< 住宅街を歩いて角を曲がれば そこには必ず調剤薬局と美容院があるような気がします >
いつのまにか、理容院じゃなくって美容院へ行く男ってうのも増えてきているんですよね。
そういう話をカウンターで聞かされました。
その居酒屋さんでは誰からも「サンシくん」って呼ばれている三枝(さえぐさ)くんは、失礼ながら特にオシャレなヤツっていう印象の無いミソジ男。
中肉中背、美男子でもブ男でもなく、フツーの人です。見た目だけの話ですけどね。普通。
土曜日の晩でした。カウンター席で隣り合いました。
ま、時々そうなります。
カウンター族はだいたい独り呑みですからね、顔馴染みも何人か出来てきますし、隣り合えばバカ話もしますよね。
その時はバカ話ってわけでもなかったんですけど。
「いやあ、あしたの朝、ボク、早いんですよ」
サンシくん、なんなのそれ。シンドイ自慢? 若いうちからそんなんじゃ、病気自慢のウザイジジイになっちゃいますよ。
いや、口には出しませんですよ。はい。
「今まで髪を切ってもらってた美容師さんが自分で店を出して、山梨に移っちゃったんで、そこまで2時間半かけて行って来るんですよ。その人じゃないとダメなんですよ、ボク」
ふむ。そなんですか。
髪を切るために美容院ですか。ま、早く帰って寝た方がイイでしょねえ。
髪型とか、ホントどうでもエエやんけっていうタイプのオヤジからしてみますと、往復5時間もかけて髪を切りに行くっていうのは信じがたい行動ですよ。
そこまでこだわりますか。
バカじゃないの! いえ、言いません。口には出しませんです。はい。
「放っておくと、ヒツジみたいになっちゃうんですよね、くせっ毛で」
ふううん。
サンシくんには申し訳ないんですけど、美容の話とか興味の範囲外なんで、さっぱり盛り上がりませんです。
ヒツジねえ。。。って全然別のことを思い浮かべておりました。
前にヒツジがニュースになったことがありましたね。
行方不明になっていた一匹オオカミ、ならぬ一匹ヒツジが、何年ぶりかで見つかったら、毛が伸び過ぎちゃって歩くのがやっとの状態だった、っていう。
ヒツジの話。
帰ってから調べてみました。
2014年、オーストラリア。迷子になっていたヒツジのショーンくん。6年ぶりに発見。
刈り取られた毛の量は27キログラム。
2015年、同じくオーストラリア。どこの牧場からはぐれてしまったのか不明なヒツジくん。
何年放浪していたものか、刈り取られた毛の量は、なんと42.5キログラム。
2020年、またしてもオーストラリア。群れからはぐれちゃうヒツジって、なにもオーアウトラリアにかぎったことじゃないんだろうって思いますけど、ニュースになっているのは圧倒的にオーストラリアってことなんでしょうかね。
その2020年の一匹ヒツジは、7年ぶりに見つかったプリックルスくん。
刈り取られた毛の量は13.6キログラム。
個体によって毛の伸び方に、かなりの差があるみたいですねえ。
ずっと42キログラムも背負っていなきゃいけないって、そりゃタイヘンですよね。
でも、野生のヒツジってみんなそうなんでしょか。生きていくの、タイヘンでしょねえ。野生のヒツジ。
って思ったら、今、普通に目にすることの出来るヒツジさんたちは、みんな毛を刈り取るために、自然に毛が生え変わらないように品種改良されたんだそうで、もし野生のままのヒツジがいるとすると、そのヒツジは季節になれば毛が抜けて生え変わるんで、そんな重たい毛を背負って歩かなければならない状態にはならないんだそうです。
そりゃそうでしょねえ。
毛が抜けずに伸び続けたら悲劇ですよねえ。野生では生きていけないことになっちゃいそうです。
ってね、ここまで考えたらですよ、我々、人間って、髪の毛伸び続けますよね。
そういえば、イヌとかネコも、生え変わりますね。
季節になるとブラッシングして生え変わりを手伝っている飼い主さん、見かけます。
イヌは喜んでいるか、しょーもなって思っているのかジッとしてますけど、ネコの方は、なにすんねん! って感じでジタバタ逃げ回ってますよ。
ま、個体によるんでしょうけどね。
髪の毛が伸び続ける動物って、人間だけなんでしょうか。他にはいない?
頭髪の話にはなるべく関わりたくないです、っておっしゃるトノガタも少なくないんですけど、そういうこととは全く別の問題で、けっこう不思議なことなんじゃないでしょうか。
今まで考えたこともないんですけど、古代の人間って、髪の毛、どうしてたんでしょう。
男も女も、みんなズルズル引きずって歩いていたんでしょうか。
爪は伸びたら歯で嚙み切るってことも出来そうですけど、髪の毛は?
青銅器時代、紀元前3500年頃の剃刀っていうのが発見されているらしいんで、金属の道具を使うようになってからは、剃ったり、束ねて切ったりしていたんでしょうね。
剃刀っていう道具が青銅の剣から発想されたものなのか、石器時代から剃刀の役割をしていた石器があったのか。
その辺りの研究っていうのもあるんでしょうけど、ちょっと調べきれませんでした。
そういえば、エジプトのピラミッドを造っている絵の中の人たちって、アタマ、剃ってますよね。
王様のアタマも兜をかぶっているように描かれています。クレオパトラもそうですね。
もしかすると、古代の人たちは男女ともに、アタマを剃るのが普通だったんでしょうか。
ヨーロッパのカツラをかぶる習慣っていうのも、そういうアタマを剃っていた頃の名残り?
ん~。分かりませんねえ。
石器時代は平べったく割れた石で剃ってた?
古代人、アタマ血だらけ! ってことだったんでしょうか。
青銅器時代っていいますと、紀元前3000年から紀元前2000年ごろ。
紀元前1000年ごろのものだってされているハサミがギリシアで見つかっているんだそうです。
ハサミが発明されれば、もう剃らなくたってよくなったかもですよね。
このハサミはギリシア型っていうんだそうで、日本で言う「和鋏」の形状。
X字型じゃなくって、U字型ですね。
日本にギリシア型のハサミガ伝わって来たのは中国経由だろうっていわれいますが、古墳から見つかっているんだそうです。
その古墳から見つかっているギリシア型のハサミは、ギリシアから中国に伝わって来ていたものなのか、中国で独自に発明されたものなのか、どうなんでしょうね。
古代の中国。ハサミを独自に発明するってぐらい、充分に考えられそうに思います。
鶴岡八幡宮には、北条政子が髪の毛を切るのに使っていたっていうギリシア型のハサミが保存されているそうですよ。
お金持ちはハサミで髪の毛を切っていたとして、一般の人たちはどうしてたんでしょうね。
今でも和裁では普通に使われているらしいギリシア型のハサミ。
和鋏って呼ばれていました。昔はよく見かけましたけど、今はプロの道具ってことなのかもです。
今、普通に文房具屋さんで買えるようなハサミは、ローマ型って言うんだそうです。
ローマ型のハサミは紀元前27年から始まった帝政ローマ時代のものが見つかっているんだそうですから、ギリシア型からはずいぶん遅れて発明されたものなんですね。
「和鋏」に対して「洋鋏」っていって区別されることもありました。
正倉院にローマ型のハサミガ保存されているってことで、伝わり方の速さはシルクロードの賜物ってことなんでしょうかね。
独自のちょんまげ文化を持っている日本ですが、真ん中は剃っていたにしても、「落ち武者」って言われる髪型が、映画なんかで見るものがホントだとすれば、ある程度の長さで切りそろえていたんだろうなって感じですから、平安時代には既に髪を切るっていう習慣が普通にあったんでしょうね。
でも女性の髪はけっこう長く描かれていますねえ。
髪の毛ってある程度の長さまで伸びると、それ以上は伸びにくくなるんでしょうか。
女性はくしけずって、男性は剃って切りそろえる、っていう髪の毛事情。
男性の場合は抜いてたっていう話もあります。ずいぶん痛い思いをして整えていたんですかねえ。
「髪結い」から「床屋」になって、「理容室」
「理容室」から「美容室」が分離したっていう流れみたいですね。
法律的な定義で言いますと、
「理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えることをいう」
「美容とは、パーマネントウェーブ、結髪(けっぱつ)、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう」
っていうことなんだそうでして、そっかあ、往復5時間かけて山梨の美容院に行くサンシくんは、美しくなりたいんですねえ。
そでしたかあ。気を付けて行ってらっしゃいませ~。
店っていうより、その美容師さんが目当てなんでしょうけど、その人が男なのか女なのか、聞き洩らしましたねえ。
世界一有名な髪切り職人って言えば、フィガロでしょねえ。
セビリアの理髪師。
でも、理髪師っていうタイトルなんですけど、フィガロって「何でも屋」って名乗ってますけどね。
床屋さんっていうのは、そういう仕事から始まったんでしょうか。
今はね、道具だとか、薬品だとか、いろいろ進化して、みなさん「美しく」なっておられますねえ。
よろしいことかと考え居りますです。
美容室なんて入ったことないですけどねえ。