< キンモクセイって ギンモクセイの変種なんだってさ 変種 >
花鳥風月ってねえ、縁が薄いって言いますか、花の名前なんて10個ぐらいしか知りませんです。
散歩の途中で垣根にぶら下げられたプランターに見事な色の赤い花、紫の花とかを見かけて、ほほおって立ち止まることはあるんですけど、名前なんて知りませんし、特に調べようとも思わないんですね。
今はスマホのカメラで写すとそのモノの名前を教えてくれるアプリもあるみたいですけど、どうもね、花ってだけでいっか、って思っているタイプでやんす。
そんな無粋なオヤジでもですね、知っている数少ない花がキンモクセイですね。
いや、その、あの、知っているっていってもですね、ほら、あの、切ない香りのするヤツでしょ、
ぐらいの認識です。
金色っていうか、かなり色の濃いオレンジ色。
けっこう薄い色合いのもあって、色の薄さのせいなのかあんまり香りがしない。って言ったらですね、そりゃギンモクセイじゃないの? って教えてくれたオヤジがいて、ほほう、詳しいオヤジってのもちゃんと居るですねえって感心したんでした。良かった良かった。
ギンモクセイねえ、ドウモクセイってのもあんの? って聞くのはやめておきました。
で、いつも通りに調べてみましたです。はい。
キン、ギン、ドウ、じゃなくって、キンモクセイ、ギンモクセイ、ウスギモクセイなんでした。
漢字で書くと「金木犀」「銀木犀」「薄黄木犀」
日本だとキンモクセイが主流みたいに思われているんだけど、キンモクセイはギンモクセイの変種ですって言われているようですね。
ただですね、変種って言い切っている説が多かったですが、よく分からない、っていう説もけっこうありましたです。
いろんなことが言われている不思議な樹、ってことみたいです。
実はみんな、よく分かっていなってことでよろしいみたいです。良かった良かった?
樹とか花っていうのも、いろいろ分かっていないことって、普通にあるそうですね。
中国原産で、「桂(Gui)」っていうのが木犀で、キンモクセイは「丹桂(Dan gui)」
日本では「金」って表現している花の色は、中国では「丹」ですから、赤、ですね。
「桂花茶」っていうお茶のフレーバーとして楽しまれているらしいです。
江戸時代に中国の「丹桂」が持ち込まれて、1本の樹から日本中に広まったっていう説もあるんですが、んなこたあない! キンモクセイと丹桂は別物じゃあ! っていう説もあって、「決定論は無い」みたいです。
香港、マカオの北方、広西チワン族自治区には「桂林市」っていうキンモクセイの観光街があって、秦の始皇帝に設置されたっていう歴史があるんだそうで、丹桂がキンモクセイと同じであっても、違う種類であっても、キンモクセイの里ってことで、日本の観光客も多いそうです。
面白いのは中国と日本の花の色の認識。
金木犀の中国名は「丹桂」
銀木犀は「銀桂」
薄黄木犀は「金桂」
花の色の名前については、なんか、中国名の方が実際に近いような気もしますね。
日本に入って来て、キンモクセイの花の色が丹から金になったのは、まあ、なんとなく分かるような気もしますが、「金木犀」っていう和名は、
「樹皮が動物のサイ(犀)の足に似ているため、中国で木犀と名付けられていて、橙黄色の花を金色に見立てて金木犀とした」
っていうんですがね、この説は二段階でミョーですよね。
一段階目。
中国で木犀と名付けられ、ってさあ、「丹桂」「銀桂」「金桂」のどこにも「木犀」って入ってないじゃん。
それにね、サイって中国に居ないでしょ。日本にも居ないです。
名付けられたのが江戸時代の日本だとしても、それよりずっと前の中国だったとしても、サイの存在すら知らない人の方が圧倒的に多いんじゃないでしょうかね。
知りもしない動物の名前を可憐な香りのする植物につけたりします?
二段階目。
キンモクセイの樹皮、サイの足に似てますかね?
っていってもねサイの足、よく分らんっていう感じではありますけどね。
百歩譲って、植物学の泰斗がサイに似てるよって判断したとしても、だったら、犀足とか、犀足樹とかの方が納得できるような気がします。
いや、色合いとかじゃなくって形状ですよ、っていうんであれば、サイよりはゾウを選ばなかったのは不思議な感じです。
なんか、かなり無理矢理の「犀」だなあって思えてしょうがないです。
あのキンモクセイの小さな花と香りは、大型動物のサイと結びつかないですよね。
キンモクセイの樹は、雄株と雌株があるんだそうですが、日本のキンモクセイは全部が雄株だっていう説があります。
説っていうか、ほぼ定説みたいなんですけどね。
雄株しかないんで、実を結ばない。実は出来ないんだけど挿し木がし易いんで、それで日本中に広まったっていうんですね。
ホンマかいな! って思いますね。
ソメイヨシノも同じように、1本の樹から日本中に広まったって言われてたりしますけど、ホントなんでっしょうかね。
キンモクセイもソメイヨシノも、全部クローンなの? マジ?
ちっと調べてみたらアヤシイ説ばっかり出てきたキンモクセイなんですが、このところ「二度咲き」っていうのが話題になっていますよね。
中には3回咲く樹もあったそうです。
オッカシイでしょ、って現象なんですが、これは、そうです、思った通り温暖化現象が原因らしいんです。
「怪現象」ってことで研究が進められているみたいですよ。
季節外れに狂い咲きするサクラなんかが話題になることはありますけど、二回も三回も同じ樹が花をつけるって、キンモクセイってなかなかユニーク。
っていうか苦しんでる結果なのかもねえって考えると可哀想な気もします。
秋になると、樹がどこにあるのか確認できなくとも、香ってきますよね。独特の強い香り。
例年のことなんですが、キンモクセイが香って来ますと、思わず知らず、大きく息を吸い込んでしまいます。
夏のギラつく暑さが消え去って、少し落ち着いた空気の頃に、どこからともなく香ってきますよね。
何がどう刺激される結果なのか、どこか懐かしいような、切ない気持ちが湧き上がってくる、あの香りの正体ってなんなんでしょう。
「三大香木」っていうのがあってですね、
「春の沈丁花」ん~。聞いたことはありますが、知らんです。鼻を近づけて嗅ぐ香りでしょかねえ。
「夏のクチナシ」これも聞いたことはありますが、見ても区別できませんね。夏の花っぽくない名前、って思ってしまうのは、知らんから、でしょうかねえ。
で、「秋のキンモクセイ」っていうのが日本で言われている「三大香木」だそうですが、やっぱしキンモクセイしか知りません。キンモクセイは「千里香」っていう別名もあるんだそうですね。なるほど、遠くまで香ってますもんね。
春夏秋があるんだから、冬も入れて「四大高木」にしましょうって意見もあって、「冬はロウバイ」
これ、知ってますね。散歩コースの神社の庭の樹に名札がぶらさがってます。
梅の花の季節はそこそこの人数が見に来てますけど、香り、知らんなあって感じです。
香りっていうことに関していえば、圧倒的にキンモクセイってことになるんじゃないでしょうか。
ん~。ただ知らなすぎるだけかもしれませんけどね。
キンモクセイの香りが、幼い頃の記憶を呼び起こすから、切ない気持ちになるっていう説もありますね。
鼻から入って来る香りっていう信号は、脳の中の「扁桃体」と「海馬」っていう部位に直接伝わるんだそうです。
目、耳、舌、肌からの信号は一旦「視床」っていう部位を経由して脳に伝わるのに対して、香りは直接届くってことらしいんですね。
そして「扁桃体」は人間の感情、「海馬」は人間の記憶を司っている部位。
そこが直接刺激されるんで、幼い頃の秋の光景が、キンモクセイの香りの記憶と共に呼び起こされるんで、理屈なくノスタルジーを感じてしまう。
「プルースト現象」っていう名前も付いている現象らしいです。
フランスの作家、マルセル・プルーストが1913年から1927年にかけて発表した「失われた時を求めて」からきているんだそうです。
ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」とならんで、20世紀の名作って言われている小説ですね。
紅茶にマドレーヌを浸して、その味と香りから、主人公は急に子供の頃の記憶の世界に入っていくところがあるんですが、そこからとって「プルースト現象」って言うんでしょうね。
キンモクセイには何の罪もありませんけど、凄く退屈な小説だと思いますね「失われた時を求めて」
「ユリシーズ」もつまらんと思うんですが、2つとも、20世紀初頭の実験小説みたいなもんですよね。知らんけど。
名作ですって言っている人、あのさ、え、いや、って感じです。
読み終えるのけっこう大変ですよ。「失われた時を求めて」は特に。ムダに長いです。
幼い頃の記憶が無条件に呼び起こされるっていう説にも、ちょっとね、賛同しかねる部分がありますね。
自分がちっちゃかった頃の、どんな記憶が呼び起こされるのかってコントロールできないと思うんですが、なぜ切ない気持ちになるのかの説明にはなっていませんよね。
楽しいこともあったでしょうに。キンモクセイの香りで、そういう楽しい方向の気持ちになることはないですよ。
「プルースト現象」よりは、日本のキンモクセイは雄株ばっかりだから、花粉を飛ばしても実を結ぶことはない。ってことを知ってしまったキンモクセイの、植物のオトコたちの悲しさ、虚しさが、切ないんじゃないでしょか。
一所懸命に花粉飛ばしても、受け止めてくれる雌株、居ないじゃんかあ! 寂し~!
え? 全然違う? ま、イイじゃあ~りませんか。
キンモクセイの香りでシンミリするのも、悪くないです。と思います。
植物学の偉いセンセ方、切なさの理由を研究して、教えてくださいね。