< 数年ぶりに集まって オヤジ3人で「自由鍋」やりました >
コロナ前は年に何回か集まったりして、夏でも鍋を囲むっていう呑み会をやるオヤジ3人のグループがありまして、コロナ禍になってからは全然やっていませんでした。
コロナだから集まらなくなった、っていうことももちろんあるんですけど、実のところ、飽きた! っていうことの方が強いかもですね。居酒屋さんでしょっちゅう顔を合わせている3人組なんですけど、鍋やろうか、っていう話にはならない数年の日々だったわけです。
もう5年も前になるでしょうか。「鍋、やらない? イイのが手に入ったんですよね、へっへっへ」
1人がですね、三重県へ旅行へ出かけて、なにがどういう流れなのかさっぱり分かりませんが、なんかね、高級な土鍋をお土産に買ってきたんでございますよ。
お土産っていってもあれですよ、自分用にです。高級土鍋。
特に鍋が好きとか、焼きものが趣味とか、ぜんぜんそういう奴じゃないんです。むしろ酒さえあればアテはなくたってイイってタイプ。
それが、なにを血迷ったのか、ウン万円も出して鍋。土鍋を満足そうに買って来ちゃったんですね。
伊賀土鍋なんだそうです。当人曰く「この鍋に入れれば、何の食材でも、そのままで3割は味わいが深まる」んだそうでして、誰の受け売りなのか、伊賀土鍋を絶賛するんですね。
伊賀。忍者鍋?
で、まあ、なんとなくの流れでそいつの家に、材料を持ち寄って、そんじゃあ鍋パーティでもやりましょか、ってことで何回かやっているわけです。
もう10回ぐらいはやっているんですけど、5回目ぐらいからはほぼ材料も決まって来ますね。鍋。
何を入れたってイイようなもんなんですけど、結局好みによって固定化されていく感じなんでしょうね。
それぞれで買って持ち寄るパターンですから、調達する店も決まってくるってこともあるかもしれません。
豚コマ。3人とも買ってきて800グラムもある。バカじゃないの。そんなに1回で食べないだろ。
1人では300グラムとか200グラムなんだからそんなに多くもないよ。
あのね、豚コマ鍋じゃないんだよ。他にもあるじゃん。
鳥だんご。カマボコ。さつま揚げ。ウインナー。白菜。ダイコン。ニンジン。長ネギ。糸コンニャク。キャベツ。
んあ? キャベツ? イイんだよ、白菜とは違ってダレないから、キャベツは。
ま、イイけどさ。
あと、餅巾着。ガンモ。ゆで卵。ほぼおでんじゃんか。ま、イイじゃん。
初回はね、3人とも張り切って買ってきたんで、伊賀土鍋の持ち主は、それから4日間、ずっと鍋だったそうです。
「いや、全然飽きないよ。伊賀土鍋だから」
ふううん、ならイイんだけどね。
ま、そういうのは最初だけでしたけどね。
で、それからずっと定番になっていたのは、お気に入りの具材じゃなくって、大量の大根おろし。
伊賀土鍋の持ち主は、なんかそういう民芸品っぽいのが好きなんでしょうね。栃木県の道の駅で「鬼おろし」っていうのを買ってきたんですね。
30センチメートルぐらいの、扇型に広がった竹製のおろし器です。
竹を裂いて棒状にしたのを三角のギザギザに削りだして並べてあるだけのシンプルなおろし器なんですけど、これ、ゴリゴリっていってダイコンがあっという間にすりおろせるんで、見ていても気持ちイイ。
自分でおろすと気持ち良さ倍増。ゴリゴリ、なんだこれ? 大発明なのか!? 鬼おろし。
交代で、あっという間にラーメン丼に山盛りのダイコンおろしってことになります。
なので、ダイコン、でっかいのを1人1本用意するのが習わしになっていますよ。
久しぶりの鍋でも、ダイコン3本。ゴリゴリごりごり。
一方通行で引いておろすんだそうです。ペラ紙の説明書にそう書いてありました。
伊賀土鍋はイイものなのかどうか、イマイチ伝わって来ていなかったんですが、鬼おろしはサイコーです。
ダイコンをおろすのが気持ちイイって、そんなことあります?
でもホント、気持ちイイんですよ、これが。
ごろごろのダイコンおろしが、あっという間に、大量に出来ます。
で、その、ごろごろのダイコンおろしが、これまた旨いんです。ガリガリとした歯応えが気持ちイイですし、全然水っぽくならないんで、食べやすいし、ダイコンの旨味が口の中で初めて広がるって感じです。甘味すら感じられて、旨いです。
ダイコンそもそもの旨さっていうのもあるんでしょうけれど、おろしたから、鬼おろしだから、旨い!
ような気がします。
ラーメン丼から、取り小鉢に鬼おろしガバッと入れて、ポン酢よし、ドレッシングよし、焼き肉のタレよし。
そこへ伊賀土鍋からの豚コマを突っ込んで、豚コマで鬼おろしを巻き込んで、ガリガリいくんです。
味滲み豚コマ、ポン酢、鬼おろし。なんという絶妙な出会いなんでしょうか。
それがまあ、なんとも簡単に出来ちゃうんでありますよ。旨いんでありますよ。
これね、竹製のおろし器を鬼おろしっていうのか、それでおろしたダイコンを鬼おろしっていうのか。
たぶん、両方とも鬼おろしでイイんじゃないでしょうかね。
鬼おろしっていう名前。
三角のギザギザが鬼の歯を思わせるから。
鬼のようにダイコンがおろせちゃうから。
おろしたダイコンが鬼旨いから。
はい、どれでもオッケーですし、どれも正解でイイっす。とにかく旨い。それだけで何でもオッケーであります。
栃木県で買って来たそうなんですけど、竹製の鬼おろしっていうのが、どこの特産品なのかはハッキリしていないみたいなんですね。
鬼おろしの歴史、不明。
ん~。道具としての工夫は、工夫ってほどのことはナイ、って言われちゃうとそうかもなんですけど、そりゃなんでも、出来上がっているものを見ればたいしたことない、なんていう評価になっちゃいますけど、三角の形状やら、横に渡す角度だとか、絶妙なバランスってのがありそうに思いますけどね。
どこか竹細工の盛んなところの名産、なんじゃないんでしょうか。なはずでしょね。
後からいろいろ調べてみたんですけど、やっぱりハッキリしませんでした。
ただ、栃木県には、この鬼おろしを必須としている「しもつかれ」っていう郷土料理があるんですね。
「しもつかれ」
この名前だけからだと、食べものなの? ってな感じですけど、実は森高千里の1992年の歌の中に出てきていた料理だったんでした。
森高千里、作詞作曲「ロックンロール県庁所在地」
ま、この部分だけなんですけど、この歌で名前を知られて、認知度は一気に上がった経緯があるそうです。「しもつかれ」
でも、聞いたことなかったですけどね。
栃木県。下野(しもつけ)の国ですもんね。しもつけのくにの「れ」ってなんのこっちゃ、余計分からんわ!
農林水産省の、「うちの郷土料理 栃木県 しもつかれ」によりますと、栃木県では、初午の時に稲荷神社に「しもつかれ」を供える習慣があったんだそうです。昔からね。
ダイコン、ニンジン、大豆、塩引き鮭の頭、酒粕、油揚げを煮込んだ郷土料理ですが、ダイコン、ニンジンは鬼おろしにするっていうのが特徴ですね。
お正月に食べた塩引き鮭の頭、節分に使った福豆だとか、言ってみれば残り物を利用した、今でいう食品ロスを発生させない工夫の料理だって言えそうですね。
やっぱり、鬼おろしは栃木県の特産品なのかなあって思ったらですね、三重県には「ガラガラおろし」っていう郷土料理があるんですね。
こちらは、鬼おろしをメインにした酢味噌和え。
言葉だけからしますと、ガラガラおろし、イコール、鬼おろし、ってことなのかもしれませんね。
鬼おろしがいつ頃からあったものなのか、結局分かりませんでしたけれど、13世紀初頭の「宇治拾遺物語」には、栃木県の料理として「しもつかれ」が登場して来ているんだそうで、竹製のおろし器がそのころからあったとして、栃木県と三重県の共通項って、何かあったんですかねえ。
ま、あれです。「しもつかれ」も「ガラガラおろし」も食べたことはありませんけれど、自由鍋っていいますか、豚コマ鍋のつけ具、が旨くってサイコーなのは間違いないです。
ダイコンがメインですからね、なんだかとってもヘルシー、な気がしています。