< 不死身じゃないけど不老不死 若返り 生まれ変わりの不思議 >
いつの間にか「若返り」って言葉が死語になって、「アンチエイジング」って言うようになりましたですね。
なんででしょ。
若返りなんて、魔法使いじゃないんだから、そんな非現実的なこと言ってたんじゃ客が寄り付かないから、より現実的に老化に抵抗しましょ! ってな感じで商売ショーバイな理由なんでしょか。
電車の壁に貼ってある宣伝やら、吊り広告なんかに必ず1つはありますね、アンチエイジング系。
ユビキノン配合の化粧品、コラーゲンたっぷりのなんとやら、プロの技のエステ回数券だとか、次から次に出てきているみたいですね。
男性化粧品もアンチエイジングです。
ふううん、って眺めている人も相当数いるんだと思いますけど、ま、熱心なオカタのほうが多いんでしょうね。
老けたくない、古くなりたくない。って願望っていうか、そういう強迫観念みたいの、ありますもんね。
仏教でも「生老病死」って言って、人が避けられない4つの苦しみをあげてます。
生まれること、っていうか生きることなんでしょうかね。これはなかなか苦しいものなのだよ。
老いていってしまうこと。これは苦しく悲しいことなのだよ。
病気になってしまうこと。これはもう人の苦しみの最たるものなのだよ。
死んじゃうこと。これが来てしまうことを考えるのは苦しいことなのだよ。
ってな意味なんでしょう。知らんけど。
ま、言えることは、昔っから、人は老いることを苦しんでいたってことですね。
受精して、細胞分裂して、身体が出来上がっていって、生まれてくるわけですよね、我々、人って生き物は。
オギャーって生まれ出てきてからについて「ライフサイクル論」っていうのがありますね。
生まれてから1歳半ぐらいまでの「乳児期」
1歳半から4歳ぐらいまでの「幼児期」
4歳から6歳ぐらいまでの「遊戯期」
期間はダブりますが5歳から12歳ぐらいまでの「学童期」
12歳から18歳ぐらいまでの「青年期」
18歳から40歳ぐらいまでの「成人期」
40歳から65歳ぐらいまでの「壮年期」
そして65歳以上の「老年期」
っていう8段階を経て、人の一生が終わる。そういうライフサイクル論。
成人期に入ってからでしょうかね、アンチエイジングってのを意識し始めるのは。
人はなんで老化してしまうんでしょか。
60兆個とも37兆個ともいわれる細胞で出来てるらしい我々は、皮膚であれ、頭髪であれ、血液であれ、どんどん細胞が入れ替わって生命を維持しているってことなんですけど、その細胞の入れ替えがうまくいかなくなっていく事が「老化」ってことなんでしょうね。
なんでうまくいかなくなるのか。
そんなん知るかッ! それが解ったら仙薬作って大儲けじゃ!
って、別に商売の話をしようとしているんじゃないんですけどね。
実際、全然解っていないらしいんですよ。
神さんがな、そんなふうに細胞を創ってはんねん。っていうプログラム説。
いやいや、ちゃうねん。活性酸素がな、細胞を傷付けてまうねん。っていう活性酸素説。
あんな、37兆個やら60兆個やらあったらな、細胞な、新しく出来る時エラー起こすヤツも出てくんねん。っていう遺伝子修復エラー説。
自分らな、テロメアって知ってるか。テロメアいうのは染色体の先っぽにあるやつでな、細胞が分裂するたびに短くなっていってな、テロメアがなくなったらもう分裂でけへんねん。そしたらもう何したかて古うなってくだけや。っていうテロメア説。
まだまだたくさんあって、今のところ収束するような気配はなさそうです。
急にエセ関西弁になったからといって、特に関西方面でそういう研究が進んでいるってことじゃないです。知らんけど。
まあね、人体の宇宙っていう捉え方もあるぐらいですから、まだまだ何も解ってはいないっていう現状なんですね。
でも地球上の生き物は、みんな老化して、死んでしまうことに変わりないんだから、老化とか気にしてもしょうがないんじゃないの、っていうご意見もあるかと思います。
不老不死とかあり得ないから。
そですね、確かに不老不死ってのは今のところ確認されていないんですね。地球上でね。
ところがですね、老化しないまま死なないっていうんじゃなくって、若返って、何度も人生っていうか、ライフサイクルを繰り返すっていう生き物が確認されているんですよ。
体長3mmから大きくても1cmっていうクラゲ。「べにくらげ」
不老不死っていうより若返りの方が凄くないですか。
ライフサイクルを逆回転させて、もう一度新しい人生を最初っからやり直す。
凄い生き物ですよね。
で、べにくらげは昔っからそうやって生き続けてきたわけなんですが、そんな生き物なんているわけないっていう人間の思い込みがそうさせたのか、発見というか、べにくらげの若返りに気付いたのって、つい最近、1991年のことだったそうです。
だって、ちっちゃいからね、だとかいう言い訳をしている研究者もいたりなんかして、生物学の業界ってなかなかオチャメです。
ドイツの大学生がイタリアの海で採集したべにくらげの個体が、若返ったことに気付いて学会で発表したのが1991年。
ええ~! ってことでかなりショックを受けたイタリアの大学が研究を進めて、そのサレント大学に滞在していた久保田信客員研究員が、べにくらげを意図的に若返らせることに成功。
久保田信さんは2018年に京都大学を退官して和歌山県白浜町に「ベニクラゲ再生生物学体験研究所」を開設して、ますますべにくらげ研究を進めているそうです。
しかしですね、ホントに不思議な生き物ですよ、べにくらげ。
寿命は2か月から3ヶ月ぐらい。
体長3mmから1cmぐらいのべにくらげは、他の大型のくらげなんかに食べられちゃうんで、寿命を全うする個体がどれくらいのパーセンテージなのかは分からないそうですが、食べられずに寿命が近づいてきたり、環境変化や、個体的に傷付いたりすると、若返りサイクルに入るんだそうです。
ちゃんとオスとメスがいますよ。
で、それぞれ卵子と精子を放出して有性生殖します。
卵子が受精すると「プラヌラ」っていう幼生になります。楕円形の卵みたいな形。
プラヌラは海の中を漂って岩とか海底にくっ付いて、「ポリプ」っていう植物状態になるんだそうです。
ポリプは根を生やして、茎をのばして、プランクトンなんかを食べながら成長していきます。
成長したポリプの茎にぷっくらと「くらげの芽」が出来ます。
くらげの芽っていうんですからね、不思議です。ホント植物状態ってことなんですね。
で、そのくらげの芽が茎を離れて行って、「若いべにくらげ」の誕生です。
若いべにくらげは動物プランクトンを食べながら成長して、成熟したべにくらげになると有性生殖するってわけですね。
そんで寿命が近づいたり、傷付いたりすると、しぼんで肉団子みたいになります。
ここが凄いトコですね。
寿命が来て自然に死んじゃうっていうより、そろそろかなっていう判断で、自分から肉団子になっちゃうんでしょうかね。
他のくらげも寿命が来ると同じように肉団子状態になるそうですが、そこで個体の生命は終わって肉団子は溶けていくんだそうです。くらげってほぼ水らしいですからね。
死んでしまった肉団子は、すっと溶けて、水になっちゃう。
が、べにくらげはそこからが違うんです。
肉団子が膜で包まれたようになって、受精した時と同じように岩なんかにくっ付きます。
そして根を延ばして、茎が出て、ポリプになる。
で、くらげの芽が出て、べにくらげ。
植物とくらげっていうのを繰り返すんですね。
久保田信さんは10回の若返りを確認しているそうです。
研究者たちが若返りって言うんですから若返りなんでしょうけど、内容的には「生まれ変わり」みたいですよ。
べにくらげの細胞は、生まれ変わるときに、前の生で触手だった細胞は、また触手になるってわけじゃなく、前に傘だった細胞が傘になるっていうんじゃないそうなんですね。
どこにも老化、劣化のない新しいべにくらげです。
これまで人類が求め続けた不老不死。
月の若水。ツクヨミノミコトの変若水(をちみず)。インドの伝説、不死の飲み物「アムリタ」
そういう伝説、神話の世界から若返りが現実味を持つようになる可能性を、べにくらげは持っていそうですよ。
そんな世の中って、ホントにやって来ちゃうんでしょかねえ。