< 「特選やまなしの食47食」の中に「ラーほー」は入っていませんですよ まだね >
え~、毎度のお運び、誠にありがたく存じます。
大いに御礼申し上げますとともに、最後までのお付き合いをよろしくお願い申しあげておきますが。
今回はなんでしてね、山梨県は笛吹市のオハナシから始めさせていた来ます。
聞いたこと、行ったことのある人ってのもけっこういらっしゃるかと。
県の真ん中あたりに位置しておりますね、山梨県の笛吹市ってえトコは、たいへん結構なトコなんだそうでございましてね、昔っからそういうことになっております。いやホントに。
昔ばなしってことになりますれば、はい、みなさんご存じ、国民的テーマソングから始まります。
♪坊や~いい子だ 寝んねしな
♪今もむかしも かわりなく~
♪は~はの恵みの子守歌
♪遠いむかしの も~の~がたり~い~い~
昔むかし、鎌倉時代ごろのお話じゃあ。
今の山梨県の北の外れ近くに芹沢の里というところがあってなあ、そこは埼玉県、群馬県、長野県との県境辺りで、たいそうな山の奥だったそうな。
そこに権三郎という男の子と母親が倹しく暮らしておったんじゃ。
権三郎はたいへんな笛の名手でな、母親が山の中の暮らしにめげることなく過ごせていたのは、その息子の奏でる笛の音に癒されていたからじゃったろうなあ。
里の者らもみ~んな、権三郎の笛の音に聞きほれておったもんじゃった。
なんでも母子は鎌倉幕府から追われて身を隠している権三郎の父を探して芹沢の里に住み着くようになったそうな。
静かに暮らしのある年の秋に、雨が長く続いて里を流れる子酉川(ねとりがわ)が氾濫してしもうた。
川の近くに小屋掛けしておった母子は、あれよあれよというまに濁流に流されてしもうてな、権三郎はそれでも男の子じゃ。なんとか岸辺に這い上がったんじゃが、母親の方は行方知れずになってしもうたんじゃ。
濁流に流されても肌身離さずに持っておった篠笛で母の好きだった調べを奏でながら、権三郎は子酉川に沿って来る日も来る日も母を探し歩いておったそうな。
里の人々はみな、権三郎の笛の音を聞きながら気の毒なことじゃと涙を浮かべておったもんじゃったが、その権三郎の母を探す笛の音も数日のうちに聞こえなくなったしもうた。
可哀想に、まだ子どもの権三郎は子酉川をだいぶ下った、今の春日居町の辺りで水死体となって見つかったんじゃ。
里の人たちは悲しまぬ者とてなく、野ざらしになっていた権三郎をきちんと葬ってやったそうな。
里人たちだけの葬儀を済ませたその夜から、どこからともなく権三郎の奏でる笛の音が子酉川の川音とともに聞こえてくる。
それが夜な夜な続いて里人たちを怖がらせておったそうな。
相談を受けた春日居町の長慶寺のお坊さんが、権三郎たち母子の話を聞いて、丁寧にお経をあげて葬ってあげたそうな。
その夜から権三郎の笛の音は聞こえなくなったそうじゃ。
この話を聞いた子酉川沿いに暮らす人たちは、しだいに子酉川を笛吹川と呼びならわすようになって、今は市の名前になっておるというわけなんじゃ。
今でも権三郎は笛吹不動尊として奉られておるんじゃよ。
どんとはれ!
って、これは違う地方の昔語りの終わりの合図でしたね。
2004年、石和町、御坂町、一宮町、八代町、境川村、春日居町の6町村合併に際して市の名前を公募した結果「笛吹市(ふえふきし)」に決まったそうなんですよね。
いつの頃からか笛吹川の名前がすっかり定着していて、川の周辺の町が合弁するにあたって、笛吹の名前は地元の人たちのアイデンティティになっていたっていうことが言えるのかもです。
ところで「笛吹」っていう表記をする名字ってありますけど、「ふえふき」さんじゃなくって「うすい」さんですよね。笛吹っていう字をうすいって発音するのって、馴染みませんです。なんか謂れがありそうですよね。
いくつか説があるみたいです。
古代の横笛にあたる楽器が「竽吹(うすい)」っていう名前で、楽器として横笛が登場してきて表記も笛吹に代わったんだけれども、読みとしての「うすい」が残っていて、笛吹って書いて「うすい」って読むようになった、っていう説。
碓氷峠は強い風が吹くことで知られていて、その風の吹く音がまるで笛の音のように聞こえるっていうことから「笛吹の碓氷峠」って呼びならわされているんだそうで、このことから「笛吹(ふえふき)」を「碓井(うすい)」って呼ぶようになった、っていう説。
ふううん、ってなもんですけど、なんにしても、何かしらの謂れがなければ「笛吹」は「うすい」って読めませんよね。
で、山梨県の市の名前は「笛吹市(ふえふきし)」であります。権三郎くんがいますからね。
甲府盆地にあるんですけど、桃とぶどうの収穫量が日本一の自治体なんでありますよ。笛吹市ね。
「桃・ぶどう日本一の郷」「日本一桃源郷」を宣言しています。
2018年には「笛吹市地域おこし協力隊」が開発した純国産の「ふえふきマスタード」っていうのを発表していますねえ。
なんか名物が欲しいよねっていう、なかなかに地元愛の強い笛吹市なんであります。
たまに地方に行きますと、たいていどこの街でも地元の人が、ここには何もないからねえ、ってなことをおっしゃるんですけど、地元の人にとっては当たり前に存在しているものがけっこう珍しかったり貴重だったりするっていうこともよくある話で、そうであるからこそ旅の面白さっていうのもあるってことでしょうけどねえ。
この2018年には笛吹市の新しいご当地グルメとして「ラーほー」なるものも登場しているんですよ。
ラーほー??? なんやねん、ってことなんですけど、
「ラーメン」のように気軽に食べられる「ほうとう」がコンセプトだそう。
「ラーほー」ねえって思っちゃいますけど、なるほど山梨県の郷土料理として「ほうとう」は知られています。
農林水産省の「うちの郷土料理」でも山梨県の郷土料理としてほうとうがピックアップされています。
小麦粉を練って平たく切った「ほうとう麺」を、たっぷりの具材と一緒にみそ仕立てで煮込んだ料理ですよね。
稲作に適さなかった山梨県の地の名物として昔から県内全域で食べられてきたものだそうです。
中国が発祥らしい「ほうとう」なんですけど、枕草子の中にも「はうたうまいらせむ」って登場しているんだそうですね。「はうたう」っていうのが「ほうとう」で、ほうとうを差し上げましょう、ってことですね。
平安時代には都でも食べられていた「ほうとう」みたいなんですけど、21世紀の現代では、どこにでもあるって感じじゃなくって、やっぱり山梨県一帯って感じでしょうかね。
ツーリングで石和温泉近辺へ出かけたときに、本家、地元の「かぼちゃのほうとう」を食べたことがあります。
他の土地でも食べたことはあったんですが、さすが本場。石和のほうとうはめっちゃ旨かったです。
アタマのてっぺんから足指の先までホッカホカに温まります。
麺料理っていう感じより、ホントに具だくさんで、麺も入ってるよ、ってな感じの食べもの、でしょかねえ。
熱々が旨いですよねえ。
「ほうとう」っていう名前は、宝刀から来ているっていう説があります。
それは武田信玄が陣中で宝刀を使って麺を切ったからあ~!
まあね、いろんなものにいろんな説があるんでありますよね。
山梨産のかぼちゃが入っていなければ正式なほうとうじゃないでしょ。とかこだわる人もいないではないんでしょうけれど、もっとほうとうをみんなに食べて欲しい、っていうことで考え出された、って言いますか「発明」されたのが「ラーほー」っていうことなわけです。
笛吹市の市長さんの「名物を作りたい」っていう発案から出来たっていうことですんで、笛吹市の新名物。
ほうとう麺とラーメンスープを使うこと、っていう決まりごとがあるようなナイような感じみたいで、提供しているお店ごとのバリエーションがあるんだそうですよ。「ラーほー」
今回初めて知った「ラーほー」なんですけど、意外って言っては失礼なのかもですけど、なかなか評判らしいです。
なにせセブンの商品にもなって、山梨県内で売られているみたいですからね。
売れ行きが良ければ全国進出してくるかもです。
「笛吹新名物ラーほー 肉煮干し醤油」
560円(税込604.80円)
でもって2023年に、なんと登場5周年を記念して「ラーほーの日」っていうのが制定されちゃってますよ。
栄えある「ラーほーの日」は毎年11月21日。
なんで11月21日。ちょっとね、語呂合わせでもなさそう。
最初に「ラーほー」を思いついた日が11月21日だから? それとも初めて食べてみた日がそうだから?
両方とも違うんですよねえ。
なぜ11月21日が「ラーほーの日」なのか、その理由がまた、らあほお! です。
山梨県ですからね、昔から「ほうとうの日」っていうのがあって、それは4月10日。
でもって、全国区で「ラーメンの日」っていうのもあって、それは7月11日。
なので「ラーほー」なんだから、両方の日付を足しちゃった。それが11月21日。
そゆことです。はい。合ってますでしょ、計算ね。
今度、中央線に乗って山梨県に行って「ラーほー」食べてこようと思います。
「ふえふき観光ナビ」の「ラーほー」っていうページで提供店を紹介しています。
やっぱり寒い時期にチャレンジするのがイイでしょねえ。
まず「ラーほー」いってみて、「かぼちゃのほうとう」もいきたいですう。
ところで笛吹市、「ラーほー」でオーバーツーリズムを狙ってる? ん?
おあとがよろしいようで。