ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

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酒呑みの食いしん坊、メタボはイヤだけどガマンは嫌い。

【金谷酒数】という先人のあーだこーだに どーのこーのとクダをまく その1

<文字落語 邪馬台国時代の宴会に俳題を求める趙さん の一席>

「酒に別腸あり」で登場願いましたマルちゃんと棒さんの第二弾であります。

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実はですね、マルちゃん。コロナ禍の自粛生活の中でなにか趣味を持とうと考えたようでありまして、向いているのかどうか分かりませんが、なんと俳句をですね、始めたようなんですね。

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本を買い込みまして、ん~、と独自にひねっていたんでありますが、どうやらネットで探し当てた俳句サークルに入ったんですね。
けっこう楽しそうにしておりますんで、棒さんもニコニコ見守っておりましたね。


マルちゃんも楽しそうでしてね、それで、というわけでもないんでしょうけれどもね、ネットでいろいろ買うんであります。
小筆やら、短冊やら。なぜだか作務衣なんかも注文しておりますが、まあね、雰囲気作りということで、棒さん、いつまで続くやらという気持ち。


と、今度はフェイスガードが宅配で届きましたね。顔全体を透明のビニールカバーで覆うタイプのやつです。

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「なにすんの、これ?」
棒さんが怪訝な顔で聞いてみますと、
「へへえ。今度ね、吟行に参加するんだ」
小筆を舐めなめマルちゃん、応えます。


「ギンコー? 新しい口座でもつくるのか?」
「バンクのギンコーじゃなくって、句を詠みに行くんだよねえ。サークルの人たちと三人で。やっぱりさ、イイとこ行かなくちゃイイ句は出来ないわけよ。へっへっへ」


なんだかニタニタしているマルちゃんでした。なんといいますか、この夫婦は、ヘンなことを言い出したりやりだしたりするのは奥さんの方なようなんでありまして、慣れておりますね、棒さんは。


「ちゃんとディスタンスとって、気を付けてな。他人様に迷惑かけないように」
とかね、俳句の出来なんか念頭にありませんよ。


こんなコロナ禍の中でギンコーだかユービンキョクだか知りませんが、とにもかくにも愛するツマをですね、送り出しました。
ひょこひょこ歩いて行く背中に、
「転ぶなよ~」
小学生以下の扱いですね。


それでもマルちゃん、ニコニコ出かけていきました。


まあ、出かけていってしまいますと、あとはもう心配しません。いつもより静かな部屋の中で昼寝なんかしておりました棒さんです。
でもって、ふっと目覚めまして、思い出しましたね。マスク、切れそうだった。
そういう夢でもみていたんでしょうか。
すぐ近くのドラッグストアへ出かけていって、あっというまに帰ってまいりまして、


「お~い。あれ? ん、そうかそうか……」


ちょっとポツンとしてしまったりの棒さんであります。


で、マルちゃんはといいますと、自粛生活の中の吟行ということもありまして、3時間も経ちますと、
「ただいま~」
ちょっとうなだれ気味で帰って来ますと、なにやら深刻顔の腕組みでうなっておりますよ、マルちゃん。


「なんだ、なにむくれてんだよ」
「むくれてるんじゃないんだよね~。あのね、中国の宴会っていうのをね、俳題にしたいんだけどさ、よく分かんないんだよね。知ってる? 昔の中国の、宴会」
「はあ?」


「あれ? 何買ってきたの?」
「ああ、そこにできたドラッグストアで安売りしてたんで」
と棒さんが手にしているのは「リチャードソン」であります。
「きょうは家でやろうかと思ってさ」
「ふううん、なんで薬局でスコッチ安売りしてんだろ? アーモンドフィッシュあるよ」
「6Pチーズもあったな」


マルちゃんにとりましては、出来たばかりのドラッグストアも薬局、なんでありますが、棒さんはともかく、マルちゃんも何でも呑むには呑むんですが、強くはないんですね。はい。スイーツ専門ですからね。


ま、それでも夫婦水入らずのスコッチ呑み会。乾き物をアテに、ちまちまと進んでいきます。


「で、中国の昔の宴会ってさ、随分突飛なテーマだな。そんなの俳句になんのか?」
「そうそう、それがさあ……」

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だんだんロレツが怪しくなりつつ、マルちゃんの言うことにはですね、その日の吟行とやらで、こんなことがあったようなんであります。


マルちゃんが仲間二人と俳句をひねりに出かけたのは東京武蔵野の森というところだそうでして、三鷹市調布市小金井市府中市にかかる、なかなか広大なエリア。
あ、これ、ホントにある場所です。はい、念のため。


幾つかの公園に別れているそうで、三人が歩いたのは野川公園調布市の公園ですね。


季節は冬のことでありますからね、緑豊かな光景が、というわけにはまいりませんで、冬枯れた樹ばっかりですね。ずうっと枯れ木。


落ち葉をカサカサ踏んで一人ひとり歩き回ったそうです。吟行ですからね。
で、我らがマルちゃん。俳句の方はさっぱり浮かびませんで、ただ身体が冷えただけ。

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他の二人もね、同じような初心者だそうで、やっぱり浮かばない。
こういう時にですね、誰も自分から、もう帰ろうなんて言い出せないもんでございます。
マルちゃん、疲れてきたんで、もう歩くのを止めましてただボーッと枯れ木の上の方を見上げておりました。


と、そこへやにわにデッカイ声で、
「なに見てるですか? アタシ寒いね。つまならいですし、疲れましたよ」


仲間のうちの一人は中国から来ている事務員さんだそうで、日本に来て十数年。従兄が経営している輸入雑貨店を手伝っている美人さん。趙さんといいますね。
背は小さいんですが、声がやたら大きい。
さらには気どりというものが全く感じられない、というサークルでも人気の人なんだそうです。


趙さんの大声に救われたように、三人並んでいそいそと帰路に就いた。わけなんでありますが、まあですね、女の人が三人集まっていてですね、そのまま電車で帰るわけはないんであります。


このあたりは、日本人だって中国人だって全く同じようなんで、はい。


どこの駅前にもね、ありますよ、喫茶店。カフェってやつね。
寒いし疲れたよ、などと言いながらですね、女の人の口というものは疲れるということがないんですね、これが。これまた日本人も中国人も全く一緒。


でもって、オコーチャかなんか飲みながら、趙さんが話し出したのは、求めていた俳題の話。


昔の中国では、庭園で宴会を開いて詩を読み合うという楽しみ方があったんだそうですね。
趙さんはその雰囲気を感じて俳句をひねろうと野川公園へとやってきたんだけれども、


「日本の公園小さいね。ダメよ」


マルちゃんと友達はビックリですよ。なんせ日本人二人にとって野川公園はデッカイなあという印象だったんですから。


これはですね、マルちゃんたちの認識がおかしいわけではないんですね。
中国の人と話していてしょっちゅう驚かされることの一つに、場所の面積に対する感覚ってものがありますね。
凄いですよ、中国の人は。広いデッカイに慣れているといいますか、感覚が全然違います。


ね、中国、広い国です。島国日本とはね、やっぱり全然違ってくるんでしょうね、そういう感覚ってもんが。
25倍あるっていいますからね。地面の広さがですね。そういう国の人からしてみれば狭い小さいってことになるんでしょうねえ、野川公園


さらに趙さんは何の悪気も無さそうに、こう言ったそうです。


「日本人、三国志好き、言いますけど知らないでしょ」
「なんのこと?」
「日本は卑弥呼の時代ですけど、その頃から中国は、みんな詩を作って遊ぶことやってました。公園で宴会ですよ。とても贅沢だたね。そいう雰囲気で俳句作りたい思います」
「はあ、卑弥呼の時代ねえ……」
「でも卑弥呼だって宴会開いてたんじゃないかな」


マルちゃんがつぶやくと、
「なにか言い伝え、残ってますか? 中国ではみんな知ってる有名な宴会がたくさんありますよ」
「あ、豊臣秀吉の……」
「ああ、醍醐の花見? マルちゃんそれはだって、関ヶ原の合戦の少し前だったはずだから、もう17世紀近くだよ。卑弥呼からぜんぜんアト、アト」
「あ、そだね……」


日本人のお仲間はなかなか博識らしい感じなんでありますが、趙さんの質問には答えがない、という展開になりましたですね。


それでなんとなく話が続かなくなって、かといって気まずくなったというわけでもなさそうなんですが、マルちゃん、なんとか趙さんにイイトコ見せたい気持ちが沸々と、という状態で帰ってきた、という次第なんであります。

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「中国ってとにかく広いからなあ」


話を聞いた棒さんの反応は、マルちゃんの気持ちを慰めてくれるものではなかったようでして、


「しょうがないよねえ。あんただってあたし以上に歴史とか無知だもんねえ。バカだもんねえ」


ちょっとねマワッテきているんですよ、マルちゃん。


「リチャードソン」のボトルも半分より少なくなっています。でもまあウワバミの棒さんは、まだまだ冷静です。からかってくるマルちゃんの言いがかりをやんわりと受け止めまして、


「ほら、あれだよ、うちの裏の一軒家の……」
「あのねえ、うちの裏って言うけどさあ、表通りに面してんのはあっちで、こっちが裏なんだよ。このアパートの方が。ウ、ラ」
「そんなことこだわらなくてイイだろ。そんでオモテのな、新井さんとこのご隠居が詳しいんだよ」
「ご隠居? 今どきそんな人、居るの?」
「居るんだよ。引退してちょっと経つみたいだな。焼き鳥屋さんでよく会うじゃん」
「ああ、そっか新井さんかあ。あの人歴史詳しいんだっけ、中国の?」
「ゲームやって三国志に詳しい気分になってるやつらに、よく説明してんじゃん。なんかアカデミックな感じでさ」
「そうだったかなあ。あのさ、三国志っていつ頃の話なの?」
魏志倭人伝卑弥呼が出てくるだから、2世から3世紀……」
「え? 卑弥呼って言った? 今、卑弥呼って?」
「ああ、だから魏の国の……」
「そっか新井さんかあ、ご隠居さんかあ」
「おいおい、どこ行くんだよ」
「あたし、ちょっと聞いてくる」
「はあ? おい、お~い」


というわけで、ひょろひょろと出て行きましたね、我らがマルちゃん。
ったく、迷惑なヤツだなあ、と棒さんはつぶやくんですが、止めて止まる相手じゃありません。


きょうはマルちゃんがいろいろ、あれこれ出かける日ってことだなあ、と頷くしかない感じです。


マルちゃん、俳句、卑弥呼がどういう始末になるのか見当もつきませんが、今度焼き鳥屋さんで新井のご隠居さんに会ったら、しっかり謝ることを覚悟いたしまして、「リチャードソン」鼻でタメ息つきながら、静かにいきますね。


ボトルはあと3分の1ぐらいになってますねえ。
棒さん、目をシバシバさせ始めました。

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さて、マルちゃんとご隠居の顛末はまた次回ということで、今回はここまでのお話でございます。
お付き合い、ありがとう存じます。


では、また、次回。


おあとがよろしいようで。

 

<マルちゃん棒さんシリーズ>

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