< 松花堂弁当の名前を知らない人はいないでしょうけれど 正式にどういうものなのかは意外と ね >
文化庁の「100年フード」に選ばれている食文化、品目の名前を見て、なにそれ? っていう、どんなものなのか予想もつかないのを選んで、いろいろ突っ込んでみようっていう「100年フード」からの第11弾です。
4つ選ばれている京都府100年フードの、③未来〜⽬指せ、100年! に選ばれているのが「松花堂弁当」です。
「しょうかどうべんとう」って、弁当っていう単語が入っているんで、弁当の種類の名前なんだろうとは思うんですが、なにをもって松花堂弁当というのか、実はよく分かっていないのであります。
松花堂弁当のよく分からなさに拍車をかけているのが、ご存じの方も多いと思いますが、IBMのThinkPadです。
って、なんのこっちゃねん! って話ではあるんですが、知る人ぞ知るエピソードがあります。
令和現在ではレノボのマシンとなっているThinkPadは、ビッグブルーなんて呼ばれていたかつての巨大企業、IBMが開発したノートパソコンですね。
日本のIT業界でも、いくつかのプロジェクトで全員に配布されたりしたことがあって、ひと頃は大流行りだった記憶です。
調べてみますと、1992年に発表された「ThinkPad 700C」っていうモデルが例の赤いポッチがキーボードの真ん中に配された最初だったみたいですね。
なんでこんな話をしているかっていいますと、ThinkPadのプロダクトデザインは、日本の松花堂弁当をヒントにして考えられたものだからあ~、なのであります。
そんな話を聞いてもなんだかピンときませんし、当時に聞いた記憶もありませんですけどね。
ノートパソコンと日本の弁当? じゃ、なに、あの赤いポッチは梅干しとか、そういうこと?
。。。? ちゃうでしょねえ。

「ThinkPad 700C」のデザイナーは、ドイツ生まれの「リヒャルト・ザッパー(1932~2015)」
ノートパソコンのプロダクトデザインに日本の松花堂弁当をモチーフにするアイディアは日本の「山﨑和彦博士(1955~)」が深くかかわっているらしいです。大きな会社にはいろんな人が関わっているですね。ビッグブルーですもんね。
赤いポッチは「トラックポイント」っていって、マウスの役割を果たしているんですよね。赤いポッチがデザインの中核ってことなんですけど、個人的には指が引っかかって、むしろ使いづらかったです。
どうだったんでしょうね、使い勝手がイイって思ってた人、けっこういたんでしょうかね。
ま、松花堂弁当をモチーフにした部分が表面的なデザインじゃなくって、内部のパーツ配置だとか、そういう部分なのかもですけど。
ふたを閉じたときの松花堂弁当の静かな佇まいと、モニターを閉じたときのThinkPadの静かな佇まい。そしてふたを開けた時の松花堂弁当の彩りの美しさと、モニターを開いたときのThinkPadの彩りの美しさっていう共通点がある、っていう記述を見つけましたけど、ん~、松花堂弁当って正式な1種類、みたいなものがあるんでしょうか。
ThinkPadを、どう眺めてみても「お弁当」との共通点は感じられませんよね。
ん~。ThinkPadから離れて、そもそもの松花堂弁当ってなんなのかをみてみます。定義みたいなやつね。
「松花堂弁当は、中に十字形の仕切りがあり、縁の高いかぶせ蓋のある弁当箱を用いた弁当である」
ってwikiさまは言っておられます。
中に十字の仕切りってことは、4つの部屋に分かれているのが本来の松花堂弁当なんですね。今はそのアレンジバージョンでもっといくつにも部屋の分かれた「なんちゃって松花堂弁当」も見ます。
ただお弁当売り場で見かける松花堂弁当って「縁の高いかぶせ蓋」っていうんじゃないですよね。
正しく十字の仕切りだったとしても、蓋に高さがなければ、それも「なんちゃって松花堂弁当」ってことになるんでしょうね。
ま、今となっては「なんちゃって松花堂弁当」の方が主流なのかもですけど。
4つの部屋には「ごはん」「刺身」「焼き物」「煮物」を盛り付けるのが本来なんだそうです。
こうして言葉だけで追ってみますと、けっこう質素な感じもしますが、松花堂弁当っていうのは懐石料理、茶道の精神を大切にしているっていうことで、略式の懐石料理とされていてフォーマルなお弁当ってことなんだそう。
お弁当を食べるのにそんなにシャッチョコばらなくたって、っていう庶民派のための部屋の分かれたお弁当が、はい、「幕の内弁当」なんですねえ。
幕の内弁当もけっこう高級品ではありますけどね。
松花堂弁当のそもそもの始まりは、日本が統一されていく安土桃山時代から江戸時代の初期にかけて活躍した真言宗のお坊さん「松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)(1584~1639)」が好んで使っていた絵具のパレットなんだそうです。
書道、絵画、茶道に優れた人だったそうで、芸道に執心した数寄者として知られる「本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)(1558~1637)」、公卿の「近衛信尹(このえ のぶただ)(1565~1614)」と共に「寛永の三筆」と称されています。
パレットとして愛用していたっていう器は、木の表面に漆を塗った「塗箱」だったそうです。
ThinkPadといい塗箱といい、食べもの、お弁当にはなかなか結びつきませんが、そこにはやっぱり人物がいるんですね。
有名な日本料理の料亭「吉兆」の創業者「湯木貞一(ゆきていいち)(1901~1997)」がその人です。
常に日本料理の向上に努めて、一代で吉兆の評判を作り上げた文化功労者。
いろんな説があるみたいですけど、1933年、昭和8年頃、松花堂昭乗ゆかりの寺で愛用の塗箱に出会って、まず、その箱の美しさに惹かれ、またその機能性に魅了されたんだそうです。
すぐに日本料理への利用っていうアイディアが浮かんでいたんでしょうね。
違った食べもの同士の味や香りが干渉せず、料理そのものの味を楽しめる。そして見た目にも美しい。
そう言えるレベルまでには少し時間を要したそうですが、大阪吉兆で練磨された十字の仕切りに盛り付けられたお弁当は松花堂弁当として広まったんですね。
松花堂昭乗が愛用していたっていう塗箱は、自分で作ったのか、あるいは注文して作らせたものなのか、でなければ、たまたま見つけたものなのか、全く分かりませんが、およそ300年後に、パレットから弁当容器に生まれかわって現在にいたっているって考えますと、なかなか感慨深いものがありますよねえ。
松花堂昭乗は大阪の人みたいですけど、墓所は京都の八幡市、泰勝寺にあるので、松花堂弁当は京都府の100年フードになっているっていう関係性みたいです。

令和の今、デパ地下とかで見かける松花堂弁当は、必ずしも十字で仕切られた4つ部屋のものだけじゃないですけど、贅沢気分でチャレンジしてみようかしらん。ちょっとお高いんですよね。
ちなみに東京駅構内の「グランスタ東京」が2026年のデータとして発表した「東京駅限定お弁当 売上・推しランキングTOP10」を見てみますと。
第1位:オーベルジーヌのミートミックスカレーBタイプ:1696円
第2位:伊達の牛たん本舗の牛たん弁当柚子胡椒味:2020円
第3位:駅弁つばめグリルのつばめ風ハンブルグステーキ弁当:2030円
第4位:浅草今半のグランスタ東京すき焼弁当:2592円
第5位:豆狸のグランスタ限定5種いなり詰合せ:979円
第6位:とんかつ まい泉の東京駅限定三階建て弁当:1250円
第7位:サンドイッチハウスメルヘンのグランスタ東京限定サンドイッチパック:972円
第8位:うぶかの蟹飯弁当:1850円
第9位:伊藤和四五郎商店の特上焼鳥重:1790円
第10位:肉卸小島の雪降り和牛尾花沢ステーキ重:5250円
あれ? 松花堂弁当が。。。ランクインしていませんです。
あることはあるんですけどね。東京駅限定、ゐざさ茶屋の松花堂弁当、2200 円。
柿の葉寿司、ばら寿司、金目鯛とエビの手まり寿司に牛のしぐれ煮、ハンバーグ、出汁巻玉子、焼鮭ってめっちゃ豪勢じゃないですか。しかもデザートの柿モチ付き!
東京駅かあ~。ビジネスイメージが強すぎて、なんかちょっと弁当を買いに、って感じがかなり薄い場所なんですよねえ。でもまあ、行ってみましょうかね。
松花堂弁当ね。食は大事です。
wakuwaku-nikopaku.hatenablog.com
< 100年フード >
【文化庁 100年フード】2021年から文化庁がやり始めた100年続く食文化を認定、PRする制度
【文化庁 100年フード】その2 東北にある「もちの聖地」
【文化庁 100年フード】その3 秋田県 【こさかまちかつらーめん】
【文化庁 100年フード】その4 山形県【冷たい肉そば】
【文化庁 100年フード】その5 埼玉県【ゼリーフライ】
【文化庁 100年フード】その6 東京都【武蔵野地域のうどん⽂化】
【文化庁 100年フード】その7 神奈川県【サンマーメン】
【文化庁 100年フード】その8 山梨県【上野原せいだ芋の⾷⽂化】
【文化庁 100年フード】その9 長野県【ひだみの⾷⽂化〜ひだみ餅、ひだみコーヒーゼリー、ひだみ餡⼊りパイ〜】
【文化庁 100年フード】その10 三重県【海の七草粥】