< 関東圏で知っている人は 東海林さだお氏ぐらいしか居ないんでないの? >
たぶん関東圏、東日本には居ないと思いますね、しょース派。見たことも聞いたこともないです。
でもね、さすがに知っておられますよこの御方は。我らが東海林さだおセンセは知っているであります。
2018年発売の文春文庫「目玉焼きの丸かじり」という本に「しょース出現」というタイトルで扱っておられます。
この文庫本は2018年発売ですが、単行本の方は2014年の10月に出ています。ということは、センセが書いたのは2014年10月より前。
オリバーソース株式会社からこの「しょ―ス」が発売されたのは2013年の3月だそうです。
東海林さだおセンセの丸かじりシリーズは、ご存じ週刊朝日の連載で、この「目玉焼きの丸かじり」に収められているのは、2013年4月19日号から2014年1月17日号までだそうで、そんでもって「しょース出現」のエッセイは6つ目です。
2013年4月19日から6週目ってことは、5月31日になりますね。「しょ―ス」の発売から3か月足らず。原稿はその前に書いておられるわけで、さすがです。アンテナが違います。
発売されてすぐに、あっと言う間に、さっそくに仕入れて試しておられる。
どっからこういう情報を仕入れていらっしゃるんでありましょうか。なんにしても凄いバイタリティの御仁ではありますね。
ネットで買えるとはいうものの、2021年の今になっても東京近辺では見かけません。近所のスーパーにはないです。ま、よくよく探せば見つかるのかもしれませんが、人気、出なかったんでしょうかね。
東海林さだおセンセは、あれです、目玉焼きにかける調味料として、しょースを気にいられたようで、晴天の霹靂、コロンブスの卵、と絶賛です。
なにせショクツーのセンセはですねえ、目玉焼きをお召し上がりになる際に、まずソースをかけるんだそうです。
でもって、その後、コソコソとしょう油をかける、んだそうなんですが、このしょースによって、コソコソせずに済むはず、というセコイ、いやいや重大な問題解決を、コソコソからの救済を期待されているんですねえ。
で、どうったのか。
グルメ大家の東海林さだおセンセはドドーンとやってくれています。
まさに本領発揮で、アジフライ、トンカツ、コロッケ、やってみてますねえ。すごいです。やっつけちゃってます。目玉焼きにとどまりません。
ま、この辺りまでは、ああ、両方居ますもんねエ、しょう油派とソース派って感じで。
アジフライにはしょう油でしょ。いやいやソースがイイんです、ウスターが合うんです。だとか、トンカツにしょう油やってみたらヤミツキ。だとかね、居ますね、そういう人。
そういうのを一気に試してみるセンセには尊敬のまなざし、なんでありますが、まだいきます。
そうです、なんたって、あの、東海林さだおセンセなんでありますよ。グイグイいきます。
納豆、チクワ。
チクワはなんとなく、あくまでもなんとなくですが、そのチャレンジには同意できなくもないです。
しかしですね、納豆ですよ、ナットウ。
なんで納豆を選んだんですか、センセッ!
と、鼻の穴が広がってしまいますね。
常日頃から納豆にソースをかけてみたらどうだろうかと、密かなたくらみを持っていらしたんでしょうか。
あるいは、既にやってみている?
昔ね、定食屋さんで、同じ職場の人がやってしまったのを確認したことありますよ。
その人は間違って、しょう油ではなく納豆にソースをかけてしまったんですね。けっこう大きな声で「アッ!」と言っていましたね。
明らかな間違いをおかしてしまった。あくまでも、意図せずにしょう油とすべきところをソースにしてしまった、というミステイク。
そういう「アッ!」
昔の定食屋さんのテーブルには、調味料が何種類か一緒にまとめて並べられていたもんでした。その中でしょう油とソースは、なんでだか同じ形状のボトルに入っていたりしたもんなのでした。
白っぽいプラスティックのボディーに赤いキャップ。
ボトルのボディーにしょう油、ソースというシールが貼ってあるのが多かったですが、それも時間の経過とともに剥がれてしまって、どっちがどっちだか、しっかり見ないと分からないということは普通でした。
で、その人は間違ってしまったわけです。不注意と言われればその通りでありますし、そもそも昼の定食に納豆を選択するそのセンスは、どちらかというと眉をひそめられる種類のものではありました。
しかし、そんな人であっても納豆に、意識的にソースをかけるなどという暴挙はしないんであります。
納豆にソースというのは暴挙ですよ。悪逆非道ってもんです。
しょう油の国の日本人は、そういう感覚なのではありませんか、センセッ! などと心配してみたりしたのですが、なんと、あっさりと結果発表。
「意外や意外、納豆の新しい味、ニュー納豆になっている」
だそうでありますのでした。
エエーッ! ニュー納豆ってナニ?
アジフライ、トンカツ、コロッケ、チクワに関して「合う。ちゃんと合っている」というのは広い意味で許容範囲内ではあったのですが、なんと納豆までもオッケーだという。ニュー納豆になるんだという。
でもね「日本を代表する2つの風味が奏でる見事なハーモニー」だそうですからね。東海林さだおセンセも認めていることですしね。
イケるんでしょうね。
恐るべし「しょ―ス」
にしても、なんだってしょう油とソースを合わせようと考えたんでしょうか。そもそもね。
オリバーソース株式会社がある神戸の街の様子は詳しくない、というか全然知らないのですが、ハーバーランドってとこがあって、そこで「カルビー 神戸釜揚げチップス しょース味」っていうのが、地域限定販売されているらしいです。
けっこう人気みたい。しょース味。
なかなか商売上手なんでしょうね。
オリバーソース株式会社は神戸のソースメーカー。創業は大正12年といいますから、なかなかの老舗。
どろソース、とんかつソース、お好みソースなど、地域に合ったソースを作り続けてきた、ちゃんとした会社。
そういう会社が、ソースにしょう油を取り込んだ。なんで?
オリバーソースが言うしょースとは「醤油風味のお好み焼きソ-ス」
ほほう。
ということはですよ、神戸、大阪のお好み焼きファンにも、ソースではなくしょう油を塗って仕上げるという作り方にこだわっていた人が居た。
しかも、その数は少なくない、というマーケティング結果をオリバーソースさんは仕入れていたということなんでしょうか。
その辺のバックヤードの事情は公表されていないようでありますが、オリバーソースさんは、代々、吉本興業さんとの付き合いが深いんだそう。
むむっ。そういうノリから生まれたんでしょうか、しょース。って、そういうノリ?
社風としてのおもしろおかしい職場を理想としているらしいです。イイですねえ。
どういう社長さんなんでしょ? と大きなお世話の関心を持って、ちと調べてみたらですね、オリバーソースの社長さんは“道満雅彦”さんとおっしゃる。
ええっ? と思ってしまいましたね。
思いませんか?
神戸の道満さんですよ。お住まいが神戸市なのかどうかは分かりませんが、まあお近くにお住いのことでしょう。老舗の会社はだいたいそうですからね。
神戸市の隣りは芦屋市。これぐらいは関東圏の住人でも知っておりますです。
芦屋に縁のある道満さんとなれば、浮かんでくるのは、平安時代の陰陽師“芦屋道満”です。
芦屋道満という人は実在したかどうか不明とされているらしいんですが、どうしても、芦屋近辺に居る道満さんともなれば、居たでしょ、歴史的事実でしょ、という気がしてきます。単純です、はい。
芦屋道満。安倍晴明のライバルとされている人ですよね。
陰陽師のブームの中では、ヒールでしたね、芦屋道満は。
安倍晴明がヒーロー。どういう人だったのかは分かりませんが、やっぱり実在したんじゃないでしょうか。お母さんがキツネ、という伝説もありますけれどね。
今現在、三重県の鳥羽市、志摩市の海女さんたちがおまじないとしてお守りにしている“セーマンドーマン”というのがあります。
これは歴史的伝説とかいうのではなくって、事実です。21世紀の日本の実際の風俗。
セーマンは安倍晴明、ドーマンは芦屋道満の名前に由来しているのではないかとされているようです。
海に潜って漁をする海女さんたち。けっこうな深さまで潜ることもあるそうで、そんなときに竜宮へ引きずり込まれてしまうことがある。
それを避けるためのお守り、魔除けなんだそうです。
竜宮へ引きずり込まれるって、かなり怖い話です。でも、潜水病だとか、なんかそういう海女さん特有の症状というか、感覚、があるんだろうという推測はできますね。
乙姫様、けっこうコワイです。
なんかね、吉本興業の笑いのパワーもさることながら、芦屋道満の陰陽師のチカラ。そんなところから生み出された「しょ―ス」
とか考え始めると、なんだかありがたい調味料なのかもなあ、という気がしてきました。
そうなんです、まだ試したことないんです。
どっしよかなあ、ネットで買ってみようかなあ。東海林さだおセンセもオッケーだったみたいだしなあ。
でも納豆にはかけません。絶対。
竜宮に引きずり込まれてしまいますよ。
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