< いや ちゃうねん 新しいドリンクやないねん >
え~、毎度まいどのばかばかしいお噺でございまして、ひとつまた最後までよろしくお願い申し上げておきますが。
どうもね、世の中スッキリしない日々がおります。スカッとすることがないですね。
日々の暮らしでスカッとするためにはどうするか、ってことでございましてね、庶民のすることってのは昔っから決まってましてね、仕事終わりのビールですねえ。
そうでやしょ? だんだん暑くもなってまいりました。
スカ―ッとしないではいられませんよ、ビールでね。人類史上最高級スッキリ発明。
いや、イイんですよ銘柄なんてなんでもね。ジョッキの生ビールでも瓶ビールでも、どっちでもね。
でもほら、昼からビールってわけにもね、なかなかいかないってのも現実でしてね、そんな時はどうするかってえますと、これもまた定番ってのがございますな。
苦いのはヤッ! ってなオコチャマにもいけますよって、アレです。
はい、サイダー、三ツ矢サイダーってやつで。
♪冷たくされてもいいんです
♪冷たくするからいいんです
ってね、コマーシャルソングがありました。「サイダー77」ってやつね、大滝詠一さんでございますよ。
♪一人で二人で三ツ矢サイダー
ってね、夏のスッキリは三ツ矢サイダーの独壇場でございましたね。
え? あ、キリンレモンね、ありますあります。これね、スッキリ爽やか2大勢力でさあね。
三ツ矢サイダー、大瀧詠一さんの1人勝ちに待ったをかけたのが、
♪レモンライムの青い風
♪伝えて愛のドリームオブユー
はいそうです、1979年、竹内まりやさんの「ドリム・オブーユー」
キリンレモンのコマーシャルソングですね。
両方ともイイ歌ですよ。
「ドリム・オブーユー」は普通に歌謡曲としての人気もありました。
知らず知らずのうちに、ストレスにさいなまれてしまうっていうね、現代に生きる我々でございますけれども、日々、なにかしらスッキリするって方法をね、持っていたいもんでございます。
ここにひとつの独立国家がありまして、はい、しょーない国っていうんですがね、日本海側にあるちっちゃな国なんでございまして、この国はね、特にスッキリしたい人ばっかりなんでございますよ。
いや、しょーもない国ってんじゃないんです。ほら、昔のね、荘園なんて言っていた時代のね、その中心にあった地域ってんで、荘園の中。そこから「しょーない」って名前になったそうでありますね。
今も1人、スッキリしたい症候群の男が1人、しょーない国に1軒しかない病院を訪ねてやってまいりました。
「おうい、ご隠居。まぐまぐでゅうなもんで、ちょいと診てやってくれ。おうい。ん? なんだこのフダ、本日休診ってなどういうこった? おうい、ご隠居」
どうもね、無茶な奴もいたもんでして、休診ってんですからやってないんですよ。それをお構いなしにドアをガンガンやってますよ。
「おうい、まぐまぐでゅうだっつってんのによお」
こう騒がれたんじゃあ、ご近所迷惑でもありますからね、内からでてまいりましたね。
「こらクマ公、そんなに大声で騒げるんだったら普通の人より丈夫ッてもんじゃないか。なにがまぐまぐでゅうだ。さっさとウチへ帰ってマウンテンデューでも飲んで寝ちまえ。こんにゃろ! きょうは休診なんだぞ」
「なに言ってんだよ、ご隠居。休診だとか難しいこと言ってねえで、ちょいと診てくれりゃイイじゃねえか。おいら、まぐまぐでゅうで弱ってんだからよ」
「休診のどこが難しいんだ。お前みたいに殺したって死なないような奴はな……」
「いや、違うんだよ、おいらじゃなくってうちのカカアがよ」
「なに、おとよさんが。そいつあ大変じゃないか。いったいどうしたっていうんだ。よし、すぐに往診する。まったく、本日休診だってのに」
ま、お医者さんってのもね因果な役回りでして、商売ってな感覚じゃやっていけませんね。しょーない国だけのことじゃございませんで、小さな町では止むを得ません。なにを差し置いてもまぐまぐでゅうを救わないといけませんわけでして。
え? そですね、まぐまぐでゅうね、なんでしょね。具合がよろしくないことには違いないと思うんですが、具体的には分かりません。
方言ってのはですね、厳密に申しますと標準語に翻訳なんて出来ないもんなんですよ。
ま、ここではしょーない国のしょーない語ってことでありますがね。
そこの地域のニュアンスってのがありましてね、生活習慣の中に根付いている言葉ですから、標準語に無理矢理訳しちゃったとたんに、何か違うものになっちゃうんですね。ホントですよ。
ま、今はとにもかくにも、ご隠居がクマ公の家に駆け付けましたですよ。
「おとよさん、どしたい。まぐまぐでゅうだっていうことだが」
「はーいドクター、ようこそ~。むらむらでゅうだかあ?」
「いや、……あのな、心配して来てみりゃ、なんのことはない。全然元気そうじゃないか」
「まあね、今はずいぶんピュアになった気分なんだけどさあ、昨夜ね、急に、はかはかでゅうになって、ここんとこが、せかせかでゅうだったのよ」
「いや、おいらが耕運機で迎えに行ってさ、ごでらごでらでゅうで帰って来たらよ、家ん中に入ってもふわらふわらでゅうだったもんでよ」
「だあから言ってるでしょ、あの耕運機、ファンベルトが、ゆるゆるでゅうなのよ」
「あのなあ、うちは本日休診だったんだぞ。おまえらのいちゃいちゃでゅうに付き合ってらんないよ」
あのですね、いちいちでゅうで、わざわざでゅうの説明をさせていただきますとですね、これで充分に通じ合っているんでございますよ、しょーない国の中ではですね。
でゅうデューばっかり言ってるわけじゃございませんですが、なんかね、いろいろバリエーションは自由に使えそうなでゅうではありますよ。
しょ―ない国のでゅうはですね、マウンテンデューのデューと発音は一緒だそうでございましてね。
ちなみに、そのマウンテンデューなんですが、三ツ矢サイダー、キリンレモンに次いで第三の勢力って言えるのかもでありますよ。
ペプシコですね。炭酸の強くないタイプですが、これ、元々は「密造酒」って意味で使われてた隠語だってことでしてね。山の酒。
日本では「山のしずく」なんて訳されてはおりますけどね、ウイスキーの割り材、ミキサーとして作られたのが最初だそうでございます。
いえいえ、しょーない国のでゅうは、そのデューとは何の関係もございませんでしょう。たぶんですけどね。
まぐまぐでゅうの原因ってのはですね、特に究明されないのが普通のことなんであります。
にしてもですね、楽しく「進化」した言葉でありますね、しょーないでゅう。
この噺のしょーない国と関係があるのかないのかは関知しておりませんが、「ミッチー笑店」てえオンラインショップがありまして「山形方言グッズ」ってのを扱っておられますよ。
「どだなだずTシャツ」「あてがっTシャツ」「アガスケTシャツ」「ムガサリシャツ」そして「マグマグデューTシャツ」「肉食いでぇなぁTシャツ」
ノット・ディス・バット・ワッハッハ、なんでございます。
言葉の意味は、さっぱり分かりません。肉、食いたいみたいですけどね。
世界が「レモンライムの青い風」に包まれますように。
おあとがよろしいようで。