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【花の名前】その2 プランターで咲き誇る色鮮やかな花々 観賞用 虫たちよりもまず人間のための花?

< 「秋海棠」って ちっとも花の名前っぽくない気がしますけど ファンはたくさんいるらしいです >

1969年っていいますから、もう半世紀以上前の大ヒット曲「白い色は恋人の色」

ベッツィ&クリスっていうアメリカ人デュオが歌っていたんですね。
作詞は北山修、作曲が加藤和彦っていう黄金コンビの歌。


めっちゃロングヒットで、その後もいろんな人がカバーしていますんで、けっこう若い世代の人でも聞いたことのある人も少なくないんじゃないでしょうか。


♪花びらの白い色は 恋人の色


♪なつかしい白百合は 恋人の色


っていうんですよね。


2番の歌詞が、
♪青空の澄んだ色は 初恋の色


3番が、
♪夕焼けの赤い色は 思い出の色


っていう、まあ、昭和らしい美しく懐かしい感じのする歌詞。イイ歌です。
なんでアメリカ人デュオがたどたどしい日本語で歌ったのかは、ナゾです。


で、花の話なんですけど、北山修センセは、恋人の色に花びらの「白」を持って来ています。白百合の白。


初恋の色は青空ですから、白百合の白は、ちゃんと経験を積んで、一歩踏み込んだ、大人としての恋人の色、ってことになるんでしょうかね。


白のイメージの恋人っていうのが男なのか女なのか、ちょっとね、分かりませんけれど、白百合ですもんね。白百合のイメージが男っていうのだと、かなりグロイかもです。


歌っていたベッツィ&クリスは女性デュオでしたけれど、作詞は北山修センセですからね、白百合のごとき君なりき、ってことで恋人は女性なんでしょね。


ってまあ、そこにこだわる必要などこにもないんであります。

 

 

 


今回、偶然にも、この「白い色は恋人の色」がラジオから流れてきたんですけど、蘭華(らんか)っていう大分県出身の女の人がカバーしたバージョンでした。


おお、聞いたことありますねえって惹きこまれたんですけど、気になったのは白いイメージは男なのか女なのかじゃなくって、花の色って、何色あるんだろ? 何色が多いんだろ? っていうことなんでありました。


自然界に青い色の花はない! っていう話を聞いたこともありますし、20万種ぐらいあるっていう花の色って、何色ぐらいあるんだろうっていう、恋人の色とは何の関係もないことが気になったんであります。


厳密に色を定義していけば同じ白い花の色だとしても、やっぱり違いはあるんでしょうから、20万種の花があるっていうことであれば20万種の花の色があるっていうことなのかもしれません。


青い色の花に関しては、ちょろっと調べたら簡単に結論が出ました。
自然界でも青色の花はあるよ、なんでありました。


自然界には青い色の花はないって聞いたときには、ほほう、虫たちには青い色が見えないからなんでしょか、とか考えていたんですけど、虫たちにも青色は区別出来ているらしいです。って、虫に見えている色、そういうの、どやって調べているんでしょうかね。不思議です。


疑問や考えがどんどんあさっての方にいってしまいがちですが、今はバイオテクノロジーとかっていうやつで、どんな色の花でも作れますよ、なんて話も聞こえてきます。


自然界の青い色の花は、紫陽花(あじさい)、露草、桔梗、竜胆(りんどう)、勿忘草(わすれなぐさ)。自然界の青い花、けっこうありますよ、ってことなんですね。


なるほど紫陽花なんて街なかでも毎年必ず目にしているんですけどね。
一株の中でも色が違っていたりして、しっかり青い色の花も見ていたのに。


ん? でも、紫陽花のあの花のような部分は花じゃなくって、とかいう話もあったような。。。


ま、イイじゃないの。実は花じゃないんだよっていう花です、っていうことで。
そういう捉え方をしておきませう。


花の色の数っていうのは意外に少なくって、あの童謡で言い表されているって言えるみたいです。みんなが知っているチューリップね。


♪咲いたさいた チューリップの花が


♪並んだならんだ 赤 白 黄色


自然界の花の色。
白色系統が33%。
黄色系統が28%。
赤色系統が20%。


この3色系統で81%ってことになりますから、赤、白、黄色でほぼ全てな感じなんですね。
童謡チューリップ、なにげに凄いです。


ちなみに作詞は、東京都世田谷区に住んでいた近藤宮子さんっていう、その当時のおばあさんだそう。
1930年の作品。


青色系統の色の花は紫色系統も含めて17%だそうです。
青い花も含めると98%ですから、ほぼコンプリートですね。


そういえば、よく見ると紫なんだけれど、ぱっと見、黒ッ! に見える花びらっていうのもありますもんね。


なんていう名前の花なのかは知りませんが、プランターに、わりと大きな黒い花が並んでいるのを見たことがあります。


まあね、花の色って、チューリップなんかでもマーブルっていうんでしょうか、何色か混じっている花もありますよね。ホントに何でもアリっていうことになってきているんでしょうかね。


にしても白でも黄色でも赤でもなくて、青、紫系統でもない残り2%の花の色って、どんななのか、そっちも気になります。金色とか? まさかね。

 

 

 


花の好きな人って老若男女問わず、たくさんいます。


住宅街の散歩。一軒家なんかですと、ほぼプランターが庭先とか塀の脇に並べられていて、季節ごとの花が見事に咲いています。


ハッとするような鮮やかな色。赤でも黄色でも、白であっても強烈な色合いの花を並べてある家も少なからずあります。花弁が輝いて見えます。栄養満点! なのかもです。そう見えます。


日本家屋の庭に咲いている花とは違って、マンションだったりコンクリート製の建物の脇に似合うのは、かなり強めの見た目の花なのかもしれませんね。そういう強さが求められている?


そうした強烈な華やかさ、言ってしまえばハデハデしい色の花も見事ですが、消え入りそうなほどの色合いで、何とも可憐な風情を感じさせる花も素敵ですね。


東洋風。日本風。


そういう静寂な空気感を感じさせる艶っぽい花の代表っていえば「秋海棠(しゅうかいどう)」じゃないでしょうか。


秋海棠っていう名前を初めて見たとき、読めませんでした。「棠」っていう字なんて見たことなかったですしね。


可憐な色合いの花のイメージと秋海棠っていう、何の名前なのかすら想像できないようなカクカクしたイメージの単語が、どうにも結びつかないんですよね、今でも。


江戸時代の初め頃、園芸用として中国から日本に入って来た花なんだそうです。こういうの、帰化植物っていうんだそうです。ふううん、帰化ねえ、って感じです。いえ、他意はありませんが。


多年生草本球根植物。
花期は 8月から10月。同じ株に雄花と雌花が付く種類で、雄花は茎の上の方に正面を向いて開いて、雌花は下の方に下を向いて開くのが特徴だそうです。


大和本草」の中で貝原益軒(1630~1714)はこう言っています。


「秋海棠。寛永年中、中華より初て長崎に来る。花の色海棠に似たり。故に名付く」


「海棠」っていう花の色に似ているんで「秋海棠」
っていうことは江戸時代初期より前に海棠っていう花が日本にありました、って言ってますよね。


調べてみますと、どうやら海棠っていうのも中国から入って来たみたいなんですけど、ハッキリしないですね。


でも海棠はバラ科リンゴ属の耐寒性落葉高木。草花じゃないです。


似ているっていう淡紅色の花を咲かせるのは、春。
秋海棠の花は旧暦の秋に咲くってことで秋海棠、って名前を決めたのは、貝原益軒? なんでしょね。名付く、って言ってますもんね。


日陰とか、わりとジメッとしたところが好きなんだそうです。秋海棠。


ベゴニアの仲間みたいなんですが、今現在多く流通している数種類のベゴニアは昭和の中ごろからのものなので、江戸時代からあった秋海棠をベゴニアって呼ぶことはないんだそうです。
秋海棠はいつまで経っても秋海棠。

 

 

なんか、育てている人たちのこだわりってことなんでしょかね。ま、こだわりを持っていた方が楽しめそうではあります。


日本に入って来てすぐ人気が出たみたいで、松尾芭蕉(1644~1694)が詠んでいます。


「秋海棠 西瓜の色に 咲きにけり」


ん~。どうなんでしょうね。あんまりイイ句には感じませんけど、秋海棠の花にじっと見入っている芭蕉さんは感じられますねえ。


小さな花で、そっと咲いている印象の秋海棠ですけど、不思議に存在感のある花。


秋海棠って「八月春」とも書くみたいです。
でも八月春って書いてシュウカイドウ、って読めないでしょねえ。


北村薫(1949~)の円紫さんシリーズ、初の長編作品。1997年に出た「秋の花」

 

珍しく人が死んでいる作品でしたが、この中に出てきていますね、秋海棠。


※ ※ ※ ※ ※


「……秋海棠」
「え」
「津田さんのうちの前に……」
私は、昨日、垣根で揺れていた可憐な花を思い出し、頷いた。今頃はあの小さい花も大粒の雨に打たれているだろう。和泉さんはいう。
「あの花の名前、津田さんのお母さんに教えてもらったんです」


※ ※ ※ ※ ※


そして、秋海棠の別名「断腸花(だんちょうか)」の話が出てきます。


死んでしまった津田さんの、お母さんの気持ちを断腸花っていう花の名前になぞらえて、我が子を喪ってしまった母親の涙が落ちて、そこに咲いた花だから、断腸花っていう名前が付いたって説明しています。


うつむき加減にひっそり咲いているんで、さぞかし断腸の想いだっただろうっていうネーミングなんですよっていうことなんでしょう。津田さんのお母さんの想いに重ねているわけですね。


ただですね、中国の「採蘭雑誌」っていう本には、また別の断腸花の由来が語られているんだそうです。


昔むかし、って中国の昔むかしは、かなりの昔むかしな気がしますが、あるところに、それはそれは美しい女の人がおりました。
はい、昔話に出てくる女の人はたいてい美人さんです。


その美人には狂おしいばかりに愛するトノガタがおりました。トノガタは毎日、美人のもとに通って来てくれておりましたので、溢れるような幸せを感じて暮らしておりました。


ところがある日を境に、どうしたことかトノガタのお運びがありません。
美人は狂おしく身を揉んで不安に襲われてしまいます。きょうは来るか、明日はどうか。
待ちあぐねて家の生垣から身を乗り出して遠く、道の先を見やって哭き暮らしておりました。


美人の涙が落ちたところからは、名も知られていない草が生えて来て、ほんのりと赤い花が咲くようになりました。


緑の生け垣の陰にひっそり花を咲かせているその風情を、道を通る人たちが眺めながら、その美人の断腸の想いに同情して、いつからか、その花を断腸花と呼び習わすようになりました。


中国の話も北村薫の話も、どっちも涙から生まれた花ってことですね。


秋海棠っていう学者寄りの名前より、こっちの断腸花っていう方が、なんか人気がでそうな気もしますけどね。


って思ったら、はい、いらっしゃいましたね、やっぱり。
永井荷風(1879~1959)です。


1937年に発表した「濹東綺譚」も知られていますが、1917年から書き始めて1959年、死の前日まで書き続けていたっていう「断腸亭日乗」も有名ですよね。

 

 

 


この「断腸亭」っていうのは、永井荷風の住居の名前、っていうか号みたいな名乗りなんですよね。やがて引っ越した先の名乗りは「偏奇館」
変人ぶりに自覚はあったんでしょうね。


「偏奇館」に引っ越した後でも、日記の名乗りはそのまま断腸亭日乗で書き続けたってことですね。


官僚を父親に持つ、ボンボンで、かなりクセの強い人だったみたいです。


本名は「永井壮吉」荷風っていうのはペンネームっていいますか、雅号ってやつなんですね。


大学時代に入院した病院の看護婦さんに恋をして、その相手の名前が「お蓮(れん)」


「荷」っていう字には蓮(ハス)っていう意味もあるんだそうで、ちょっとだけひねって自分の名前にしたんですね。


で、屋敷を断腸亭って名乗るについては、永井荷風本人が断腸花が好きだったから、っていう単純な理由みたいです。


変人ではあっても江戸文化を愛していた風流人だったっていう永井荷風ですからね、庭に風情を失わないようなこだわりで植えていたんでしょうね。


秋海棠。八月春。断腸花。


実はもっといろいろ、別名のありそうな帰化植物、ですね。

 

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