ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

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【後ろに柱 前に酒】という先人のあーだこーだに どーのこーのとクダをまく

<楽しみは 後ろに柱 前に酒 左右に女 懐に金>

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狂歌ってやつですね。誰の作なのかは不明みたいです。


でもネット上では蜀山人の作、と明言している人もいます。さらには「後ろに柱 前に酒」という部分だけを取り出して、ことわざ、としてあるページもありますね。


狂歌として扱っているのも、部分的に抜き出してあるものも、共通しているのは、お気楽極楽な気分を表している、と解説していることです。


そかな? と思うのであります。


「楽しみは 後ろに柱 前に酒 左右に女 懐に金」
これってお気楽気分でニコニコ詠んでいると捉えるよりもですね、
現状に対して特に大きな不満があるわけじゃないんだけれど、はああ、オレはこんな風な人生なんだなあ、という客観のタメ息なのではないかと思うんですね。


何かまとまった仕事の一区切り。ああ、やれやれ。さて、今夜は一杯やりますかねえ。
この狂歌の舞台を想定してみますと、独りですね。静かです。日本家屋でしょう。


まだ暮れ残る初秋の夕方。小さな庭に面した縁側に、もう若くはないなあと自覚し始めた男が、台所から酒ビンぶら下げてやってきます。裸足が似合いそうな気がします。
心地好い疲労感。鼻で静かに深呼吸。


見るべきものがあるわけもない庭の眺めに慰められるものが、ないでもない。特別な手入れをして、造る、なんてことをしなくたって、植物は勝手に育つ。元気に生きている。それでイイんじゃないか。自分と同じだ。

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酒は贅沢品ってわけじゃないけれど、お気に入りの清酒、一升ビン。これがなによりの楽しみ。酒が呑める体質で良かった好かった。


コップなのか湯呑み茶碗なのか、縁側に置いて、酒は口開け、アテはとりあえずナシ。


一口二口やって、ふうっ。
背中を部屋側の柱にずっしりとあずけますね。後ろに柱、前に酒、です。

 


酒呑みはこの段階でとっても満足。自分だけの世界。ンまい酒さえあればこの世は極楽です。ンまいねえ、酒ってのは。
とか、ニンマリしながら静かに呑みます。
夜っていうのが味方します。独りっていうのがノンストレス。


三杯も呑んだあたりで人心地がついて、なんかつまもうかな。ん~、動くの面倒だし、まだいっか。
なにせ背中は柱に落ち着いちゃってますからね。動きたくない。家の柱の接着力。
でれ~、とし始めますね。
独りだし、誰に気を遣うでもなし。


まあ考えてみりゃ、と、遠くを見る目になってきますよ、だんだんね。日もすっかり落ちて暗くなってます。夜です。
オレもきょうまで、なんとかやってきたよ。


贅沢はできないけど、こうして好きな酒も呑めるし、借家だけれど雨風凌げるヤサもある。
とりたてて不満ってわけじゃないけどさ、不満じゃないんだけど、女には縁がなかったかなあ。


まあ、モテた時期もあったような気がするけど、今は、こんな感じだなあ。


口開けだった一升ビンも三割がた、なくなるころですね。


たまにはこう、脇から酌してくれたりとか、一緒にウダウダ呑めるような女が、欲しかった、かなあ。


もうね、このあたりになりますと、自分の頭で考えているというより、酒にコントロールされていますね。まだ続きますね。


いっそ、あれだね。両手に花っていうのもあるね。

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左右に女っていう妄想です。酒に見せられる夢、みたいなもんでしょう。


そういう時の女ってのは、どうなんだろう。女二人して楽しいもんかね。それともあたしの方が、ってんで互いにけん制し合ったりするもんかね。
それともあれか、一緒に仕事してるって、協力関係みたいなことになるのかな。


そっか、仕事かあ。そうだよな、オレなんかのところに女が二人って、そりゃ仕事だよな。
派遣コンパニオンってところか。


ま、そもそもそんなカネのかかる女を呼べるような身分じゃないし、あ~あ。


ってんで、また酒をクイっとやる。一升ビンも半分ぐらいなくなってる頃ですね。


女もいないし、金もない。
けっこう真面目にやってきたんだけどなあ。金は貯まってないねえ。
これじゃ女どころか誰も寄り付かない、ってことになるんだねえ。
そんなにシコタマ欲しいわけじゃないけどね。せめてサイフに入りきれないぐらい、どどーんと札束があったりなんかすると。


懐に金です。

 


空きっ腹に五合も酒を入れて、妄想するのにも疲れてきます。


札束があったりなんかすると、までいって、そのあとが続かない。金があったら何をしたいか、なんて普段考えもしないから、何も思いつかない。頭の中がグルグルしているだけ。


夜も更けて、風も冷たくなってきても、グルグル頭じゃ何も感知できない。
はああっ。口から大きなため息が出ます。もう鼻からじゃ間に合わない。


明日から、また仕事だしなあ。稼がなきゃ酒も呑めないしなあ。


そうです、もう寝なさい。


はいはい、そうしましょう。


と、こういう状況を詠んだ狂歌なんじゃないでしょうか。


ちゃんと身の程を知った諦念みたいなものはあるわけです。市井の人として、多少の難点はあったとしても、普通人。


家の柱に背中を預けて酒でも呑めば、欲望、妄想の世界に足を延ばしたりもしまさあね。
でも酔った頭でも、分かっているんですね。女もなけりゃ金もない。ただただ夜は更けて、やがて現実の朝が来る。


これでイイのかなあ。イイんだよなあ。良くないったって、どうしようもないし。
はああっ。。。
というタメ息。これ、男だけじゃなくって、女だって成り立つ深いタメ息シチュエーション、だと思いますね。

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独り呑みに特有の、自覚、自己憐憫、甘美なタメ息。


尤も、最後の、懐に金というのは、付けたし。短歌形式を遵守するための後付け、のようにも感じます。


「名月を取ってくれろと泣く子かな それにつけても金の欲しさよ
というのが有名ですよね。
最後に「それにつけても金の欲しさよ」と付ければ、何となく形になるし、誰にでも共感できるでしょ、という気になれる。


で、金で〆。


狂歌の〆は金でよくっても、酒呑みの〆はなんでしょう。


深くタメ息ついたら、柱から背中を外して、よっこらしょっと台所に行って、なんか適当にかっ込んで、寝るのがイイんでしょうね。
ま、そのまま寝ちゃってもイイ。なにやってんだかな、自分。というやつ。
独り呑みのしみじみした夜。


これってなかなか悪くはないんです。必ずしも悲惨な気持ちではないんです。
身の丈を知る、呑み助の、酒の楽しみ方。上級編かもしれません。

 


みんなでワイワイってのももちろん楽しいんですが、独りでしんみり、じっくりを味わえるようになって初めていっちょ前の酒呑み。


そかな?


さてさて今宵は、独りでなに呑んで、どう楽しみましょうかね?
甘美なタメ息ついて、後始末よく呑もうと思います。


何か食べてから、あるいは食べながら呑む、というのが身体にはイイそうです。
独り呑みでも大事にしたいです。後始末。


何の後始末? ってよく分かりません。です。


後ろに柱、欲しい感じです。お終いです。