< コロナ禍によって独りを実感するようになったっていう話 ぼっち呑みの勧め >
通勤のためってことで実家を離れて、職場近くの街で独り暮らしを始めました、っていう人も少なくないんだろうと思います。
で、今はリモートワークが増えて来て、その部屋から出ない生活。
通勤電車っていう理不尽から解放されて嬉しかったのは最初の頃だけで、自分の生活っていうものについて、ひしひしといろいろ考えさせられる。
家賃を払って、独りで暮らして、実家から離れている意味って、なんだっけか?
自分は何のために毎日独りでパソコンに向かって生活してんだろ?
つまんないんだけど。
とかね、こういう話はけっこう前からメディアでも取り上げられているトピックなんですけど、なんと、身近に、っていうか吞み仲間にね、そういう孤独感をひしひしと感じている人がいたんでありました。
ま、そりゃそうですよね。リモートワークが成立する職種が実は多くないっていってもですね、そういうコロナ禍での新しい生活様式に従わざるを得ない人もたくさんいるってことですもんね。
サワワっていうアラフォーの独身女性なんですけど、恵比寿のオフィスに通勤していた頃は、いつもキッチリとしたスーツ姿で、セミロングのヘアスタイルにも乱れのないキャリアレディって感じの、酔っ払いオヤジなんかを近寄せない空気をまとった女の人でした。
けっこう前からカウンターで一緒になると、目顔で挨拶するぐらいのお付き合いでしたけど、コロナ前のある時期に大学の同級生たちとの呑み会から、女性だけの3人で流れて来て、珍しくワイワイやっていて、その時から話をするようになったっていう関係です。
サワワっていうあだ名はその時に知りましたです。
そのサワワがリモートワークになって、店に現れるときにはノーメイク、マスク顔に黒縁メガネ、Tシャツにジーンズ姿になったんですよね。
ラフになったかっていうと、それは見た目だけのことで、店の大将と女将さん、私の他には2、3人の女性客と話をするぐらいで、そんなにくだけて与太話をするっていうタイプじゃないです。
「楽でイイんですけどね」
とは言いながら、キャリアレディとしてのアイデンティティが揺らいでいるのかなあって、感じないでもない雰囲気ではあったんです。
「このままでイイのかなって思うことがあって。時々なんですけど、切実に独りなんだなあとか考えちゃうことがあるんですよね」
ん~。こゆ投げかけには、イイ応え方するの難しいですよねえ。
みんな、そやで。っていうんじゃ何も応えていないのと一緒でしょうしね。
ソリチュードっていう感じで自己を確立できていたはずのアイデンティティに、コロナ禍の生活でロンリネスが忍び込んできてしまったっていう感じなのかもですよねえ。
もの心付くころの小学生時代から大人になる学生時代までは、誰でも周りには「ともだち」がいるっていう感覚がありますよね。
そうやって暮らしてます。
でもあれって、当人の自覚っていうより、世間が「ともだち」って表現する同級生。だいたい同じ年齢の男女が同じ地域の生活環境の中にいるってだけのことで、ロンリネスの人たちが言う「ともだち」じゃないですね。
主観的には強い親しみを持っているわけじゃないけど「ともだち」との生活は、ずっと続きます。
ご近所っていう地域性から離れ始めるのは、高校、大学の頃になるでしょうけれど、就職すると、たいていの人はそれまでの「ともだち」から離れて独りになりますよね。
会社の規模によって全然違ってきますが、社会人になっても同期っていう「仲間」でくくられて、「ともだち」っていう存在はいますけれど、この社会人1年生ぐらいの頃が、独りを実感する最初かもです。
実際の「ともだち」は極端に少なくなったような気持ちになって、高校、大学時代の仲間とつるみたくなるっていう人が多い気がします。
ただ、実家から出て、地域的に離れた場所での生活を始めたりなんかすると、だんだんと昔の「ともだち」とも疎遠になって行きますよね。
男女の別なく、それまで明るく生活していた人でもロンリネスに囚われる最初のタイミングかもしれません。
学校生活ではイジメの問題があったりして、ゆがんだロンリネスに陥ってしまうこともあるわけですが、小学生時代からソリチュードだったっていう人もいます。
卒業式で泣かないタイプ。
男性に多いかっていうと、そんなこともないんじゃないでしょうか。
社会人になって、初めての独り暮らし。初めてのロンリネス環境っていうときになると、しっかり目立ってくるのがソリチュードですね。
女性にもけっこういます。
「ソーシャルキャピタル」なんていう言葉もあって、人間が生きていくうえで、大事な社会的資産は人付き合いだっていうことなんでしょうけど、これって、決してロンリネス的な意味での「ともだち」のことじゃないですよね。
そもそも人付き合いを資産価値として捉えること自体に、寂しさの源泉があるのかもしれませんよ。
独り暮らしの生活の中にロンリネスが忍び込んで来たら「ぼっち吞み」をお勧めします。
誰か「ともだち」「仲間」を誘って、とかいうんじゃないスタイルの吞みです。
慣れだと思うんですよね。
独りで初めての店に入れないっていう人は少なくないんですけど、男でも女でもね。
呑み屋っていうことじゃなくって、新しく出来たとんかつ屋さんとか、気になるんだけど、独りじゃなあ、って考えちゃうタイプ。
ましてや夜の呑み屋さんなんかに独りでいきなり入るのは、無理!
ソリチュードからしてみますと、面倒くさいタイプ。独りがイヤなんでしょうけどね。
ま、そこから一歩踏み出しましょう。
店の雰囲気っていうのは、実際に入って、吞んでみないと分かりませんよ。
店の人とも、隣りに座った人とも、無理に話す必要もないんです。
たいてい、どこの店でもお独り様大歓迎なはずですよ。
初めて顔を見る人たちに、自分がどう思われたってイイじゃないですか。
それに、そもそも他人のことってそんなに気にして呑んでいませんよ、酒呑みたちは。
サワワは、そういう試練を潜り抜けてきたはずの酒呑みなんでしょうけれど、それでもロンリネスに取り込まれそうになってしまう。そういうもんではあるんですけど、家で独りで、っていうんじゃなくって、呑み屋さんで独りでっていうのを「ぼっち吞み」としてお勧めいたしますです。
切実に独りを感じてしまって、リモートワーク後のぼっち吞みを部屋の中でやっていたらしいんですね、サワワも。
こんな話をしましたです。
「ぱうすさんもいつも独りでしょ」
「うん」
「家では呑まないんですか」
「あんまり。家で独りで呑んでると煮詰まっちゃう」
「あ~、なるほど。なんだか余計なことばっかり考えちゃったり」
「そうね」
「でもあたし、こうやってお店に来ても、なんか、誰とも、話す人いない感じなんですよね」
「今話してんじゃん」
「ま、そうですけど」
「サワワは家で呑むときってナニ呑んでんの? レモンサワワとか?」
「ぷっ。くっだらなあい」
お、笑ったわらった。
「こういう話ができるのって、店じゃないとね。家の中で独りでいたんじゃ無理っしょ」
「たしかにねえ」
「話してもイイし、話さなくたってイイ。そういう店をいくつかめっけて、バカを言っても大丈夫な相手を何人か見つける」
「う~ん、でもそれ、ちょっと難しそうですよね」
「ん? この店の他の酒呑みオヤジたちだって、意外に軽く話せると思うけどね」
「いや、それがそうでもないんです。いるんですよイヤな人って……」
ってな感じで、話し始めればすんなり「ともだち」モードになれる人なんです。
まあね、元々ソリチュード気質のサワワなんで、ちょっとお疲れ気味の夜だったってことなんでしょうけどね。
家族だって、究極に考えれば独りひとり、なんですもんね。世の中、みんな、独りです。
ロンリネスじゃなくって、ソリチュードってことを意識していきまっしょい!
誰かと話をするってことが目的じゃない「ぼっち吞み」が出来るようになれば、リッパなオトナ、でしょねえ。
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