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【麻婆春雨】永谷園の【ぶらぶら社員】が作り出した日本発の中華料理

<ええ~っ! でも四川料理の螞蟻上樹っていうのがあんじゃん! の巻き>

1981年にインスタント食品として永谷園から発売されたのが「麻婆春雨」ですからね、日本発であることは間違いないとしても「中華風総菜の素」ってところが妥当な評価でしょう。中華料理って言ってイイのかどうか。


真似したとか、パクリじゃんとか、眉根を寄せるようなことじゃないと思いますね。
もう40年も経っている「日本発」の中華っぽい人気商品です。


永谷園って「お茶づけ海苔」「あさげ」「ゆうげ」「ひるげ」だけでも、ずっと前からどこの家の食卓にものぼっているインスタント食品メーカーとして定着していますよね。「松茸の味お吸いもの」もあります。

 

 

 


で、話はちょっとズレるんですが、永谷園といえばってことで、気になっていることが1つ。


20数年前。仕事の関係で日光街道国道4号線を車で走るということを定期的に繰り返していた時期がありました。2か月に1回ほどのペースでしたね。


埼玉県の越谷市辺りで、ある日気が付いた見覚えのあるカラーリングの建物。


歌舞伎の定式幕(じょうしきまく)の、黒、オレンジ、緑の縦じま模様です。景色として違和感を感じるほどの目立ち方でした。あの色合いは「悪目立ち」な感じがします。
駅の近くですし、劇場なのかな、ぐらいの認識でいました。歌舞伎好きの町長さんが居たりとか。


関東近辺以外の方々にはシチュエーションが分かりにくいかもしれませんが、越谷市っていうのは「草加せんべい」で知られる埼玉県草加市国道4号線で少し北上した辺りの地域です。


新宿から日本橋経由で国道4号線をまわりますと混みますので、環状7号線経由で入っていました。
越谷市は東京の通勤圏ではありますが、集客する劇場を新設するってことになると、ちょっと疑問を感じてはいました。悪目立ちの定式幕。


ある日、早い午後に通りかかりますと、越谷近辺としては4号線が珍しく渋滞で、車がなかなか進みません。
で、じっくりその定式幕の方に目をやってみますと、「和食処 永谷園」と書いてあったのでした。
なんと、あの永谷園ファミリーレストランだったんですね。


ほほう、ファミレスでお茶漬けってことなんですね。とは思いましたが、車で走るコースは「和食処 永谷園」のある反対側の車線なので、入りそびれていました。帰りは別ルートを通っていましたからね。


「和食処 永谷園」って名乗っているので、お茶漬け以外にもメニューはあるんだろうなあと思いながら、やがて月日は流れ、っていっても2年も経っていなかったと記憶しているんですが、定式幕は消えていました。
あれ? 無いなあ。見えなくなると急に寂しい悪目立ち。


そもそもいつごろ出来たのかがハッキリしませんが、ずいぶん短い期間での撤退だったように思います。


で、その「和食処 永谷園」の話をしても知っている人が全然いない状況だったんですね。
でも確かにあったはずです。


♪幻なのか夢なのか 時の流れは続くのか♪ あの日の【コビトラーメン】に続いて、まぼろしの店舗ってことではないと思うんですがね。ネットにはちらほら情報もありますしね。


でも、入ったことないんですね。


ま、永谷園もいろんなビジネスにチャレンジしているってことなんでしょうけれどね。

 

引き際も肝心ってことも理解できます。でもって、体験できなくて残念だった「和食処 永谷園」なのでした。

 

 

 


その永谷園なんですが、調べてみますと創業者の永谷嘉男(ながたによしお)さんが、1953年に設立しているんですね。


戦争から東京に帰って来て、実家の製茶業の再建を荷って、早速「江戸風味お茶づけ海苔」を開発。1952年に発売開始。大ヒット! で、1953年に永谷園の設立です。


1964年「松茸の味お吸いもの」
1967年「赤だしみそ汁」「お好み焼
1970年「さけ茶づけ」
1972年「梅干茶づけ」
1974年「あさげ」
1975年「ゆうげ」
1976年「ひるげ」


70年代は続けざまにヒット商品を出していますね。凄いです。


で、さらに驚くのは、この永谷園、永谷嘉男さんが設立する前は製茶業をしていたわけですが、そもそもは日本全国に現在の製茶法を広めたとされる永谷宗円という京都、宇治の人が江戸で起こした商売が始まりだということです。


17世紀から18世紀の人です。どえりゃー老舗です。永谷嘉男さんは10代目ってことになるらしいですよ。
ものづくりっていうのは、やっぱり、なにか血のなせる業みたいなところがあるんでしょうかね。


永谷宗円さんという人もかなりのやり手だったんでしょうけれど、10代目の永谷嘉男さんっていう人もなかなかで、「麻婆春雨」誕生秘話がメッチャユニークです。


「あさげ」「ひるげ」「ゆうげ」のヒットを出して順風満帆と思われる1979年、永谷嘉男社長が、新商品の開発のために造りだしたというのが、全くユニーク過ぎる「ぶらぶら社員制度」


「2年間で成果を出すこと」「出社の要無し」「経費無制限」


そういう制度。自主決裁権を持たされた遊撃隊。でも隊長1人だけの一匹ひつじ。ひつじかよ!


で、このぶらぶら社員に任命されたのが、当時、開発企画室長だった能登原隆史さん。
この能登原隆史さんが日本全国、世界各国を回って、2年目、1981年に出した企画が「麻婆春雨」なんだそうです。

 

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2年間という期限をまるまる使って結果を出すあたり、能登原隆史さん、ナイスです。さすが一匹ひつじです。


「麻婆春雨」のアイディアの発端は中華スープだったらしんですが、なんかね、その辺りのホントのアイディアの素みたいなものは「企業秘密」ってことでしょうね。


「麻婆春雨」はあっという間にヒットしました。へええ、春雨ってこういう食べ方があるんだなあと思った記憶があります。今でも大好きですね。ドメスティック・ビッグ・ヒット・マーボです。


ケンミン食品の「麻婆ビーフン」パッケージの類似問題で、永谷園が販売差し止め裁判を起こしたりと、別の方面での話題も賑やかでした。裁判は1997年に和解しているようです。


町中華や居酒屋さんでのメニューにもありますね。「麻婆春雨」


ですが、店で出てくる「麻婆春雨」はホントに麻婆なんですよね。麻婆春雨なんだから麻婆でイイじゃん。ってことではあるんですが、なんかね、永谷園の麻婆春雨はちと違うんですよね。「企業秘密」の部分が旨いんだと思います。豆腐の代わり、茄子の代わりの春雨じゃないってことなんですよね、きっと。


で、ですね。一緒じゃんっていう意見もある四川料理の「螞蟻上樹(マーイーシャンシュー)」
これは赤坂の中華屋さんで食べたことがあります。4、5回。


最初メニューを見たときはウッソー! ってヒキましたね。蟻っていう字がありますよ。食べものなのに。


螞蟻っていうのはアリそのものらしいです。マーイーって発音みたいですが、マー良くないです。


アリとかわざわざ食べなくたってイイですって思ったら、春雨にくっ付いたひき肉をマーイーと言っているだけのことでアリさんは関係ないのでした。


辛味は豆板醤がダイレクトで、とろみはないんですね。真っ赤です。
春雨をもどして炒めたものということでは同じですが、ま、違う食べものって思っています。
「螞蟻上樹」と「麻婆春雨」


でもまあ、こういうのって、料理としての違いっていうより、店による違いの方が大きいんじゃないでしょうかね。


永谷園の「麻婆春雨」がヒットしたっていうのも、味だとか料理の種類だとかいうことに加えて、案外、最も大事だったのはそのネーミングなんじゃないかって気もするんですね。
商品名ってすごく大事だと思います。


樹の上のアリ、なんかより、春の雨です。春雨は日本人の食卓に馴染んでいますからね。そして麻婆というのも市民権を得てきたタイミングでの「麻婆春雨」
あっさりヒットしてすんなり受け入れらるのは分かるような気がします。


麻婆豆腐だって、そんなに昔から一般的じゃなかったですからね。


春の雨というネーミングはもちろん日本独自のものですが、春雨そのものは中国から伝わって来た食べもので、中国語では「粉条(フェンティアオ)」「粉絲(フェンスー)」というらしいです。


さすが、ダイレクトなネーミングです。「螞蟻上樹」っていうのも中国的にはシャレオツな感覚なのかもしれないですけれどね。やっぱり春雨がイイです。風情があります。


粉絲の「絲」って、青椒肉絲(チンジャオロース)の「絲」ですね。粉を細くしたものですよオって、分かりやすいんだけれど、ね、やっぱり春の雨に軍配が上がりますよね。


ちなみに「ぶらぶら社員制度」って、麻婆春雨が大成功したもんだから、いろんな会社も試してみたそうです。
ですが、1社も成功していません。成果無し。


なんと永谷園も後年、ぶらぶら社員制度リバイバルをやったことがあるらしいですが、半年で撤収! だったということです。
目的を持ったぶらぶらって、やっぱりね、チョー難しそうです。


簡単に出来るのは目的もなあんもない、ただのぶらぶらです。はい。

 

 

 


にしても、どこの会社も「新商品」が欲しいんですね。そりゃそうでしょうけれど、ぶらぶらして成果を出すのって、かなり特殊な才能ですよね。

 

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