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【北大路魯山人】がお勧め 暑い時期の背筋(?)に効く食べものが【にしきぎ】

<食通のために用意するような一級品じゃないけど 呑み過ぎた次の日のブランチに にしきぎ>

「にしきぎ」っていったって、なにそれ? っていうのが普通なんじゃないでしょうか。


聞いたことない。はい、私もそうでした。食べものと結びつきませんでしたね。


「にしきぎ」って聞いて思い浮かぶのは、生垣。なんとなあくトゲトゲした低木の葉っぱが印象的で、数少ない、名前を知っている植物。

 

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でなければ、お相撲さん。ずっと幕内で取っていた関取でしたが、2021年5月現在は十両で頑張っているようですね。「錦木」という字面。

< 追記 2023年夏場所、大活躍! でした。芋焼酎が大好きらしいです >


世阿弥の能には「錦木塚」という悲恋ものがありますね。
にしきぎの束が求婚のシンボルになっていたという伝説があるそうで、叶わなかった男女の無念を能にして舞う作品ですが、食べものの「にしきぎ」と悲恋は関係なさそう。


というのは、あの「北大路魯山人」がそう言っているからであります。理由はそれだけ。


北大路魯山人」1883年、明治16年、京都に生まれたこの異能の人は、1959年、昭和34年に横浜で76歳の生涯を終えています。
日本人の食通第一にあげられる人ではないでしょうか。


書き残したエッセイなどを読んでみますと、特に奢ったような特別な食材を良しとするわけではなく、当たり前のものを旨く食べるこだわりの人で、旨いものに対する揺るぎなさがオットコマエ、な感じがして好きな人ではあります。ヘンに「まったり」とか言ったりしない人。

 

 

 


さて、相変わらず出口の見えてこないコロナ禍の自粛生活。もうすっかり倦んできていますが、そんなウツウツとした気分を吹き飛ばすべく、ピペリンという成分の効果を【純胡椒】で以前に取り上げてみました


そして同じ目的でスカッとするためのカプサイシンという成分の【柚子胡椒】も取り上げてみました


で、今回もまたスッキリクッキリさせてくれる逸品「にしきぎ」です。


しかも「にしきぎ」は北大路魯山人お勧めの、暑い時期の、酔い覚ましのめし。


ワサビです。胡椒のピペリン、唐辛子のカプサイシンに対して、ワサビです。本わさびの辛み成分は「アリルイソチオシアネート
聞いたことないです。「アリルイソチオシアネート」?


でもイイです。名前で味わうわけじゃないですからね。今回はワサビです。


休み前の宅呑みで、ちょっとスゴシテしまった翌日のブランチに「にしきぎ」やってみて、サイコーでした。


参考にしたのは「青空文庫 北大路魯山人 夏日小味 錦木」です。

 

まあね、マネッコするといったって、その相手が北大路魯山人ですからね、形だけって感じです。


夏日小味を見てみます。


「京の木屋あたりで流連でもしたご経験のある方なら、先刻ご存じのもの」


だそうでありまして、この辺りは及ぶべくもなし、ですね。
さすが、「美味しんぼ 海原雄山」のモデルになっただけある食通の遊び人です。


京の木屋町といえば、江戸の昔から連綿と続いている遊興の場。ま、行ったことありませんのでどういう場所なのか見当もつきませんが、とにかく歴史の町ですよね。幕末のいろいろな事件の場にもなりました。


木屋町に関連するジンブツの名前だけでも凄いです。坂本龍馬桂小五郎大村益次郎が襲撃され、佐久間象山、本間精一郎が暗殺された場所。
みなさん、時の人ですし、お金が集まって来るような立場だったでしょうし、その結果木屋町って言えば高級なんでしょうから、金銭的にもビビります。


そんな木屋町に流連、居続けるってわけですから、これはもう一般ピーポーのマネできることじゃありませんです。よね。


「にしきぎ」が、そういう高級感あふれる食べものなのかというと、「にしきぎ」自身はそんなこともなさそうなんですが、呑み疲れて遅く起きたねぼけ顔に、宿のオネエサンが言うそうです。


「今朝、なんでままおあがりやす。今日は、あっさりと、錦木でままおあがりやすな」


で、これを受けて北大路魯山人はこう言っています。


「とくる。この錦木でまま食べて、はじめて、ために心気爽然となる代物なのである」


連日の呑み疲れた心身に「にしきぎ」が「心気爽然となる代物」だと言うんですね。魯山人センセ。
ほほう、です。で、これをやってみようと思ったわけです。オネエサンは居ませんですがね。


前日は、特に「にしきぎ」のため、いうのではもちろんありませんでしたが、けっこう呑みました。
残り少なかったCUTTY SARKをストレートで。ボトルが空いてから、ANCIENT CLANをロックで数杯。
でもって、乾き物のアテを用意して缶ハイボール缶チューハイ
普段呑み付けない缶チューハイが、あまりにも甘すぎたので、またANCIENT CLANに戻って〆ました。
缶入りの酒って、甘過ぎます!

 

 

 


で、翌日は小雨でした。いったん4時前に目が覚めましたが、頭の中はまだまだANCIENT CLAN。布団の中でまたすぐにすとんと落ちて、次に目が覚めたのは10時過ぎでした。
計画通り! なわけです。ホントに。へへっ。バザバザっと顔を洗って少しは人心地。
北大路魯山人の「にしきぎ」アレンジ庶民バージョン、スタートです。


魯山人は言います。


「上等のかつおぶしを、せいぜい薄く削り」


この辺りは、時代ってもんがありますよね。もちろん今でもかつお節をカンナで削って調理するところもあるでしょうけれど、庶民バージョンは「ヤマキ 使い切りかつおパック」です。ネコまんまに最適のコーキュー品です。
最初から「せいぜい薄く」削ってあるですよ。合格です。


魯山人センセは続けて言いますね。


「わさびのよいのをネトネトになるよう細かく密におろし」


わさびの「よいの」これはもう、当たり前のように本わさびのことですね。細かく密におろす、わけでございます。本わさび。ホンモノの生わさびですね。
庶民バージョンは「ネトネト」なんか意識しませんよ。「S&Bおろし生わさび」です。チューブです。
なかなかの高級品です。スーパーの棚にいっぱい並んでいるコーキュー品。


これをですね、


「思いのほか、たくさんに添えて出す」


んだそうでありますからね。皿にあけた「ヤマキ 使い切りかつおパック」の脇に、いつもより多めに「S&Bおろし生わさび」を絞りだします。


で、


「ざんぐりと箸の先で混ぜて醤油を適量にかけ、それを炊きたての御飯の上に載せて、口に放り込めばよい」


だそうございますよ。


こういうあたりが魯山人のカッコイイところなんでありまして、簡単なんです。面倒くさいこと言わない。
ただ、素材を吟味しなさいってことなんでしょうし、米の銘柄、ご飯の炊き方とかにも、ここでは言わないだけで、かなりのこだわりがあるってことは、有名なことなんでありますよね。


「アッと口も鼻も手で押えて、しばし口もきけないようなのが錦木の美味さである」


んだそうでありますよ。
庶民バージョンも「キッコーマン 密封ボトルしょう油」をキュッとかけていただきます。


「クーッ!!!」です。キました。「アリルイソチオシアネート」です。知らんけど。


これはアレですね。「にしきぎ」っていうのは「板わさ」と同じでワサビを食べるものなんですね。実になんとも「和食」です。


「板わさ」の場合、かまぼこはわさびの辛味を何も変えてくれませんので、生わさびでないと、つまりわさびの甘さが無いとただ「かまぼこのわさびしょう油付け」になってしまうのですが、「にしきぎ」の場合、口に感じるのはかつお節。の前に「ごはん」なのであります。


これが絶妙のバランス。
庶民バージョンの「ごはん」は今回はサトウのパックごはんです。レンチンです。充分旨いです。
そういえば寿司でごはんとわさびって経験していますよね。でも、温かいごはんとわさびって、やりませんねえ。
これがイイのかもしれません。


魯山人はさらに言います。


「浅草のりなぞを混ぜてもよいが、むしろそれは野暮であろう」


ほほう、そですか。ってわけでありまして、いきましょう。「白子のり もみのり」もたっぷり加えてみました。
バッチリです。庶民バージョンは野暮でイイです。旨いです。


かつお節とのりって合います。魯山人の言う「野暮」っていうのはわさびの「ツーン」がのりによって一段と薄まってしまうことなのかもしれません。のりの香り、意外に強いです。引き立ちます。


でもほら、そもそも本わさびじゃなくって「S&Bおろし生わさび」なんですから、魯山人センセのおっしゃる「野暮」でも「もみのり」合いますよ。


魯山人センセの木屋町バージョンの「にしきぎ」は、


「最高の錦木とは、上等のかつおぶしの中心である赤身ばかりを薄く削ること、太いよいわさびを細かいおろし金で密におろすこと。御飯をこわくなく、やわらかくなく、上手に炊くこと。そして炊きたてであること。食器は平らな皿に入れないで、やや深目の向付に盛ることである」


なんだそうでありますので、余裕のある方はぜひお試しを。


よいわさび。なんなん? 食通は難しいものであります。

 

 

 


最後に、


「錦木と称するのは、削ったかつおぶしの片々を、木の錦木のへらへらになぞらえたものにほかならないと思う」


ん~。「へらへら」って? なに? あのコルクっぽいところを「へらへら」って言ってるんでしょうか。


ま、なんにしてもですね、材料を用意さえしておけば、調理、というほどの手間でもなく食べられる「和の刺激」
「にしきぎ」です。


例年よりずいぶん早く梅雨入りした2021年の日本列島です。空気じめじめ、気分くさくさの今、わざわざ深酒する必要なんてもちろんありませんが、背筋をしゃんとさせた方がイイかな、と感じたら、ぜひチャレンジです。


庶民バージョンで充分だと思いますし、大根おろしを加えたりだとか、いろいろ「庶民」なバリエーションもあるみたいです。

 

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