< 疝気稲荷神社っていうのが現存していて 江東区南砂には再建された小祠があるですよお >
毎度まいどのバカバカしいお噺でご機嫌をうかがいます。
しかし、なんでございますよ。このところの日本ね、このヒノモトの国も物騒になって来ましてね、なにか大きく間違ったようなことをして、これまでを過ごして来たんじゃございませんかね、我々日本人は。
え? どうです?
なんで、こんなバカな国になっちまったんでしょう。
すっかりサマ変わりしちゃいましてね、捕まらないようにしようなんて考えがないんだそうですよ、最近の犯人ね。
痴漢行為で捕まる犯人ね、むらむらしてやっちゃいました。なんてね、ヘーキでそんなこと言っちゃってる。
白昼の強盗もそうですけど、痴漢ね、こっちも相当バカでしょ。
ですからね、バカとスケベは除け者にしちゃいけませんですね。
除け者にしちゃうと、元々がバカなんですから、ああ、オレは世の中からはじかれちゃったあ、なんてんで、ロクなこと仕出かさないんですから。
除け者にしちゃいけません。バカとスケベなりに、ちゃんと付き合ってやらないとダメですね。
っていうことでございましてね、こちらも最後までよろしくお付き合いのほど、願っておきますが。
え~、あのね、昔から言いますね。
「虫の居どころが悪い」
身体の中の虫。ずいぶんと長い付き合いみたいですね。虫ってやつ、どなたの腹の中にもいるようでございましてね。
もっともあれですよ、回虫とかね、そういうたぐいの虫ってことじゃございませんで、居どころぐらいで人間の気分を変えちゃうようなね、なんだか、霊力のありそうな、そんなやつです。
必ず3匹なんだそうですね。腹の虫。
昔の中国の言い伝えではですね「三尸(さんし)」っていうんです。三匹の虫。
だいたい4センチもあるってことですからね、大きいんですよ、なかなかにね。
そんなに大きかったら、居どころによっちゃあ、いろいろと都合の悪いことも起きてくるんでしょうねえ。
プーチンっていう人ね。いますでしょ。
あの人なんかはずっと虫の居どころが悪いんじゃないでしょうかね。いや、よく分かりませんけれどもね。
誰か虫下しでもあげてみたらどうですかね。
効かない? 虫下しなんて役に立つわけがない?
そうなんです。実はそうらしいんです。そういうたぐいの虫じゃないんですよね。
人が生まれた時から、すでに腹の中にいるんだそうですからね、尸っていう3匹の虫。
腹の中で、その人のやることなすこと、ぜ~んぶ見てるってんですよ。
ヤなやつでございましょ。
昔の暦で、庚申の日ってのがありましてね、2ヵ月に1回来るんです。
この庚申の日の夜に、人が寝ちゃいますとね、その尸のヤロウたちがね、すっと抜け出して地獄の閻魔様にね、告げ口するってんです。
閻魔様の脇に控えているっていう、例の小野篁(たかむら)様がね、委細漏らさず書き留めちゃいますからね、後からいくら取り繕ったってダメなんです。
困っちゃいますよね。
なもんですから、昔はね、庚申待ちって言いまして、庚申(かのえさる)の夜に、みんなで寄り集まりましてね、夜通しワイワイと世間話なんかして寝ないんです。
そういう習慣があったんだそうですよ。
尸のヤロウが閻魔様のところに出られないように庚申の夜は寝ない。
3匹の尸にしてみれば、人が寝てくれないとヤキモキしちゃってね、落ち着かないんだけれども、地獄へ行くのは庚申の夜、人が寝てからってことに決まってますから、どうしようもない。
3年の間、18回の庚申の夜を寝ずに過ごしますと、3匹の尸のやつら、閻魔様からお役御免になっちゃうんですね。ちっとも報告にやって来ないなら、もう仕事しなくてイイってんでね、クビになっちゃう。
人間にとっちゃ、これ、ありがたいことでしてね。これで満願成就。三尸お祓い済みってことになるんです。
まあね、人間、昔からいろんなことを考え出す生き物なんですよ。ね。
3年もの間、都合18回もね、庚申の夜に寝ないなんて面倒くさいこと、やってらんないってんで、ミョウチキリンなことを考え出したやつがございましてね、「疝気の虫」なんてえ噺がございます。
疝気ね、ま、このところ聞くような名前じゃございませんが、昔はこんなことを言いましたよ。
「悋気は女の慎むところ、疝気は男の苦しむところ」
男に特有のものなんですね、疝気ってのは。
主に下半身の痛みを伴う病気、なんてな説明をしています。
いろいろとコードなんてのがありますからね、艶笑落語なんてのも、高座にさえかかりにくい世の中なんでございましてね、今はね。
要はタマが痛くなるってのが、この疝気の代表的な症状なんです。
ま、これは、女のかたがたには分かりにくいってえますか、分かるわけがないんですね、なんたって、ないんですから、タマが。そりゃ分かろうたって、無理なんでございます。
なんだってタマが痛くなっちゃうかっていうのが、ほら、あれです。例の「三尸」なんですよ。
タマの中でヤツらが暴れちゃうから痛くなる。
なんだってそんなとこへ集まっちゃうかね、っていってもそれが分かりゃ苦労ってますか、痛い思いをしないで済むんですけどね、これがどうして、そうはいかないから「悋気は女の慎むところ。疝気は男の苦しむところ」なんでございましてね。
ところがある日、男が、胡坐をかいて座っているかかとの近くに、見たことのない虫がいる。
おっ? と見ると、そいつと目が合う。
「なんだお前は?」
「へい、へへへ。好いお天気で」
「なにを抜かしてやがんだ。しゃべる虫たあ、とんでもねえ野郎だ。ひねりつぶしてくれよう」
「いやいや、それはやめてください助けてくださいよ。あっしはあれです、何を隠そう長いお付き合いの疝気の虫なんでして」
「お、そういえばさっき、また疝気にやられたかと思ったら、すっと痛みがなくなったんだよ。え? こりゃどういうわけだ」
「へい。面目ないことに、暴れているうちに入る穴を間違えちゃいましてね、先っぽの方からここへ、ひょいっとね、へへへ、出てきちゃいましたとさ。へへへ」
「なあにが、出てきちゃいましたトサ、だ。こんにゃろ。そんじゃあ聞くがな……」
この男、なんと町医者なんでして、疝気の虫からいろいろ聞きだしますよ。
なんで男にかぎって疝気の症状が出るのかってのはですね、この間抜けな虫の言うことを信じれば、こういうことだそうです。
庚申待ちね。あれをまじめにやり遂げるのは、たいてい女だけなんだそうですね。
ちゃんと真面目に2か月ごとに3年の間、庚申の夜は寝ない。
なんですが、これが男の場合ってなりますと、全然守りゃしない。3年の間なんてやり続けたりしないってんです。
途中で必ず酔っぱらったりなんかしてね、寝ちゃう。
なんで「三尸」が疝気の虫として、男の身体の中に残る。
それで疝気は男だけ。
そりゃ、そういう理屈だってことかもしれないが、なんとかならないものかってんでね、男はその他にもいろいろ聞きだしまして、はい。
疝気の虫は蕎麦が大好き。
蕎麦の匂いを嗅ぎつけると、そそくさと胃袋に集まる。
ところがトウガラシが大の苦手。ヘタあすると、身体にトウガラシがくっ付いて火傷しちゃうってんで、トウガラシが人間の身体の中に入って来ると、大慌てで、特別の別荘へ逃げ込む。
「なんだい、その、特別の別荘ってなあ」
「へい、例のあれでございます。放送禁止用語っていうんですか。人前ではあんまり口にしない方がよろしい、なんてことを聞いておりますが」
「虫のくせに、ヘンに気を遣うじゃねえか。なんなんだよ、別荘ってなあ」
「へい。棒の付け根にくっ付いてる2つの丸い……」
「あ、タマか。それで痛くなるんだな」
「ま、そういうワケでして、あまりトウガラシはおあがりにならない方が」
「ナマイキ言ってんじゃねえ、こんにゃろお。だけど、なんだ。イイこと聞いたぜこりゃあ」
っていうんで、男は早速「疝気治療」って看板をあげますね。
こっから先は、はい、みなさんご存じの「疝気の虫」に詳しいようでございます。
ちなみに、ChatGPTに下ネタ用とかは、ございませんので悪しからず。
虫の居どころ、よろしゅうござんすか?
おあとがよろしいようで。