< 発祥は漁師メシらしいんですけど 根室の街はワンプレート・パラダイスだったのでした >
地産地消なんてことを、ことさらに言い募っていた時期がありました。
地元でとれた食材を地元で消費するっていうことは、実に自然なことなわけですし、わざわざ地産地消を言わなければいけなかった流通事情が自然じゃなかったってことなんでしょうね。
その土地でとれる食材は、その土地特有、固有のものもたくさんあって、そうなりますと当然、その土地特有の伝統的な「郷土料理」っていうのが根付くわけですよね。
その食材をいちばん旨くいただく工夫に、悠久な時間を使っている。
時代とともに地産される食材が変わっていったり、食べ方が違ってきたりしているんだろうって思いますけど、その土地の特色が出ている料理って魅力的ですよね。
居酒屋トークなんかで思わず知らず、なにそれ? っていう食べものの情報を得られたりすることも少なくないですし、「喰いっ食い」なもんですからね、いろいろネットや雑誌なんかで食べ物情報を探ったりしております。
以前、根室地区の「別海ジャンボホタテバーガー」を調べていた時、根室って言えば「てっぽう汁」があるよねえって思っていたんですが、あんまり推していない感じ。
コロナのせいばっかりじゃなくって、ここ最近は北海道カニ祭りの元気がなくなっているんじゃないでしょうかね。
カニ、獲れなくなったのかなあって心配しちゃいます。
「てっぽう汁」は「花咲ガニ」ですよね。かなり貴重な食材になっているんだそうですね。
元々安くはなかった「花咲ガニ」ですが、実はカニじゃなくってヤドカリの仲間なんだそうです。
根室かに祭りとかね、コロナ禍で中止になったりしてましたけど、どうなんでしょう、むしろそのせいで個体数が増えたりとかしてないんですかね。
いや、とくに「花咲ガニ」じゃなくたって、北海道産のカニであれば「てっぽう汁」でイイんだよ、っていう意見もあって、ま、賛成ですねえ。
カニの足を箸で突いて、無言で食べる、っていうその様子が火縄銃に弾を込めている格好に似ているんで「てっぽう汁」っていう名前になったんだそうですよ。
ま、今はね、専用の細長い「カニフォーク」があったりしますけどね。
「カニスプーン」っていうのもあります。
それを食べるのに専用の道具が作られるって、日本人はカニが大好きなんですねえ。
そのカニばっかりじゃなくって、サンマ、コンブだとかも根室の名産ですね、北の海、なんてったって海産物です。
「根室さんまロール寿司」「イクラ丼」「ウニ丼」っていう垂涎の名産品は、根室だよねえってとっても納得できます。
ところがですね、根室地域にはなんだか面白い感じのする「ワンプレートめし」がいくつかあるんですね。海産物、関係なしにです。
漁師町ですからね、漁師さんたちがお手軽にサクッと食べられて、ボリューム感たっぷりっていう工夫。
「オリエンタルライス」
ドライカレーに牛ハラミを乗せてデミグラスソース。
ん~。間違いなく旨いでしょうね。で、この仕上げにかけるデミグラスソースがオリエンタルライス専用なんだそうです。
でもなんで「オリエンタル」なんでしょか。
デミグラスソースが根室風にアレンジしてあるんで、オキシデンタルじゃなくってオリエンタル、ってこと? なんでしょかねえ。分かりません。
でも旨そうなワンプレートめし、でっす。
「スタミナライス」
これね、名前を聞いただけじゃ、なんで根室地域のご当地グルメみたいに言っちゃうわけ? どこにだって普通にあるじゃん、って思いますよね。でもね、根室の「スタミナライス」はちょっとばかし違うんでした。
普通の、っていうか、町中華の「スタミナライス」って、まあ、その店ごとにバリエーションはありますけど、豚コマ、にんにく、ニラ、ニンジン、タマネギなんかを甘辛く炒めたヤツですよね。丼にしているお店も多いです。
根室地域の「スタミナライス」っていうのはですね、まず器に白飯を乗せます。
その上にトンカツを乗せます。で、その上に野菜炒めを乗せちゃいます。
この野菜炒めが独特の味付けなんだそうですよ。
で、さらにその上に目玉焼きか生卵を乗っけて出来上がり。
ん~、これまた旨そうです。なんていいますか、気張らずに、普通に旨そうな感じで、なまら好感触!
で、この「オリエンタルライス」と「スタミナライス」って、ネーミング的に特に違和感ってないですよね。
中身が独特だとしても、どこかの町中華のメニューにあってもおかしくない感じの名前です。
ところが、もう1つの根室地区ご当地グルメはですね、へ? って思っちゃう名前です。
「エスカロップ」
ね。
栄養ドリンク? って思っちゃうようなネーミングなんですが、この「エスカロップ」って、ずっと昔から、根室地域ソウルフードなんだそうです。
根室地域の人からすれば、え? エスカロップって全国区じゃないの? っていう、よくあるパターンのアレ。
名前の謂れについてはいくつかの説があるみたいです。
フランス語の「エスカロープ(escalope)」
これは肉やサカナの薄切りっていう意味だそうで、それに衣をつけて炒め焼きしたものも「エスカロープ」って言うんで、そこから名前をとったっていう説。
その炒め焼きにした「エスカロープ」にパスタなんかを添えたフランスの古典料理に「エスカロ―プ」っていうのが、そもそも存在するっていう説。
いえいえ、おフランスじゃございません。
イタリアの薄切り肉をソテーした料理「スカロピーネ(Scaloppine)」
英語で「スカロピーニ」「エスカロピーニ」が語源であります、っていう説。
この他にもあるのかもしれません。
まあね、名前の由来とかって、気にする人は気にするんでしょうけど、食べて旨ければ、どんな説にも、へええ、そなんですかって軽く頷いて、ザット・イット!
アイヌ語で「旨いもの」っていう意味なんだよ、っとか言われても単純に納得します。
っていいますか、アイヌ語っぽい感じも、どこかに感じますよ。「エスカロップ」
名前の由来とは別に、歴史はものすごくハッキリしているみたいなんですよね。
1963年ごろ、根室市内の洋食店「モンブラン」が「エスカロップ」の発祥。
当初の「エスカロップ」はナポリタンの上に牛のソテー、あるいは牛のカツレツを乗っけたもの。
漁師がサクッと食べられてボリュームのある一皿、ってことで考え出されたってことなんですけど、ナポリタンの上にカツレツっていうワンプレートは、なんかね、充分にオリジナルアイディアなんじゃないかって思いますね。
で、このモンブランの「エスカロップ」は時代とともに進化、変化して、牛のカツレツがボークに、ナポリタンがケチャップライスになっていったんだそうです。
当時からかなりの支持を集めていたっていいますからね、コスト問題と調理の手間とかそういうことから、ボリュームのあるワンプレートを守っていく工夫だったのかもですね。
ケチャップライスにトンカツ、その上にデミグラスソースっていうのが「赤エスカロップ」通称「赤エスカ」
あっという間に地域全体の人気メニューになったそうなんですが、元祖「モンブラン」はあえなく閉店。
ってことになってしまったんですが、そこで働いていた職人さんが1965年「ニューモンブラン」を開店。「エスカロップ」の灯は消えなかったんですね。
さらに進化、変化はまだまだ続きます。
ケチャップライスからマッシュルームを入れたバターライスになって、トンカツ、デミグラスソース。
これが「白エスカ」
「赤エスカ」と「白エスカ」ってなんだかそそられますねえ。
根室、やるじゃんねえ。
完全に地元に馴染んでいる感じのネーミングです。
そんでもって、「白エスカ」のマッシュルームがタケノコに変化。現在に至る、らしいんです。
今現在は「白エスカ」が主流なんだそうですけど、やっぱりあれなんでしょうか、ケチャップライスにデミグラスソースってなりますと、味が濃厚すぎるとか、そゆことなんでしょか。
しかしなんですよ、タケノコ入りのバターライスってだけでも、かなりレアだと思いますけどね。
根室って東京からかなり遠い街なんですけど、ぜひ一度行ってみて、長逗留したいですねえ。
あのですね、この他にもあるですよ、ん? っていう食べもの。
バターライス、ナポリタン、生姜焼き、目玉焼き、生野菜のワンプレート「パンチライス」
んふふ。パンチ、ありすぎでしょ。
ケチャップライス、ミートボール、生野菜のワンプレート「ビドックライス」
これはなんだか普通に食べられそうな感じもしますけど、「ビドック」なんなん?
スパゲッティの上にハヤシソース、ホワイトソースをかけてオーブン焼き。その上に目玉焼きと温野菜っていう「フロレンテン」
またまた出ました、意味不明のネーミング。
根室地域ねえ、こりゃ一回は食べてみたいなあって思わされるディッシュの勢ぞろい、なんですよねえ。
単純に生野菜だって旨そうです。北海道の野菜。
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