モロミの特徴を活かしながら蒸留するので、担当する錬水術師が目指す風味が“独特の主張をする”からだと言われています。


言ってみれば“うるさい酒”


対してグレーンウイスキーは、純粋にエタノール濃度が高くて、主張する風味は弱いので“サイレントスピリッツ”沈黙の酒と呼ばれています。


ラウドスピリッツであれサイレントスピリッツであれ、完成品としてのウイスキーは、ほかの酒類、ビールだとか、日本酒だとかに比べて、あくまでも主観ですが、独酌の似合う酒だと思うんですね。

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モルトウイスキー単独、グレーンウイスキー単独で呑むことは、どちらかというと少ないですよね。たいていはブレンデッドウイスキーだと思います。


モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせるブレンデッドウイスキー
モルトもグレーンも1種類とは限らない。ブレンド比率も錬水術師たちの技です。ワザ。


でもまだ、蒸留が終わったところまで。


ボトルに入ったウイスキーになるまでには、ここからが長いんですよね。


とにかくウイスキーって酒は出来上がるのに時間がかかる。
なもんだから原酒不足、とかいうことになってしまうわけです。


次回はいよいよその長い時間のほとんどを占める“熟成”へと話は進んでまいります。


よろしくお付き合いくださいませ。

 

ウイスキーの錬水術師たち>

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