ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

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【もっきり】正しい呑み方って言って説明しているページもありますけど 正しいってナニ?

< 店の人も含めて他人に迷惑をかけないっていう最低限必要なタシナミっていうのはありそうですけど >

「もっきり」っていう言葉を聞いたことのない酒呑みだって、けっこういるのかもしれない令和の日本です。


それが何なのか、どういう呑み方をするのか、っていうことを記事をけっこう見かけます。


親切心から出ているんでしょねえ、とは思うんですが、それが「正しい」っていうのって、たぶんおそらく、誰にも断定出来ないことなんじゃないでしょうかね。


「もっきり」っていうのは東北弁です、福島県地方の言葉ですって説明している記事をいくつか見ましたけど、え? そなの? って感じです。


そう言っておいて、同じ記事の中で、器に「盛り切る」ことからきているみたいです。って説明が続いているのもありました。


「盛り切る」っていうのを「もっきり」っていうのが福島県地方で使われている東北弁だっていう意味なんでしょうかね。


「盛り切る」 ⇒ 「盛り切り」 ⇒ 「もっきり」
っていう変化だとすれば、なんか、ちっとも東北弁が絡んでいるようには思えないんですけど。
どうなんでしょうね。


方言の専門的知識があるわけじゃないんですけど、標準語そのままなんじゃないかって気がします。

 

 

 


でもですね「もっきり」は福島弁って言っている記事は1つじゃないっていうのも事実です。


なんで「もっきり」福島弁説っていうのが浸透しているんでしょうか。


それはたぶんですね、マンガだと思いますですねえ。


知る人ぞ知る、一世を風靡した昭和のマンガ家「つげ義春
1968年に「ガロ」に発表された短編作品に「もっきり屋の少女」っていうのがあるんですね。


つげ義春っていう人のマンガはかなりロングランで人気がありますからね、オンタイムで読んでいなくともご存じの方も多いんじゃないでしょうか。


ガロっていうマンガ雑誌は1964年から2002年まで刊行されていました。
平成まで続いていたんですけど、昭和を代表する雑誌ですよね。王道ではなかったのかもしれませんが、日本文化の中に明確なポジションを占めていた、今から考えれば不思議なパワーを持った雑誌でした。


ガロからデビューしたマンガ家ってすごくたくさんいます。
白戸三平、滝田ゆう内田春菊蛭子能収杉浦日向子やまだ紫、だとかね。
めっちゃ懐かしい作家たちです。


わりにコアな、ガロの読者だったもんで脇道に入っちゃいましたけど、つげ義春です。


「もっきり屋の少女」っていう作品タイトルで初めて「もっきり」っていう言葉に出会った人って、多いんじゃないかって思いますね。


枡の中にコップを置いて、そこへ酒を注いで、コップから溢れさせるまで注ぐスタイルのことを「もっきり」って言いますよね。


マンガの中に、枡の中に入ったコップが描かれていたかどうかの記憶はないんですが、このマンガで「もっきり」っていう言い方を知って、ああ、あれかって実感した、1968年当時、酒吞みだった先輩方から受け継がれてきた言葉なのかもです。


「もっきり屋の少女」の舞台が福島県なんですね。


つげ義春が実際に福島県の南会津塔のへつり」へ旅をした時、お土産屋さんで買った手ぬぐいに書かれた言葉から着想を得たって言われています。
現実に「もっきり屋」っていう看板を出していた店舗があるわけじゃなさそうですよね。


でも、マンガを読んで、初めて「もっきり」っていう言葉に出会った読者の中には、東北弁、福島弁なんだって思っちゃう人がいても不思議じゃないですよね。


呑み屋さんで、そういう呑み方のスタイルの説明をするってことも、まあ、ないんじゃないでしょうか。
で、「もっきり」福島弁説がまことしやかに言い伝えられて、現在に至る、ってなトコじゃないかと。


「もっきり」っていうスタイルが始まったのは昭和の頃らしいんですが、これについてはなにも意見はございませんです。
へええ、そですか。って思うだけです。


そでしょねえ、昭和でしょねえって思うところがあるわけでもないですけれど、それは違うんじゃないかって思うようなところは1ミリもないです。

 

 

 


「もっきり」を枡でやっている店って、どうなんでしょうね。今はかなり少ないんでじゃないでしょうか。
たいてい、ちょっと深さのある小皿、って言いますか、平小鉢。透明のガラス製だったり、真っ白な陶磁器だったりしますよね。


その小皿の上にちっちゃいコップをトンって置いて、一升瓶からとくとく、トクトクって注いで、コップの口に、表面張力で酒が膨らんでいって、まだ注いで、と、ザーってこぼれる。


おっとっとっと。ってやつですね。


ホントは「盛り切り」なんだから表面張力のところで止めるのがワザ、ってところなのかもですけど、そこがそれ、日本式のサービス精神で、ザーってこぼすんでしょねえ。


酒の大盛りを通り越して注いでおりま~す、っていう店側の気持ち。の表現の仕方。


店によっては皿から、あるいは桝からも溢れそうなぐらい注いでくれるところもあります。
酒呑みはニコニコと「おっとっとっと」です。


注ぎ方もね、技術があるんです。
やっぱり一度は表面張力を感じさせて欲しいんでありますよ。


何もなしでザーっていくよりは、一旦、表面張力でグラスの口に酒が膨れ上がると、おっとっとっとが気持ちイイんであります。


「もっきり」の正しい呑み方、なんていう説明には、グラスの酒を少し受け皿、あるいは枡にこぼしてからグラスの酒に口を付けます。ってあります。


ふううん。酒呑みはそんなことしないですよ。


いや、別に酒吞みを代表する気はありませんけれどね、なみなみと注がれている酒のグラスに口の方を持っていきます。


ズルズル音を立てて啜るようなことはしませんが、それがひとくち目です。


「もっきり」のグラスって、どれぐらい入るんでしょうね。店によっても違うでしょうけれど、そんなに大きくないですね。せいぜい6勺、たいていは5勺ぐらいなもんじゃないでしょうか。
皿にこぼれている分を含めて8勺っていうのがせいぜいだと思います。


ひとくち呑んでグラスの中の水位を下げたら、グラスのふちを親指と人差し指でつまんで持ち上げます。
で、グラスの脇からこぼれおちる酒を小皿に受けながら、持ち上げたグラスでクイッとふたくち目。


ここで、小皿にこぼれている酒の量が入るくらいにグラスのスペースを空けます。
その分量を呑むのがふたくち目なんですねえ。


グラスに小皿の酒を落として、空になった小皿の上に、またたっぷりの状態になったグラスを、そっと置きます。


はああ、なんか落ち着きましたねえ、って感じになったら、おもむろにアテに箸をつける。


酒呑みは、こんなふうなことをやっておりますです。


別にね、これが正しいですっていうつもりは毛頭ございません。


でも、こうしている酒呑みは多いように感じますよ。女の人もやってます。


グラスに口をもっていくっていう姿がスマートにキマッテいる女の人なんかはですね、カッコイイですよ。


それだけで、お友達になれそうな気がします。はい。


「もっきり」は汚い! グラスからこぼすのは止めて欲しい、っていう意見もあるですね。
自分が「もっきり」を呑まないにしても、見るのもヤッ! ってことなのかもしれません。


そういう気持ちになっちゃうのは、分からないでもないですけど、グラスも小皿もちゃんとキレイにしている店ばかりだと思います。


枡を使っている店の中には、白木の枡をずっと使い続けている店も昔はありましたけど、今は外は黒、中は赤の漆枡になってますよね。

 

汚いって感じる人は、そういう衛生的なことを言ってるんじゃなくって、見た目の汚さ、ってことを感じるってことなんでしょうかね。


でもまあ、言わせていただければ、そういう人は酒好きかもしれませんけれど、酒呑みじゃないでしょねえ。


口の方をグラスに持っていく。そういう動きもイヤなんでしょうねえ。
目をつむっていただくしかありません。


客は「もっきり」を注文しているんじゃなくって、酒の銘柄を注文していて、出されるスタイルが「もっきり」なんですからね。


ま、汚いって思う人は、グラスだけにして出して頂戴って言えば対応してくれるでしょうけどねえ。

 

 

 


酒の呑み方に「正しい」なんてありゃしません! って思います。


みなさま、きょうも元気だ、酒が旨い! っていう日々を!