ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

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「おにぎりでイイや」じゃなくって「おにぎりが食べたいんです」 令和の【おにぎりブーム】

< おにぎりがキライっていう日本人なんていないでしょうけど なんとインバウンド人気らしいです >

朝からピーカンだった太陽もどうやら静かに沈んで、気持ちのイイ夜風に吹かれながらゆるゆると歩きます。


縄のれんをくぐってカウンター席を見ると、L字の長い方の一番奥しか空いてなかったので、身体を横にしながらそこへ行こうと3歩ばかり進んだら、空いているように見えた席に生ビールの中ジョッキ。


ありゃま、トイレ中座でしょかねえ。カウンター席、満杯です。
テーブル席は空いてますけどねえ。どうしましょうかねえ。


女将さんが2人がけのテーブル席を拭きながら、


「マリちゃんが4人席をキープしていますよ」


は? なんのこっちゃ、って思っていると反対側の奥から、


「こっちこっち。待ってたのよ。きょうあたり来るんじゃないかって思って。4人席にしてもらったのよ。話があるんだから、早くう、こっち」


ふむふむ、ときどきカウンターで顔を合わせるマリちゃんですね。
声のよく通る、40代の美人さんです。


いつもはマリちゃん1人なんですけど、ダンナと2人で来てますねえ。


マリちゃんダンナは、アルコールがあんまり得意じゃなくって、奥さんとのお付き合いみたいな感じで、時々一緒に来ていて、まあ顔馴染みではあります。


冷酒の徳利とガラスの猪口を前にして、もう真っ赤っかな顔。たっぷりなお腹を突き出しながら中腰に立ちあがって、


「いや、どうもどうも。お久しぶりです。いつもお世話になってます」


さすが営業職、ってところなんでしょうけれど、ちょっとね、いつも丁寧過ぎる気もしますです。
マリちゃんとは一緒に呑むこともありますけれど、べつにお世話するとかされるとか、ないでしょ。この店の客同士なんですからね。


瑞泉(泡盛)のロックを持って来てもらって、3人で、「どもお、お疲れで~す」

 

 

 


ふううって息をつく間もなく、マリちゃんの速射砲がさく裂しました。


「話っていうのはさあ、この前教えてもらった「ぼんご」行ってきたのよ。ダンナと2人でね、祝日だったんだけど、もうめっちゃ行列してんの。混んでるっていうのは調べて知ってたんだけど、お昼でもないし夕ご飯でもない3時ぐらいに行ったのにさあ、信じらんないぐらい並んでるのよ。一番後ろの人にどれくらい並んだら食べられますかって聞いたらさあ。4時間ぐらいですかねえって」


ダンナがガクガクと激しく頷きながら、


「おにぎりに4時間も並ぶなんて、考えられませんよねえ。日本、おかしくなってますよ」


「さすがにね、もう諦めて帰って来ちゃったんだけど、あのね、行列してんのって、外人さんが半分ぐらいいたのよ。ホントはもっといるのかもだけど。だってほら、中国とか韓国とかの人だと見た目じゃ分かんないでしょ」


ん~? ぼんご?


「なによ、自分で教えといて忘れてんの? おにぎりの専門店よ、大塚の。おにぎりの話したじゃない、この前。それで、これはおにぎり好きの2人としてはぜひ行ってみましょうってことで、かなり久しぶりに山手線に乗っちゃってさあ、わざわざ出かけて行ったのにさあ、行列に圧倒されて帰って来ちゃった。外人さんたちもおにぎり食べるんだねえってさ。ちょっとビックリよ」


あ~、はいはい。思い出しました。
大塚にあるおにぎり専門店の「ぼんご」ですね。話しましたですね。そですか、まだ健在でしたか。


東京、千葉、埼玉近辺の人であれば名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃないでしょうか。


私が通っていたのは30年も前になりますけどねえ。
行列の出来る店になってる。しかもおにぎりに外人さんが並んでる。へええ。
いろいろとカルチャーショックです。


前は混んでいる店ではありましたけれど、行列っていうのはなかったですよ。


「ぼんご」のおにぎりは、種類がとにかくいっぱいあって、大きくって、ふかふかの「おにぎらず」なんですよねえ。


体験してない人はゼヒッ! とか思いますけど、行列、長過ぎでしょねえ。


ウィークデイであれば、そんなに並ぶことも、ないのでは。っていってもあれですかね、外人さんたちがおにぎりに並んでいるんだとすれば、祝日も何も、関係ないですかねえ。


そですかあ、インバウンドでおにぎりですかあ。ちょと違和感ありますねえ。


改めて「ぼんご」のホームページを見てみますと、営業時間は11:30から23:00。日曜日が定休で、祝祭日は営業、ってことになっています。

 

 

 

 

 

たぶん、前と変わっていないですね。


あ、でも、新店舗ってなってますよ。東京都豊島区北大塚2-27-5。


あれ? って思ってちょっと調べてみますと、前の住所は東京都豊島区北大塚2-26-3。
すぐ隣やんけ!


このところっていいますか、30年ぐらい、ずっと行ってないんで最近の大塚の様子がさっぱり分かりませんが、前の住所の店舗は建て替えとかになったんですかね。
2022年。コロナの最中に移転したってことみたいです。


通っていた頃は地下鉄と山手線を乗り継いで大塚駅まで行くんですけど、みなさんご存じ池袋駅の1つ北の駅が大塚です。


実は大塚駅の南口には駅前すぐのところに「バッティングセンター」がありまして、草野球のチームメイトたち2人、3人ぐらいで「勝負」しに行ってたんですね。


独自ルールでアウトかヒットか、2塁打、3塁打、ホームランを判定して、数回のゲームで何点取れるか。
そういう遊びですね。


そのころはバッティングセンターってどこにでもあって、仲間が集まれる場所としては新宿が一番近かったんですけど、中の1人がバッティングセンターの「クオリティ」が一番なのは大塚にある、ってことで、そこに通うようになっていたんですね。


「クオリティ」がどう違うのかはさっぱり分かりませんでしたが、新宿に比べれば大塚は街が静かなので、全員、お気に入りのバッティングセンターだったんですよね。
こちらは2023年に閉業しちゃったみたいです。


で、勝負が終わって、腹に何か容れてから帰ろうってなりまして、大塚駅の周りをうろうろしてバッティングセンターとは駅を挟んで反対側、北口に見つけたのがおにぎり専門店の「ぼんご」だったんです。


その頃は酒を呑む習慣がなかったんですよねえ。今考えると、なんか不思議な感じもするんですけどねえ。


いつも「ぼんご」で食べていたのは「2個とうふセット」か「3個とうふセット」
スタンダード価格のおにぎりに、とうふの味噌汁っていうセットですね。


今でもやってますねえ。平日限定メニュー。


2個とうふセットは800円。
3個とうふセットが1150円。


健在なんですねえ。前はいくらだったか、すっかり忘れちゃいました。


なめこ汁もあるんですね。300円。昔もあったのかどうか、これまた記憶にないです。


「ぼんご」通いは3年ぐらい続いたでしょうか。
草野球チームが解散しちゃって、大塚に行くこともなくなってしまいました。


でもね、それからも「ぼんご」には時々行っていたんです。
池袋近辺に用事があるときは、大塚駅で降りて、まっすぐ「ぼんご」へ行って、2個とうふセット。


なんて言うんですかね、めっちゃ満足なんです。「ぼんご」のおにぎりっていうおにぎらずのセット。


ってな話を、数カ月前に、マリちゃんとマリちゃんダンナと「おにぎり談義」になった時にしたんでありました。


マリちゃんは横浜方面の会社で働いていて、マリちゃんダンナは川崎近辺。


昼のお弁当は交代で作るんだそうなんですけど、けっこうな確率で「おにぎり弁当」なんだそうです。


どっちかが偏っておにぎりにするんじゃなくって、なんとなく2人ともおにぎり弁当にする。


「簡単でおいしいし、後片付けもラクでしょ。あたし、おにぎり作るの上手なのよ」


マリちゃんはそう言って鼻の穴をふくらませます。
マリちゃんダンナは頭を書きながら「へへへ」っていう反応。


「日本人はね、稲作を始めてからすぐにおにぎりを食べてたらしいのよね。そういう化石が見つかってるんだって。たぶん塩むすびよね。それからずっと時間が経って中にいろいろ具材を入れるようになって、海苔で巻いたりなんかして、日本人はずっとおにぎり食べて来てんのよね。何千年か知らないけど、凄いよねえ」


マリちゃんダンナがおしぼりで顔を拭きながら言います。


「昭和の頃、我が家のおふくろが握ってくれるおにぎりは三角じゃなくって丸かったんですよねえ」


「そうね、あたしんチでも丸かったわよ。今はコンビニおにぎりがあるから三角が当たり前みたいに感じちゃうけど、正しいおにぎりは丸でしょ。黒い海苔でぐるっと巻いたバクダンおにぎり」


「どこでも丸かったのかなあ」


「う~ん、知らないわよ。なんなの? イイじゃない、丸いバクダンおにぎりで育ってきたことにしておけばイイのよ。どこにも問題ないでしょ」

 

ホントにおにぎり大好きのご夫婦なんですよねえ。


ま、ここまで盛り上がらないとしても、日本人はみんなおにぎり好きなんじゃないでしょうか。


湾岸エリアでランチ難民だった頃、朝の通勤時にコンビニおにぎりを2つ買って、社内の割引自販機でペットボトルのお茶を買って、お昼はそれで過ごしていた時期があります。


そうそう、その話をしたときも、マリちゃんが「おにぎりナレッジ」を滔々と語ったんでした。

 

 

 


「コンビのおにぎりなんてダメよ。長く食べ続けるようなものじゃないの。身体に良くないから」


え、そうなんですか。そうなのかもですけど、炊飯器持ってないし、自宅では作れませんよ。


「だったら炊飯器買った方がいいわよ。自分で作るおにぎりが、なんていったって安心なんだから。それにコンビニのおにぎり2個でお昼、足りてるわけ? コンビニおにぎりってどんどん小さくなってきてるでしょ。おにぎり1個100円時代なんて化石時代になっちゃってて、高いわよ、今のは300円台のが珍しくないもの。手巻おにぎりシーチキンマヨネーズとか悪魔のおにぎりとか」


へええ、批判的なのに、ちゃんとチェックはしているんですねえ。さすがです。


「コンビニおにぎりが好きな人ってけっこういるのよね。ご飯がぱらぱらで、ふんわりおいしいって」


パリパリの海苔もイイですねえ。


「なんでぱらぱらで、ビニールにもくっ付かないかっていうとね、栄養士の友だちから聞いたんだけど、油なんだって、アブラ。油でコーティングしてるからお米同士もくっ付かないしビニールにもくっ付かない。油食べてるようなもんなのよ。家で作ればおにぎりに油なんて使わないでしょ。バクダンおにぎりは健康的なのよ」


「バクダンが健康的なの?」


「あなた、もう酔っぱらってるんだから先に帰りなさいよ。あたしはまだおにぎりの話していくんだから。ねえ」


って、そこで同意を求められましてもねえ。


「でもここ10年ぐらいなんだけど、おにぎり専門店って急に増えて来てんのよね。知ってる? あんまり外に出ないから知らないでしょ。すごく増えて来てんだから専門店。横浜の店はね三角おにぎりにお味噌汁じゃなくって、お椀に入ったうどんなんだって。そのお出汁が海苔の風味に絶妙似合うらしくって、そのうち食べてみようと思ってるんだけどね」


「え、オレもそこ行きたい」


「だ、か、らあ、あなたはもう帰りなさいってば、もおっ」


あのね、そういうの、犬も食わないっていわれてるの、知ってます?
けっこう仲のイイおにぎり夫婦なんですけどねえ。


で、あとから調べてみたらですね、たしかに「おにぎり専門店」が急増しているらしいんですよね。


コンビニおにぎりしか知らない世代がオトナになっていく過程で、炊き立てご飯で握りたてのおにぎりに出会ったら、もうトリコになってしまったっていう例が、特に大都市圏に頻繁にみられるんだそうで、機をみるに敏な人がおにぎり専門店を起ち上げたら、大当たり!


コンビニおにぎりも含めて、21世紀も4半世紀を迎えようとしている2024年。令和っておにぎり戦国時代に入っているのかもしれないです。


わざわざやってみることをお勧めは致しませんが、コンビニおにぎりを茶碗にいれて、熱いお茶を注いでおにぎり茶漬け、ってのをやってみると、油が、ってことみたいです。


コンビニおにぎり、不利になっていくのかもですよ。知らんけど。


どうです? 近所におにぎり専門店、あります? 登場してます?

 

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