< 「見える化」っていうプロジェクト管理概念がありますよね そういうのとは真逆に感じます >
そもそもメディアの報道にも、そんなに取り上げられていないような気もする「福島・国際研究産業都市構想(イノベーション・コースト)」なんですけど、2023年4月1日に、この構想の一環、新産業創出の中核として「福島国際研究教育機構」が成立されています。されているはずです。
とくにニュースに張り付いているわけじゃないですけど、華々しいオープンイベントとか、開催された形跡もない感じですよね。
どうなっているんでしょうか。
東日本大震災、福島原発事故からの復興事業、その目玉として位置づけられていたはずのイノベーション・コーストなんですけど、産学官あげての構想としてはぜひ成功していただきたいものなんです。
なのにですね、いつものごとく机上の論理を声に出しただけってことに終わっちゃうんでしょうか。
気配が感じられませんもんね。
イノベーション・コ-ストっていうのは、被災地を昔に戻すっていうコンセプトじゃなくって、新産業創出。
創造的復興です。ってことだったんですけど、その宣言のあと、進捗情報がほとんどありませんでしたね。
東日本大震災の復興事業が全体としてどれくらい進んでいるのか。立ち入り禁止地域が全面的になくなったわけじゃない中で、日本は失われた40年になろうかっていう景気低迷から抜け出せずにもいるわけです。
ホントにしっかりした旗振り役が求められていて、創造的復興っていうのが日本全体として急務なはずですよね。
でもなんだか本気っていう態度が「福島国際研究教育機構」に感じられませんです。
なぜ、創造的復興のメインが福島県に置かれるのかっていうと、福島原発の事故があったからで、イノベーション・コーストでも、その具体的進展であるはずの「福島国際研究教育機構」でも、原発事故後遺症からの復興がメインに置かれているように思えます。
復興庁がイノベーション・コーストのモデルにしているのはアメリカのワシントン州ハンフォード核施設周辺地域なんだそうです。
ハンフォードっていうのは、あのマンハッタン計画によって1942年から新たに作られた「街」ですね。
1943年からプルトニウムの精製を始めていて、長崎へ落とされた原爆のプルトニウムはここで精製されたものなんだそうです。
ハンフォードでのプルトニウム精製は1989年まで続けられていて、放射性物質はずっと放出されていたんですが、1986年までそのことは公表されていなかった。
隠蔽です。
放射能汚染が明らかになってから、アメリカエネルギー省はクリーンアップ事業を推進します。
環境浄化のためにアメリ中の多くの研究機関や企業が集積して、廃炉や除染を一気に行ったそうです。
そのことが結果として環境浄化以外の産業発展にも結び付いて、1940年代には2万人足らずだった街が、2020年には30万人の、アメリカでも有数の繁栄都市になっている。
日本の復興庁は「米国ハンフォード地域について」のなかで、そんなふうなことを言っています。
ですが、この人口が劇的に増えたっていうのは、ハンフォードを含んでいるワシントン州のリッチランドっていう街。
ここには原爆のキノコ雲をロゴマークにしている高校があることを、留学していた日本の女子高生が2019年に告発して話題になったことがありましたですね。
核産業で発展してきた街なわけです。
アメリカの政策が功をなしたものなのかどうか、リッチランドの住民の半数は、アメリカが日本に原爆を落としたことを知らなかったそうです。
日本とはまるで事情の違うアメリカの、核産業の街です。
日本のイノベーション・コーストが進捗しないのは、計画の基になっているリッチランドの核産業に、危うさを感じている産業界、大学、研究機関の人間が、一定数いるからなのかもですよね。
復興庁としては汚染状況の改善だけを参考にする、とかいう理屈はありそうですけれど、除染だけからは産業は生まれにくいですよね。
核の利用があってこその街の発展だったリッチランド、ハンフォード地域の事例を持ってくること自体に無理があったようにも感じます。
自分のこととして考えない。それが日本のオヤクニン様、ってことなんでしょうかね。
福島の場合、軍事や産業行動の結果として汚染されたわけじゃないですしね。
2011年の福島の原発事故を振り返ってみますと、3月11日、大地震が発生して、稼働中の原子炉は自動停止。
停電によって外部電源を失いますが、地下の非常用ディーゼル発電機が作動して電源供給。
だったんですが、50分後の大津波によって非常用電源も失ってしまったんですね。
さらに引いて行く波によって、電気設備ばかりじゃなくって、様々な設備が損傷、あるいは流出。
ステーション・ブラックアウトっていう全電源喪失になってしまいます。
原子炉内部、使用済み核燃料プールへの注水が不可能になって、なんとも悲惨なことに、メルトダウンに至ってしまったんですね。
そしてメルトダウンによって水素が大量発生。
3月12日、1号機原子炉建屋水素爆発。
3月14日、3号機原子炉建屋水素爆発。
3月15日、4号機原子炉建屋水素爆発。
大量の放射性物質が放出されてしまいました。
やっぱりね、こうして比べてみますとハンフォードとは全然事情が違いますし、世界唯一の被爆国である日本人の感情と、核産業を正義として推し進めたアメリカ人のモチベーションは、そもそも比較対象にもならないんじゃないでしょうか。
復興庁の「福島国際研究教育機構(F-REI)(令和5年4月設立予定)の概要」を見ますと、「福島国際研究教育機構」っていうのは「福島復興再生特別措置法に基づく特別の法人」なんですね。
「F-REI(エフレイ)(Fukushima Institute for Reserch, Education and Innovation)」だそうです。
ちょっと本題から外れちゃいますけど、ここで面白いなあって思うのは、復興庁のページには「福島国際研究教育機構(F-REI)(令和5年4月設立予定)の概要」って書いてあって「F-REI」がはいっているんですけれど、福島県が公開しているページには「復興庁作成」と表記してあるものの「F-REI」っていう言葉は削られているんですよね。
「エフレイ」だとか、そんなコジャレタ言い方なんてして欲しくないんじゃ! っていう意志?
いや、まったくもって、そういうことなのかどうかは分かりませんけれどね。
「福島国際研究教育機構(以下「機構」)は、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、我が国の科学技術力・産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」を目指す」
っていう、宣言自体、ちょっとね、砂上の楼閣、大ぶろしきに感じてしまいます。
しかもですね、内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、環境大臣が、主務大臣として共管、するんだそうです。
もちろんね、創造的復興ですから、対処しなければいけない分野は多岐にわたります。
関係省庁の全てが関わることは必要なんだっていうご意見は分かりますけどね、縦割り省庁の問題がずっと言われ続けている日本の大臣たちがそんなに集まっちゃったら意見収束なんて望めないでしょ。
「福島国際研究教育機構」が取り組むテーマは今のところ5つあげてあります。
【①ロボット】
廃炉にも資する高度な遠隔操作ロボットやドローン等の開発、性能評価手法の研究等。
【②農林水産業】
農林水産資源の超省力生産・活用による地域循環型経済モデルの実現に向けた実証研究等。
【③エネルギー】
福島を世界におけるカーボンニュートラル先駆けの地にするための技術実証等。
【④放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用】
放射線科学に関する基礎基盤研究やRIの先端的な医療利用・創薬技術開発、超大型X線CT装置による放射線産業利用等。
【⑤原子力災害に関するデータや知見の集積・発信】
自然科学と社会科学の融合を図り、原子力災害からの環境回復、原子力災害に対する備えとしての国際貢献、更には風評払拭等にも貢献する研究開発・情報発信等。
どれも具体性が薄いうえに、まだそういう段階なんですか? って思いません?
「福島国際研究教育機構」のホームページからしてそうなんです。
どこに何をアピールしてんでしょ!?
復興しなければいけないのは、福島だけじゃなくって、日本全体なんですけど、未だに一流国のつもりでいるんでしょねえ。
このままホントに失われた40年になっちゃんでしょか。
なんでこんなに残念な国になっちゃったんでしょ。
グッスンです。