< もしかすると21世紀の人類文化はシンギュラリティ以前に内部崩壊の危機を迎えているのかも >
名古屋市に本社を置く「東邦ガス株式会社」が2018年に行ったインターネット調査によりますと、
★20代の51.2%はカセットコンロの火を付けられない。
★20代の55.2%がチャッカマンだとかの点火棒が使えない。
っていうことなんであります。
昭和生まれの人間からしますと、ただただ「えっ!?」って驚くだけの、けれども現実なんですねえ。
時代の趨勢っていうことで片づけるのは簡単ですけれども、このまま「火」を扱えない人のパーセンテージが増えていくと、災害時だとか、いざという時に生き残っていけなくなっちゃうんじゃないかっていうような心配から、調査を行った東邦ガスと、金城学院大は近年「安全に火を学ぼう! 火学VR」っていうのを近畿地方の各学校で実施しているんだそうです。
なるほど、火の扱い方を学習したりするのって、ヴァーチャルリアリティがイイのかもですよねえ。
ナイスアイディアですし、ナイスチャレンジだなあっとは思うんですが、ですがですね、ゲーム感覚で火の扱い方を修得しないといけない現状って、なんだか、随分と妙なことになってませんかね。
要は、家庭の中で「IH機器」「自動調理器」がポジションを拡大して来つつあって、防災的な観点からそう勧められていることもあるんでしょうけれど、身の回りに「火」「炎」がなくなって来ています、ってことなんでしょうね。
「IH機器」っていうのが登場してきたのは、いつごろだったでしょうか。
電気コンロ? いいえ、全然ちゃいます、っていうんですよね。
電磁誘導加熱(Induction Heating)っていうやつですね、電磁調理器。
コイルに電気を流すことによって「磁力線」を発生させて、上に乗っかっている鍋を「渦電流」で発熱させるっていう仕組みです。
鍋の周りの空気を温めないで、鍋だけを熱するわけで、熱効率は90%なんだそうですね。
文明の利器でしょねえ。エコでもあるってことでしょう。
「IH機器」は、スイッチ、ポン、でオッケーなんですってね。
火を利用していないんで、炎を確認したり、しないんですよね。
ガスコンロみたいに、チチチチッ、とか、ガスに火が付くまでちょと待ってね、っていうのもありません。
ガスボンベ式の簡易コンロだと、カチッてやって、火が付かなければ、もっかい、カチッてやる。
着火っていう工程を確認しないといけませんよね。
確認しないとガスだけが出ていて、危険な状態になります。
実際、そういう事故も時々ニュースになっていたりしますからね。
ちゃんと火が付いたことを確認するのって、当たり前。
でも、子ども時代から「IH機器」で暮らして生きている世代なんかは、着火? なんですか~?
ってなもんなんだろうと思います。
そもそも「火」「炎」に接することなく成長しているってことですからね。
電気式のコーヒーサイフォンっていうのがありまして、電気でサイフォンを温めるんですが、一応ね、アルコールランプの形をした「照明」が下にセットされていまして、赤い炎の形をしたフィラメントネオンがちらちらと3パターンぐらいで揺らぐんです。
バーチャルの炎。
でも、ああいう「なんちゃってアルコールランプ」のシャレも、「火」「炎」を見たことない世代には、なんにも通じないんでしょうね。知らんけど。
キャンプの練習場が出来ちゃうっていう背景にも、もしかすると、キャンプに付き物の「火」「炎」の扱いに慣れておきたいっていう、今ならではの事情もあったりするのかもです。
人類が火を使い始めたのはいつか、っていうのには定説はないみたいです。
だいたい700万年前に二足歩行を始めた初期の猿人、アウストラロピテクスは森の中で暮らしていたんだそうですけど、400万年ぐらい前に草原に出てくるようになると、手を使った作業をするようになって、脳が次第に大きくなっていったんだそうですね。
200万年ぐらい前になると、しっかりした知能を持った原人、ホモ・エレクトスが出現してきます。
こうした人類の進化っていうのは、1直線的に進化の経路をたどるっていうんじゃなくって、さまざまに枝分かれして多くの人類が登場して来て、ある種類が数多く生き残っていくっていう感じみたいなんですね。
アウストラロピテクスとホモ・エレクトスに直接的な関係性があるのかどうか、分かっていないってことなんですね。
絶滅した人類って、たくさんあるらしいですよ。
このホモ・エレクトスの時には、自分たちで火を起こして使っていたんじゃないかっていう説もあるみたいですけど、落雷や自然発火した火を利用していた可能性はあっても、自分たちで火を起こしてはいないだろうっていう説が強いみたいですねえ。
前期旧石器時代ですね。石器は自分たちで作っていた。
そして60万年前、旧人、ホモ・ネアンデルターレが登場してきますと、さらに脳が大きくなって、道具作りも進化していきます。
後期石器時代に入るわけです。
このネアンデルタール人の頃には、火が必要な時に、自分で火を起こして、様々に利用していたんじゃないかっていうことなんですね。
火を使えば調理はもちろん、暖を取ることも出来ますし、害獣を遠ざけることにも利用していたんでしょうね。
木をこすり合わせることで火を起こすっていうの、今でもキャンプとかでやっている人、います。
いつごろ発明されたのかは分からないらしいですが、力も要るし難しいですけど、凄い発明ですよね。
最初に考え出したネアンデルタール人、エライ!
20万年前になると、現在の我々の祖先、新人、ホモ・サピエンスが登場してくるんですよね。
道具として、火を使って焼かなければならない土器なんかも出てきます。
火を起こす道具もどんどん進化していって、火打石、マッチ、ライターになってきたわけです。
そして「IH機器」「電子レンジ」っていうことになって来ると、「火」「炎」が一般生活から消えていっている。
人類が最初に接した「火」を第1の「火」
電気を第2の「火」
原子力を第3の「火」っていう表現もあります。
進化と言えば言えるのかもです。
ま、火がなくたって生活出来ているんだったら、それでイイんじゃないのっていう意見もあるでしょうけれども、「安全に火を学ぼう! 火学VR」の目的の1つでもある、火の危険に対する認識。
時代遅れって言われようがなんだろうが、「火」「炎」はすぐそばに存在していて、使い方、接し方を間違えると、命にかかわることになりますからね。
「火」の扱いを知っておくことは、かなり重要だと思います。
「火」「炎」って、生活するチカラでしょ。
にしても、「火」が身近なものじゃなくなっているんだなあって思わされることには困惑しますねえ。
ヴァーチャルリアリティ―を利用して「火」の体験っていう現実が、イマイチ、体感できないって言いますか、ホントには理解できませんです。
もの心ついた頃には高層マンションの生活で「高所ヘーキ症」になってしまっている子どもが少なくないっていうことも聞きますしね。
どうも、なんだか、人間生活のコアな感覚を失いつつある21世紀、って感じがしないでもないです。
「火」が熱いってことを知らない人類になって来ているとしたら、生きていくチカラ、弱ッ! でしょ。
学ぶべき対象になっているんだそうございますよ。「火」