ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

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【サツマイモ発電】霧島酒造がやってくれていた本格焼酎と本格発電

< 電氣ブランがどうっていうイメージの話じゃなくって 霧島酒造が本気で電気を作っている件 >

けっこう早め、まだ明るいうちにいつもの焼酎バーに辿り着きました。


と、女将さんが店先に出てニコニコしながら妙な踊り、っていうか身体を動かしています。


「ああら、早いじゃない」
なにしてんの?
「あれよ、カムバック酒呑み、ってやつ」


ん~、あれよ、とか言われてもですねえ、知りませんですよ。なんですか、カムバック酒吞みって。


話を聞きながらカウンターに向かったんですけどね、女将さんが言っているのは「カムバックサーモン運動」ってやつらしいんですね。
そういえばって思い出しましたけれど、北海道の川にサーモンを呼び戻そうっていうんで、その昔、テレビでやってましたね。
かなり古い話なんで記憶が定かじゃないんですけど、テレビコマーシャルだった気がするんですね。


でも「カムバックサーモン運動」って北海道の市民運動だったはずで、コマーシャルとは結びつかないような。


「あれじゃないの、サケ缶とかの会社が環境貢献とかさ、そういうイメージ作りもあってコマーシャルに使ってたんじゃないの」


はあん、なるほど。そなのかな。


「それに、あれ、成功したんでしょ。放流したサーモンはちゃんと戻ってきたのよ」


そだったですかねえ。
で、なんで店先で「カムバックサーモン」なの?


「決まってるじゃない。あたしがやってるのはカムバック酒呑み~、ってわけよ。戻って来てね~」


あ、酒呑みねえ、そでしたねえ、なるほどねえ。放流された覚えはないですけどねえ。

 

 

 


「ようやくっていうか、だんだん戻ってきている感じではあるんだけどねえ、もっとさあ」


ん~。そですか。とか言いながらおしぼりでオテテ拭きふきしているうちに、いつもの顔ぶれが百々っと入って来ましたね。


「なに、きょうはみんな早いわね」
「暑いからさあ。仕事にならないんだよね」
「待ち合わせてたの」
「いや、電車の中とか、ここまで来るうちにね、あれ? どっかで見た顔だなあって」


ま、そういう日もあるってことなんでしょうけど、一気に6人入って来たんで店の中は7割方埋まってしまいました。


チャキチャキと注文をとって歩いている女将さんに、
「サーモン、一気に戻ってきたじゃん」って言うと、
「あらあ、そうねえ、効き目あるわあ。あっはっはっは」


ってなりますと、「ナニナニ、何の話。2人だけで盛り上がっちゃって」


「いや、あのね。あ、いらっしゃ~い。あ、うしろからもう1人ごらいてーん」


と、ここで、真打登場。


東の横綱、底なしのユリちゃんが入って来て、すぐそのあとから西の横綱、ウワバミのユリちゃんです。


2人ともユリちゃんなんで、底なしとウワバミって区別しているんですけど、ご当人たちはご不満のようですので、2人が揃っている時は、しっかり顔を見ながらユリちゃんって、話しかけないといけないルールなんです。
ま、そんなにしょっちゅう2人が一緒になることはないんですけどね。


たぶん年齢も近いし、同じ名前ってことで横綱同士の中はイイんです。
カウンター席は埋まっていたんで、ダブルユリちゃんは4人がけのテーブルに着いて、私もそのテーブルへ手招きされてカウンターから移ることになりました。
横綱テーブルに前頭筆頭が参加って感じ。


ってなことになりましてですね、お通しと、それぞれの酒とが運ばれてきましてね、一気に賑やかな店内になりました。


こういう個人経営の小さなお店の面白いところは、会社の同僚何人かと来る客がメインじゃないってことですね。
たいていの客は付き合い酒で来ているんじゃなくって、本格的に酒を呑むぞっていう独り客で、年齢とか仕事とかバラバラです。


ですので、ときどき突拍子もない話が出ることがあるんですね。


でもって、その話をし出した当人が酔っ払いですからね、なんだかどこかで辻褄が合わなくなっちゃって、あれ? ってなるようなことも珍しくはないんです。

 

 

 


4杯目のロックに口を付けたころ、ウワバミユリちゃんが言いました。


「あんね、焼酎から電気作れるって知ってた?」


底なしユリちゃんが応えます。


「理科の実験みたいなこと?」


横綱の視線が前頭に集まります。え? なに、焼酎から電気、なんやねんそれ、知らんがな。
ウワバミユリちゃん、上機嫌。


「へっへっへ、知らないでしょ。あのね、だからさ、電気出来るんだから、焼酎たくさん呑むとSDGsになるんだってば」

 

芋のお湯割り

焼酎から電気でSDGsってなにがどこで、どうつながっとんねん!


とかね、そんなことをこのテーブルで言っちゃいけません。
前頭は横綱に向かってそういうことを言っちゃいけないですよ、ってことで、あとから調べてみました。


ウワバミユリちゃんが焼酎から電気っていう話題を提供してくれなければたどり着くことなんてなかっただろうなっていう、なかなか貴重なことだったんでありますよ。


焼酎に電極を刺して、っとかね、そういうことじゃなかったんですけど、まあ当たらずとも遠からず、なことでした。


「霧島」っていう焼酎ありますよね。置いている店も多いです。
個人的には、ん~、って思っている銘柄なんですが、人気です。
居酒屋の芋焼酎として、スタンダードな感じですよね。


マジでクッサイ頃の昭和の芋焼酎。まだ本格焼酎とか言ってなかったんじゃないかって気がしますけど、その頃の芋っていえば「白波」「三岳」「霧島」が御三家だったでしょうかね。


みんな臭かったんです。夜の電車で酔っ払いの独特の酒の匂いっていうのがありますけど、芋焼酎を呑んできたヤツの匂いは一発で分かるような、そんな独特で強烈な匂いだったですよね。
呑んでる口のなか、鼻の奥が臭いんじゃないんです。呑んでる身体全体がクッサイ。そういう強烈さ。


あの頃の強烈さを懐かしがる声もあるんだそうですけど、何がどう違っているのか分かりませんけれど、今はもうつくれないんでしょうね。匂いはほぼ無いです。


そんなクッサイ頃の「霧島」は「霧島」一種類しかなかったように思います。少なくとも東京近辺で流通していた霧島は、霧島しかなかったです。


黒霧島」ってラベルで一気に人気商品になったのが1998年かららしいですね。
少し経ってから、これ、黒麹に戻したってやつらしいよ、ってんで呑んでみてビックリしたのは、臭くないってこと。


あれ? って思いました。で、ラベルを見てみますと「本格芋焼酎」ってあったんですねえ。
本格? 今までの霧島にも書いてあったっけ? って感じでした。


焼酎ブームがやってきて「赤霧島」「白霧島」「茜霧島」だとか、他にもいっぱい出て来てなんか一気に霧島ファミリーが増えましたね。


蒸留元の霧島酒造は、芋焼酎ばっかり作っているんじゃないみたいですけど、霧島の原料のサツマイモは宮崎県と鹿児島県の1300軒の農家で栽培しているんだそうです。


1日に一升瓶20万本の焼酎を造っているんだそうですが、使うサツマイモは400トン。


ん~、400トンのサツマイモって具体的にイメージするのは難しいですけど、その400トンのサツマイモから15トンの芋くず、850トンの焼酎かすが出るんだそうです。


400トンのサツマイモから1升瓶20万本と865トンの残滓。ふむふむ、大工場ですね。


で、1300軒の農家が作っているサツマイモ。宮崎、都城盆地100メートル地下からくみ上げるシラス台地の、霧島裂罅水(きりしまれっかすい)。
こうした自然の恵みと人間の仕事を、焼酎を造るためとはいえ、その残滓を不要物として焼却処分してしまうことに違和感を持っていたんだそうです。


家畜用の飼料にしたりとかいろいろやってみて、思い切って舵を切ったのが「発電」


2014年から事業として発電を始めて、2019年に年間850万キロワット、2400世帯分の電気を作って、実績をあげているのが霧島酒造なんです。

 

 

 


こうした実績を知ってしまえば、へええ、そですか、って納得、感心するばかりですけど、焼酎メーカーが発電っていう発想は、なんとも驚かされます。


SDGsっていうのが世界的に叫ばれるようになったから発電、っていうんじゃなくって、せっかくのものを大切に何とかしたいっていう、もっとずっと前からの「気持ち」なんです。素晴らしいですね。


焼酎を造った後の芋くず、焼酎かすを細かく粉砕して発酵させる。


発生するメタンガスで、蒸気ボイラーと発電機を回す。


設備にかなり費用もかかったみたいですけど、充分な見返りのある発電になっているんで、将来的にも明るい見通しが立っているそうです。


今の時点でも「さつまいもEV e-imo(い~も)」っていう、サツマイモ発電で走る社用車の運用を実現させているみたいですからね、発電のためだけに新たに設備をっていうんじゃない、21世紀型日本の発電として、他の焼酎メーカーにも広がっていく流れなのかもしれませんね。


ウワバミユリちゃんの言っていた「焼酎たくさん呑むとSDGs」っていうのも、全く間違っているってことじゃなくって、焼酎から作れるバイオガスで発電するんですからね、たくさん焼酎を飲んで、どんどん焼酎が造られるようになって、たくさん電気が作られるようになれば、ま、SDGsに貢献するってことになるんじゃないでしょうか。


わりとマトモな酒呑みの理論かもですよねえ。

 

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