< 長い間日照りが続いた後の最初の雨に伴う独特の香り >
2022年は、関東甲信地区がどこよりも先駆けて「梅雨入りしたとみられます」ってことになりました。
気象予報士のみなさんも、これにはなんだかいろいろ、ん? っていうリアクションでしたけど、まあね、これは毎年似たり寄ったりのことですよね。
キッカリした定義っていうのがない、っていうか、定義なんて出来ません、っていうのが21世紀初頭の天気予報、気象庁の限界ってことなのかもしれません。
気象庁や気象予報士さんのウェブ情報とかをあたってみましても、「むずかしいんです」ばっかりで、こうしたらハッキリできるのにとかいうことは、方向性さえ見つけられません。
でもまあ、そんなとこでイイんじゃないでしょうか。
今のところ、その日までの雨降り状況と、その後1週間ぐらいの雨降り予想を併せて判断して「〇〇地区は梅雨入りしたとみられます」ってことになっているみたいですね。
この天気で梅雨入りっていうのは、おっかしいでしょ! って意見が出てくることは毎年、当たり前に起こっていますし、頻繁に梅雨入り時期の日付が修正されますです。
ん~。こういうアバウトなアナログ文化って、今となってはむしろ、保護した方が良くないですか?
いやいや、農作業に与える影響っていうのは大きなものがあるんだから、キッチリしてもらった方がイイに決まってるでしょ、っていう意見も当然あるでしょうけれど、気象庁の梅雨入り予想はあくまでも目安なわけで、農作業のプロは自分の地域の雨降り状況を自分の経験で判断して、天気予報で示される気圧配置だとか、梅雨前線の位置だとかを見て、ちゃんと自分なりの対処をしていると思います。
もっと言えば、梅雨入りのその日っていうのにこだわらなきゃいけない作物なんてないでしょうし、気象庁が行っているのは、「梅雨入り時期の発表」なんであって、本日何時何分に梅雨入りしましたあ、っていう「梅雨入り宣言」じゃないですからね。
気象庁の担当者と、たくさんの気象予報士さんたちの判断が違っていて当然っていう、現状の梅雨入り判断です。
ま、気象予報士さんたちは、メディアで自分の意見を言い難いっていうのはあるみたいですけどね。
予報、予想じゃなくって、実際の雨の話。
雨の季節っていいながら、昭和の頃の梅雨と、令和の梅雨ではだいぶ様相が違ってきているようにも感じますね。
気候変動の影響ってことなんでしょうけど、シトシト雨が続くのが梅雨って感じじゃなくなって、カラ梅雨なのかなって思っていると、ゲリラ豪雨とかになって、ちっとも恵みの雨じゃないですね。
それでも干ばつってことには日本はなっていないみたいですけど。
大地に雨は必要ですけれど、土砂崩れだとか、そこまではね。とはいうものの、誰にもコントロールできないですもんね。
SDGsだとかでの取り組みが自然環境に対して効果をみせてくれるまで、あとどれぐらいなんでしょう。
何か、効果を途中経過でも「見える化」する工夫っていうのも必要そうですけどね。
雨の降り方が前とは違ってきている事実は事実として、もう1つ、我々の住環境の変化も雨の感じ方に違いをもたらしているような気もします。
この前ですね、古い友人からお誘いメールをもらいました。
「別荘を建てたので、お祝いパーティーします」
な、なんだとお! 別荘っていってるのか、コンニャロ!
どこに別荘なんか建てたんだよ! って怒りモードで聞いてみますと、
「庭」
なにょお言うておるんじゃ、なにょお?!
神奈川県の向ケ丘遊園の旧家で、たしかに広めの庭はありましたけど、そこへ? 別荘?
まさにそうだったんでありました。
庭で家庭菜園ってヤツをやっていたんですが「飽きた」ので、別荘を建てた、ってことなんでありましたね。
飽きたって、あのなあ。
ちゃんと世話しないと、ちゃんと育たないわけよ。
あったり前じゃ!
ま、焼酎の一升瓶を持って行ってきました。別荘建築祝い。あともう1人と。
別荘っていってもですね、トンカントンカン、イチから建てたってうんじゃなくって、プレハブの物置をドンって置いただけなんです。
オシャレな物置。そんな感じです。
8畳ぐらいはスペースがあるんですけど、なんかね、今は普通の部屋にリフォームするキットみたいなのも売っているんだそうで、それで、自分で改造。庭に別荘の出来上がり。
ちゃんと玄関もあります。
でもこれ、基礎とかどうしてんの?
脚の回りにスチールの杭を打ってある。
脚? 別称の、脚? それで大丈夫なん?
いや、台風の時には使わない方がイイってさ。
ふむ、そゆことね。
ってな感じではあったんですが、オヤジが3人で入っても窮屈な感じはしなくて、まあ、本人が言うにはヨーロッパ風のインテリアで統一したんだそうで、小奇麗な、小気味のイイ空間に仕上がっていました。
プレハブの別荘ね。
プレハブぷれはぶ言うな!
っとか言いながら、乾きモノと簡単なアテは「母屋」で作って、こじんまりと酒盛りをしておりましたとさ。
そしたらですね、雨になってしまいました。
激しくはなかったんですが、しっかり降る雨でした。
で、最近にはない、希少な経験をしたんでありますよ。
ザーっていう雨の音が凄いんです。しかも「プレハブ」の屋根を打つ雨の音って、バチバチいって、なかなかうるさいんでした。
そっか、雨ってこういんだったよね、って思ったであります。
4面にある窓から、かなりハッキリした雨脚も見えました。
今は、ビルの中での生活なんで、1階の出入り口に来て初めて雨が降っていることに気が付いたりすることが多いですし、窓の外を見て雨が降っているのが見えていたとしても、降っている音を感じることはありません。
それはビルの最上階にしたって同じだろうって思いますね。屋根が遠いからじゃない。
部屋の中に居て雨の音を聞くなんて、今は、全然ないことです。
で、プレハブの別荘の中で、ちょっとね、3人で声を大きめにしながら雨の話になりました。
「雨の音なんて、かなり久しぶりだよな」
「ま、これほどじゃないけど、瓦屋根でも雨の音はけっこう聞こえたよ」
今の母屋は鉄筋コンクリートの3階建てです。そこそこ金持ちのボンなんです。
「昔ってさ、雨の匂いってしなかった?」
「ああ、カエルの匂いだろ」
「カエル? なにそれ?」
「カエルって匂いとかすんの?」
どういう観点からのカエル発言だったのかは放っておきまして、雨の匂いっていうのは、雨自体に人間が感じられるほどの匂いはないんだそうで、雨の降り始めに感じる匂いには「ペトリコール」っていう名前が付けられているんですね。
オーストラリアの鉱物学者の造語なんだそうです。
ペトリコール。別名「石のエッセンス」
都市部では特にアスファルトの道で、急な雨に降られた時に感じられるのがペトリコール。
太陽に照らされて熱を持ったアスファルトにはカビ、排ガス成分がたっぷり。
そこへ雨が降ってきて、そういうのがかき混ぜられながら蒸発したものの匂いがペトリコール。
そういえばね、埃っぽい匂いですもんね。
でもこれが緑の豊富な地域になるとまた違って来るみたいです。
植物の出す油成分が付着している葉っぱに雨が当たると、その油成分を取り込んだエアロゾルが空中に舞い上がる。
緑の多い地域でのペトリコールは埃っぽくないってことなんでしょうね。知らんけど。
なんで「石のエッセンス」なのかっていうのは、微妙でしょうね。実証実験をしたとすると、その環境に植物と、石がいっぱいあって、石が濡れていくにしたがって匂いがしてくるっていうことと、植物の葉っぱより、石の方が熱を持っていそうですもんね、エアロゾルの発生は圧倒的に石からだから「石のエッセンス」でしょかねえ。
そこにまだ雨が降っていなくとも、雨の気配っていうか、雨の匂いを感じることがあります。
「それがカエルでしょ。カエル、出てくるんだよ、雨が降ると嬉しいから」
「……」
近くで発生したペトリコールが風に乗って来て、雨の匂い、雨の気配を感じるんだろうってことみたいです。
で、降り始めの匂い「ペトリコール」に対して、雨上がりの匂いが「ゲオスミン」
雨上がりの匂いっていうのもちゃんとあるんでした。別名「大地の匂い」
これは雨が土に染み込んで、土の中のバクテリアと反応して作り出されるっていう、有機化合物の匂い。
雨が上がって、土から蒸発し始めると出てくるってことですね。
ん~。どんなんだか想像できませんけど、カビ臭いんだそうです。魅力ないっす。
でもこれ、土ですからね、アスファルト、コンクリートだと感じられないですよね。
雨上がりの匂いって言われても、ピンときませんです。
ペトリコールは、ほほう、そういう名前ですかって思いましたけど、ゲオスミンの方は、ん? って感じ。
「ここさ、雨漏りすんだよね」
「ええ~、ダメじゃん」
って天井を見上げたんですが、気配なし。
「さすがに天井からポタポタってことはないんだけどね。ほら、あすこの壁、ツツーって雨が伝って来るんだよね」
「溜まっちゃうじゃん」
「いや、そこは大丈夫」
「なんで」
「上から漏れてくるのと同じ原理なんだと思うけど、下に漏れていくから」
あ、そですか。それはそれは。おめでとうございます。
彼は、たぶんおそらく、この別荘にも2年経たずに飽きるんだろうと思います。
ちなみに「カエル発言」をしていたのは、ワタクシでありましたあ~。
知ってた? 気付いてた? あ、そですか。
雨が止んでから、夜遅くに帰路に着きましたが、やっぱり向ケ丘遊園でもゲオスミンは感じませんでした。
鼻?