ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

ーー 居酒屋トークの ネタブログ ーー

【マリー・アントワネットの首飾り】ブルボン朝最後の詐欺事件 その2

< 宝石を巡るコスカライ詐欺犯罪に関わった人たちの それぞれの最後 >

なんだか調子のイイことを言ってる感じの女が声をかけてきたところからの第2回目です。


「あたしが話を聞いてきてあげるわよ。例のあれでしょ、首飾りの件でしょ」
なんてね、妙に物分かりのイイことを言う人が出て参ります。


声をかけてきたのが「ラ・モット伯爵夫人(1756~1791)」本名「ジャンヌ・ド・ヴァロワ=サン=レミ」
伯爵と結婚したから伯爵夫人なんですけど、その人、ホントに伯爵なの? って言われているような人だったみたいです。


当の「ラ・モット夫人」も修道女なんてまっぴらよ、っていうんで逃亡して結婚したっていう女の人です。
そんなラ・モット夫人には細かい計画があったんでした。


ちょっと時間を置いてから宝石商のベーマーさんのところへ行って、
カリオストロさんから知恵を授かって来たわ。あたしに任せてちょうだい。マリー・アントワネットに買ってもらうのよ」


そりゃね、85億円の品物ですからね、横丁のおばちゃんが買うっていう話をしたって、どうにも動くもんじゃないですよね。
でも買うのがマリー・アントワネットだっていうなら、とんとん拍子に進みそうです。

 


ラ・モット夫人は、何かと評判の悪い「ロアン枢機卿」に話を持ちかけます。


「ルイ=ルネ=エドゥアール・ド・ロアン(1734~1803)」は聖職者なんですが、派手ハデな生活の人でマリア・テレジアマリー・アントワネット母娘からとっても嫌われていたそうなんですけど、ルイ15世の死去に伴って、何の役職もなくなってしまったんで、なんとか、今現在のヴェルサイユ宮殿の主、マリー・アントワネットに取り入りたかった人なんですね。


そんな情報もラ・モット夫人は仕入れているわけです。
「ロアンさん、あなた宮廷内での地位が欲しいって言ってましたよね。マリー・アントワネットとつながるイイ話があるのよ。ちょっと会ってみない」
「ええ~?! 王妃と会えるの」
ってことで、そんなに軽くはないでしょうけれど、話が進んで、ロアン枢機卿マリー・アントワネットと会います。


そですよね、そんなにうまく話が運ぶわけもなくって、ラ・モット夫人が引き合わせたのは、容姿の似た「ニコル・ドリヴァ男爵夫人」
娼婦マリーって呼ばれた人。


どういう形で話をしたのかまでは分かりませんが、王妃に直接会うことなんて無いっていうのが普通でしょうからね、ニセモノだって判かりゃしないってことなんでしょうけど、なんとも大胆です。


ロアン枢機卿にしてみれば世紀の謁見なわけで、偽のマリー・アントワネット、娼婦マリーからこう言われます。


「例の首飾りですけどね、実は国王の許可がまだおりていませんの。でも、すぐに都合をつけていただけるでしょう。ただね、あたくし、すぐにあの首飾りを自分の手元に欲しいんですの。あなたに何とかしていただければ、きっとお礼はさせていただきますわ」
「致しますイタシマス。なんでもすぐに致しますとも」


ってことで、さっそくロアン枢機卿はラ・モット夫人に連れられて、宝石商のべーマーさんのところへ行くわけですね。


「これ、いくらなの?」
「はい、85億円でございます」
「じゃあ、前金で8万5千円ね」
「はあ?」
「大丈夫だって、ちゃんとマリー・アントワネット王妃から直接指令を受けてここに来ているんだから」
「しかしですねえ、これ、85億円ですよ。8万5千円とか、そういう金額じゃ……」


と、ここでラ・モット夫人が口を挟みますね。


「べーマーさん、こちらのロアン枢機卿さまは近い将来フランスの財務総監の地位を、マリー・アントワネット様から約束されている人なんですよ。それに、長く時間を置いてしまったら、あの気難しい王妃様が心変わりして、そんな首飾りなんて要らないって、また、言いかねませんよ」


ま、実際にはどんなやり取りがあったのかは分かりませんが、ここで、85億円の首飾りがラ・モット夫人の手に入ります。

これじゃないですけど

 

ちなみにこの頃、1775年ごろのフランスは財政難に加えて食糧危機に見舞われていて「パンの代わりにケーキを」とかいう発言は、この頃のエピソードみたいですね。


「ラ・モット夫人、これは直接わたくしが王妃に」
「なにを言っているんです。あなたに求められているのは奥ゆかしさだっていうことを、あなた自身、ご存じないはずもないでしょう。これはあたくしからマリー・アントワネット王妃に手渡します。あなたの活躍をしっかり伝えておきますよ」


ラ・モット夫人はマリー・アントワネットの「お友達」っていう触れ込みですからね、それじゃあヨロシク、ってことになったみたいです。


この2人の関係を同性愛って言っている説明も見かけますけど、たぶんおそらく、会ったこともない、っていうのがホントみたいです。

 


で、その首飾りは、ラ・モット夫人の旦那、ホントに伯爵なの? って言われているラ・モット伯爵によってバラバラにされてイギリスで売り払われちゃったんだそうです。


マリー・アントワネットから、なかなか呼び出しがかからないなあって思っているロアン枢機卿なんかより、8万5千円しか手にしていない宝石商のべーマーさんは、すぐに焦りだします。


気が付いてみますと、べーマーさんは、カリオストロの居所も知らなければ、ロアン枢機卿、ラ・モット伯爵夫人のこともよく知らない、連絡の取りようがない。
ダメもとでヴェルサイユ宮殿に出向いて、「実際の」王妃側近に直談判します。


マリー・アントワネットにしてみれば、ラ・モット夫人なんて知りませんし、首飾りはハッキリ要らないって断っているはずなのに、買い上げるっていう約束だって言われてもねえ、ってことで詐欺事件発覚。
1785年のことらしいです。


ロアン枢機卿、逮捕。

べーマーさんは言います。この人です、8万5千円で首飾りを持って行ったのは。


ラ・モット夫人、逮捕。

べーマーさんは言います。この人です、一緒に来て首飾りを持って行ったのは。


娼婦マリーこと、ニコル・ドリヴァ男爵夫人、逮捕。

ロアン枢機卿は言います。この人はマリー・アントワネット王妃ではないのですか。


カリオストロ夫婦、逮捕。

だあれも、知らんがな。わたしら関係ないよ。


首飾りをバラバラにして売りさばいたラ・モット伯爵はロンドンへ逃亡して雲隠れしたそうです。


パリ高等法院で裁判が開かれて、1786年判決。


カリオストロ夫婦。無罪。

そりゃそうでしょねえ。名前のイメージをラ・モット夫人に利用されただけ。


ロアン枢機卿、無罪。

でもねえ、なんにもイイことなかったです。


ニコル・ドリヴァ男爵夫人、無罪。

ラ・モット夫人に頼まれて、ちょっとお芝居しただけよ。って、それもどうかと思いますけど、無罪です。


ラ・モット夫人、有罪。

いいえ、全ての計画は夫のラ・モット伯爵です。
いいえ、あなたが主犯です。


ってことで、「泥棒」っていう意味の「Voleuse」の「V」の字を両肩に烙印されて投獄されたそうです。


18世紀、そんなんだったんですねえ。
モーツァルトが「フィガロの結婚」を発表して、田沼意次が老中を解任された頃です。

 


この裁判の3年後、1789年、バスチーユ監獄襲撃が起こってフランス革命が動き出します。


世の中の動きって全く予想がつかないっていうのは、昔からの真実とはいえ、この首飾り詐欺事件の関係者たちの顛末もいろいろです。


「V」の烙印を捺されたラ・モット夫人は脱獄してロンドンへ逃亡。
ある意味さすがですね、脱獄しちゃってます。
伯爵と合流したのかどうかは分かりませんが、ロンドンでマリー・アントワネットとの関係を告白した本を出版して話題になったみたいです。
でも、たぶんおそらく、本の内容はうそばっかり、だったんじゃないでしょうか。


歴史的にはこの本の内容が前後して語られて、マリー・アントワネットとの同性愛関係が取り沙汰されたってことなのかもですよね。
いろいろ説はあるみたいですけど、1791年、ロンドンで強盗に襲われて窓から転落死。35歳。


カリオストロは、ローマでエジプト・メイソンリーの支部を開いて、ローマ教皇の怒りを買って1791年逮捕。
終身刑を言い渡されて1795年獄死しています。


ルイ16世マリー・アントワネットは、1791年にパリからオーストリアへの脱出を図って失敗。国境に近いヴァレンヌで捕まって、連れ戻されます。


1793年1月21日、パリ、コンコルド広場でルイ16世はギロチンにかけられます。38歳。
あのギロチンの刃を斜めにしたのは、ルイ16世自身だったそうなんですね。皮肉なものです。


同じく1793年、10月16日、パリ、革命広場でマリー・アントワネットがギロチンにかけられます。37歳。
死刑執行人の足を踏んでしまって、
「お赦しくださいね、ムッシュウ。わざとではありませんのよ」
って言ったのが最後の言葉だってされています。


これがブルボン王朝のホントの最後ですね。


純粋にお姫様だったでありましょうマリー・アントワネット
その首に、85億円の首飾りを拒んで、ギロチンの刃を呼び込んでしまったんですね。


そしてもう1人。ヴェルサイユ宮殿から追放されてイギリスへ逃れていた別嬪さんのベキュー。デュ・バリー夫人は、なぜだか革命の嵐吹き荒れるパリへ戻って逮捕されて、やっぱり1793年、12月8日、ギロチンにかけられて生涯を終えます。50歳。


85億円の首飾りを巡る18世紀のフランスの群像なわけなんですけど、結局、540個、550個っていわれているダイヤモンドは全然回収されることもなく、誰かさん、個人こじんの財産として今でもこの世に存在はしているんでしょうねえ。


人は死んで、石は残る。ってことであります。

なんか虚しい首飾りでありますよ。

 

wakuwaku-nikopaku.hatenablog.com