< そもそも おかくずって なんなん? なんでエビをくるむん? エビはなんで活きたままなん? >
「どっすん」って呼ばれている呑み仲間がいます。
とある町中華でちょくちょく出会って、一緒に呑むっていう知り合い。気持ちの良い酒呑み。
妙齢の女性なんですが、大のビール好き。夏場には樽でキープしたいっていつも言ってます。
中学生と小学生の子供さんが居て、時々一緒に連れてきて食事したりなんかしてますね。イイ感じのお母さんなんですよ。
普段は独りでやってきますが、仲間と2人とか3人連れで来ることも多いですね。ダンナとは一緒に呑まないことにしているんだそうですが、その理由は知りません。
サイトウユカさんっていう名前なんです。
特注銅製のビアタンブラーを店に置いていて、それに名前がキチンとした書体で書いてあるんで、カウンター族は誰でも知っている明るい酒呑み。ビール以外も大好き、だそうです。
でも誰もサイトウさんとか、ユカちゃんなんて呼びません。どっすん、です。
中肉中背なんですよね。ぜんぜんどっこも「どっすん」じゃない感じ。
名前もサイトウユカだし。どっすんとはつながりません。
で、ある時聞いてみると、
「あたしねえ、旧姓が須藤なのね。それで小学校の時からずっとあだ名が、どっすん」
んはは。さいでっか。ってなことなんだそうで、みんな遠慮なく、どっすんって呼んでます。
一緒に来ている仲間と共に、ジモティーってことなんでしょね。
そのどっすんが、鹿児島の従妹からクルマエビが送られて来たから、焼いてちょうだいって言ってそこそこの大きさの段ボールを両手で抱えて入って来ました。
店とも、なんかね、そういう関係みたいです。ご近所なのかも。
「家で料理するのは大変だからさ、焼いてみんなで食べようよ。大将も食べてね」
マイペースというか、太平楽というのか、いつもそういうどっすんではあります。
「ウチはみんなエビが得意じゃないんだよね。だから持ってきたの」
店の大将も、ああ、そう、って感じで、まあ、嫌がってはいませんね。
段ボールごと手渡されて、
「何匹入ってんの?」
「さあ、何匹だろ? でも大将と女将さんと、カウンターの~、2人とあたしで~、5匹。それぐらいは入ってんじゃないかなあ」
はい、それで今、店内にいる全員でござます。
ほっほっほ。ご相伴にあずかれそうな雰囲気になってまいりましたね。
段ボールの厚みは左程じゃないんですが、大きさはそこそこあって、30センチ×50センチぐらい。
クルマエビねえ。バーベキューとかで食べますけど、そんなにお目にかかるもんでもないなあ、って思いながら厨房の中を覗き込んでいました。
段ボールが開けられますと、ん? なんか薄茶色の粉末がびっしり詰まってますね。
「お、ナマだね。活きエビ」
そう言いながら大将が段ボールの中へ手を突っ込むのを見ながら、ああ、そうか、こういうの見たことあるなって思い出しました。
直に見たんじゃなくって、テレビで見たような記憶。
高級エビは、なんでか知らんけど「おがくず」にいれて輸送する。そんなような映像記憶ですね。
「10匹入ってるけど、焼く?」
「じゃあ1人2匹ずついけるじゃん」
ってことでですね、たまたま居合わせてラッキーな晩を過ごさせていただきました。
大ぶりなクルマエビ。プロに調理してもらって、2匹。ゴ-セー!
大変おいしゅうございました。
でね、エビってなんで「おがくず」に入れて輸送すんの? そもそも「おがくず」ってなんのくず? っていう疑問には、どっすんはまあ当然、知らんがなだとしても、店の大将も「なんでかねえ」ってことでしたので、はい、いつものごとく、帰ってから調べてみました。
次回にはこのブログ記事を提示しながら、どっすんに調査結果報告したいと思っておりますです。
以下、調査結果です。
まずは「おがくず」ってなんのくず? から。
木の切りくずですよね。
まあね、普通に考えれば「おが」の「くず」だから「おがくず」なんでしょ。って思いますよね。
でも「おが」っていう名前の木なんて聞いたことないです。
それもそのはずで、「おが」は「大鋸」って書く、デッカイのこぎりのことなんでした。
製材所で丸太から板を切り出すときにガーガー動いている、あのデッカイのが「おが」
っていっても、製材所ってテレビで見た記憶しかないですね。ホンモノは知らないです。
要するにのこぎりで木を切ったときに出る、切りくずが「おがくず」ってことなわけで、どんな木を切っても、その切りくずは「おがくず」ってことなんですね。
おがっていう木はありません。
へええ、です。
カンナで削ったくずは「かんなくず」って言いますもんね。それの「おが」版ってことなんでしょうけど、「大鋸」なんて普通、知らないでしょ。なんで「のこぎりくず」って言わないんでしょうかね。
そりゃあ、やっぱり、出る量が全然違うんでしょうね。
製材所で圧倒的な量が出るんで、大鋸のくずって言いますよってことなんでしょう。納得なっとく。
次は、エビってなんで「おがくず」に入れて輸送すんの? についてです。
どっすんが持ってきた段ボールには、内側にビニールが敷かれていて、ちょっと見には判別できませんでしたが、どうやら入っていた「おがくず」は湿っていたみたいです。
クルマエビって、普段、泥だとか砂の中で暮らしているんだそうで、湿ったおがくずの中に居ると、環境が近いってことで暴れない。
で、クルマエビ同士がぶつかりあって、傷付いたりしないのでおがくずに入れて輸送する。
でもこれだけだと、活きたままっていうのが納得できませんね。
少なくとも1日以上は経っているわけでしょうから、海から獲って来て、そんなに長いあいだ活きてるって不思議です。
クルマエビは頭の殻の内側にエラがあるんだそうです。
当然のことながら、そのエラで呼吸しているわけですが、エラが湿ってさえいれば空気から酸素を取り込むことができるので生きていられるってことらしいんですね。
乾燥しにくい湿ったおがくずが、エビのエラを湿らせたままにしてくれる。
ふむむ、って思いますけれど、考えてみますとカニ。
カニもエビと同じに殻の内側にエラを持っていて、エラが湿っている間は砂の上で歩き回れるっているわけですもんね。
湿ったおがくずのおかげで、クルマエビは呼吸ができるってことなんですね。
だったら湿らせたスポンジでも良さそうなもんですけど、普段生活している砂に近いってことで、おがくずが選ばれたんでしょうかね。
どんなに短くとも3、4日は元気なまま、クルマエビはおがくずの中でじっとしているらしいです。
エビとおがくずなんて、偶然に出会うことなんてないでしょうから、水産学だとかなんとか、そんなアカデミックな方面からのアドバイスから始められたことなんでしょうか。
エビは死んでしまうと「自己消化」っていう変化を起こして、味も食感もガクンと落ちてしまうんだそうで、そうなっちゃうと値段も格段に下がってしまう。それで産地からの輸送にはおがくずが欠かせないってことなんですね。商売ですからね。
ふううん、とは思いますけど、エビの養殖がうまくいっているとして、おがくずの方はどうなんでしょう。
今でも大量提供してくれるような製材所って、ちゃんと稼働しているんでしょうか。
それとも、副産物として出てきてしまうおがくずじゃなくって、エビの輸送専用に「作って」いたりするんでしょうか。
あるいは輸入している? のかもですねえ。
そもそも、今の日本で林業から大量のおがくずが出てくるって、ないんじゃないの? って思いますよ。
でもあれか、店舗に卸している高級エビの場合なんかだと、エビを取り出した後、返却してサステナブルってなことになっているんでしょうか。
ん~。おがくず自体にも鮮度ってのがありそうにも思えますね。どうなんでしょう。
一般家庭に回って来ることがあれば、そりゃ、捨てられますよね。おがくず。
まあ、なんにしてもクルマエビはおいしくいただきましたんですが、アテとしてのエビは「川エビの唐揚げ」が好きなんですけどねえ。
好きなんですが、最近、見かけません。
あんまり獲れなくなっているんでしょうかね。川エビ。
口の中にチクチク刺さる、あの長い手足が不人気なんでしょうか。
川エビじゃなくって、エビの唐揚げっていうメニューを出している居酒屋さんもありますけどね。
なんていう種類なのか知りませんが、川エビよりはだいぶ大きなエビで、なんかね、唐揚げにする意味がよく分からない一品なんですよね。飽きますよ。
川エビの唐揚げは、エビの味っていうか塩の味っていうかですし、噛み応えがイイわけですし、香ばしさが最大の魅力なんじゃないでしょうかね。
見かけなくなって寂しいです。
川エビの唐揚げ、薄いハムカツ、スパイシーポテトサラダ、元の素材の正体が不明な煮込み。
み~んな見かけなくなりました。
クルマエビにお目にかかれないのは財布事情から考えて当然のことだって気にもしませんが、川エビの唐揚げ、メニューにある居酒屋さん、ま、どこかにあることはあるんだろうと思いますけどね、近所にないのは、なんとも残念です。
どっすんも大好きだっていう、川エビの唐揚げです。