< たしかにヘルメットをかぶってるチャリライダーは増えて来ているかもです >
カーナビなんて「カ」の字もなかった頃の話なんですが、首都圏の道路はどこもかしこも渋滞ばっかりで、ドライバーたちはあっちを周り、こっちを探って裏道を探すことに懸命でした。
神奈川方面から都内に向かう時に、直線的に都内に入り込む太い幹線道路は全部、にっちもさっちも、さっぱり動かないんで、ちょっと大周りしてでもってことで、必然的に内陸方面に活路を求めて細い道に入り込むことになります。海側に道路はありませんからね。
裏道を探して入り込んだ先で、大規模な再開発工事なんかをやってようもんなら、通行規制があったりなんかして、さらにわけの分からないところへ誘導されちゃったりするんですよね。
神奈川県川崎市のだいぶ内陸方面の街に溝の口っていうところがあります。
東急田園都市線とJR南武線が乗り入れている駅前が、再開発の工事中だった頃ですから、もうかなりの昔。昭和の終わりごろか平成の始めころですが、かなり恐ろしい目に遭ったことは今でも忘れられません。
土地勘のないところですんで、どっちの方向に何があるのかさっぱりわからない駅前。
波板トタン張りの一杯飲み屋の赤ちょうちんが揺れて、ノスタルジックな昭和の夕暮れです。
道は細いんで徐行で進んでいくんですが、まさに言葉通りにあらゆる方向からあらゆる方向に、無灯火のチャリライダーが、ある人はチャーって飛ばして、ある人はふらふらとゆっくり、信号なんか無視して通って行くんですね。
まるで、車に乗っている自分だけが透明にでもなったかのように、無法地帯のチャリライダーたちが走り抜けていく、って感じでした。
チャリ同士でもぶつかりそうでしたよ。
再開発のちょっと前まで車なんて通る道じゃなかったのかもしれません。
そこに暮らす人からすれば、車、邪魔なんだよ! 入って来んな! ぐらいの感覚かもしれません。
今はもう街並みも整ったでしょうから、無法地帯のチャリライダーたちも姿を消しているだろうと思うんですけど、ぶつかったとしても被害を被る側じゃない車に乗っている方がビビリマクリ、っていうそれはそれは恐ろしい経験でしたですねえ。
思い起こしてみればですね、あの頃から首都圏の自転車っていうのは、駅前駐輪の問題も含めて交通問題になっていたんですよねえ。
チャリライダーの困ったちゃんたちは、免許がないからっていう無法運転ぶりをいろんな方面に発揮していましたし、今でもあんまり変わらないのかもです。
ツヅッチっていうイラストレーターさんがいて、もうとっくに50を超えてイイ年したオッサンなんですけど、根っからのチャリライダーで、仕事先にも買い物にも、すぐそこまででもチャリです。
で、夜。呑み屋さんに行くのもチャリなんです。
その呑み屋さんにはトイレドアの脇の壁に貼り紙があって「未成年の方、おクルマ、自転車でお越しのお客様にはアルコールの提供を控えさせていただいております」って書いてあります。
わざわざ「自転車」って書いてあるのは、つい最近の傾向なんじゃないでしょうか。
自転車は車両ですから、飲酒運転になりますよね。常識です。
書いてはあっても、その店に通っているチャリライダーは、案外たくさんいるんですよね。
そういう実態。
店側としても、飲酒運転の適用をチャリにまで厳粛にあてはめるっていうのは、かなりしづらいでしょうしね。
でもまあ、チャリで来ていることは内緒にしといてねえ。お互い様にしておきましょねえ。
すぐそこに駐輪スペースがあることはみんな知ってますからね、暗黙の了解ってやつでしょねえ。
ま、酔っ払いチャリライダーは、だいたい店のご近所の人なんです。
歩いても来れるし帰れるんですけど、チャリなんですね。なにせチャリライダーですからね。習慣です。呑み屋さんにもチャリでっていうのは、悪い習慣ってことですけれどね。
ツヅッチはですね、半年に1回ぐらい、いや、もっとかもしれませんが、顔にアオタンを作ったり、顔面半分をズルっとすりむいたりする、人騒がせな酔っ払いチャリライダーなんで、店側にも、呑み仲間にも注意されてはいるんです。
一定量を超えるとカウンター席でストップモーションになっています。
「……」
「ツヅッチ、今、あっちの世界に行ってたでしょ。もう帰った方がイイんじゃないの」
「いや、オレ、ずっとここにいたよ」
「そこにいるのは分かってんの! もうアッパーでしょ。また転んじゃうから、チャリ置いて、歩いて帰った方がイイんじゃないの」
とにかく何回もそういう目にあってますからね、ツヅッチ。ん~ってしばらく考えたあとで、最近は素直に帰るようになってますけどねえ。
歩いて帰る分には、たとえ転んだとしても、アオタンってことにはならないと思うんですけど、チャリが足になっているんでしょうね。
「全然、大丈夫」
で、何日かすると、アオタンで現れます。
酔っぱらいのチャリライダーは別問題として、チャリなしには通常生活が送れませんよ、っていう人も少なくないんだろうって思います。
かなり見ますもんね、老若男女のチャリライダー。
買い物。幼稚園、保育園への子どもの送迎。補助モータ付きのママチャリは、街のスタンダードになってますよね。
そんな日本の現状の中で、2023年4月1日から道路交通法が改正されました。
「自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化」されたんですよね。
周りのチャリライダーたちからは、めんどくさいよ、自分はヘルメットなんてかぶらない、って声が圧倒的だったんですけど、施工から2ヵ月が経とうとする2023年晩春。
みなさんの周りではどうでしょうか。
まだ半数には至っていない感じのヘルメット着用チャリライダーたちではありますが、以前に比べればけっこう増えて来ているように見受けられます。
道路交通法っていうのは国土交通省道路局の管轄で、窓口は警察庁なんですね。
「自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化」の情報は、
警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」
に載っております。
「自転車安全利用五則」っていうのが骨子みたいです。
「1 車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先」
「2 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認」
「3 夜間はライトを点灯」
「4 飲酒運転は禁止」
「5 ヘルメットを着用」
自転車は車両扱いですから、車道を走るのが原則ですよ、っていうことではありますけどね。
たいていの道路事情では、車道なんて怖くて走れませんよね。狭いんです。
自転車専用道が併設されている道路でだって、歩道を走っているチャリライダーはたくさんいるっていうのは、なかなか解せないんですけど、ま、これまでの習慣ってことなのかもしれません。
これまでずっと歩道を走って来たんですから、気持ち的になかなか切り替えられないっていうのも無理もないかもですけど、車両なんですよっていう感覚にしていってもらわないといけませんです。
信号とかを守らないチャリライダーも多いんですよね、これまたね。
ヒドイのになりますと、「ああ~、どいてドイテ~! ブレーキ効かないの」って突っ込んでくるおばちゃんチャリライダーもいたりしますけど、迷惑なだけじゃなくって、ちっちゃい子どもは避けられないでしょ! あんた自身も危ないでしょ!
ったくもう、転んでしまえ!
っていうようなこともあるですよねえ。
たぶんおそらく、ああいうおばちゃんつありライダーは車の免許とかも持っていなくて、交通法規とかぜ~んぜん知らないんじゃないかって思いますよ。
そうなってくると、自転車も免許制にすればイイとか、そういう意見も出て来るですよ。
むちゃくちゃするヤツが出てくるから、法的な締め付けが出てくるっていうのは、どんなジャンルでもそですもんね。
チャリライダーのヘルメット着用努力義務っていうのは、チャリライダーが被害者になった時に、生命を守るための法律ってことになるんでしょうけれど、チャリライダーが加害者になるっていう事故も少なくないですよね。
高齢者を弾き飛ばしておいて、そのまま走り去って行くチャリライダーを目撃したことって、1回や2回じゃないですよ。おいおい、って思います。
単独事故で、自分の顔にアオタン作っちゃうのは、ばあか! で済むかもしれませんけれど、人と衝突しちゃったら、それは明らかな交通事故なわけで、そういう意識をチャリライダーに持ってもらうっていうのもヘルメット着用と同じくらいに大事なように思えます。
チャリによる人身事故、死亡事故もあるそうですからね。
ツヅッチは、擦り傷を作るたびに、10年1日、同じことを言っております。
「いやあ、なんでだかね、道路がね、こう、ずあああって向かって来るんだよね。あとね、コンクリートの壁あるでしょ、あれもね、急にこっちに曲がって来てね、ずあああって、やられちゃうんだよね」
ぶああかっ! 転んでしまえ! ってツヅッチはもう転んでるんですけどね。
チャリライダーのみなさん、ヘルメット着用、どうしますか?
バイクのヘルメット着用も、たしか最初は努力目標で、何年かして義務、法律になったような記憶です。
折りたたみできるような、軽いノリのチャリ用ヘルメットとかも、これから登場してくるかもですけどね。
気軽な乗り物のままチャリが利用できるかどうかは、日本全国、チャリライダーたちの交通意識にかかっている感じですよね。
チャリライダーの皆様、自分自身も歩行者にも、ご安全に!
溝の口駅前、今、どうなんでしょかねえ?