<梅若菜 丸子の宿の とろろ汁 分かってないねえ芭蕉さん 麦とろ>
6月16日は、麦とろの日。ム、ト、ロ、で麦とろってことなんでしょうね。ギは月、ガツのガってことで。ま、そんなところで、ひとつ。かなん?
麦とろとは、麦飯にとろろ汁をかけた料理で昔から親しまれる一品。みなさんご存じ。
麦もとろろも整腸効果があって、胃もたれ気味のサラリーマン諸氏にも人気がありました。
ありました、と、過去形で言うのには理由がありまして、平成のあたりから、街なかで麦とろの看板を見かけなくなってきています。
なして? と思うのであります。
昼の定食にも人気の麦とろ屋さん、いっぱいあったんですけれどね。今はほとんど見ません。人気がなくなった?
身体にイイのは間違いなさそうですが、健康ブームに置き去りにされてしまったのは何故なんでしょうか。
ひとつ考えられるのは、とろろを啜るズルズル音。
最近はヌードルハラスメントだとか言って、麺を啜る音に眉根を寄せる人、少なくないですもんね。
最初は海外から来た方達が、日本蕎麦、ラーメンを食べる日本人に対して批判的に言っていた印象みたいです。
あのね、日本にはね、啜って食べる文化ってもんがあんの! モンク言われたくないの!
と反論する日本人、多いです。
でもですね、実は私も、隣りでズルズル蕎麦を啜っているヤツに気を悪くすること、けっこうあります。私にとってもヌードルハラスメントになっている人がいるんです。
必ずそうなるわけではないです。
そばでもラーメンでも、おそらく麦とろでも同じなんですが、要するに、食べ方の問題なんだと思うですね。
最近の日本人って、啜り方、ヘタになったんじゃないでしょうか。
例えばお茶漬け。
サタサラといくのがお茶漬けなはずなんですが、今どうですか、ズルズルやってる人多いですよね。
これ、テレビコマーシャルのせいかなあ、とずっと思っておりますね。
ラジオ番組なんかでは音だけしか使えないですからね、必要以上にズルズルやってたりします。宣伝効果としてはダイナシ、なんじゃないかと感じることも少なくないです。
テレビを持っていないので詳しくはないのですが、堀田茜氏がラーメン、蕎麦を啜っている場面を二回とも偶然、同じラーメン屋さんのテレビで見たことがありますが、氏の啜り方が唯一見た旨い啜り方。モデルさんなんでしょうか。嫌味なく啜っておられましたね。
蕎麦を啜る形態模写をする落語の芸、見たことあります? これがまた誰か止めさせろよ、というぐらいヘタッピイになってしまっています。残念です。ホント、ヘタ。
蕎麦っ喰いの風上にもおけない、というやつです。
あの雲黒斎先生に石の下からなんとか言ってもらいたい、といっても今さら致し方ないんですけれどねえ。
昭和の古い時代には名人がいまして、蕎麦とうどんの啜り方の違い、なんていうのを、小気味よく、旨そうにやってくれていたものでした。
啜って食べる文化ってもんがちゃんとあった、ってことでしょうね。
そもそも、蕎麦は「手繰る」と表現される食べ方をするもんなんですが、今の、ヌードルハラスメントの人たちを見ていると、箸で口に一回運んだら、あとは箸で手繰ることをせず、口の吸引力だけで一気に啜りますね。
ズルズル族です。ウルサイです。ハラスメントです。
この食べ方をスパゲッティ屋さんでやっている人もいて、そりゃあ、海外の人に嫌がられますわなあ、と思います。
女性でもいますからね。ガックシきます。
上手に、旨そうに啜る人も、もちろんいるんですけれどね。あたりまえですが。
啜る必要のないごはんでさえ、啜って食べる人も実は少なくなかったりします。
音を立てず上品に、というつもりはサラサラないです。食べる音も旨さの要素だと思います。
ですが、
ラーメン食べるときの中国人、そんなにズルズルさせないです。
スパゲッティ食べるときのイタリア人、フォークで巻いて食べますからね、そもそも啜らないです。ズルズルさせない。
啜って食べる日本文化は、決して目くじら立てられるようなものではないんですよ。器用さの表れでさえあるかもしれません。どこかで間違った解釈をしている人がいるだけなんです。
蕎麦もラーメンも麦とろも、旨く、巧く食べたいものです。
ズルズル族よ、ころんでしまえ!
おほほ。。。
で、見出しにあげた芭蕉さんの句ですが、丸子というのは土地の名前で現在の静岡市にあります。丸子にあった茶店の「とろろ汁」が江戸時代から名物だったそうなんですね。今でも人気だそうです。
梅若菜というのは味付き梅干しなんです。あんまり酸っぱくないヤツ。
麦とろは土地によってバリエーションがいっぱいあって、とろろ以外に何かワンポイントがあるものですね。付け合わせ。
芭蕉さんにとって丸子でのそれは梅若菜だったんでしょうね。
でもですね、とろろに加えるワンポイントは、しっかりした塩っ気だったり、酸っぱさだったりが効いている方が絶対ンまいですよ。
芭蕉さん、旅の途中だっていうのに、甘党だったんでしょうか。甘っちょろい梅干しなんて、どうもいけません。
尤も、今のはちみつ梅干しなんかとは違う味ではあったんでしょうけれども。
仙台の牛タン麦とろも有名です。牛タンは仙台名物。
それは承知しておりますが、麦とろに合わせたのはどういう理由なんでしょうか。
牛タンもまた味のしっかりしたものですね。
どうも麦とろ、何か味の強いものを合わせるというのが、昔から人気の食べ方なんだろうと考えられますね。
梅干しを乗っけたり、牛タンを合わせたり。
土地ごとの工夫があるんだと思いますが、今回はとびっきり安くてンまい麦とろの話です。
まず麦飯を炊きます。
今はスーパーで五穀米、十穀米というのもありますし、パックになって30%の麦飯も売っています。白米に30%の麦、という便利なものです。
こういうのを使う手もありますが、やっぱり炊飯器に麦を追加して炊き上げるというのがベストかと思います。
麦は健康の素です。
麦飯は炊きあがるのに、いつもより時間がかかると思います。じっくりいきましょう。
ちょい硬めが狙いどころです。
炊いている間に塩鮭を焼きます。塩加減はお好みのものを用意しましょう。
ざっくりと身をばらしつつ焼きます。焼き上がったら皿の中でさらにほぐしてフレークにしておきます。骨はしっかり取りましょう。
次にとろろをおろします。
最初から最後まですり鉢でおろすのでなければンまくない、というセンセ方が多いようですが、別に気にすることはないです。おろし金でガリガリやっちゃいましょう。
鬼おろしだけは向いていないと思いますが。
とろろ芋はお好みで。山芋、長芋、自然薯、なんでもござれ、なんとなればミックスでも、ガリガリすり鉢の中におろし入れちゃいます。
多少欠けても大丈夫。限界までおろして指が危ない、となったら、残りのかたまりもすり鉢の中へ。
大事に、ありがたくいただきましょう。
そんな感じでおろし終わったらとろろの中に全卵を2、3個落として、すりこ木でゴリゴリ。軽めでいいです。卵が馴染めば、ひとまず置いておきます。
で、何をするかというと、味噌汁を作ります。
具のない味噌汁です。
鍋に水を張って麹味噌を溶きます。味の濃淡はこの段階のお好みでほぼ決まります。
麹味噌を溶いたら、煮干しを適量放り込んで、ここで鍋に火を入れます。中火。
ま、火を入れるタイミングはもっと早くともかまわないんですが、煮立てない方がンまく出来上がります。グツグツ煮干しを煮込んだりしちゃいけませんです。
まあ、物が煮干しだけに煮戻しということになるのかもですが。伝統のだしです。
味噌汁が出来たら、少しずつとろろの中に入れて、ゴリゴリやります。煮干しは入れません。ちょっと入れてゴリゴリ、またちょっと入れてゴリゴリです。
すり鉢の中でとろろと味噌汁を馴染ませる感じです。
大きめのかたまりが残っていれば、すりこ木ですりつぶします。
ちろっと味をみながら、また味噌汁を加えてゴリゴリを続けます。
この段階で甘いかなと思ったら、しょう油で調整します。
味噌汁をどれぐらい入れるかは、とろろの緩さがお好みになるまで、です。
で、次に、干し海苔を炙ります。
干し海苔じゃなくってもイイんですが、炙った干し海苔の香りがベストマッチです。
干し海苔を1枚だけ炙るときは表面を重ね合わせるように折って、ガサガサした裏面だけを炙ります。2枚炙るときは表面を付け合わせて、とにかく裏面だけを炙ります。部屋中に海苔の香りが充満して、食欲をそそるんですねえ。食べる前からンまいです。
焦がさない程度に強めに炙ります。
炙った海苔を、すり鉢の上でもみくちゃにします。バリバリガサガサ、思い切りやります。
さらに焼きのりの香りが強くなります。
ササっとすりこ木でかき回して海苔を馴染ませます。
特性とろろの出来上がりです。
炊けた麦飯を茶碗なり丼なりに盛って、とろろをたっぷりかけて、まだ熱い鮭フレークを振りかけます。
出来上がりです。絶対、間違いなくンまいです。
その上から、もう一度炙った海苔をもみほぐしかけてもンまいです。
ザクザク食べられます。胃腸が整います。
七草がゆのタイミングで、とろろ膳。お勧めです。
ごくあっさりの浅漬けとか、相性イイです。
みんなで食べれば、みんなにっこりです。
ンまく、巧く食べましょう。
<麦とろの身体に旨い満足度>
麦飯は、血糖値、血圧、コレステローの抑制に効果があるそうです。
麦の水溶性食物繊維のおかげで胃腸にイイ。
長芋は、タンパク質、ビタミンB群、ビタミンC、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを含んでいて、これまた血圧コントロールにイイんだそうです。
両方合わせて胃もたれを解消して、胃腸の機能を回復してくれるという優れものなんですね。ダイエットにも良さそうです。
とろろの消化酵素は熱に弱いとのことなので、生で食べるのは理にかなっているということもいえそうです。
<麦とろの心に旨い満足度>
特に腕に覚え、ということじゃなくっても、最初から最後まで調理できるということは、なんだかんだいっても、やり遂げた感覚が気持ちいいです。
すり鉢すりこ木でゴリゴリって、なかなか人間的というか、食べ物を作っている感じを楽しめます。けっこう難しいんですよ、ゴリゴリするの。
細かいことを言えば、干し海苔を正しく炙ると、とてつもないしあわせ感に満たされること請け合いです。こうした細かなところにンまさの秘密が隠れていますね。
レンチンでは味わえない、自分で食べるものを自分でこしらえるって感覚。そして、食べてンまい。これはもう、ストレス発散まちがいナシ。
<麦とろの酒のアテ満足度>
さすがに味噌汁で溶いたような凝ったものを出している店には出会ったことないですが、自然薯をおろしたものに、卵黄を落として出してくれる店はありますね。
海苔もかけてくれますが、残念ながら香りのとんだキザミですね。でなければ完全に乾いた青のり。とてもとても、残念。
清酒、焼酎に合います。麦とろめしじゃなくって、とろろ単品ね。
<麦とろの酒の〆満足度>
メニューに麦とろがある居酒屋さんは知りませんが、とろろがあれば、ごはんをもらえば出来ますね。麦とろめし。
焼肉、焼き鳥、焼きトン、とかを一緒に食べると満足な〆になるかと。
<ご近所にありますか 麦とろ?>
ホントに最近は街なかに麦とろの看板を見かけないのですが、どうですか、みなさんのご近所にありますか?
看板は出していないけれど、メニューにあるよ、ンまいよ、というお店情報、教えてくださ~い。