< 元素記号「Nd」原子番号「60」の金属元素 ネオジム >
マグネット式の収納グッズがユニットバスの壁面にくっ付くのって知ってました?
いやまあ、昔からありますよね、マグネット式の収納グッズって。
ユニットバスの壁面にも色々種類があるんでしょうけれど、我が家の壁面はマグネットがぺったんってくっ付く種類ではありました。
ですが、あきらかにくっ付き方が弱いんです。収納っていう以上、何か物を乗せるんですが、シャンプーボトルなんか乗せられないレベル。意味ないじゃん!
一応くっ付きはするけれども、収納なんかはムリ。なので、吸盤式の収納グッズにする。
そういう経験したことないですか。
そっか、浴室の壁って鉄じゃないだろうからねえ、とか、そんな認識で、特に深く追求しようとしたこともないんですが、この前ホームセンターへ行ったらですね、やたらたくさんの「ユニットバス用マグネット収納グッズ」があったんですね。
ん~。今使っている吸盤式の収納棚は、もう吸盤が寿命で、洗い直して付けなおしてもしばらくするとバッタンガラガラって取れちゃいますね。代え時なんです。
でも、物を置いたらズレちゃうようなマグネットじゃダメなんですけどねえ。
で、説明書きを見てみますと、ユニットバスの壁の奥には「亜鉛メッキ鋼板」が入っているので、そこに強力な磁石でくっ付くらしいです。
壁の奥の鉄。つまり直接じゃなくって、障害物を挟んでくっ付くってことですね。
なるほど、だから磁力が弱いと、くっ付くことはくっ付くんだけど、固定できないってことだったんですねえ。
へええ~、そっかあ。なんか新しい磁石とか、開発されたんでしょうか。
「ネオジムマグネット」って書いてあります。なんなん?
って思ったらですね、けっこう前からあるみたいですね「ネオジム」って。
磁石のことなんて調べませんよね、普通。そういう専門領域に関わってでもいない限り。
で、調べてみたらビックリだったのでした。
磁石、磁鉄鉱と人類の出会いはかなり古くて、世界各地で不思議な石として発見されているみたいです。
まず有名なのが古代ギリシャ。
マグネシアっていう地方に住む羊飼いのマグネスが、偶然見つけたっていう伝説。
なんだかマグマグした話ですが、マグネットっていう名前はここから来ているらしいです。
ローマ時代の大プリニウスは「博物誌」の中でマグネシアについて触れていて、「マグネシアの石」って表現しているみたいです。
古代中国では「呂氏春秋」っていう本の中で、母のように子を引き寄せる力を持つ「鉄の石」について書いてあるそうです。
鉄がくっ付くって、不思議ですもんね。洋の東西を問わず、そんな石、磁鉄鉱なんでしょうけれど、発見したら研究せずにはいられないでしょう。魔法の石ですよ。
日本はといえば、713年に近江の国から「慈石」が宮廷に献じられたという記述があるみたいですね。
「慈石」っていうのは既に中国で使われていた表現で、奈良時代には磁鉄鉱の存在が「慈石」という名前で日本でも知られていたってことなんでしょうね。
「慈石」がいつごろから「磁石」になったんでしょうかね。
地球自体も大きな磁石であるっていう発見もあって、羅針盤だとか、磁石は人間の生活に無くてはならない物になっていくんですね。
磁石の不思議さ、魅力に取りつかれた人はおそらく世界中に居て、人工磁石の研究、開発もどんどん発展していきます。
磁気と電気の不可分性を現実物とした「電磁石」が1825年、イギリスのウィリアム・スタージャンによって発明されます。
この19世紀の半ばまでは、磁石の世界に日本人の名前は特に大きく出てきてはいないみたいですが、20世紀になって1人の天才が現れます。
1870年、明治3年生まれの物理学者「本多光太郎」です。
本田光太郎は、「鉄の神様」「鉄鋼の父」と言われ、特許庁の「十大発明家」に「KS鋼」の発明者として掲載されています。
「KS鋼」は当時の軍の要請によって本多光太郎が1917年に発明した世界最強の永久磁石。
KSっていう名前は、多額の研究費を寄付してくれた住友吉左衛門という人のイニシャル。
なんやねん、そこまでかいな、っていう気がしないでもないんですが、住友財閥15代目の人です。
「KS鋼」の発明が成って、世界的評価を得たわけなんですが、その特許権を無償で住友吉左衛門に譲渡しているんだそうです。
本多光太郎っていう人は実験、研究以外のことには全く無頓着だったらしくって、着たら着たきり雀で、服装なんかは気に留めない。自分の結婚式が始まったのに、現れないので、身近な人が、はは~んって思って研究室に探しに行くと一心に実験をしていたっていうエピソードの持ち主。
実験ジッケンの日々の中でも、自分のもとで研究している人たちの面倒見の良かった人で、毎日「ど~だ~ん?」って声をかけて研究成果を確認、指導していたっていうエピソードもあります。
愛すべき偉大な発明家なんですが、1931年「KS鋼」は世界最強の座を追われます。
人工磁石の研究はどんどん進んでいるっていうことですね。
「KS鋼」を世界最強から追い落としたのは、「MK鋼」
新しく世界最強になった磁石「MK鋼」を発明したのは、なんと、またもや日本人。
1893年、明治26年生まれの「三島徳七」
冶金学者で、同じく特許庁の「十大発明家」に「MK磁石鋼」の発明者として掲載されています。
MKっていう名前は、これまた、なんやねんっていうネーミングなんですが、三島徳七は三島家の養子なんだそうで、元の苗字は「喜住(きすみ)」
で、三島、喜住のイニシャルでMK。このころ流行っていたんでしょうかねイニシャルのネーミング。
「MK鋼」が世界最強の磁石となった翌年の1931年、「KS鋼」の発明者、本多光太郎がノーベル物理学賞の候補にあがりましたが受賞はのがしました。
む~ん、残念、とか思ったらですね、1934年「新KS鋼」の開発に成功、本多光太郎は再度世界最強の名を手にしたんですね。凄い人ですね。「ど~だ~ん?」
で、その後も人工磁石の開発はどんどん進化し続けますが、1982年、「ネムジム磁石」が新たな世界最強に名乗りをあげました。
この「ネムジム磁石」を発明したのは工学博士の「佐川眞人(まさと)」
磁石のことなんてまるで知りませんでしたが、なかなか凄いですよ、日本人。
ネムジム磁石同士をくっ付けてしまったら、人間の力では外せないそうですよ。どエライ強さです。
強力な磁石は、これからの電気自動車には欠かせないものになるそうですし、電車やエレベータ、そしてハードディスクドライブ、スマートフォン、ヘッドフォンなんかにも、なくてはならないパーツなんだそうです。
浴室壁面にくっ付くマグネット式収納グッズどころの話じゃなかったんですね。
そういえばって、思ったんですが、ネムジムって書いてある以外の浴室用マグネットって、磁石部分が分かりやすく見えていて、ああ、マグネットね、っていう感じだったんですが、ネムジムって書いてあるのはプラスティックなのかゴムなのか、磁石部分が見えていませんでしたね。
で、くっ付き力が弱いように見えたんです。なんでわざわざ覆ったのかって考えますと、水場で使うからですよね。磁石に水がかかって錆が進む。
でも、くっ付き力が弱くなっちゃダメだよねえ、って思ったんですが、あれ、ネムジム、強いらしいです。世界最強のメイド・イン・ジャパンです。
日本が世界に誇る世界最強。ん~。今、他にないのかもですよ。
ネムジムってノーベル賞クラスの発明らしいんですね。コロナ明けの世界に一気に浸透して、2022年、あるいは2023年あたり、ネムジム磁石、佐川眞人さんがノーベル賞を受賞するかもです。
人工磁石って日本人の独壇場だったんですねえ。
全くの部外者ですが、へへへってニンマリしちゃいます。