< その名前と顔は誰もが知っているのに どんな人かはちっとも知らない そんな人? >
野球のことなんてルールすら知りません、っていう人でも日本人であれば「大谷翔平選手」の名前と顔は知っているんじゃないでしょうか。デコピンもね。
ロッサンジェルス「ダ」ジャース! での活躍が大いに期待されますですね。
大谷翔平選手は、ピッチングやバッティングばかりじゃなくって、その身の丈も文字通り頭抜けているスーパースターですが、スポーツ以外のどのジャンルでも、キャパシティ的に頭抜けている人って、いるですよねえ。
もちろんそんなにゴロゴロ、どこにでもいつでもいるってわけでもないでしょうけれど、歴史上のスーパースターっていう存在は、けっこうたくさんいます。
ま、現生人類に限ってみても20万年ぐらいは経過しているらしいですから、そりゃまあ、そこそこの数、おられたんでございましょうね。名もないスーパースターも含めて。
21世紀の四半世紀が過ぎ去ろうとしている今、スポーツ以外のスーパースターって、誰でしょ? いる?
いろんな面で凋落のスピードに加速がかかっている感じのする日本ですが、どうもね、世界的な資本主義の行き詰まりっていうこともけっこう前から言われ出していて、日本だけじゃなくって、地球人類の暮らし方っていうこと自体、変革期に入っているのかもなあ、とかね、柄にもなく地球規模の心配事をしてみたりなんかしているわけであります。
1968年生まれのイギリス人科学ジャーナリスト、クリストファー・ロイドは「137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史」の最終章の中でこんなことを言っています。
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世界はどこへ向かうのか?
「いつまた会おうか、3人で。雷鳴とどろき、稲妻ひかり、雨ふるときか?」
運命を占う3人の魔女は、煮え立つ大鍋の周りを回りながら呪文をつぶやき、未来を占う。
吹きさらしの荒涼とした原野を舞台として、シェイクスピアの「マクベス」は幕を開ける。
わたしたちの旅を終えるにあたり、マクベスの魔女たちに、3人の思想家の亡霊を過去から呼び戻してもらうことにしよう。
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3人の亡霊。なんだか穏やかじゃなさそうですけど、魔女に呼び戻させようとしている3人もまた、かつて、頭抜けた輝きを見せていた思想家、スーパースターであると、クリストファー・ロイドは判断しているんですね。
特に異論反論はありません。
その3人とは、
イギリスの経済学者「トマス・ロバート・マルサス(1766~1834)」
イギリスの自然科学者「チャールズ・ロバート・ダーウィン(1809~1882)」
ドイツの哲学者「カール・マルクス(1818~1883)」
マルサスっていう名前を知りませんでしたが、みなさんはどうでしょうか。
1798年に「人口論」を発表した人なんですね。人口論っていう本は、なんとなく聞いたことがあるような気がします。
「幾何級数的に増加する人口と算術級数的に増加する食糧の差により人口過剰、すなわち貧困が発生する。これは必然であり、社会制度の改良では回避され得ない」
18世紀の段階でこのままだと人口が増え過ぎる、っていうことを警戒していた理論なんですが、20世紀に入って人口は爆発的に増えて、21世紀の今は80億人目前ですもんね。
事実、食糧不足は次第に大きなニュースになって来ています。
3Dプリンターで「なんちゃってステーキ」は作れるようになっていますけれど、食糧問題の解決策っていうようなものにはならないでしょねえ。なんちゃってステーキの材料がないっていうのが現実ですからねえ。
食品廃棄を減らしましょうっていう国と、一日に一食も摂ることができない国と。
確かにね、社会制度の変革っていうのは実現されてきているんでしょうけれど、貧困っていう、ちっとも解決されない格差問題はどんどん大きく広がっている感じです。
じゃあ、どうすればいいのか。
マルサスが警鐘を鳴らしていた世界の破綻は、既に始まっているのかもですから、誰か、ホントに頭抜けた政治的リーダーが出て来ないと、人類、ヤバイのかもです。
ダーウィンは有名ですよね。
「種の起原」は1859年に発表されました。
「ある動物が他の動物よりも高等だと言うのは不合理だ」っていう言葉は、人間中心の考え方にけっこうシビアな反論を唱えているわけですが、現生人類が特殊な生物であることは事実だとして、その特殊性があるからこそ地球上で生きながらえること自体をあきらめざるを得ない方向に向かってはいないだろうかっていう心配を、魔女の口を借りてクリストファー・ロイドは言いたいんでしょうね。
ダーウィニズムっていう言葉は「適者生存」的な意味合いで使われることが多いですけど、地球上の生物種としてだけじゃなくって、マルサスの言っている貧困問題にしても、同じ人間同士での適者生存をごり押ししているように思えちゃう政治家もいますもんね。
人間中心主義ねえ。
われわれも安穏としていられない状況に、気付いていないだけなのかもです。
人類だって、やっぱりいつか滅びるんでしょうからねえ。
マルクスっていう名前もまた有名ですね。
経済業界のアカデミックな世界ではデフォルトになっているぐらいの名前なのかもしれません。
だいたいどこの大学でも、経済学部、経営学部って、ありますしね。
マルクスの「資本論」が発表されたのは1867年。19世紀半ばのことです。
「有史以来の人間社会は階級対立を通じて発展する。資本主義の下にあって階級対立は、生産手段を管理する支配階級のブルジョワジーと、賃金と引き換えに労働力を売る労働者階級のプロレタリアの間に現れる。以前のどの階級社会とも同様に、資本主義が内部崩壊を引き起こし、新しいシステムである社会主義へと変革される」
なんだそうでございまして、理想的とも考えられた科学社会主義、マルクス主義を標榜した社会主義国は、実際にいくつか登場して、20世紀中には一旦、失敗したかにも見えたんですが、資本主義を取り入れてウマクやって来ている国もありますよね。
今のところね。
それとは別に、資本主義主要国、G7とかいう枠組みにあんまり意味がなくなって、行き詰まり、息詰まりっていう感じが出てきていますもんね。21世紀の中盤辺りからは「新しいシステム」っていうのが、マルクス主義の新解釈みたいなもの、っていう形で出てくるのかもです。
3人が3人とも将来的に明るくなるようなことは言っていませんですね。
クリストファー・ロイドが呼び戻そうっていう企みが、そもそもマクベスの3人の魔女によってですからね、明るい方向に考えるのは難しい感じでしょかねえ。
頭抜けて頭のイイ人っていうのは、有史以来たくさんいらっしゃるでしょうけれど、21世紀初頭の段階として、誰でも知っていてわりと人気が高い人っていえば「アルベルト・アインシュタイン(1879~1955)」じゃないでしょうか。
アインシュタインは外せませんよね。
ドイツ生まれのユダヤ人理論物理学者で、日本びいきだったことも知られています。
頭抜けた天才だったことは世の中に異論にないところでしょう。
1905年っていいますからアインシュタインが26歳の時、重要な論文を立て続けに発表しています。
光っていうのは波であるだけじゃなくって、粒子の流れでもある。
光の粒1個1個を 光子(光量子) って呼ぶですよ、っていう「光量子仮説」
1827年にスコットランドの植物学者「ロバート・ブラウン(1773年~1858)」が発見した、液体、気体中の微粒子が不規則な動きをするっていう「ブラウン運動」について、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされているからって、その運動の謎を解き明かした「ブラウン運動の理論」を発表したのもこの1905年。
のちに実証されていますね。
そして「特殊相対性理論」の発表も1905年なんですね。
1907年「E=mc^2」
1916年「一般相対性理論」
ニュートン力学は人間の直感に馴染みやすいものだと思うんですけど、それだといろいろ不都合な問題がある、っていうんで相対性理論の登場なんですけどね、量子論もそうですけど、もう肌感覚で一般人が理解できるレベルじゃないです。
もちろん専門家にはデフォルトになっているような人間の知恵なんでしょうけれどね。
カーナビにも使われている相対性理論です。
アインシュタインが日本ばかりじゃなくって世界中でよく知られているだろう理由は、なんといっても、例の「あっかんべえ写真」でしょねえ。
1951年、72歳の誕生日の時の写真なんだそうですね。
普段はシカメッツラで、めったに笑うことのなかったアインシュタインが通信社の車の乗って移動中、カメラマンに「笑ってください」ってリクエストされたのに応えたのが、あっかんべえだったそうです。
ふざけ過ぎだ。博士に相応しくない対応だ。
新聞に発表されると、さまざまな批判にさらされたそうですが、アインシュタイン自身は写真の出来が大いに気に入ったそうで、通信社に焼き増ししてもらって友人たちに配ったっていうエピソードも知られています。
なんと切手にもなっているこの写真は、1951年度、ニューヨーク新聞写真家賞グランプリを受賞しているんだそうです。
世界中に拡散して、相対性理論の正体は理解できないにしても、誰でもこの「あっかんべえ写真」は見知っているでしょうね。
あっかんべえ写真の30年ほど前、中年のアインシュタインは日本を訪れています。
1922年11月17日から12月29日までの43日間。
日本人の応接ぶりが気に入ったらしくって、大の日本びいきとして有名になりましたけれど、講演の合間の観光中に、人力車に乗ることを勧められて、断固として拒否したっていう逸話が遺されています。
その名の通り、人力で大きな車を引っ張って人を運ぶわけですから、アインシュタインからしてみれば文明国であるはずの日本で、なんと非人道的なことか、これは馬の代わり、奴隷労働じゃないのか、っていう意思表示だったんでしょうね。
1922年は、大正11年です。
その頃の道路事情とか車輪の性能とか、今とはずいぶん違うんでしょうけれど、21世紀の浅草には女性の車夫さんもいて、インバウンド景気に一役買っているらしいですね。
車夫のユニフォーム。今だと海外の人にとってもイナセな感じに捉えられるような気もしますが、大正時代の日本は、まだ着物姿の人も多かったでしょうしねえ、ユニフォーム、っていうふうには思えなくって、アインシュタインは差別っていうふうに感じたのかもです。
物理、科学のことばっかりじゃなくって、生活意識全般に対してしっかりアンテナを張っていたってことでしょうね。専門莫迦じゃなかったアインシュタインさん。
そして、いつどこでのインタビューに答えたものなのかハッキリしない、って言いますか、ホントにアインシュタインがそう言ったのかって疑問を呈されている言葉ではあるんですが、
「もし地球上からミツハチが消えたなら、人類は4年しか生きることができないだろう」
っていうのがあります。
物理についてのインタビューっていう短い時間の中でアインシュタインが自発的にミツバチの話を始めるとも思えませんし、どういう話の流れでこの言葉が出てきたんでしょうね。
今ではミツバチが突然いなくなったニュースがあったりしますけれど、かなり前からミツバチの減少が心配されていて、もしいなくなったら大変だよ、っていうことが話題になっていたのか、あるいは、人類の未来はどうなるでしょう、人類は永遠に生きながらえるんでしょうか、とかいった方面の質問に対する答えだったんでしょうか。
地球上のあらゆる生命に対する化学薬品の弊害を訴えたレイチェル・カーソン(1907~1964)の「沈黙の春(Silent Spring)」は1962年ですから、アインシュタインはもういませんですね。
でもまあ、地球の自然、生命の在り方を書いた「海辺(The Edge of the Sea)」は1951年ですから、この本は話題に上がる可能性はありそうです。
沈黙の春の前作にあたるレイチェル・カーソンのベストセラー。
アインシュタインが読んでいた可能性は高いと思います。
もう1つ、アインシュタインのマルチっぷりを示す、日本人に関連した逸話があります。
1930年11月26日午前4時に発生した北伊豆地震。270人もの犠牲者を出したこの地震発生を予知して、前日に
「アスアサ、ヨジ、イヅニテ、ジシンアリ」
っていう電報を石野又吉京都帝国大学理学部長宛てに打ったことで知られている一般の地震研究家「椋平広吉(むくひらひろきち)(1903~1992)」
市井の研究家が石野博士に予知電報を打ったのはなぜかっていうとですね、石野博士が前年の1929年に避暑で訪れていた天橋立で偶然出会っていて、天橋立のある宮津湾にかかる「虹」から地震が予知できるようになったって主張する椋平に、
「もし地震が予知出来たら京大に電報を打ちたまえよ。はっはっは」
って言った経緯があるそうなんですね。
石野博士じゃなくたって、そんなバカなって思いますでしょうからねえ。はっはっは、です。
その後もいくつも的中させている地震予知。世界が驚きますよね。
1930年12月10日、椋平広吉宛てに手紙が届きます。
「親愛なる日本の科学者ムクヒラ君。
貴君が今回、日本に起こった大地震を前日に予知し、京都大学理学部部長石野教授に報ぜし偉大なるニュースを知り、遙かに敬意を表します。
地震が起こる前に知ることは世界的な学問であり、人類のためにきわめて重大な問題であります。貴君によって、この学説が世界に発表されたことは誠に喜ばしいことです。
一層の研究を続けられんことを御祈りし、重ねて健康を望んでいます。
情報取得のアンテナもそうですが、アクションの速さにも驚かされます。
アインシュタインより24歳年下の椋平広吉ですが、宮津湾の「虹」っていうのは彼にしか見えないもの、なんだそうで、学術的な研究を進めるチカラにはならなかったみたいです。
椋平広吉の地震予知をイカサマとみるのか、特殊能力とするのか。
天才っていうのもある意味、特殊能力だと考えると、天才同士で何かひらめくものがあったのかもしれないなあ、とか思っちゃいますけどねえ。
それにしてもアインシュタインさん、八面六臂の活躍だった人なんですね。
4月18日が命日だそうです。
今、一般人にもハッキリ認識できるようなスーパースター。大谷翔平選手の他は?