< アメリカのGPSを補完している日本の「みちびき」っていう準天頂衛星システムの存在 >
いつもの焼酎バーです。
コロナの規制がなくなった頃から顔を出すようになったタナカ君。27歳。
「若いわねえ~」とか、妙齢のオネエサマ方からイジラレまくっている、最近の人気者なんですが、当然、話題はタナカ君の彼女さんのことになりますね。
タナカ君には、気になっている会社の後輩がいるみたいなんですね。
白状させられておりますです。
「なにしてんのよ、さっさとモーションかけなさいよ。積極的にいきなさしよ、男なんだから」
とかね、無責任にけしかけられて、口ごもっているタナカ君なのであります。
ま、話は普通に出来るんですけど、真面目なんでありますねえ。
オネエサマ方も、そこがカワユイってことで、面白がっているんでございましょうけど、お手柔らかにね。
タナカ君は、そういうオネエサマ方じゃなくって、もっぱらマスターに相談しているようです。
マスターと話しますんで、必然的にカウンター席の常連になるわけでして、このところしょっちゅう隣り合わせになります。
マスターも、けっこう真面目に応対していますよ。
デートの約束を取り付けた、っていう想定で、どういうエスコートをするのがイイか。
そういう話をしておりました。想定!?
ホントにこんなことを真剣に考える男が、日本にはまだいるでありますよ。イイんだかワルイんだか分かりませんけどね。
「例えばここの代官山の店なんですけど、徒歩ナビがありますんで、迷わずに行けるんですよ」
「じゃ、問題ないでしょ」
「いや、だって、初デートですよ。駅から店に行くまで、どういうコースで行くかが勝負じゃないっすか」
「ナビに従って真っすぐ行けばイイんじゃないの?」
「いや、代官山に詳しいトコを見せたいじゃないっすか」
「詳しくないのに? それはおかしいですよね、ぱうすさん」
ん? わたしですか? ん~、想定の話とか、そんなんどうでもエエわ!
でもまあ、一応、代官山の人気スポットを調べて、そこを全部ナビに仕込んでルートを作ればイイんでないかい? っと提案。
「そんなこと出来んの?」
マスターが心配していましたけど、普通に出来るっしょ。
もしタナカ君の使っている徒歩ナビが途中ポイントをコースに組み込む機能を持っていないんだとしたら、駅から1つ目のポイントまでのコース、1つ目から2つ目のポイントへのコース。っていうふうにいくつか別タブでコースを設定していけばオッケーでしょ。
「今、自分がどこにいるかっていうのも、ちゃんと分かるんだよね、今のナビって。ぱうすさんも使ってる?」
いいえ、位置情報サービスはオフにしております。
ホントにオフになっているのか、けっこう疑ってはおるんでありますけどね。
持ち主のスマホには表示されないだけで、データ自体はサーバに吸い上げられているんじゃないかと。
「昔のカーナビってさあ、走ってるうちに海の中に入っちゃったりしたよねえ」
って、マスターが言いますと、タナカ君、まともにビックリです。
「ええ~!? なんでそこまでカーナビの言うことに従っちゃうんですか?」
「そうじゃなくってね、車はちゃんと高速走ってるんだけど、ナビの絵は海の中走ってるように表示されちゃうってこと」
初期の初期はそうでしたね。
あの頃は、たぶん、打ち上げていた衛星の数が物理的に足りていなかったんだと思います。アメリカもね。
今はですね「電子基準点」っていうやつの精度が格段に上がっているですよねえ。
数センチレベルで宇宙から計測できているらしいですよ。
ま、らしいって話じゃなくって、ちょろっと調べてみましたです。
カーナビ、徒歩ナビなんかで自分の位置、っていうかカーナビ受信機の、あるいはスマホの位置を報せてくれるのは、衛星からの電波を基にして計測しているからですよね。
「衛星測位システム」っていうんだそうです。
「GNSS(Global Navigation Satellite System)」
地球規模で世界各国、お互いの衛星を利用しましょうってことになっているみたいなんですが、有名なのはアメリカの「GPS(Global Positioning System)」全地球測位システムですよね。
30以上のGPS衛星が打ちあがっているそうなんですが、そのうちのいくつかを日本でも利用させてもらっているってことですね。
「衛星測位システム」イコール、GPS、っていうイメージでとらえているのが一般的でしょうか。
その他にもロシアの「GLONASS(Global Navigation Satellite System)」EUの「ガリレオ(Galileo)」中国の「北斗」っていう衛星測位システムがあるんですね。
それでも、日本の上空にある衛星ってわけじゃないですからね、ビルの間とか、山あいに入ってしまうとGPSからの電波が届かなかったり、ズレたりして正しい位置が表示されないっていうのを経験している人も少なくないと思います。
日本はちょっと立ち遅れていたんですよね。「衛星測位システム」
これは、たぶんおそらく、衛星測位システムの歴史が軍事用だったことで、日本が観測衛星を持つことを懸念されていたのか、あるいは、アメリカに忖度していたのか、そういう理由があるのかもです。
安心してください、飛んでますよ!
2018年からGPSを補完する形で準天頂衛星「みちびき」が4機体制で運用開始されています。
2023年には7機体制になるらしいんですが、2023年6月時点では、どうなっているのか報道は確認できませんでした。
こうした衛星打ち上げってうのは、位置情報の利用だけじゃないってことで、そんなにおおっぴらに報道する種類のもんじゃないんでしょうかね。分かりません。
日本の「みちびき」は「QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)」って呼ばれる「準天頂衛星システム」で、日本の真上を飛んでいて、GPSの補完的な位置づけです。
GPSからの情報だとメートル単位の位置情報が、「みちびき」の情報を利用することによってセンチメートル単位にまでなっているっていうことなんですね。
最近、一気にナビの精度があがったのには「みちびき」の活躍があったってことです。
それにしても「みちびき」なんて調べてみて初めて知りましたけど、どうなんでしょ。知ってました?
測位衛星からの電波を受け取って位置情報を確定するのは、日本全国1300カ所以上に設置されている「電子基準点」を基にしたシステムです。
GNSS連続観測点ってやつですね。
国土地理院が管理している国家基準点です。
国土地理院っていうのは誰でも聞いたことがあると思いますけど、企業じゃなくって、国土交通省の特別機関なんですよね。
ステンレス製で5メートルぐらいの高さの電子基準点は、測量の基準点としても利用されている国家基準点でもあって、衛星から受け取った情報を同時に発信もしているんですね。
やりとりしている電波の速度は、ほぼ光速。
衛星から直接カーナビが受け取っている位置情報を、電子基準点からの相対的な位置情報として補正してセンチメートル単位の誤差にまで精確性を上げているんですね。
普通、位置情報サービスって衛星情報だけから成り立っているイメージですけど、精度を上げるためには地上の電子基準点が重要。ってことなんでありますよ。
ありがたいことです。
ではあるんですが、地上に固定されている電子基準点。
一度決まった場所に設置すれば、そのままでオッケーかっていうと、さにあらず。
日本の国土は、4つのプレートに常に押され続けているんで、実は、絶えず伸びたり縮んだりしているんだそうです。
となると、地上に固定されている電子基準点の位置も、実は常に移動している。
その補正情報も国土地理院で管理しているってことなんです。
「電子基準点配点図」は国土地理院のページで確認できます。
タナカ君の仮想デートのコースを、センチメートル単位の精確さで導いてくれる徒歩ナビって、めっちゃ複雑な電波のやりとりをこなしている、世界的なシステムがあってこその賜物なんですね。
「みちびき」です。
にしてもですね、そういう恩恵を使うのに、仮想デートっていうことで、イイんでしょうかね。
27歳ですよ。
タナカ君みたいなのを草食系っていうんでしょうかね。
大きなお世話ながら、老婆心的に、なんだかなあって思います。