< 行きつけの呑み屋さんそれぞれには必ずお気に入りの旨いアテがあるですよねえ その店オリジナルの >
数人でワイワイやるっていう呑み会ですと、呑み屋さんはその時その場での行き当たりばったりっていうのが普通だと思います。
大型チェーン店がいろんな名前でいろんな場所に店を出していて、居酒屋ビルなんていうような形態もありますからね、大型店には個人で行って常連になるような雰囲気の店舗はナカナカないです。
いろんな業種で閉業の風が吹いている2024年ですが、呑み屋さんもだいぶ様変わりしてきました。
大型チェーン店はホント一気に少なくなりましたよ。
小さな構えの個人店が生き残ってくれれば、酒呑みたちはしあわせ、ってなもんですからイイんですけどね。
やっぱし酒を呑むには個人店の方がイッショ。
呑み始めてウン十年、ずっと個人居酒屋に通っております。あっちこっちのね。
チェーン店が数多く閉店すれば、個人店がウハウハになるかっていうと、そんな単純なもんじゃないらしいですね。
いろんな工夫、たゆまぬ努力が必要、なんだそうです。
脱サラのマスターが1人でやっている行きつけの焼酎バーなんですが、酒の肴、アテをね、なにか新しいものないかなって毎日考えているんだそうです。
酒は日本酒、ビール、焼酎、泡盛、と当たり前の種類を揃えています。
10席のカウンターのみ、小さな店は一升瓶を並べておく物理的スペースがないですからね、種類豊富ってわけじゃないですけど、まあ、充分なバリエーションです。
見開きで4ページになっているメニューの3ページが酒に充てられていて、新しい酒を入れれば小まめにメニューもアップデートしています。そういう形式になっているバインダー形式のメニュー。
いちいち細かく更新するのってタイヘンですよね。7冊もあるし。
「はっはっは。なんか、そういうトコ、ちゃんとやろうと思ってね」
マスターは太鼓腹をポンポンと鳴らしながら笑います。
酒の入れ替えより頻繁なのが残り1ページのアテのページ。
ページ上段に「アテ」って大きく書いてあります。
40種類ぐらいありますかね、焼き物、揚げ物、炒め物、サラダ、和物なんていうのもあります。
「料理なんて習ったことないからね」
っていうマスターですが、中華やらフレンチやら、本格料理はいざ知らず、居酒屋の酒のアテは作る人のセンスによるですよね。旨いんです。
その人が酒好き、料理は作るのも食べるのも好きっていうんじゃないとダメかもですけど、なんとなくこういうのどうかなっていうアイディアが閃いて、とにかく作っちゃう。
ま、失敗もあるでしょうけれど、アタリもあって、そこそこいけるでしょ、っていうのを作れちゃうのがセンスなんじゃないでしょうか。
チーズ焼きが、しいたけ、厚揚げ、キムチと何種類かあって、それぞれの素材によって、ちょっとだけ味付けを変えているんだそうで、どれも旨いです。
もちろんキムチはそのままでもメニューにありますけど、チーズ焼きっていところがセンスでしょねえ。成功してます。
「簡単に出来るだろうって思ってやってみたんだけど、意外にね、キムチ焼くのって難しいんですよ。難しいってていうか、チーズとの兼ね合いがね」
ふううん。焼き加減の兼ね合いとか、知らんけど、食べるのが専門のただの酒呑みからしてみたら、旨けりゃオッケーですう。
種類ごとに固定されたメニューじゃなくって、アテもどんどん入れ替わっていくんですよね。
「仕入れの関係もあるし、お客さんの方もね、ずっと同じアテだと飽きるでしょ」
女性客も多くって、ここでの人気は圧倒的に「豚肉」
トンテキ、とんかつ、カツ煮っていうオオモノから、チャーシュー、三枚肉、しょうが焼き、黒酢豚まで、居酒屋にしては珍しいメニューのバリエーション。

オーダーが途切れないから存在しているメニューなんでしょうから、かなりガッツリ系の女性陣が多いってことなんでしょうね。
イイことです。まずは女性に元気がないと世の中が回りませんからね。
日本酒をやりながらカツ煮をオーダーした、30代と思しき小柄な女性。
目の前にカツ煮が到着しますと、
「わあお、ボリューム。こんなにボリュームあったっけ?」
「ボリュームは変わらないよ。っていうか先週も食べなかったっけ?」
「ん~。覚えてないなあ」
じゃがいも、ニンジン、インゲンとかね、数種類の野菜がステーキの付け合わせよろしく、たっぷりと深皿の中に煮汁と一緒に同居しているカツ煮です。
日本酒は5勺で出している店なんですけど、その女性はもう4杯、2合いってます。
だいぶ調子が上がって来てますねえ。
昔、聞いたことがある表現ですと、だいぶメーターが上がっておられます。
なんでそういう表現が流行ったんですかねえ。ま、今は聞きませんけどね。
「マスター、ごはんってないの?」
「ごはんものは、メニューに書いてあるだけ。焼きそばとナポリタン」
「じゃなくってえ、白ごはん。お米」
「アテのメニューに書いてない料理はないよ」
「ええ~! なんでごはんないのよ」
他の客は静かに微笑みながら自分の手元の酒を見るしかない状況ですね。
「分かったわかった、分かりました。レンチンごはんあります」
「わ~い。でしょでしょ、やっぱり日本人はごはんよねえ」
ってね、日本酒とごはんって、ちょっと糖分が気になるところではありますが、実はこのやりとり、初めてじゃないんですねえ。ご当人が覚えているのかいないのか、ちょと分かりませんけれど、今までに4、5回は見ています。
他の客たちも同じなんだと思います。それで静かに微笑みながら、マスターの小芝居を見ているわけです。
2人とも、飽きもせずに、役者やのオ! です。
さて、小芝居はさておきメニューです、メニューのアテのページ。
ちょこちょこ入れ替わっているメニューの中にもローテ―シャンがあったりするアテのページですが、揚げ物カテゴリーの中に、新しいメニューを見つけました。
「おつまみカレー」
や、まあ、ないではないメニューです。そこまで珍しくはない。カレーね。
他の店でもやっているところはあります。
それでもこの店としては、おっとり刀、初登場メニューです。
「ん? おつまみカレーなんてあんじゃん」
って言うと、
「はい、ありますよお。新顔です、よろしくう」
と、三席離れたおっちゃんから、
「あ、ホントだ。アテっていうのメニューの中になんでおつまみなの?」
「普通におつまみカレーって言うでしょ。アテカレーじゃなんだかキマラナイなって思ってね」
「揚げ物なの?」
「そうそう揚げ物。どういうのかは企業秘密」
「なんだそれ?」
「やってみたばっかしだから、決まってないってこと」
食べてみりゃ分かるってことで、早速オーダー。
市販のルーをベースにしているものの、ヒミツのスパイスで大人用の辛味を出しているんだそうでした。
ザク切りのナス、じゃがいも、ニンジン、トマト、ピーマン、ウインナー、マイタケを素揚げするんで揚げ物。
揚がったばっかりの具を熱々のルーに乗っければ出来上がり。
スプーンとフォークと箸がコップに刺さって出てきます。
カレーは二日目が旨いとか言いますけど、このおつまみカレー、出来立て、揚げたてをフウフウ言いながら食べるのがサイコーなんでありました。
スパイスなんですね、黄色系じゃなくって赤茶系。カレー特有の匂いがほぼしないです。
店内にカレーの匂いがこもらない工夫も魅力ですね。
旨いアテで吞む酒はシアワセってもんですよねえ。
「焼酎とかね、キでそのまま呑むかロックでとか、あとはフルボディの赤ワイン、日本酒もね、どっしりしたヤツにはこういう辛いカレーって合うんですよね、個人的見解だけど」
アテなのにおつまみオヤジから質問が飛んできました。
「ホントにカレーなんて酒に合う?」
これがもうバツグンに合うんですねえ。揚げ野菜とウインナーの取り合わせもバッチリってもんです。
「それとですね、カレー食べておけば次の日に残らないんですよ。っていうか、どんどんヒミツが消えていっちゃうけど、スパイスね、ターメリック、けっこう入ってんだよね。ターメリックってウコンだからね。聞いたことあるでしょ、ウコン。それとですねえ、この具材の組み合わせもまたいろいろイイわけなんですよねえ」
ごはんオネエサンが、騒ぎ出しました。
「そういうの、早く言ってよねえ。おつまみカレーとごはんだって合うわよね。あたしも食べたかったなあ」
「まだまだ注文受け付けてるけど」
「もう食べられないわよ」
「そんなことないでしょ。おつまみカレーとごはんのセット、作る?」
「もう無理だってば、太っちゃう」
「えっ!? 気にしてんの?」
「な、なんだとおおお!」
行きつけの店の夜は賑やかに更けていくのでありました。
カレーが酒に合って、翌日のためにもイイ、っていうのはホントみたいですよ。
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