< 俺たちに向かって明日にしやがれ >
ブログを書いたり読んだりしている人たちは、本を読むのが好きな人も多いんじゃないでしょうか。
本をネットで注文するときは、あらかじめ調べてあったタイトルを入力して購入、って流れだと思います。
ただ、注文確定までの間に「こんなん出てますけど」とか「こういうの、お好きでしょ」とかね、今のネット環境はそんな感じです。うるさいです。
今のところ「なんちゃってAI」みたいですから、とんちんかんなお勧めも少なくないです。
そんなん読まんよ。って感じで、興味を惹かれることが少ないです。
でもそのうち、ホントにAIが進化してきて、勧められるたびに「おっ!」って思ってしまうような日が来るのかもしれません。
本を読むことの楽しさのうち、何パーセントかは、知らない本と出合うってことがあると思います。
こっちの方の楽しみは、ネットより、本屋さんのリアル店舗に行くのがイイですよね。
棚をぐるぐる見て廻るのは至福の時間になります。
あっという間に時が過ぎてしまいますよ。
どうやって選んでますか? 本。
背表紙、タイトルですよね。
なんかピンと来るようなタイトルが見つかれば、手に取って出だしを、ってなところでしょうかね。
お気に入りの作家さんの新作を探す以外の本屋さんでの楽しい時間の過ごし方って、タイトルチェックなんだと思います。
なんか面白そうなの、ないかな、ってやつです。
このところCDじゃなくって物理的にレコードの売り上げが戻って来ているって聞きますが、レコードもCDも、やっぱりタイトルチェック、しますよね。
レコードの場合は「ジャケ買い」っていうのが当たり前にありました。
文字としてのタイトルじゃないですけれど、絵面としてのタイトルって言えるんじゃないでしょうか。
海外の作家、アーティストの作品も翻訳されたりしていて、外国語に通じていなくたって愉しめるわけですが、本やアルバムのタイトルって、わりと原作原語に忠実なような気がします。
映画の原作になったような本だと、その映画のタイトルに変わっていることが多いです。
そうなんですよね、映画だけは本とかアルバムと違って「邦題」っていって、日本独自のタイトルが付けられることが、けっこうあります。映画に独特のことかもですね。
本編が「吹き替え」であっても「字幕」であっても、タイトルは日本語になっている映画が多いです。
ダサッ! っていうのも、まあね、一定数あるんですが、日本語タイトルだからこそ記憶に残っているっていう映画もたくさんあります。
♪ありの~ ままの~
ってみんながテーマソングを歌っていた「アナと雪の女王」ですが、原題は「Frozen」2013年でしたね。
直訳すると「凍った」ってなっちゃうんで、これはもう、日本の配給元としては考えないとダメじゃんってことだったんでしょうね。
「凍った」とか「凍っちゃった」とかやっちゃったとしたら、
♪ありの~ ままの~
なんて誰も歌わなかったでしょうね。
「アナ雪」って縮めて言っても通じちゃうぐらいヒットしました。
アナ雪と似たような感じのタイトルにまつわる話。
原題と邦題のギャップが特徴的な映画だなあっていうのが2009年の「カールじいさんの空飛ぶ家」
スモールヒットしたイイ映画でしたが、この原題が「Up」
まあね、確かに家に風船いっぱいつけて、空を飛んじゃう話ですから「上」ってことなんでしょうけれど、これじゃね、日本人は見向きもしないでしょう。巧い邦題タイトルの付け方だと思います。
ま、そういう映画タイトルはたくさんあるんですが、個人的ベストスリーの話を。
ベストスリーと言いながら順位はないんです。3つとも同等にナイスです。
1967年の「俺たちに明日はない」の原題は「Bonnie and Clyde」(ボニーとクライド)
主人公の2人がボニー・パーカーとクライド・バローですからね、タイトルがそのまま「Bonnie and Clyde」なんですね。
ボニーとクライドは実在の銀行強盗のカップルで、逃走途中のフォードV8 に150発以上の銃弾を撃ち込まれて、壮絶な最期を遂げたというショッキングな事実に基づいた映画です。
1934年に実際にあった、待ち伏せでの銃撃です。150発以上も撃ち込んじゃう警官隊側の恐怖っていうのが、非情な行動を呼んだんでしょうけれど、この映画は「ボニーとクライド」でも、充分ヒットしたでしょうね。
ですが、やっぱり「俺たちに明日はない」がイイですね。最期を知ってますからね。
「俺たちに明日はない」の2年後、1969年に公開された「明日に向って撃て!」
この原題は「 Butch Cassidy and the Sundance Kid」
俺たちに明日はないと同じなんですね、主人公たちの名前「ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド」
この映画も実在の強盗たちの話で、2人とも射殺されています。
実際に射殺されたのは1908年ですから、ボニーとクライドより昔のことですね。
映画の作りも似ているんですが、俺たちに明日はないのヒットをかなり参考にしていて、エンディングはまさに傑作のストップモーションですね。
2作ともアメリカン・ニューシネマの代表作です。キーワードは「明日」ってことになるんでしょうけれど、刹那的に生きていて、明日が信用できない時代。100年前のアメリカ。
映画ってイイもんですよね。
もう1つは1960年公開のフランス映画「勝手にしやがれ」
この原題は「A bout de souffle(息せき切って)」です。
ヌーベルバーグの代表作ですね。アメリカン・ニューシネマの先駆けとされている映画です。
勝手にしやがれは、登場人物の名前じゃ、もちろんないですね。
犯罪映画なんですが、警官を殺してしまった主人公が逃げ回る話ですので、息せき切ってってタイトルなんでしょうけれど、これはもう「勝手にしやがれ」っていう邦題タイトルでヒットした映画だと思います。日本ではね。
映画のセリフとして主人公の男が射殺されるときに、一緒に逃げ回っていたアメリカ女性に「最低だ」「お前は最低だ」って言うのがカッコイイ、印象深い映画です。
「勝手にしやがれ」っていう邦題は、この最低だをアレンジしたんじゃなくって、映画の初めの方で主人公が叫ぶセリフ「くそくらえ」を、当時の映画として、日本語として耐えられるレベルにしたもの、みたいです。
1930年代から映画の世界で活躍して、カッコイイ男の代表だったハンフリー・ボガード。ボギー。
ボギーにあこがれて無軌道な行動をするのが勝手にしやがれの主人公、ミシェルです。
ボギーも、ミシェルもカッコイイんですが、この「勝手にしやがれ」にはもう1人、カッコイイ男がからんでいます。
映画じゃないんですけれどね。
1977年に発表されて大ヒットした、沢田研二、ジュリーの「勝手にしやがれ」ですね。
日本の芸能界で最もキレイだった男。だと思います。ま、嗜好のモンダイではありますが。
歌詞は「阿久悠」
映画の「勝手にしやがれ」に因んだ歌になっています。ま、内容的には違いますけれどね。
阿久悠作詞で沢田研二が歌った2005年の「カサブランカ・ダンディ」にはこんな歌詞もありました。
♪ボギー ボギー
♪あんたの時代は良かった
♪男がピカピカの気障でいられた
阿久悠の中には、ずっとハンフリー・ボガードの格好良さに引きずられていたものがあって、勝手にしやがれの映画も好きだったでしょうし、俺たちに明日はない、明日に向かって撃ても絶対好きだったでしょうね。
ここ最近、劇場で映画を観ていないんですが、これは是非、劇場で観なければって思えるようなカッコイイ映画、出てきて欲しいです。
撮影現場も、本格的に動き出せそうな雰囲気になってきていますしね。