< これまでのドーナツブームにミスタードーナツは絡んでいないらしいです >
ドーナツについて「カロリーゼロ理論」が開陳されるずっとず~っと前のこと。
1934年に公開された、アメリカのボーイミーツガール映画「或る夜の出来事」の中で「ドーナツの正しい食べ方」が語られています。
主人公の「ピーター」クラーク・ゲーブル(1901~1960)と、「エリー」クローデット・コルベール(1903~1996)が、2人でコーヒーを飲みながらドーナツを食べるシーンがあります。
まだ出会ってからそんなに時間を共有していない頃で、2人は意地を張り合っている関係です。
エリーは話をしながらチャプチャプと長くドーナツをコーヒーに浸しています。
それを見ながらピーターが言います。
「おいおい、そんなダンクをどこで教わったんだい? 花嫁学校?」
エリーはドーナツを浸すことを止めずに言います。
「あら、ダンクしちゃダメなんて言わなかったじゃないの」
「ダメだね、やり方を分かっちゃいないんだよ君は。ダンクっていうの芸術なんだ。長く浸すもんじゃないのさ。こうしてサッとつけて、パッと口に入れる。長く浸していると柔らかくなって崩れる。タイミングっていうものが大事なのさ。ボクはダンクのやり方に関して本を書くべきかな」
これはアメリカ映画なんで、コーヒーにドーナツなんですが、イギリスでは古くから紅茶にクッキーを浸して食べる習慣があったんだそうで、ティーカップにクッキーを「ダンク」するって言っていたんだそうですね。
それを真似てやっている映画のシーンなわけですが、実際にイギリスやアメリカで、みんながダンクして食べていたのかどうか分かりませんが、ダンクっていう言葉は浸透していたんでしょうね。
バスケットボールのダンクシュートも、この浸して食べるダンクが語源だそうです。DUNK!
1970年に日本に上陸した「ダンキンドーナツ(Dunkin' Donuts)」のダンクって、これなんですね。
日本人の食べものの中にドーナツがポジションを得たのって、この頃からなんじゃないでしょうかね。
ダンクしていた日本人がいたのかどうかは、どうでしょうね。分かりません。
1971年には「ミスタードーナツ(Mister Donut)」も上陸しています。
ちなみにですね、ダンキンドーナツを創業したウィリアム・ローゼンバーグは、奥さんの妹の旦那さん、ハリー・ウィノカーと一緒に1950年に会社として始めたんですけど、合わなかったらしくって、1956年にウィノカーが独立して始めたのがミスタードーナツなんだそうですよ。
知ってました? なんか、へええって思っちゃいます。
ダンキンドーナツから分離したのがミスタードーナツ。
たぶん、って言いますか、やっぱりなんですけど、ドーナツそのものに差はないんでしょうね。
1990年には両社とも買収されてしまっています。
ま、そういう会社経営の話とは関係なく、ダンキンドーナツとミスタードーナツが上陸して来たときには、日本でドーナツブームは起きていないみたいなんですよね。
改めて食生活の中でのドーナツのポジションを考えてみますと、日本人ってそんなにドーナツを食べないかもです。
いやまあ、食べないことはないんですけど、例えば、喫茶店のメニューにドーナツがあるっていう店舗なんて明らかに少数派でしょうし、コーヒーに合うよねっとか、そんな感じも強くは持っていないんじゃないでしょうか。
ダンキンドーナツもミスタードーナツも、徐々に、ではあるんでしょうけど日本国内に店舗を増やしていって、テイクアウトにしたり、店内で食べたり。
日本人もドーナツを普通に食べるようになってきた。
ドーナツがだんだん定着していった、のかと思いきや、1998年、ダンキンドーナツは日本から撤退しちゃうんですよね。
アメリカ本国の事情として、買収されてからの営業判断は上陸してきた当時とは違うものになっていたんでしょうけれど、ま、日本上陸以来30年ぐらい、そんなに売れなかった。
ダンキンドーナツとしては、日本にはドーナツが根付かなかったっていう判断だったんでしょうね。
で、第1次ドーナツブームって言われているのは、2006年なんですね。
行列した記憶のある人も少なくないはずの「クリスピー・クリーム・ドーナツ」
ドーナツはアメリカからやってくるんですね。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は1937年にアメリカで創業したドーナツチェーン。
ダンキンドーナツより老舗です。
ダンキンドーナツが撤退した8年後の上陸なんですけど、クリスピーなら日本で勝てるでしょ、っていう目論見があったんでしょうねえ。
どういう試算をしていたのか分かりませんが、新宿サザンテラスの1号店には大行列が出来ましたね。
ただの行列じゃないですよ。「大」のつく行列です。
迷惑に感じられるほどの大行列でした。
日本で、なぜだかドーナツブーム。
あの時、クリスピーの行列を見たミスタードーナツの関係者って、どんな気持だったんでしょうね。
なしてドーナツに行列? 日本なのに? って感じだったんでしょうか。
クリスピー・クリーム・ドーナツは店舗数を着実に増やしていって、2015年には64店舗。
ところが2016年に急激に方向転換。一挙に24店舗を閉店しちゃうんですよね。
ミスタードーナツの店舗数は1000軒をちょっと下回るぐらいで推移していますから、あれ? っていう感じです。
あんなにブームだったのに、10年で100店舗いかずに縮小だったんです。
クリスピー、撤退? いいえ、撤退なんかしませんよ。ってことでしたね。
日本の第1次ドーナツブームはとっくに去っていたっていうことだったんでしょねえ。
ただですね、このドーナツを巡るマーケティングって、誰がどう判断しているのか分かりませんが、クリスピー・クリーム・ドーナツがジリ貧になりだしたっていうのに、2015年に第2次ドーナツブームってことになります。
新たにドーナツブームを仕掛けたヤツがいるですよ。
そです、セブンです。
セブンイレブンがレジ横にドーナツを並べて売り始めたんですね。
2023年時点でセブンの店舗数は21402。
2015年時点でもそんなに変わらない店舗数だと思われますが、行列を作る必要のない第2次ドーナツブーム。
でもねえ、これをブームって言っちゃうのは正しいのかなあっていう疑問も感じます。
そりゃ、売れるドーナツの個数は圧倒的になるでしょうけれど、セブンにドーナツを求めて行っている人がいたとは思えませんですよ。
レジ横にドーナツが並べてあるんで、お、ドーナツ始めたんだ。じゃ、1つ。っていうノリだったんじゃないでしょうか。
1回試してみるかっていう、それだけ。
ミスタードーナツと変わらないドーナツですしね。
あれですよ、セブンがコンビニコーヒーにやっと成功したのが2013年っていうことですから、コーヒーっていえばドーナツでしょ、っていう計算があったんでしょうねえ。ダンクでしょっていうね。
ですが第2次ドーナツブームって半年もたなかったような記憶ですよ。
日本人、ダンクしないっす。
レジ横から「撤退」した第2次ブームのドーナツは個別包装されて、パンの棚に今でもありますけどね。
メディアはドーナツブームにしたいのかもですけど、セブンの店舗数がもたらした、とんでもない売上個数ってだけのことだったんじゃないでしょうか。
ま、なんにしても、第2次ドーナツブームはあっさり終了。
それでですね、2023年、第3次ドーナツブームでしょねえ、ってことになってます。
2020年「ラシーヌ」
2022年「アイムドーナツ?」
に代表されるような「生ドーナツ」っていうのが、第3次ドーナツブームの正体みたいです。
まだ食べたことないんですけど、第3次のブームはドーナツそのものの味わいに、これまでとは違った新しさがあるんでホンモノかもしれないですねえ。
生ドーナツを提供している店舗が急激に増えているってことなんですけど、どこもドーナツ専門っていう商売形態じゃないみたいで、他の食事も提供しているようです。
生ドーナツっていのは、めっちゃ柔らかくって、口に入れるとスッと溶けてなくなっちゃう感触なんだそうです。
これ、ドーナツブームとか関係なく試してみたいですよね。
ダンクしちゃダメそうな感じがします。
でも、カロリー、糖分、心配ですよねえ。なにせドーナツなんですからねえ。
いやいや、リング型のを選べば大丈夫っしょ!
あれでしょ、リング型のドーナツは形がゼロだから、カロリーゼロなんですよね。
「カロリーゼロ理論」って正しいでしょ。
理論を振り返ってみますとね、カロリーっていうのは真ん中に集まる習性があって、リング型ドーナツは真ん中に穴が開いているからカロリーはゼロ。
ドーナツの真ん中は空気だから、空気を食べているのと一緒なんであ~る。
でしたよね。
この「カロリーゼロ理論」をサンドイッチマンが言い出したのって2015年。
第2次ドーナツブームの時ですよ。
すぐに終わっちゃった第2次ドーナツブームですけど、今回の「生ドーナツ」第3次ドーナツブームで、いよいよ「カロリーゼロ理論」の正しさが確立されるかもです。知らんけど。
ミスタードーナツは今回の第3次ドーナツブームにも乗っからず、孤高のポジションなんでしょかねえ。
クリスピー・クリーム・ドーナツは復調傾向にある、って話もあります。
個人的に、フレンチトーストはダンクしますけど、ドーナツは、しません。