＜文字落語 ホンモノのしば漬けを食べに そうだ京都行こう というホンのお気持ち の一席＞
マルちゃん棒さんシリーズでございます。
今回も『Iconpon - 無料アイコン素材』さんのアイコンを利用させていただいておりますです。よろしくお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
4月に入りまして東京は「緊急事態宣言」から「まん延防止等重点措置」だとかいいましてね、名前が変わっただけで中身に変化は無いんですがね。相変わらず時短営業、自粛の巣ごもり生活の日々でございますよ。
なんだって名前だけ変えたのかってえますと、聞くところによりますと、海外向けなんだそうですね。
緊急って言葉が英語になって伝わりますと「エマージェンシー」ってことになる。
エマージェンシーって言葉で海外のニュースになりますと、日本はヤバイね、行かない方がイイねってなるんで、それは避けたい。
つまりオリンピックに向けてですね、日本はエマージェンシーから脱却しましたよっていう印象を与えたいっていうね、それが狙いなんだそうでして。
なわけで、中身は何にも変わりゃしなくたってイイわけです。
日本のエライ方々は、そんなことに気を遣っているんですね。はい。それはそれでタイヘン、なんでしょね。
それにしましても、大阪を筆頭にして関西方面でもなかなか大変なご様子でしてね、感染は止まりません。
変異株だとかいいましてね、第4波。しつこいやつですよ、コロナさんは。
まったくねえ、なんとかならないもんなんでしょうか。
マルちゃんも最初の頃は通勤電車に乗らなくてイイってんで、テレワークを喜んでおりましたがねえ、自粛自粛の巣ごもり生活で、なんだかストレスたまってきちゃったようでして、ブータレルことが多くなっていますね。
きょうは休みなんで、遅い昼飯をお茶漬けで、棒さん相手にうだうだやっておりますようで。
あのさあ、だいたいここから14,000円ぐらいなんだよね
あん？ なにが？
新幹線で2時間ぐらいでしょ
だから、何がですかって聞いてんの
京都
はあん、……。今はダメでしょ
今はね、だけどもうすぐでしょ
いやあ、なかなかねえ、どうだかねえ
2人のお茶漬けはですね、パックのごはん。チンするやつですね。玄米ごはんをチンしまして、永谷園の海苔茶漬けです。ざ・オーソドックス。それをふりかけまして、そこにペットボトルのほうじ茶をざぶざぶかけます。
そういうお昼、といいますかブランチなんであります。ま、なかなか旨いものではありますよ。
それに近所のスーパーで安売りしていた「しば漬け」を脇に添えています。
しば漬けは二人とも大好きなんです。キュウリ、シソ、ミョウガ、ナスが入ってますね。
バリバリ、サラサラやっております。休みの日の「おうちめし」はこんなんがイイですけどね。
手軽にサラッと旨いってんであればですね、満足です。
京都ってずいぶん行ってないでしょ
まあ、そだね。3年前？ だっけ？
ん～ん、もう4年前だよ
まあ、どちらさんもね、気軽に出かけられないってのが、もう1年以上続いていますからね。マルちゃんがどこか出かけたいという気持ちは、ダンナの棒さんも重々承知してはおりますんですよ。
ですがまあ、だしぬけに京都です。マルちゃんはいつも突然なんですね。
しば漬け食べたい
ん～、それ、どっかで聞いたような……
ホンモノのしば漬け
別に、これでイイじゃん
これ、違うもん
大原で食べたのだって似たようなもんだったよ。たしか
バッカじゃないの。全然分かってないんだから
今の時代、なんでもそうなんですが、日本中に流通させますんでね、元々のものとはだいぶ違っていますからね。
どうでしょうか、みなさんも普通に食べたことあると思います、しば漬け。ビニールに入ったやつね。パック入りもあります。
赤といいますか、紫色のお漬物。キュウリがメインですよね。
ところがこれ、ホンモノってマルちゃんが言ってるしば漬けっていうのが、ちゃんとありましてね、これはナスが主体なんだそうでありますよ。
大原って言っているのは、はい、もちろん京都の大原ですね。
東京だけじゃなくって他の府県からでもね、今は行きづらいですからね、京都。やきもきしている人も少なくないと思いますけれども。
行きたい人も、来て欲しい人もね。
しば漬けっていうのは、その大原の名産です。
名物にうまいものなしって言うじゃん。大原のじゃなくたって、オレはこれで充分だけど
あのね、それはアクティブな言い回しじゃないよ。それに名物とホンモノって違うし。あんただって旨いって言ってたじゃん、大原のしば漬け
なんかね、定食屋さんでちょこっと付いてくるお新香にも、よく出てきますからねしば漬けって。そんなにありがたがって食べちゃいませんやね、普通ね。
ありがたがって食べちゃいません。
でも、しば漬けって、案外に高貴な歴史があるんですよ。ま、ご存じの方も多いかとは思いますけれど、あれです、建礼門院徳子ってお人です。
第80代高倉天皇の中宮。第81代安徳天皇の御母堂。平清盛の娘として知られた当時のファーストレディ平徳子（たいらのとくこ）。
壇ノ浦の戦いでわずか7歳で入水した息子の後を追って、壇ノ浦の急流に身を躍らせたものの、絢爛な着物が邪魔したものか、沈みゆく前に、敵方、源氏勢によって引き上げられてしまって、大原の寂光院に隠棲して、一族の菩提を弔って暮らしたんだそうであります。
当時の大原は裏寂れたところだったそうなんですが、地元の人は建礼門院徳子さんの大きな悲しみに寄り添って出来得るかぎりのことをしたんだそうです。
お口汚しですが、と差し入れられたのが、当時から大原名物だったナスの赤紫蘇塩漬け。
その紫色を、建礼門院が好んで、自ら「紫葉漬け」と名前を付けた、と、こう伝わっているんだそうです。
大原の赤紫蘇っていうのが、これまた京都の、大原の土地独特のものなんだそうでして、他の土地の紫蘇では出せない色と味っていうのが、マルちゃんの言っているホンモノってことなんですね。
違いの分かるオンナ、って言いたいんでしょうね。
パックごはんにペットボトルのほうじ茶でお茶漬け食べながら、しば漬けだけはホンモノを食べたいっていうのも、なんと申しますか、良く言えば「一品贅沢」ってことなんでしょうけれども、なかなかね、棒さんが面倒くさがるのも無理はないんでありますよ。
2人で片道4万円、往復8万かけて、そんで、しば漬け？
イイじゃない。旅行ってそういうもんでしょ。目的じゃなくって出かけるってことが大事なのよ
ま、それは否定しないけどさ
じゃ、なんなのよ
まだしばらくは出かけられないでしょっての
だから今じゃないわよ。治まったら
ああ、治まったらね。オレ、豆腐が食べたいな
何言ってんの？
京都の居酒屋さんで食べた自家製豆腐。あれサイコーだった
あ、あれね。あたしも思い出した
うん
また行きたいね、京都
うん
ま、結論が出たような出なかったような感じの2人ですが、今回は2人とも素面ですからね。アルコール、呑んでいないです。
このところ、家呑みばっかりだったんですが、棒さん、なんだか飽きてきたといいますか、家呑みというスタイルに倦んできているようなんですね。
家で呑んでもイマイチ楽しくならない。かといってソーバーキュリアスを実践しようってわけでもない。
知らないうちにストレスにむしばまれている、のかもしれません。
マルちゃんのしば漬け食べたいっていうのも、ウソはないんですが、これもまた巣ごもり生活のウンザリ感が言わせたようなところがありましてね。
こういうのってマルちゃん棒さんカップルだけじゃありませんよ。東京中、日本中、コロナ禍の自粛に倦んできていますよ。
だからってまあ、大人数でドンチャンやっちゃいけませんです。今はね。
そりゃあ分かっちゃいるんです。どなたさんもね、ちゃんと理解している。じっとしているんですがね。
ふんとにねえ、早く何とかならないもんですかねえ。
この前、ご隠居さんの家の前にドラッグストア出来たよね。スコッチあるかな？
開店セールとかで混んでんじゃないの？
でもさ、様子見に行ってみようか。このところどっこも出かけてないしさ
う～ん、そうねえ。家の中でウダウダしているよりは、チョットでも歩いたほうがイイかもね
最近のドラッグストアって、なんでも置いてますからね。
ただ確実に言えそうなことは、棒さんが目新しいスコッチに出会う可能性よりは、いつものしば漬けを見つける可能性の方が高いだろうってことですね。
おあとがよろしいようで。
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