< 呑み屋さんに客足が一気に戻って来たって感じにはなってないらしいですねえ >
2021年10月1日に緊急事態宣言が解除になって10日余り。
20時までっていう時間制限付きながらアルコールも解禁になったんですが、街の居酒屋さんにコロナ前のような喧騒はありませんね。
東京近辺の酒呑みたちが意外に慎重なのか、ワイワイするのが好きな元気世代まではまだワクチン接種が進んでいないってことなのか、やっぱり20時までだよっていう制限がブレーキになっているのか、けっこう静かな夜の街です。
テレワークで巣ごもり生活に馴染み過ぎて、外に出て行くのが億劫になってしまったのかもですね。
もちろん一定数の酒呑みたちは出てきています。
カウンターに陣取った懐かしい顔のオッチャンが言ってました。
「だってさ、仕事終わって、呑みに行こうかって思って時計見たら、もう8時だよ」
ここで「全員集合!」って突っ込むのは酒呑みオヤジどものお約束。
たしかにね、そういう時間サイクルですよ、たいていの人はね。
慌てて走って行って、居酒屋さんに滑り込みセーフなんていうマンガの世界に生きては居ませんしね、それでみんな外に出ないで、宅呑みってことになっているのかもしれません。
たまに早いタイミングで切り上げた一部の酒呑みたちも、カウンターで、案外静かに呑んでますよ。
グループも4人までだったか、そんな人数制限があって、それで騒ぐような人もいないのかもです。
1人ではしゃぐような困ったちゃんも、たまには見かけましたが、この秋には見かけません。
よく行く町中華でもアルコールが解禁になりましたので、ホッピー呑みながら店のオヤジと話をしました。
酒呑みが戻って来ないんだそうです。
店内、所狭しと短冊に書いたメニューがひしめいている町中華なんですね。ラーメン、焼きそばの麺類、肉野菜、ニラレバなんかの普通の中華メニューの他にですね、いっぱいあるんです。アテのメニュー。
餃子は5個、3個、2個の注文が出来ます。ビールのアテに餃子、2個。あとは他のメニュー食べてね、ってことなんでしょうね。手間とか効率とか、言いませんよ、このオヤジは。
チャーシューエッグとか、玉ねぎのてんぷらとか、要は他の町中華ではあまり見かけないようなメニューなんだけれど、材料とか調理方法とか、そこには何の不自然さもない酒のアテが、どんどん増えていくんですね。
人気のないメニューは消えていったりもするんですが、100以上はあるんじゃないでしょうかね。お気に入りの町中華です。
飽きずに食べてもらえるように、呑んでもらえるようにっていう工夫が嬉しい店です。
で、そこのオヤジは研究熱心さをみせて酒呑みたちの動向を観察分析しているわけです。
オヤジによりますとですね、酒のアテには「静寂のアテ」と「賑やかなアテ」っていう分類があるんだそうです。
これまでは、店で出すアテは「賑やかなアテ」に限ったものだったそうです。町中華一般的に。
賑やかなアテっていうのは、例えば「ハムカツ」例えば「揚げ餃子」
「とんかつ」「ごぼうフライ」だとかね、揚げ物は陽気に呑む酒呑みたちのアテなんだそうです。
酒のアテに町中華の「とんかつ」を注文するのは、何人かで来ている酒呑みで、独りで来ている酒呑みは、まず頼まない。そういうもんらしいです。
静かに呑みたい酒呑みに向けたメニューが「静寂のアテ」
ま、何が静寂なのかは判断の難しいところですが、例えば「とんかつ」を「カツ煮」にすると、賑やかから静寂になるんだそうです。
まあね、言われてみれば、カツ煮でワイワイっていうシチュエーションは考えにくいかもです。
「かに玉」は賑やかだけど「だし巻き」は静寂。ちょっと変えるだけでカテゴリーが変わっちゃう。
あとは「らっきょう」「お新香」なんかはワイワイやっていたグループが呑み疲れたころに注文の入る静寂系だそうです。
そうやって観察するのを欠かさないオヤジなんですが、このところ、町中華に対しても「静寂のアテ」のクオリティが求められるようになってきた、って言うんですね。
なんだか御大層な話の成り行きなんですが、コロナでアルコールの制限、解除を何回も繰り返していうちにそういう傾向が見えてきたんだそうです。
由々しき事態、そうでもない? のかもしれませんが、町中華にも新たな工夫が必要とされているんだそうです。
「世の中キビシイからね、ウカウカしてらんないよ」なのだそうでありますよ。
で、オヤジが現在開発中なのが「梅水晶」
お! イイねって思います。町中華で「梅水晶」
でも、工夫って言ったって、材料さえ仕入れれば問題なく作れるんじゃないの?
だからさ、そこはやっぱり、中華屋の「梅水晶」でなきゃさ、やる意味ないわけよ。
なあるほど、なんであります。
オヤジはその特製の「梅水晶」を自分の店の「静寂のアテ」の代表に育て上げたいわけなんですね。
ま、一般的には「鮫の軟骨 梅肉和え」っていうのが「梅水晶」ですよね。
日本ならではのキレイな名前です。
たしかにね、そのままでは賑やかさも大事な町中華の酒のアテとしては、弱いのかもしれません。
だけどねえ、梅肉以外の調味料っていってもねえ、工夫のしどころが分かりませんねえ。難しそうですねエ。
鮫の軟骨の茹で加減? そんなにバリエーションとかがありそうに思えないですよねえ。
半透明に茹でられた鮫の軟骨は、キレイですよね。そこに梅肉で少しピンクに色づいているのが上出来の「梅水晶」ってもんでしょう。
軟骨はなるべく細く刻んで欲しいところです。白くならずに半透明に茹でるには、なにか特別な工夫があったりするのかもしれませんけれど、センスのイイ町中華のオヤジですからね、何回かやればキレイな「静寂のアテ」が出来ること、間違いなしと期待するばかりです。
鮫って、ヒレは「ふかひれ」で、軟骨が「梅水晶」肉は「かまぼこ」って感じなんでしょうかね。
で、ここで素人ながら考えてみますと、「鮫の軟骨」ってお高いんでしょうかね。
スーパーとかに並んでいる商品じゃないですもんね。見かけませんよ。
「ふかひれ」って高級食材ですからね、「軟骨」もそうなんでしょうか。
でもあれです、「梅水晶」って量を食べるもんじゃありませんけれど、高いって感じでもないですよね。
ごく普通の値段で口にできる一品です。
そういえば、焼き鳥屋さんっていうか、鶏料理専門店なんかにもありますね「梅水晶」
あれは透明感はなくって白いです。鶏の肋骨っていうか、「ヤゲン」って呼ばれている軟骨。
ま、コリコリってして旨いですけどね。水晶じゃないです。見た目ね。
クラゲとか、ミミガーとか、他にもコリコリと楽しめるアテがありますけれど、そんなに一般的じゃないかもですね。前はクラゲの酢の物とか、梅肉和えとかしょっちゅう出てきたような気もするんですが、このところご無沙汰です。
コロナの第6波は必ず来るんだそうですが、ま、やがて普通に呑める日々が戻ってくることは間違いないと思います。
町中華のオヤジの見立てによれば、酒呑みのアテに対する要求が「静寂のアテ」の方に傾いているらしいんですが、どうなっていくんでしょうかね。
中華屋ならではの「梅水晶」が、ただ単に鶏のヤゲンになってしまうのか、なにかホホーッってなっちゃうような工夫がなされるのか、楽しみなんですね。
でもあれです、「静寂のアテ」って、それを食べるから静かになるんじゃなくって。静かに呑むヤツの注文するアテっていうのがホントのところなんでしょうから、2021年秋の段階では、みんなまだまだハシャイデ呑むっていう空気感になっていないだけで、独り呑みが多いでしょうし、静かな傾向が続いてはいるけれど、段々に、そしてなるときは急激にワイワイし始めるヤツらもいると思いますよ。
完全に出不精になっちゃったってことはないと思いますしね。
20人、30人と客が入っている店で、全員がしんみり「梅水晶」っていうのも悪くはないですけれど、1組、2組は「ウッセエぞ、こらっ!」っていうのも居ないとね、世の中盛り上がりませんよ。