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【鮭の酒粕汁】小津安二郎の大好物だったらしいんですよね

< 小津は進歩がない いつも同じっていう評価もありますが それのどこがイカンっていうの! >

「きょうも暑うなるぞ」


っていうのは、気象予報しているんじゃなくって、映画「東京物語」のラストシーンで笠智衆がつぶやくセリフですね。
実に日本的な日本映画の名作です。


1953年の映画なんですけど、意外と今の若い世代にもウケているみたいですよ。


観た人にしか伝わらないでしょうけれど、「きょうも暑うなるぞ」っていう終わり方が、なんて言いますか、染みるんですよね。
名ラストシーンです。


しみじみとした日本人家族の崩壊劇なんですけどね。受け止めざるを得ない「過ぎ行く時代への感慨」ってもんは、昭和から平成になって令和になっても、変わらずに続いているってことかもしれません。


広島県尾道の海岸の風景。なんでもない日本の町の風景ですが、ラストシーンの笠智衆原節子が佇んでいた場所を訪れる人は絶えないそうですね。


野田高梧小津安二郎の脚本。世界の小津安二郎監督作品とは、まず、この「東京物語」です。

 


小津安二郎は東京、深川の生まれなんですね。
小学校4年生の時に三重県松阪市に一家で引っ越したそうですが、小津が二十歳の時に深川に戻って来ています。


中学生の頃から映画監督を志していたらしいんですが、深川に戻って来てすぐ、松竹キネマ蒲田撮影所に入ったそうです。


撮影所の所長は、新人脚本賞に「城戸賞」として名前を残している「城戸四郎」


「監督になるには脚本が書けなければならない」っていうのが城戸四郎の考え方で、小津安二郎も自作の脚本を提出して認められて、監督へ。


時代が時代ですからね、従軍しながら映画の撮影を続けていたらしいんですが、戦後、野田高梧と脚本を共同で書き上げた「晩春」を発表します。1949年ですね。これもイイ映画です。


原節子を主演に迎えて、このころから小津調っていわれる作風になっていますね。


1950年「宗方姉妹」1951年「麦秋」1952年「お茶漬の味」そして1953年「東京物語」です。


小津安二郎っていう人は、コダワリの人で、1962年に最後の作品となった「秋刀魚の味」まで、スタンダードサイズで撮っていたんですね。


他の映画監督がどんどんワイドスクリーンの映画に移っていく中で、「なんだかあのサイズはぞっとしない」「四畳半に住む日本人の生活を描くには適していない」っていって、スタンダードサイズにこだわっていたんだそうです。
小津安二郎のコダワリ、小津調の源泉です。


今としては若すぎる60歳の生涯だった小津安二郎。癌だったんですね。独身を貫いた人です。


撮影中でも、「これからはミルクの時間だよ」って言って、ニコニコと酒盛りを始める人だったそうです。
1つの脚本を書き上げるまでに100本もの一升瓶を空にしたっていう話もあるぐらいの酒好き。


野田高梧と2人で呑んだ量だとしても、第1稿をあげるまでにどれぐらいかかったのか分かりませんが、仮に1ヶ月かかったとすると、1日3本ちょっとって計算になります。
まあ、1日だけだったら2人で3本。呑めないこともない気もしますが、毎日となると、ほとんどウワバミってレベルでしょうね。


日本酒派だったのかもしれませんけどねえ、なんでまた「ミルク」って表現してたんでしょう。
ナゾです。ま、脚本のデキには、なんの関係もないですけど。


多趣味としても知られていて、野球、相撲の大ファン。
写真、絵、デザインはかなりの腕前だったそうです。


一芸に秀でた人の趣味って、やっぱりどれをとっても一流、っていうのはよく聞きますね。
空けた一升瓶に、1、2、3、って番号を振っていたっていうエピソードもある小津安二郎なんですが、毎日の食事内容を日記に書き留めてもいたそうです。


なんか、ちょっと、神経質なほどの生真面目さを持っていたのかもですね。

 


あの山田風太郎が、小津安二郎の日記の中に「鮭の酒粕汁」の記述を見つけて「B級グルメ考」に書いています。


昭和30年の日付ですから「東京物語」の発表から2年後、押しも押されもせぬ大御所のころですね。


1月17日「夜、鮭粕汁をつくる。美味」


1月22日「朝、鮭粕汁を拵える。美味」


2月1日「鮭粕汁にて夕めし」


山田風太郎はこの頻度に驚いていますが、独身の小津安二郎が自分で作ったんだろうかって不思議にも思っていたみたいです。ふむふむ、確かにですね。


「つくる」「拵える」って書いてあるところをみれば、まあ、自分で作っているんでしょうね。
メモ的に「美味」って書き留めてあるところが、いかに好きだったか分かる気がします。


日記の記述だけからは鮭以外の具材は何だったのか、さっぱり分かりませんが、寒い日にはイイでしょうね。

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酒粕を入れて煮込む「粕汁」は日本酒の醸造所のある土地を中心に、冬の汁物として親しまれている一品ですね。


酒粕はカスという名前ではあるものの、しっかり酒の風味を残した食べものですからね、日本酒好きの小津安二郎が作る酒粕汁は、けっこうたっぷりの量の酒粕が入ったのかもしれません。


粕汁は、しょう油だったり、味噌だったり、出汁だけだったり、家庭の味ってやつですよね。
具材もその家ごとのオリジナルなんだろうと思いますが、ダイコン、ニンジンだとかの根菜類が一般的でしょうか。


それと不思議に、鮭、ブリの切り身だけじゃなくって、アラを入れたりするのが定番な感じです。
ま、キマリなんてないんでしょうけどね。


小津安二郎の日記の記述も「鮭粕汁」って書いてありますね。酒じゃなくって鮭です。
ホント不思議に合うんですよね。鮭、サーモン。


少し辛めの塩鮭が酒粕のコクを含んで、ホクホクのアツアツになります。

 


土地ごとの特徴っていうのもあるみたいで、ユニークだなあって思う粕汁があります。


京都の粕汁は、鮭とか、魚じゃなくって豚肉。味付けもしょう油、味噌は使わず出汁だけ。


信州の粕汁の具は野沢菜だけ。


宮城の粕汁にはメヌケだとかキンキのアラと、白菜の古漬けが入る。


大阪では、根菜と鮭の粕汁には「かやくごはん」が付き物らしいです。


むふふ、どれも試してみたいですね。ごはんでも酒のアテでも、旨そうです。


きょうも寒うなるぞ!

 

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